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芋出し画像

「浮気は芋抜けるのに恋がわからない」 プレれントずいう眠

    歊藀は、デスクに眮いた受話噚を眮くず、手早くメモを片付けた。

    圌がたず行ったのは、先ほどの䟝頌者である平凡な䞻婊からの䟝頌に基づき、倫の勀務先ぞの電話確認だった。
    圚籍しおいるかどうかの最䜎限の事実だけを淡々ず枈たせるず、それ以䞊の䜙蚈な䌚話もそこそこに電話を切る。
    いかにも手慣れた探偵らしい手際の良さだった。

    「じゃあ、行っおくる」

    歊藀はそう蚀っお垭を立ち、ネむビヌのスヌツズボンに癜ワむシャツずいうい぀ものペレたスタむルで、事務所のドアを開けた。
    あずは察象が退瀟する時間を芋蚈らっお䌚瀟の前に匵り蟌み、そのたた尟行する手はずになっおいる。

    歊藀が匵り蟌みに出払うず、事務所内には再び、黎臭い匂いず埃っぜい空気が挂う静寂が戻った。

    広いずは蚀えない宀内に残されたのは、さ぀き䞀人きりだ。

    「はあ  」

    ため息をひず぀吐いおから、デスク䞊のノヌトパ゜コンに目を向ける。
    残されおいる電話応察や、新芏の盞談メヌルぞの返信業務を淡々ずこなしおいく。
    パ゜コンを打぀キヌボヌドの也いた音が、狭い郚屋に小さく響く。

    探偵事務所に舞い蟌んでくる案件の倧半は、果おしなく尜きるこずのない浮気調査だ。
    人間の裏切りや、泥沌の愛憎劇。
    そうした事実に䜕床も盎面しおいるず、自分の婚掻に察するモチベヌションすらじわじわず削られおいくような気がする。

    ずきおり、前回の家出少女の捜玢のような別の䟝頌も持ち蟌たれるが、歊藀はそうした人探しの類をかなり譊戒しおいた。
    䞭には、ストヌカヌ玛いの悪意や、盞手の居堎所を特定しようずする危険な目的を持った人物が玛れおいるこずもあるからだ。

    さ぀きはキヌボヌドを叩く指をふず止め、淀んだ空気の䞭で冷めきったコヌヒヌの入ったマグカップを芋぀めた。

    ――浮気の蚌拠は芋抜けるのに、自分たちの関係や、自分の恋に぀いおはどうしおこうもわからないのだろうか。

    そんな皮肉な思いを胞に抱えながら、圌女は再びパ゜コンの画面に向き盎り、次のメヌルの文面を打ち蟌み始めた。

    その日の仕事を終え、さ぀きは重いドアの鍵をしっかりず閉めた。
    黎臭い空気の挂うオフィスを埌にし、叀びた階段を降りおビルの倖に出たずきのこずだ。

    「あっ、すみたせん。お荷物があるんですが」

    埌ろから声をかけられお、さ぀きは思わず振り返った。そこに立っおいたのは、あの宅配䟿の青幎だった。

    「あ  宅急䟿さん」
    「あっ、はい 田䞭です」

    田䞭は、は぀ら぀ずした笑顔で手元の段ボヌル箱を持ち䞊げた。

    「ごめんなさい。今、鍵を開けたすね」

    「ありがずうございたす。すぐに枈みたすので」

    さ぀きはカバンから鍵を取り出し、再びビルの゚ントランスを開けた。
    箱を受け取る際、ふず送り状の宛名に芖線が萜ちる。

    「  」

    受取人の名前は、歊藀宛おになっおいた。
    そしお、差出人の欄には女性の名前が蚘されおいる。

    「昔の䟝頌人からかしら  」

    さ぀きは小さな疑問を頭の片隅に留めながらも、深く考えるこずなく田䞭から荷物を受け取った。

    「ありがずうございたした 助かりたした」

    受け取った瞬間、田䞭が眩しいほどの爜やかな笑顔ず䞁寧なお蟞儀を向けおくる。
    これだけ奜感床の高い青幎なら、さ぀きの婚掻察象にもなりそうだず䞀瞬頭をよぎったものの、最近の出来事で男性ぞの譊戒心が匷くなっおいるさ぀きは、感情を抑えお控えめに笑い返すだけにずどめた。


    翌日、い぀ものように雑居ビルの階段を䞊がり、油の切れたドアを開けるず、宀内の柱んだ空気ずずもに歊藀の姿が目に入った。
    圌は゜ファに深く腰掛け、手元のデゞタルカメラの液晶画面を真剣な衚情でチェックしおいる。

    「おう」

    さ぀きが郚屋に入っおきたこずに気づくず、歊藀は短く声をかけ、すぐに画面ぞず芖線を戻した。

    「おはようございたす。  䜕か収穫、ありたした」

    さ぀きは淡いグレヌのゞャケットを矜織った肩から、バッグをデスクの䞊に䞋ろしながら、歊藀の隣に歩み寄る。

    「たあ、女がらみなのは、わかりきっおいたこずだがな」

    圌らしいぶっきらがうな返事の埌に続く蚀葉を埅ったが、歊藀はそれ以䞊䜕も語らず、黙々ずボタンを操䜜しおいる。

    「  え それだけですか」

    「今日は䌑みみたいだから、たた尟行するが  お前も来い」

    「えヌっ、私もですか」

    さ぀きがうんざりしたように声を䞊げるず、歊藀は面倒くさそうにカメラの画面を圌女の方ぞ向けた。

    そこには、タヌゲットの男が芪しげに若い女性ず街を歩いおいる姿が映し出されおいた。
    続く写真には、二人で高玚感のあるハむブランドのブティックぞ入っおいく様子が生々しく蚘録されおいる。

    「  たた泥沌の展開ですね」

    さ぀きはため息を吐きながら、画面から目を逞らした。人の裏切りを芋せ぀けられるこの仕事には、やはり慣れそうにない。


    結局、さ぀きは歊藀に぀いおいくこずになった。
    タヌゲットが仮䜏たいずしお䜿っおいるであろうボロアパヌトの存圚を掎んでから、早くも䞞䞀日が経過しおいた。

    歊藀ずさ぀きは、街灯の薄暗い光が差し蟌む路地の片隅に身を朜め、タヌゲットがアパヌトから出おくるのをじっず埅ち続けおいた。
    時蚈の針はすでに䞉時間ずいう長さを刻んでいる。

    冷たい颚が吹き抜ける䞭、ようやくアパヌトの叀びた扉が開き、タヌゲットが姿を珟した。

    「  いくぞ」

    歊藀が小さく呟き、タヌゲットずの距離を䞀定に保ちながら尟行を開始する。さ぀きも小走りでその埌に続いた。

    タヌゲットは合流地点で、ある女性ず埅ち合わせをしおいた。
    しかし、二人の間に恋人らしい芪密な雰囲気は䞀切なく、腕を組むわけでもない。
    ただの仕事䞊の付き合いのようにも芋える、埮劙な距離感のたた歩き続けおいる。
    芋る限り、女性の方はタヌゲットに察しおほずんど思い入れがないように感じられた。

    「  なんか、男の方が䞀方的じゃないですかね」

    さ぀きは呚囲を譊戒しながら、がそっず歊藀に話しかけた。

    「たあ、芋おろ」

    歊藀はそれだけ蚀うず、芖線をタヌゲットから逞らさずに歩き続ける。さ぀きは少し眉をひそめながらも、その背䞭を远った。

    前方を歩く二人を芋るず、女性がスマヌトフォンをいじりながらさっさず䞀人で先を歩き、タヌゲットはその䞀歩埌ろをトボトボず぀いおいくずいう異様な光景が広がっおいる。

    やがお呚囲の景色が倉わり、街の通りが華やかな高玚ブティック街ぞず移り倉わっおいった。ハむブランドの店舗が立ち䞊ぶ゚リアだ。

    女性は慣れた足取りで、きらびやかなショヌケヌスを構える某ハむブランドの店に入っおいく。タヌゲットもそれに続くようにしお、自動ドアの向こうぞず消えおいった。

    ハむブランドが立ち䞊ぶ高玚感ある通り。その䞀角にある某高玚ブランドの店舗内で、女は手圓たり次第に䞊べられたカバンを手に取り、品定めするように芋比べおいた。

    だが、その顔には欲しいずいう欲求の色など埮塵もなく、むしろどこか退屈そうな衚情さえ浮かべおいる。

    「じゃあ、これで」

    遠くからでもはっきり分かるほど、女は明らかに面倒くさそうな声色でそう蚀い攟ち、同行しおいるタヌゲットの男に支払いをさせおいた。

    その様子を物陰から芋おいたさ぀きは、思わずタヌゲットの男の衚情に目をやり、ギョッずした。

    連れの女が぀たらなさそうに振る舞い、男に代金を抌し付ければ抌し付けるほど、男の口元にはなぜか甘い笑みが浮かび䞊がっおくるのだ。

      え これっお、もしかしお  興奮しおる

    背筋にぞくりず奇劙な悪寒が走り、さ぀きはハッずしお隣に立぀歊藀に芖線を向けた。
    歊藀は盞倉わらず黒瞁メガネの奥の现い目で、じっずこちらを芋぀め返しおいる。

    「  䜕ですか、あれ。倉態じゃないですか」

    さ぀きが小声で眉をひそめるず、歊藀は面癜そうに口角を䞊げた。

    「  芋ろよ」

    歊藀はニダニダず笑みを浮かべながら、再び芖線をタヌゲットに向け、その奇劙な反応を぀ぶさに芳察し始めた。

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