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【蚀語孊を勉匷しよう②】きょうは Arrernte 語の音節構造に぀いお勉匷しよう

    明確な時系列はありたせんが、前回はこちらhttps://note.com/j9a/n/n658fe4876f1a

    カむ面癜い論文持っおきたよ。Arrernte っおいう、オヌストラリアのアランダず呌ばれる人たちに話されおいる蚀語なんだけど、音節構造が倉わっおお、オンセットがないんだっお。

    Breen, G. & Pensalfini, R. (1999). Arrernte:A Language with No Syllable Onsets. Linguistic Inquiry, Vol. 30, No. 1, pp. 1-25.

    ナミオンセットがないっお、たさか子音がないっおこずじゃないよね

    カむ子音はあるけど、それは党郚コヌダっおこずになっおるらしい。

    アミ分析の問題じゃないの

    ナミ確かに、䞀般に VCV ずいう列がある堎合、この C をオンセットずみなすか、コヌダずみなすかは、分析の問題。V.CV ず VC.V はどちらも同じ物理的音声に察応しうるから、分析者の恣意が入るこずは避けられない。

    カむ子音をオンセットずみなしおもコヌダずみなしおも良い堎合は、オンセットずするのが䞀般的。もしこの慣䟋に埓っおいるなら、ある蚀語における VCV ずいう列を VC.V ず分析するなら、V.CV ず分析するずなんらかの制玄に違反するず䞻匵しおいるこずになる。

    💡補足1
    音韻論では、文の䞭に珟れる音の列を音節ずいう単䜍にたずめお分析するこずが倚い。蚀語ごずに異なる音節のルヌルが存圚するずされ、「この蚀語ではこういう発音が可胜」あるいは「䞍可胜」ずいったルヌルの䞀郚は、その蚀語においおどのような圢の音節が可胜かずいう圢で蚘述される。
    音節は䞀般に「オンセット」「音節栞」「コヌダ」ずいった郚分からなり、音節栞倚くの堎合は母音を䞭心ずしお、その前にオンセット倚くは子音がある堎合や、埌ろにコヌダ倚くは子音がある堎合がある。音節の圢状はよく C ず V ずいう蚘号を䜿っお衚される。V が音節栞を衚し、もし C が V の前にあればそれはオンセットであり、埌ろにあればそれはコヌダである。音節の境界はピリオドで衚珟されるこずがある。「VCVのCがオンセットか、コヌダか」ずいう問題は、「VCV の C の前埌どちらにピリオドを打぀か」ずいう圢で蚀い換えるこずができる。
    子音はコヌダよりは優先的にオンセットず考えられるこずが倚い。そうするこずで正しい音節構造を掚定できるずいう経隓則ずしお述べられるこずがある。文献によりニュアンスが異なるが、この原則は Maximal Onset Principle ず呌ばれる。
    Introductory Phonology (Hayes 2009) では次の通り。
    “This heuristic, the Maximal Onset Principle, states that we can often predict the syllabification of intervocalic clusters by observing the set of consonant clusters that may begin a word [
]” (§13.3) (原文では、"Maximal Onset Principle" は倪字、"the set of" 以降のここで倪字で瀺した箇所は倪字ではなく斜䜓ずなっおいる。)
    note 筆者による和蚳: 「Maximal Onset Principleず呌ばれるこの経隓則は、母音に挟たれた子音連続の音節化は、語頭に珟れるこずができる子音連続の集合を芳察するこずにより予枬できるずする [
]」

    アミっおいうか、単なる分析の慣䟋ずかじゃなくお、実際に類型論䞊の䞻匵があるんだよね。オンセットがない蚀語はないっお。

    カむうん。B&P がタヌゲットにしおるのもたさにそれで、匕甚文献の䞭にも、音節の圢ずしお V や VC がない蚀語はあっおも、CV がない蚀語はないずはっきり䞻匵しおるものがある。このJakobson (1962)も、この手の䞻匵の䟋ずしお匕甚されおる。

    "There are languages lacking syllables with initial vowels
    and/or syllables with final consonants, but there are no languages devoid
    of syllables with initial consonants or of syllables with final vowels."
    note 筆者蚳: 母音から始たる音節や子音で終わる音節を欠く蚀語はあるが、子音で始たる音節あるいは母音で終わる音節を欠く蚀語はない。

    Jakobson, R. (1962). Selected Writings I: Phonological Studies. MOUTON & CO• 'S-GRAVENHAGE. p. 526.

    ナミ「CV音節がない蚀語はない」ずいう䞻匵がタヌゲット、っおこずは、Arrernte には CV音節がないっおこず

    カむそこがちょっず耇雑で、実は Arrernte には単独で発音したずきに子音から始たる単語が玄25%あるずされおる (p. 2)。B&Pの䞻匵は、これらの単語は基底ではシュワヌから始たっおいお、衚局では条件によっおそのシュワヌが削陀される、ずいうもの。

    ナミうヌん、たしかに、シュワヌは通蚀語的に、削陀や挿入の察象になるこずが倚いけど、Arrernte の堎合、子音で始たる単語があるなら、わざわざ基底にシュワヌを眮かなくおもいいような気がするけど。

    💡補足2
    囜際音声蚘号の公匏チャヌト (https://www.internationalphoneticassociation.org/IPAcharts/common_files/pdfs/pdfs_IPA_charts_E/IPA_Kiel.pdf) では、ə ずいう蚘号が母音図の䞭倮に配眮されおいる。この蚘号およびこの蚘号で衚される母音はシュワヌ英 shcwaず呌ばれる。母音図は母音の音色等ず蚘号の察応関係を瀺す。この定矩に埓えば、他の母音の蚘号ず同様、シュワヌも特定の音䟡を衚す蚘号に過ぎないこずになる。
    実際には、「シュワヌ」ずいう甚語および蚘号 ə には「䜕らかの意味で匱い」ずか「䜕らかの意味で䞍安定な」母音であるずいう含意が䌎うこずが倚い。たた、ある蚀語におけるシュワヌず呌ばれる特定の母音が必ず ə ずいう蚘号で曞かれるずは限らない。本蚘事においおも、元の論文に埓い、「シュワヌ」は蚘号 e で衚し、具䜓的な音䟡よりも、音韻的な分垃条件や他の母音や子音ずの関係に泚目しお䜿われおいる。

    カむArrernte は単語同士の境界に母音が入るんだけど、単語が連続するずき、埌ろの単語の最初の音が母音じゃない堎合、シュワヌが足されるらしい。B&Pは、このシュワヌを2個目の単語にある基底にある語頭のシュワヌだずみなしおる (p. 2)。

    ナミそういうこずなら、「子音で始たる単語」より「語頭にシュワヌが出没する単語」っおいう方がフェアな蚀い方っおこずになるし、削陀分析ず挿入分析が察等に成り立぀っおこずにはなりそう。

    アミ削陀だず、シュワヌから始たる単語がない (pp. 3, 4) こずを同時に説明できるから、削陀の方が有利だず思う。1

    ナミあ、そっか。条件によっおシュワヌが語頭にあったりなかったりする蚀語で「こういう条件でシュワヌが語頭に挿入されたす」っおいうだけだず、初めから語頭にシュワヌがある単語があったら、そのシュワヌは「ない」はずの条件でも語頭に珟れるこずになっちゃう。

    カむ本文でもそのこずは觊れられおる。基底においお語頭に /e/ を仮定しないず、/e/ の消倱を語頭の /e/ に察する制玄に垰さなければならなくなる (p. 11) っお。

    💡補足3
    原文によるず、Arrernte 語の単語は単独では語頭にシュワヌは珟れないずされるが、単語同士の境界にはシュワヌが珟れる。この事実を説明する方策ずしおは、倧きく a) シュワヌの削陀ず b) シュワヌの挿入が考えられる。a は、すべおの単語が母音で始たるず仮定し、埓っお単独で発話した際に子音から始たるように芋える単語は基底では≒ 音韻論が扱う語圢の初期倀ではシュワヌから始たっおおり、単独発話の際にはそのシュワヌが削陀される芏則が存圚する、ず考える。これに察し b では、䞀郚の単語が基底でも子音から始たるず考え、単語同士の境界に挟たるシュワヌは隣り合う単語のどちらのものでもなく、条件的に単語の境界にシュワヌが挿入される芏則が存圚する、ず考える。a ず b は䞀芋察称的だが、b では、「語頭にシュワヌが珟れない」ずいうこずをさらに別の芏則で述べる必芁が生じる䞀方、a ではそのような芏則を远加する必芁はない。この非察称性は、a では単語の圢を「子音は語頭に珟れない」ずいうように䞀般的な圢で述べるこずができ、これが音節構造を統䞀的に VC(C) であるずする䞻匵の䞭に含たれるのに察し、b は音節構造に関しおVから始たる音節を蚱した䞊で、「母音の䞭でシュワヌだけは語頭に珟れない」ずいう、特定の母音のための特別の芏定をおいおいるこずによる。

    アミ他にはどんな根拠が䞊がっおる

    カむRabbit Talk っおいう蚀葉遊びの䟋ずか、ストレスの䜍眮ずか、あず動詞の語圢倉化に関する話があるよ。

    アミ蚀葉遊びは文法性関係ないのに。

    💡補足4
    生成蚀語孊では、ある特定の蚀語を蚘述するずき、その目的の䞀぀はその蚀語における「文法的な」文ずそうでないものを区別するこずにあるずされる。実際の文献では、日本語のしりずりのような蚀語衚珟を䜿った遊びのルヌル自䜓が音韻論によっお説明されたり、そのルヌルが特定の理論や分析を支持する蚌拠ずしお取り䞊げられるこずがある。B&PのRabbit Talkを題材にした議論もその䞀䟋であるず蚀える。蚀葉遊びのルヌルはその蚀語における文法性に぀いお述べたものではない。しりずりでルヌルに違反するこずは、非文を産出するこずではない。これは屈折などにおいお接蟞の圢態の遞択を誀るず非文が産出されるこずず察照的である。文法は蚀語䜿甚のあらゆる偎面を説明しようずするものではないため、実際の蚀語䜿甚から蚌拠を採甚する際は、その蚀語䜿甚が本圓に文法性に関する蚌拠になるかどうかに泚意する必芁がある。

    ナミ䞀応芋おみようよ。カむ、Rabbit Talk から解説お願い。

    カむ了解。Rabbit Talk は、単語の䞀郚を取り出しお、それを単語の埌ろに移動させる遊びらしい。語䟋は pp. 7-8 にたくさんあるけど、ずりあえず3぀だけ挙げる。

    (8) Arrernte word Rabbit talk form
    [
]
    c. ekʷeṇet’ek → eṇet’ekekʷ ‘to put in’
    d. itirem → iremit ‘thinking’
    e. araŋkʷ → aŋkʷar ‘no’
    [
]

    (原文のむタリック䜓を倪字で瀺した。)
    B&P (1999), pp. 7-8.  

    ナミ確かに文字の順番が入れ替わっおるみたいだけど、どこからどこたでが移動するのかな。

    アミ最初の音節が埌ろに行くんだね。

    カむアミ正解。あくたでB&Pの分析だけど、たずえば c の ekÊ·ent’ek は、最初の ekÊ· っおいう VC 構造がそのたた埌ろに移動しおくっ぀いおる。d ず e もそれぞれ it, ar っおいう VC 構造が移動しおる。

    ナミもし Arrernte の基本の音節構造が (C)V だったら、c, d, e の最初の音節はどれも母音だけになるはずだよね。でも実際は、どの単語でも母音の埌ろの子音たで䞀緒に移動しおる。VC 仮説だず、この移動が「音節の移動」っおこずでスッキリ説明できるっおこずだね。じゃあ、次はストレスを芋おみよう。

    カむArrernte では、ストレスは2個めの母音に来る堎合ず、1個めの母音に来る堎合があっお、これはその単語が子音で始たるかどうかで決たる。子音で始たる単語だず、1個めにストレスが䞎えられお、そうじゃない堎合は2個め。で、これは「最初の子音に埌続する母音にストレスが䞎えられる」ずいう圢で䞀般化できる。でも、B&Pはここからさらに、子音で始たる単語は基底ではシュワヌから始たっおいるず考えれば、「ストレスは2音節めに䞎えられる」ずいうよりシンプルな䞀般化ができる、ず進めおる。デヌタは3ペヌゞから。

    (2) a. ikʷén’t’
     ‘policeman’
    b. atʷérem
     ‘is fighting’
    c. Néṇirem
     ‘are standing’
    d. mpʷáṛem
     ‘is making/doing’

    é などのアキュヌトアクセントがストレスの䜍眮を瀺す。
    B&P (1999), p. 3.

    ナミこれはわかりやすいね。母音で始たっおる a, b では、ストレスは確かに2個めの母音に䞎えられおる。c, d は子音で始たっおお、ストレスは最初の母音に぀いおる。もしArrernteの音節構造が党郚VC(C)で、子音で始たる単語は基底ではシュワヌではじたっおるなら、このデヌタは党郚、「2音節めにストレスがある」っおこずになる。じゃあ、最埌、動詞の語圢倉化お願い。

    カむArrernte の動詞は数の区別があっお、耇数を瀺す圢態玠ずしお /ewar/~/erir/ がある。で、この /ewar/ ず /erir/ の亀代芏則に、音節数が関わっおる。母音で始たる単語なら、語幹が2音節の時は /ewar/, 1音節の時は /erir/ が珟れる。問題は子音で始たる単語で、この堎合、語幹に母音が1個しか出おこなくおも、2音節語幹ず同じように、/ewar/ を取る。デヌタは 3-4 ペヌゞ。

    (3) a. inŋel̪ + PL₁ → inŋel̪-ewar
     ‘be like’
    b. aṛ + PL₁ → arṛ-erir
     ‘watch’
    c. aŋk + PL₁ → aŋk-erir
     ‘talk’
    d. mpʷaṛ + PL₁  →mpʷaṛ-ewar
     ‘make’
    e. taŋk + PL₁ → taŋk-ewar
     ‘be pleased’

    B&P (1999), pp. 3-4.

    ナミa は2音節で、/ewar/, b, c は1音節で、/erir/ が぀いおる。d, e は子音から始たっおお、2音節の a ず同じ /ewar/ が぀いおる。

    アミ基底のシュワヌも含めお数えれば、音節数だけで耇数接蟞の圢が決たるっおこずだね。

    カむうん。B&Pは、接蟞が付加される時にこれらの語幹が母音から始たっおいるこずを瀺唆する、ず曞いおる。2

    ナミここたで蚌拠が揃っおるず、Arrernte の音節構造はVC(C)だっおいうB&Pの䞻匵には説埗力を感じる。

    アミ私はあんた玍埗しないかも。

    カむ実はこの論文には、反論もいく぀か出おるんだ。次回はそれを読んでみるのも面癜いかも。

    アミ反論は読みたい。でも、ずりあえずさ、Jakobson が「CVはすべおの蚀語にある」っおいった時、圌は衚局の音節に぀いお述べおたんじゃないかず思う。

    💡補足5
    B&PのVC仮説は「基底では Arrernte はすべおの単語が母音で始たる」ずいう䞻匵に䟝存しおいる。接蟞の付加に関しおも、「接蟞が付加されるレベルにおいお」ずいう蚀い方をしおおり、衚局音韻論が扱う圢匏のうち、耳に聞こえる圢に近い衚珟圢匏をこのようにいうず基底ずその間にある段階を明瀺的に区別しおいる。䞀方、1962幎のJakobsonがCV音節の普遍性を䞻匵しおいる文脈は必ずしもこのような「初期状態があり、䜕らかのルヌルに埓っお圢匏が曎新あるいは遞択され、最終的に発音が埗られる」ずいうSPE以降の音韻論に基づいた文脈ではない。SPE (The Soune Pattern of English) は1968幎のチョムスキヌずハレによる著䜜で、「芏則に埓っお衚局圢を導出する」珟代の音韻論生成音韻論の基瀎ずなっおいる。Arrernteの堎合、単語を単独で発音する堎合は子音から始たるものが倚くあるB&Pによれば玄25%ため、Jakobsonの基準では「CV音節がある蚀語」ずされる可胜性は吊定しがたいように思う。過去の䞻匵に反論する際は、原䞻匵の内容を明確にする必芁がある。

    ぀づくかも

    1. "There are no words written with an initial e." (p. 3). "Phrase-initially, /e/ never surfaces, except when it is rounded ([u]; see below)." (p. 4). Arrernte の正曞法における ‹e› およびB&Pの /e/ はシュワヌに察応する。

    2. "This suggests that, at the level at which these morphemes are combined with the stem, these stems all begin with a vocalic nucleus." (p. 4)

    #創䜜倧賞2026
    #オヌルカテゎリ郚門



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