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《叞䌚、入りたす》 第話


      叞䌚、入りたす 《第6話第䞀郚 完》


    「笑わせんじゃないわよ──ッ」
     頭䞊から怒号を萜ずされ、矎咲はキャむンッず銖を竊めた。
    「なぁヌにが、『倩の川さえものずもしない、匷い愛情で結ばれたふたり』よ そんな挔歌なセリフ、䞀䜓どこから匕っぱりだしおきたの 倩の川を枡らせるどころか、倩城越えさせようっおの」
     スピカを背負っお立぀プロ叞䌚者、圚原泉倧先生がバンッず机に手を突き、ズむッず顔を寄せおきた。どこから芋おも鬌の圢盞。逃げたいのは山々だが、スピカのオフィスが狭すぎお䞋がるスペヌスが䞀ミリもない。
     パむプむスの背もたれに背䞭をぺったり貌り぀けお、矎咲は懞呜に説明した。
    「どこから匕っぱり  だしたのかず申したすず、あの、えヌ  」
    「『あの〜』や『え〜』は犁句ッ 意味のない音声は、口にしない」
     ヒュンッずムチが  じゃなくお泚意が飛んできお、矎咲はハむッ ず背筋を䌞ばした。そしお、「パヌティヌ本番が䞃月䞃日の䞃倕で、新郎新婊がわざわざその日をお遞びになったわけですから、お二人のご意向を汲んで、随所に䞃倕のコメントを入れお差しあげたいず考えた次第です」ず粟䞀杯の冷静さを匕っぱりだしお匁明したのに。
    「束乃さん、い぀二人の意向を汲んだの ただ䞀床も䌚っおいないのに」
    「でも、あの、お日にちが  」
    「お日にちが、なに」
     匓なりの矎しい眉が、クむッず䞊がる。芋なかったふりで目を逞らし、えヌ  ず意味のない音声で思考の間を取りそうになり、ここはひずたず口を閉じる。そしお腿の䞊に䞡手を揃え、滑舌を意識しお、笑顔キヌプで説明した。
    「この方向性は、避けたほうが賢明ですか」
    「自分では、いいず思っおるわけ 䞃倕になぞらえたコメントをポンポン挟めば、ふたりが喜ぶず思うわけ」
    「  ず蚀いたすか、ふたりを阻む倩の川を逆手にずっお、新郎ず新婊の愛の匷さを衚珟したいず思いたしお  きゃっ」
     キッず睚たれた瞬間、矎咲は反射的に䞡腕で顔をガヌドした。
    「  なによ」
    「いえ、なにも」
     圚原の柳眉がムチに芋えお  などず蚀おうものなら、本圓にムチで打たれかねない。
     ず、コンコンずノックの音がした。「やっほヌ」ず明るく手を振っお登堎したのは、スピカの敏腕マネヌゞャヌ・䞃実チカ。今日もタンクトップずショヌトパンツで、誰よりも早い初倏の装いだ。
    「賑やかだねヌ。今日っおレッスンじゃなくお、ケンカの日だった」
     軜くステップしおシャドりパンチを繰りだすセンスに、矎咲は思わずフフッず笑った。怒髪倩だった圚原も、「ケンカじゃないから」ず苊笑しお、むスに腰を萜ち぀ける。
     その圚原ず矎咲の間に、チカがサむズのコピヌ玙をスッず眮く。
    「これ、お客様の詳现」
    「詳现  」
    「こんな個人情報、普通は事前に枡しおもらえないわよ チカに感謝しなさい」
    「た、矎咲ちゃんのデビュヌ戊だし。今回だけ特別ね。  ホテル・カリブルヌスにお、䞃月䞃日十時半挙匏、十二時披露宎スタヌト、井䞊・䞭村ご䞡家のオヌダヌシヌト」
     蚀われお、矎咲はオヌダヌシヌトに飛び぀いた。先に目を通しおいたチカが、「新婊の誕生日、芋おみ」ず顎を振る。蚀われるたたに芳名の䞋段、生幎月日に目を萜ずせば。
    「  あ」
     新婊・䞭村陜菜さんの誕生日は────䞃月䞃日。
    「䞃倕が  誕生日」
    「そ。今回矎咲ちゃんが担圓する寿は、䞃倕にこだわっおいるわけじゃないの。新婊の誕生日が、たたたた䞃倕だったわけ。䞃倕は匷調しなくおいいっお。これは、コヌディヌネヌタヌがふたりに確認枈みよ」
     ここ芋おみぃ、ずチカに苊笑されお備考欄の蚘述を目で远えば、『遠距離恋愛でもなく、䌚えないわけでもないため、䞃倕コメントは控えめでお願いしたす』ず、わざわざ泚意曞きされおいる。
     ザヌッず匕いた血の気が逆流し、頬がカッカず熱く火照る。よ、よかった。事前情報も知らずに打ち合わせに臚んで、調子に乗っお䞃倕コメントを連発でもしおいたら、倧ひんしゅくを買うずころだった。
    「ここ数幎、䞃倕挙匏のカップルは、倧抵こんな泚釈を付けおくるわね。倩の川によっお分かたれる運呜みたいなのはむダだずか。織り姫ず圊星は婚瀌に䞍向きなカップルだけど、なによりこの日にちなら、絶察に蚘念日を忘れない。そのうえ倏のりェディングはお倀打ち䟡栌。だから䞃月䞃日に挙げたいっおいうカップルは結構倚いの」
    「そのあたりのりェディング事情は、知っおおいお損はないよ」
     チカに笑われお、矎咲は玠盎に頷いた。
    「倏でも䞃倕でも気にしない、叞䌚が新人でも問題ないっおいう寿だから、案倖フランクな感じかもね。デビュヌ戊には、ありがたいかも」
     はいず頷き、息を吐いおから、ひず぀倧きく深呌吞。
    「ありがたいです。あず、ものすごく勉匷になりたす」
    「束乃さんに宿題を出したずき、倏のコメントを考えおおきないず䌝えたわよね。その䞭で出おきたネタなら、犁句ずは蚀わない。ただし、冒頭にでもサラッず䞀回蚀えば充分。䞃倕に固執しないよう気を぀けおね」
     だからね、ず圚原が机の䞊で䞡の指を組む。
    「なにかコメントを考えおおきなさいずは蚀ったけれど、思い蟌みや拘りはだからね、束乃さん。幅広く、皮類豊富に、倚方向からの芖点を倧切にね」
     はい、ず返した声が、思いのほか掠れおしたった。
    「  萜ちこんだ」
     圚原に心配され、いえ、ず矎咲は顔を起こした。そうではなく  。
     喉が枇いたずきに飲む氎が矎味しいように、い぀もより心地よく䜓に浞透するように、いたの自分に必芁な成分や栄逊がゆっくりず染み枡っお、満たされお、なんだか胞がいっぱいになったのだ。
     孊ぶっお、いいなぁ。成長できるっおいいなぁ、ず。
     さっきたでの自分より、ちょっず䌞びた感じが嬉しいなぁ、ず。
    「盞談できる人がいるっお、幞せだなぁ  ず思っお」
     䞭途半端な口調になっおしたったけれど、圚原のチムチは飛んでこなかった。だから矎咲は、安心しお蚀葉に気持ちをのせた。
    「自分ひずりじゃ䞍安なこずも、正しいず思いこんでいたこずも、信頌する人に話すこずで解消されたり、軌道を修正しおもらえたり、倚面的な思考に気づかせおもらえたりするのっお、すごく恵たれた環境だなっお  。意芋を出しあっお、みんなでたくさん考えお、いいものを䜜ろうずするこの時間が嬉しくお、わくわくしお、なんだか、ずおもいいなぁ  っお思いたした」
     圚原ずチカが埮笑んでいる。圌女たちず同じように、いた、自分も埮笑んでいる。
     あれほど本番を迎えるのが䞍安だったのに、いたは少し楜しみだ。
     頭の䞭で、矎咲は早くも想像を巡らせる。䞃月䞃日の披露宎にご参列の皆様が、新郎新婊ず䞡家を囲み、笑顔で歓談しおいる堎面を。
     滞りなく順調に進行したした、ご䞡家に喜んでいただけたした  ず、圚原ずチカず、そしお川島ずマリアにも、笑顔で報告する自分が、いたはうっすらむメヌゞできる。
     このむメヌゞを珟実にしたい。お䞖話になった人たちず、心からの笑顔を分かちあいたい。そしおなにより、矎咲に披露宎のマむクを委ねおくれる新郎新婊に、粟いっぱい、党力で尜くしたい。
     頷き返しおくれたのは、圚原だ。よし、ず声を匟たせたのはチカ。
    「矎咲ちゃん。あたし、いた確信した」
    「確信 なにをですか」
    「あなたなら、きっずできる」
     チカの力匷い笑顔に、感情が倧きく揺さぶられる。
     嬉しいのに泣きたくなる。泣きたくなるほど嬉しい。すごく嬉しい
     チカに感謝を䌝えるより早く、圚原が「同感」ず目を现める。
    「私もチカに賛同する。束乃さんなら倧䞈倫。だっおいた、目が茝いおるもの。オドオドした感じがどこにもない」
    「うん、だよね。初めおの打ち合わせに、こんなキラキラした衚情の叞䌚者が来たら、寿も嬉しいず思うよ」
     続けざたに耒められお、う  っず矎咲は声を詰たらせた。それを芋おチカがニダニダ笑う。「ムチ打たれるばっかりで、耒められ慣れおないもんね〜」ず。
    「だから束乃さんは、本番たでの二カ月間、自信を持っお自分に氎を䞎えなさい。貪欲に吞収しなさい。それが、新郎新婊の笑顔に繋がり、果おはあなたの笑顔にもなるから」
    「はい  っ」
     チカが矎咲の肩に手を眮き、優しく揉んでくれながら蚀う。「矎咲ちゃん、芚えおる」ず。
    「なにを  ですか」
    「最初に泉っちが蚀ったこず。倏にはデビュヌを目指せるず思う、っお宣蚀しおたでしょ そのずおりになったね」
    「あ  」
     目暙達成じゃん、ずチカにバシッず背䞭を叩かれ、ハッずした。
     そうだ、自分の目暙は、婚瀌叞䌚者になるこずだった。
     このグゞグゞした性栌を盎すこずでもなく、隠れおちっずも出おきおくれない自信ずやらを、半泣きで探し回るこずでもなく。
     目には芋えない幞せの圢を、その時間を、思い出を、䜜るお手䌝いがしたいのだず。
     それを自分の仕事に  生き甲斐にしおいきたいのだず。
    「サオリに感謝する必芁はたったくないけど、螏ん切りは぀いたよね」
    「螏ん切りっおいうより、勢いが぀いたずいう衚珟が的確じゃない」
     圚原先生には敵いたせん〜ず、チカがホヌルドアップした、そのずき。
     チカのパ゜コンが、ポンッず鳎った。新着メヌルだ。
     お仕事お仕事〜ず、いそいそずパ゜コンの前ぞ赎き、しばらくディスプレむを芗きこんでいたチカが、くるっず振り向き、サムアップした。
     その衚情は、どこかキリッず。そしおキラッず。チカの敏腕マネヌゞャヌ・スむッチが、カチッず入った瞬間だ。
    「矎咲ちゃん。䞃月䞃日本番の披露宎の打ち合わせ日、決定したよ。再来週の土曜だっお」
     ──────来たっ
     矎咲は反射的に立ちあがり、祈るように胞の前で䞡手を組んだ。
     芋れば圚原も腰を浮かせおいる。矎咲以䞊に緊匵した衚情に驚き぀぀も、嬉しくお笑っおしたった。
     なによ、ず圚原が目を吊り䞊げるから、たすたす笑み厩れおしたう。
    「心配しおくださっお、ありがずうございたす、圚原さん」
    「なによ、心配なんかしおないわよ。しおるずしたら、あなたじゃなくお、ご䞡家の心配だから」
    「えヌ、さっき倧䞈倫っお蚀っおくれたばかりじゃないですか」
     やっぱり今日はケンカの日か〜 ず、チカが呆れお苊笑する。
    「さお、どヌする 打ち合わせの返事をしたら、どう転んでも、もう倉曎はきかないよ この日の予定は」
    「予定はありたせん。倧䞈倫です」
     予定があっおも、こちらを取りたす ず続けたら、「よし」ず圚原が拳を固めた。それを芋おチカも倧きく頷く。
    「じゃあスピカのマネヌゞャヌずしお最終確認するね、矎咲ちゃん」
     コホンず咳払いし、チカが姿勢を正す。矎咲も背筋を䌞ばし、お腹の前で䞡手を重ねた。
    「再来週、六月十五日土曜日、十四時。井䞊・䞭村ご䞡家のりェディングパヌティヌ打ち合わせです。叞䌚、入りたすか 束乃矎咲さん」
     最終確認の声に、党身が震えた。
     尊敬する圚原泉先茩を芋あげれば、たるで優しく背を抌すように頷いおくれたから──だから。
     だから矎咲は自信を持っお、心から湧きあがる笑顔で応えた。
    「叞䌚、入りたす」


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     第話第䞀郚おわり第二郚公開時期は未定
     → https://note.com/jin_kizuki/n/n5fe9227c5e07 番倖線は、おばさん叞䌚者・犏田幞子



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