
🐻『虹色のペンと、もふもふの約束』
窓の外で雨がシトシトと鳴る午後は、
リリにとって一番心細い時間でした。
階下からは、
お父さんとお母さんの刺々しい声が聞こえてきます。

かつては家中に溢れていた温かな笑い声は、
いつの間にか冷たい風のような
「けんか」に取って代わられてしまいました。
「……だいじょうぶ。ポポがいるもんね」
リリは、自分と同じくらいの大きさがある、
茶色の大きなクマのぬいぐるみ「ポポ」の腕の中に潜り込みました。
ポポはいつだって、陽だまりのような安心感と、
少しだけ古びた紅茶のような優しい匂いがします。

リリの唯一の楽しみは、
ポポの隣で**絵日記**を描くことでした。
真っ白なページに、
お花や、星空や、
大好きだった頃の家族の笑顔を描き込みます。
けれど最近、その日記の最後には、
必ず「神様へのお願いごと」が綴られるようになっていました。

「かみさま、おねがいです。
おとうさんとおかあさんが、
またなかよしになりますように💗」
ポポの耳元でその願いをそっと囁いて、

リリはポポのふかふかのお腹に顔を埋めて
眠りにつくのが日課でした。

🌈ページの中に咲いた、不思議な贈り物
ある日のことです。
激しい雨が上がり、
雲の間からうっすらと夕焼けが見え始めた頃でした。
リリはいつものように、
ポポの膝を机代わりにして日記帳を開きました。
「今日は、何を書こうかな……」 パラリ、
とページをめくったリリの手が、
ぴたっと止まりました。
まだ何も書いていないはずの真っ白なページに、
見慣れない、
けれど丸っこくて温かい文字が並んでいたのです。

**「だいじょうぶ。もう、なかないで。ぼくが、きみを守るから」**
その文字の横には、
小さな、小さな**クマのマーク**が、
クレヨンでちょこんと描かれていました。
「えっ……?」
リリは目をこすりましたが、文字は消えません。
お父さんやお母さんの字ではありません。
もっとずっと、
お日さまのようなポカポカしたエネルギーを感じる文字。
リリは隣に座っているポポを見上げました。
ポポはいつも通りのつぶらな瞳で、
じっとリリを見守っています。
けれど、そのボタンの瞳が、
ほんの少しだけ悪戯っぽくキラリと輝いたような気がしました。
「ポポ……あなたが書いてくれたの?」 ポポは答えません。
でも、その手足には、
どこか誇らしげな温もりが宿っていました。

🌈ひとりじゃないよ
リリの胸の中に、
冷たく溜まっていた不安が、
春の雪解けのようにスルスルと溶けていきました。
たとえ階下で嵐が吹き荒れていても、
この日記帳の中には、
そしてこの腕の中には、
自分を絶対に守ってくれる「騎士様」がいる。
「ありがとう、ポポ。だいすきだよ」
リリは、自分を励ましてくれたそのページをそっと撫でると、
今までで一番強い力でポポを抱きしめました。
ポポの体温がリリに伝わり、
リリの勇気がポポに伝わります。

その夜、
リリが描いた日記には、
虹色の大きな傘の下で、
女の子と大きなクマが手を繋いで笑っている絵が描かれていました。
物語はまだ始まったばかり。
けれど、もうリリは震えていません。
だって、ポポがついているのですから。。。。💝

💗柊紅葉💗

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