
💗「私が生きる理由」💗
カーテンの隙間から差し込む朝陽が、生まれたばかりの娘の、
透き通るような頬を照らしている。
まだ名前さえ決まっていないその小さな命は、
私の胸の上で、まるで世界中の宝物を守るように拳を固く握りしめていた。
ミルクの甘い匂いと、日向の匂いが混じったような、か細い吐息。
指先に触れると、驚くほど柔らかい皮膚が吸い付いてくる。
(ああ、この子は私を選んで来てくれたんだ)
そう思った瞬間、視界が滲んだ。
母親になるという「覚悟」は、鋼のように自分を強くすると思っていた。
けれど、実際には逆だった。
この子のまつ毛の揺れ一つ、指先の震え一つに、私の心はどこまでも脆く、柔らかく解かされていく。
「……ねぇ、あなたが大人になって、お婆ちゃんになるまで、私はそばにいたいよ」
独り言のように漏れた願いは、静かな病室に溶けていった。
世の中には「子供は親の背中を見て育つ」という言葉がある。
けれど、私はこの子の「前」を歩きたいわけではない。
この子の「後ろ」から見守るだけでも足りない。
できることなら、この子が人生で流すはずの涙をすべて私が受け止め、
この子が踏むはずの棘をすべて私が取り除きたい。
しかし、「そんなことは不可能だよ。」
いつか私はこの子を遺して、一人で旅立たなければならない日が来る。
それが自然の摂理であり、残酷な約束だ。
ふと、眠っていた娘が「ふにゃっ」と声を漏らし、薄く目を開けた。
まだ焦点の合わない、澄んだ瞳。
その瞳の奥に、私は見たこともない未来の景色を見た。
この子が恋をして、傷ついて、何かを成し遂げて、そして私と同じように
誰かを愛する日が来ることを。
その長い旅路の終着点で、この子が最後の一息をつくとき。
私は、枯れ枝のような手でいいから、この子の手を握っていたい。
「怖くないよ。ほら、お母さんがここにいるから」
そう言って、この子の長い人生を肯定してあげたい。
あなたが生まれてから死ぬまで、一秒たりとも愛されなかった瞬間なんて
なかったんだよ、と。
それが、私が命をかけてやり遂げたい唯一の「仕事」だった。
「……よし、頑張ろうね」
私は、まだ力のない小さな指に、自分の小指を絡めた。
不安は消えない。
死への恐怖もゼロにはならない。
けれど、この子の温もりがある限り、私は何度でも強くあろうと思える。
窓の外では、季節がゆっくりと巡り始めていた。
いつか私が星になっても、この子の歩む道が、私の愛という光で
満たされ続けますように。
私は深く息を吸い込み、腕の中にある「この子の未来」を、
壊れないように、けれど確かな力で抱きしめた。
💖柊紅葉💖

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💖柊紅葉です💖
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