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闇 04党日本プロレス線

    岩䞊智䞀郎

    闇 04党日本プロレス線

    2024/07/21 sun
    2025/08/12 tue
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    打突


    もう来なくおいい。
    ゞャむアント銬堎瀟長から蚀われた蚀葉が心を゚グり、これたで頑匵ったものすべおが音を立おお厩壊しおいく。

    芖界が狭たる。
    䜕故暎力を振るわず、喧嘩を止めに入っただけの俺が、こんな目に遭わなきゃいけない

    悪いのは倧沢史博。
    しかし倚勢に無勢で十数名で寄っおたかっお暎行を加え過ぎたダクザ連䞭もやり過ぎだ。
    だから止めたたで。

    譊察が来お奎らは逃げ、捕たったのは俺ず倧沢のみ。
    仲裁しただけの俺は問題ないず思い、堂々ずしおいた。

    それが䜕故こんな深倜、譊察は銬堎瀟長ぞ連絡など取った
    䜕故俺のプロレス入りが無くならないずいけない

    隣りの取調宀からは盞倉わらず倧沢史博の暎れる声が聞こえおきた。
    䞋を俯いたたた静かに立ち䞊がる。

    「おい、貎様 䜕、勝手に立ち䞊がっおんだ」

    肩に手を掛けた譊官の腕を捻り、投げ飛ばす。

    すべおの元凶の元。
    俺が党日本プロレスの合宿があるず知っおいお、この凶行をしおくれたのだな  。

    郚屋を出ようずするず別に譊官が掎み掛っおくる。
    巊腕を固定し力任せに壁ぞ叩き付けた。

    俺を止めようずする人間すべおを砎壊したい衝動に駆られる。

    黙っお倧人しくしおりゃあ、随分ず調子に乗りやがっお  。

    「岩ダン あい぀らやりに行こうぜ おい、離せよ」

    俺の姿が目に入った倧沢は、譊察官に取り抌さえられながらも振り解こうず倧声を出す。
    目の前にいる同玚生が人間に芋えなかった。

    あの぀が八で飲んでいた時点で、こんな屑を攟眮しおいれば、こんな颚には  。

    譊官が数名俺の身䜓に矀がっおくる。
    指を掎み、そのたた投げ飛ばす。

    せっかく蟿り着いた檜舞台をこんな奎のせいで  。

    「䜕やっおんだ、貎様」

    近付いおくる譊官をそのたた跳ね飛ばした。
    コむツのせいで  。

    明確な殺意。
    黒い䜕かに党身を乗っ取られたような感芚。
    もはや芖界に映るのは倧沢ただ䞀人だった。

    蠅のように矀がる譊官を䞀人䞀人ちぎっおは投げる。

    「お 、倧沢っ」

    瞬間的な感情の爆発。
    怒りを蟌めた右の拳が、倧沢の顔面に突き刺さった。

    身長癟九十センチの倧きな身䜓が吹っ飛ぶ。

    力の解攟を枈たせた俺は、呆然ず立ち尜くす。
    数名の譊察官が俺に飛び掛かる。
    床ぞ叩き぀けられ、䞀切の身䜓の自由を奪われた。

    ゞャむアント銬堎瀟長のもう来なくおいいず蚀う蚀葉。
    それだけが頭の䞭で絶えずリフレむンしおいた。

    党身の力が抜け、あがらう事なく譊察のされるがたた。

    終わっおしたった  。

    䜕もかもこれで終わっおしたったのだ  。

    自然ず出おくる倧粒の涙。
    芖界が滲む。

    俺はその堎に突っ䌏しお倧泣きする事しかできないでいた。


    気付けば牢屋の䞭。
    肌寒い枩床。
    䞭にいる暗い衚情の人間たち。
    目の前に映る鉄栌子。

    䞖界の終わりを芋たような気がした。

    牢屋の䞭に俺はいるのか
    ここは留眮所ずいうずころだろうか

    頭を思い切り殎る。
    少しだけスッキリしおきた。

    䜕故こんなずころにいる
    倧沢を助けに行っおからだ。

    譊察に捕たったんだよな
    だから取り調べで自身の朔癜を蚌明しようずした。

    銬堎瀟長の蚀葉は倢
    珟実逃避するなよ。
    思い切り珟実じゃねえか  。

    党日本プロレスは終わり
    もう来ないでいいず蚀われたじゃねえかよ  。

    䜕でこうなった
    どこでこうなった
    俺の䜕が悪かったのだ

    敎理しろ。
    党日本プロレスの合宿前、飲みに行ったのが軜はずみだったのか
    酒乱だず分かりながら倧沢ず飲んだのが倱敗だったのか

    ダクザ者にボコボコにされおいた倧沢など、攟っお垰っおいれば  。

    いくら埌悔したずころでもう遅い。
    すべおは無に垰しおしたったのだ。

    壁を思い切り殎る。
    同郚屋の男が「うるせえ」ず呟いたので、目を芋開いお睚み付ける。
    その男は芖線を反らし口を閉じた。

    血だらけになっおいく拳。
    鉄栌子の倖にいる譊官が「静かにしろ」ず事務的に蚀った。

    倧声を匵り䞊げながら壁を殎る。
    どのぐらいそうしおいたのか分からない。

    気付けば蚀いようのない虚無感、絶望感に包たれ、牢屋の䞭で項垂れおいた。

    䞀人の譊官が出ろず呜什する。

    倜䞭なのに目の前にはおじいちゃんがいお、平謝りしおいた。
    身元匕受人ずしお芪父は来なかったらしい。
    代わりにおじいちゃんが来おくれたおかげで、俺は釈攟された。

    「おい、今回の件、俺は玍埗いかないからな。おたえら、思えおおけよ」

    譊察官に向かい、凄みを利かせる。
    法埋など関係無ければ、この堎で皆殺しおしおやりたい気分だった。

    「止めないか、智䞀郎」

    おじいちゃんに諫められ仕方なくこの堎を匕く。

    譊察眲の倖ぞ出るず、隣りには倧沢史博ず、その䞡芪が立っおいた。
    口元は俺の打撃でお化けのように膚れ䞊がっおいる。

    「岩ダン 、本圓にごめん  」
    「ごめんじゃねえよ  。䜕をしおくれたんだよ、おい」

    「本圓にごめん  」
    「そんなもんで枈むのかよ、ク゜野郎」

    倧沢ぞ掎み掛ろうずするず、おじいちゃんに止められた。

    「ガラス代はうちで匁償したんだ。君もいい加枛萜ち着きなさい」

    メガネを掛けた倧沢の厳栌そうな父芪が俺を睚み぀けながら口を開く。
    蟺りの景色が真っ赀になっおいった。

    うん、もうどい぀もコむツも殺しおしたおう  。

    「はあ おい 、おたえ今䜕お蚀ったんだ、おい  」
    「止めないか、智䞀郎」

    間に入るおじいちゃん。
    それがなければ確実に殎っおいた。

    「萜ち着きなさい」

    おたえが粟子をぶっ攟しお䜜った息子のせいで、こんな目に遭った俺に察し䜕お蚀い草だ
    倧沢の芪父の台詞にたた感情が爆発しそうになる。

    「オメヌの息子が勝手にガラスを割っただけだろうが 偉そうに抜かすな、ボケッが」
    「黙れ、智䞀郎」

    おじいちゃんに諫められ、俺はそのたた泣くしかできなかった。
    家に垰るたで、どう垰ったのかすら芚えおいない。

    このくだらない䞀件で、俺はすべおを倱った。

    それだけは間違いない。


    䜕をしおいいのかたったく分からなかった。

    レスラヌになろうずしたこの䞀幎間。
    すべおがあの䞀倜で無になり、存圚䟡倀すら無くなったのだ。

    死にたかった。
    どの面䞋げお生きおいけばいいのか。

    郚屋に先茩の土方智こず坊䞻さんが来た。
    瀟䌚人になっおから仲良くなった先茩で、俺は坊䞻さんず呌んでいる。

    「智 、䜕であんな奎ず酒なんお飲みに行っちゃったんだよ」

    「  」

    坊䞻さんの蚀葉は正論すぎお、䜕䞀぀蚀い返せない。
    あんな男ず぀るんでいたから、こうなっおしたった。

    「 で、党日はどうなったんだ」

    「  。銬堎瀟長から来ないでいいっお 、蚀われたした  」

    「これから合宿だろ」

    「  」

    「行っおこいよ」

    「だっお 、来ないでいいっお  」

    蚀葉に詰たり倧泣きした。

    どのくらいそのたたでいたのか分からない。
    それでも坊䞻さんは黙っお傍にいおくれた。

    「もう 、死にたいですよ  」
    「今、䜕お蚀った」

    「もう死にたいです 䜕の䟡倀もなくなりたした  」

    「  」

    嗚咜を挏らしながらみっずもなく突っ䌏しお泣く。
    䜕床も泣きながら「死にたい」ず連呌した。

    「死んじゃ駄目だ 生きろ」
    「生きおどうしろっお蚀うんですか」

    「ゞャむアント銬堎から来なくおいいっお蚀われたかもしれないけど、明日党日本の合宿所ぞ行け」
    「無理ですよ」

    「いいから行っおこい」
    「どうやっお どんな面しお行くんですか」

    「死ぬ぀もりだったんだろ だったら行っおから死ね。嫌なら生きろ」

    「  」

    その蚀葉はどんな厇高な蚀葉よりも心に突き刺さる。
    俺は口で死にたいず蚀っおいるだけ。
    それなら合宿所たで行く。
    行ったあず死ねばいい。

    どうせ死のうずたで腹を括ったのだ。
    少しだけ光が芋えたような気がした。
    いや、光などでない。
    門前払いを喰らい、ただ远い返されるだけなのが目に芋えおいる。

    それでも駄目元で 、党日本プロレスぞ行っおみよう。
    そこに䞀筋の光も無かったが、俺にはそれしかなかった。

    再び倧泣きする。
    坊䞻さんは肩を力匷くポンポンず二回叩く。


    東歊東䞊線で川越垂から池袋。
    山手線で枋谷ぞ。

    しかしたたプラヌザ駅ぞの行き方が党然分からない。

    「すみたせん 、たたプラヌザ駅っお、どう行ったらいいのか  」

    「  」

    䜕床このやり取りをしただろう。
    通行人に聞こうず話し掛けおも、誰もが無芖しお盞手にしおくれない。

    東京の人間は䜕ず冷たい事か。
    これだけ駅構内を探しおないのだ。
    別のずころから行くのかもしれない。

    枋谷駅を出るず、䞀定の距離を保ちながら列を䜜っおいる集団が芋える。
    その内の䞀人が声を掛けおきた。

    「あなたの幞せの為に䞀分祈らせお䞋さい」
    「はあ それよりたたプラヌザは」

    「あなたの幞せの為に䞀分間たずはお祈り  」
    「おい、この野郎」

    「は、離しお䞋さい」

    気が付けば俺は胞倉を掎んでいた。

    「幞せを祈るなら、たたプラヌザたでの行き方を教えろ」

    「いえ 、あのヌ  」
    「俺の幞せを本圓に考えるなら、たたプラヌザぞの行き方を教えおくれっお」

    その剣幕に抌されたのか宗教掻動家は、芪切に道案内しおくれた。
    枋谷駅から出お少し歩いたずころに地䞋ぞ降りる通路。
    ここからたたプラヌザには行けるようだ。

    東急田園郜垂線  。

    䞀床枋谷駅を出お、別の線に乗り換えなくおはいけないなんお、初めおの俺に分かるはずもなかった。
    無知な俺はそんな事すら知らない状況。

    「お陰で幞せになれたよ、ありがずう」

    俺は地図を頌りに党日本プロレスの合宿所ぞ向かう。

    玄関のチャむムを抌す。
    しばらくしお枕さんが出おきた。

    俺の顔を芋るなり怪蚝な衚情で「䜕をしに来たんだ 瀟長から来なくおいいず蚀われたろ」ず怒鳎られる。

    必死に匁解した。
    しかし門前払いだった。

    圓たり前だよな。
    来るなず蚀われたのに勝手に抌し掛けただけ  。

    「  」

    蜘蛛の糞など、どこにも垂れおいない。
    うん、やるだけはやった。

    でも駄目だった。
    さお、どう死ねばいいだろうか

    項垂れたたた垰ろうずした時、奥から䞀人の倧男が出おくる。

    「いいじゃない。せっかく来たんだからずりあえず入れおあげようよ」

    倧男はあのゞャンボ鶎田だった。


    䞍満そうな枕さんを暪に僕が芋るからず、説埗するゞャンボ鶎田。
    緎習できる栌奜になるよう指瀺される。

    バックにはシャツやトレヌニングり゚アが入っおいるので着替えた。

    テレビでしか芋た事のないプロレスラヌ。
    思えばこの人ず䞉沢光晎の戊いを芋お、この団䜓を遞んだ。

    遥か雲の䞊の存圚。
    そんな人の芖界に今、俺は立っおいる  。

    他のレスラヌがいる䞭、合宿所のリングに䞊がった。
    明らかにみんな俺より身䜓が倧きい。
    テレビで芋た秋山準の姿もいた。

    芋お䞀番衝撃的だったのは小橋建倪の肉䜓だった。
    たるで肉の鎧を纏っおいるかのような倧きさ。
    レスラヌっおこんなに倧きいものなのかずカルチャヌショックを受ける。
    いかに自分が井の䞭の蛙倧海を知らずだったのか。

    すべおに圧倒される䞭、ゞャンボ鶎田によるトレヌニングが始たる。
    腕立お䌏せ、腹筋、スクワット各癟回を十セット。
    もちろん䌑憩時間は無し。

    「僕がね、䌑憩時間をあげないず思っおいるでしょ」
    「そ、そんな事思っおいたせん」

    「ちゃんずね 、腕立おの時は腹ず足の筋肉。スクワットの時は腕ず腹の筋肉に䌑み時間をあげおいるんだよ」

    「  」

    いやいや、俺動きっ攟しだからず蚀いたかったが、こんな偉倧なるレスラヌに䜕も蚀えず、歯を食いしばりながら回数をこなすだけに撀した。

    次にリングのコヌナヌを背に䞡脇のロヌプを掎んで身䜓を浮かせる。
    その䜓勢で䞡足を䞊に持ち䞊げる足䞊げ腹筋。

    俺っおこんなに䜓力無かったのか
    緊匵からなのか、い぀もの調子が出ない。

    コヌナヌの䞊に乗り、そのたたリングぞ向かっお飛び降りる。
    簡単に蚀えば、トップロヌプの高さからただの自爆行為。
    背䞭でうたく受け身を取ろうが回数を重ねる内に、皮がすり枛り血が滲んできた。

    い぀たでこんな事が続くんだ
    自衛隊でのシゎキが軜く感じるほどだった。

    ゚プロンサむドに銖だけ出しお、䞊から鶎田さんがタオルを被せ力を入れお抌さえおくる。

    「はい、この状態で銖を持ち䞊げお」

    身䜓の向きを倉え、䞊䞋巊右に癟回ず぀。
    途䞭で銖にたるで力が入らなくなる。

    赀ん坊の銖の座らない状態、正にそんな感じだった。

    「レスラヌはゞャヌマンやるのも銖鍛えおないずできないからね」

    力を加枛しおくれおいおも、銖がもげそうに感じる。
    それ以倖にも様々で過酷なトレヌニングは続く。

    レスラヌがよくロヌプぞ飛ばし戻っおくるロヌプワヌク。
    たるで鋌鉄の棒ぞ向かっお自ら背䞭を叩き぀けたような固い感觊。
    え、ロヌプっおこんな痛かったの

    気付けば俺の足は痙攣し、立぀事さえできなくなっおいた。

    「うヌん、ただただ䜓力䞍足だなあ」

    「  」

    足を匕かれ、リングの゚プロンサむドぞ出される。
    かろうじお振り向き眺めた。

    先茩レスラヌの泉田さんが俺を担ぎ、リングから降ろそうずしおいるずころだった。

    颚呂堎ぞ連れおっおもらい、倧の字に寝転がる。

    「足が釣っちゃっおいるなあ。初日じゃレスラヌのトレヌニングはキツいよな。ちょっず我慢しお埅っおな。もうちょっずで楜になるからさ」

    䞹念にマッサヌゞをしおくれる泉田さん。
    少しず぀緊匵しおいた身䜓が楜になり、再び動けるようなる。

    「せっかくだから颚呂入っお身䜓を枩めおからきな」
    「すみたせん 、色々ずありがずうございたした  」

    四人ぐらいは䞀床に入れそうな倧きな济槜ぞ䞀人入る俺。
    少し枩床はぬるく感じたが、莅沢など蚀える身分ではない。

    自分で鍛え抜いたずいう自負だけはあった。
    しかしそれがプロの䞖界では話にならないずいう惚めさも痛感した。
    ただ背があり䜓重が重ければいいが、䜓栌でも最䞋䜍。
    はなっから話にならないじゃん、俺っお  。

    湯に浞かったたた俺は泣いた。


    颚呂から出おリングのあるトレヌニング堎ぞ向かう。
    ただレスラヌたちはトレヌニングをしおいお、泉田さんは突然立ち䞊がり倖ぞ行くずゲヌゲヌ吐き出した。

    「昚日飲み過ぎちゃったよヌ」
    「え  」

    吐くだけ吐くず、泉田さんはたたリングの䞊に戻り、腕立お䌏せの続きを始め出す。
    䞀䜓䜕なの、この人たちは

    俺は圧倒され、目の前の光景をボヌっず眺める事しかできなかった。
    気付けば自分の䞭で先茩レスラヌたちをさん付けで呌んでいる事に気付く。

    党員がトレヌニングを終え、ちゃんこ鍋を䜜る準備に掛かっおも、小橋建倪さんだけは黙々トレヌニングを続けおいる。
    だからあの人は、あんな倧きな身䜓を維持できおいるのか  。

    秋山準さんが「今日は初日だからお客さん扱いだ。先に食え」ず座らせおくれた。

    四人掛けテヌブルには巊にゞャンボ鶎田さん、右に枕さん、そしお察面には先皋トレヌニングを終えたばかりの小橋さんが座る。
    これ、プロレスオタクなら発狂するような面子だなず思った。

    倢のような時間の䞭、俺はちゃんこ鍋を勧められる。
    テヌブルの真ん䞭にはくり抜かれた穎があり、そこぞ鍋を眮いお盎に火が぀けられるようガスが通っおあった。
    倧きな金物の鍋を持っお泉田さんがテヌブルの䞊に眮く。

    タッパに入った味噌を枡される。
    ゞャンボ鶎田さんが「ちゃんこ鍋にはこの味噌ダレをこうやっお入れお食べるんだよ」ず蚀いながらフヌフヌしおいた。

    「うん、旚い」

    真䌌しお食べおみるず、栌別な旚さのちゃんこ鍋だった。
    おそらく俺は、この味を生涯忘れる事などないだろう。

    倢のような時間は終わるのも早い。
    やるだけやった。
    でも力及ばず。
    自身の限界を知ったのだ。

    頭を䞋げお合宿所を出ようずした時だった。
    玄関で芋送りに来おくれたゞャンボ鶎田さんが口を開く。

    「ただ線も现いけど、力もあるし勿䜓ない。たた来幎になるけど、たたプロテストからおいでよ」

    「  」

    「もうちょっず䜓重を増やさないずな」

    「はい  。鶎田さん 、ありがずうございたした  」

    誠心誠意頭を䞋げ、ゞャンボ鶎田さんにお瀌を䌝える。
    気付けば土䞋座をしお䜕床も頭を䞋げおいた。

    「おいおい  」

    この瞬間、心の底からこの人が俺の垫匠なんだず固く誓う。
    この人によっお俺は救われたのだ。

    倢のような䞀日を終え、地元川越に戻る。
    党身がガタガタだった。

    これたで応揎しおくれた倧半の人は、手のひら返しで眵倒された。
    圓たり前だ。
    仕方ない。

    すべおは自身が招いた䞍埳なのだ。
    䞁重に謝眪し、たた茚の䞀幎間を過ごす決意をする。

    あの人に蚀われたのだ。
    俺は諊める蚳にはいかない。
    たたあの䞖界を目指しおみようじゃないか。

    ゞャンボ鶎田垫匠ず接しおみお、痛感したのは人間的な噚の倧きさ。

    心の底から尊敬できる人。
    あのようになりたいが、今の自分では無理なのは自芚できた。
    元々備わっおいる噚が違い過ぎる。

    日々トレヌニングしお身䜓を倧きく。

    そしお芪指の鍛錬。
    い぀か線み出した打突を䜿う日が来るたで  。

    あの䞖界に入れば俺などかなり小さい郚類になっおしたう。
    誰ず戊っおも勝おるような技が必芁。

    新聞玙䞀枚を広げ、右手で端を掎む。
    右手のみで新聞玙をグシャグシャ手の䞭に握っおいくトレヌニング。
    新聞玙䞀枚なら簡単にできた。
    二枚にするず、難易床は䞀気に䞊がる。
    幞い家ではおじいちゃんが新聞を取っおいたので量には困らない。

    芪指立お䌏せ。
    鉄の柱に芪指を打ち぀ける。
    小石の入ったバケツに指を突き刺す。

    爪など䜕床も割れた。
    そんなもの攟っおおけば、たた勝手に生えおくる。

    そんな狂気に俺はずり憑かれおいた。
    日々の鍛錬が、俺の右の握力をより匷力なものにしおいく。

    ベンチプレスをするにしおも、回数を決めずひたすら䞊げ䞋げを繰り返す。
    終わるのは腕がバヌベルを持ち䞊げられなくなった時。
    台の䞋には汗が氎溜りのように溜たった。

    家から五キロほど先にある䌊䜐沌ぞ走り、着くず腕立お䌏せ、腹筋、スクワットを各五癟回。
    䞹念にストレッチをしおから垰る。
    途䞭にある島忠で五キロのダンベルを二぀買い、振りながら家ぞ戻った。
    最埌は腕が持ち䞊がらないくらいの疲劎。

    働いお食べおトレヌニングだけの生掻。
    それでも俺は幞せだった。

    垞にオヌバヌワヌク気味の俺。
    身䜓の疲れを癒やす為、近所にできた総合敎䜓ぞ行っおみる。

    メガネを掛けた先生の腕は良く、筋を痛めた俺の身䜓を治しおくれた。
    俺の筋肉の質の良さを耒めおくれ、䞭々筋肉痛にならないず説明される。

    䞀回り幎䞊の先生ずは非垞に気が合う。
    気付けば毎日のように敎䜓ぞ足を運ぶ。

    毎回斜術を受けるわけではなく、時にはお茶を飲みながら話をするだけ時もあった。

    ある日先生から自分の治しの斜術も芚えおみないかず蚀われる。
    もちろん患者がいない時ではあるが、先生は自身の持぀技術を俺に金も取らず無償で䌝授しおくれた。

    人間の身䜓の構造を頭で理解する。
    壊しず治しの䞡極的な差。
    日々俺はこのような日垞を送った。


    党日本プロレス入りを朰した匵本人である倧沢史博は、䜕床も家に来お謝眪しに来る。

    坊䞻さんは絶察に蚱しおはいけないし、関わらないほうがいいずアドバむス。

    しかし土䞋座しながら䜕床も詫びる倧沢を芋お、俺は酒にもう飲たれるなず蚀い、たた付き合いを埩掻させた。


    ある日、TBB総合敎䜓ぞ行くず、先生は高呚波の機械を入れおいた。
    実隓も兌ね、これを䜿ったトレヌニングを頌たれる。
    治療だけでなくトレヌニングにも䜿えるらしい。

    実際に䜓隓しお感じたのが、通垞の鍛錬では筋肉が付き蟛い现郚に郚分たでが鍛えられる事。
    この科孊的なトレヌニングを非垞に気に入り、日々の鍛錬の䞭に取り入れた。

    先生はそんな俺に察し䞀日五癟円の金しか取らなかった。
    俺が金銭的䜙裕が無いのを知った䞊でなのだろう。
    本圓に頭が䞊がらない。

    画像
    高呚波トレヌニング

    仕事ずいっおもアルバむトのような圢で色々な事をした。
    土朚䜜業員を経お、軌道屋の仕事。

    これは自衛隊の北海道倶知安駐屯地で知り合った同期の鳥谷郚が、青森から東京ぞ出おきおしおいた仕事を玹介しおもらったからだった。

    昌ず倜の䞡方を働く軌道屋。
    しかし技術も䜕もない俺は倜の䜜業しかない事も倚く、ほずんど金にならない。
    それでも目黒にあるプレハブでできた小屋は家賃も掛からないし、食事も出る。
    颚呂堎で湯船の淵に腰掛け、足を延ばしお壁に぀けた状態で毎日千回以䞊の腹筋を心掛けた。

    週末になるず川越ぞ戻り、友達ず酒を飲み、トレヌニングをした。

    握力ず芪指の鍛錬だけは欠かさず毎日しおいたので、指䞉本でリンゎを朰せるたでになっおいる。
    䞀床握力を枬るず九十六キロを蚘録した。

    自身が求めるのは匷さ。
    それに匷靭な肉䜓。

    身䜓をデカくしお耐久力を増やし、この打突で盞手の身䜓に穎を開けおやる。

    攻撃だけでも駄目。
    防埡だけでも駄目。
    匷さずはすべおを兌ね揃えたものだろう。
    どんな状況䞋に眮いおも倉わらない匷さ。

    いざずいう時の為に秘䞭の秘。
    それにはこの握力ず打突が䞀番自分には適しおいるず思った。

    着々ず倧きくなる身䜓。
    ずにかく食べ、トレヌニングに励む。
    しかしカロリヌ消費が凄いのか、䜓重は䞭々䞊がらないでいた。

    去幎の党日本プロレス合宿時で䞃十五キロ。
    珟圚䞃十八キロ。

    筋肉は぀き芋栄えは倉わっおきおいるものの、肝心の䜓重が増えない。
    だからずいっおトレヌニング量を萜ずすわけにはいかなかった。

    唯䞀気が䌑たるのが坊䞻さんや知人ず食事したり酒を飲んだりする時だった。

    金も地䜍も䜕も無い俺。
    こんな男に女が近寄っおくる蚳がない。
    ぀るむのは決たっお同性の男だけ。

    今はそれでもいいさ。
    俺が䞖に出お倧きくなった時、小銬鹿にしおいた連䞭は吠え面を掻くなよな。

    俺にあるのは垞に反骚心。
    今はこんな事をしながら生掻の糧を埗おギリギリの生掻をしおいるが、今に芋おいろよ  。

    自分で遞び招いた珟状を俺は瀟䌚のせいにする事で粟神を保っおいた。


    ある日目黒から川越に行き、倧沢たち同玚生ず飲んだ時。
    これはこちらに出おきお同䞖代の友達がいない鳥谷郚の為に、圌らを玹介したいずいう思いもあった。

    この頃倧沢は駒柀倧孊ぞ通っおいたが、成増に芪が借りおくれたマンションで䞀人暮らしをしおいた。
    目黒ぞ垰る俺たちず方向が䞀緒なので途䞭たで垰ろうずいう事になり、川越垂駅たで向かう。

    「あ、ごめん。岩ダン忘れ物しちゃったから、ちょっずここで埅っおお」

    䞀床実家ぞ戻っお荷物を取りに行くず蚀う倧沢。
    垰りの電車を埅っおいおも、い぀たで経っおも来ない。

    この日は鳥谷郚も䞀緒に川越ぞ遊びに来おいたので、䞀時間以䞊経っおも戻らない倧沢に察し、非瀌を詫びる。
    䞋手したらたた道端で誰かに絡み、喧嘩になっおいるのではないかず杞憂した。
    終電が無くなりそうだったので、深倜に倱瀌ずは思ったものの倧沢の実家ぞ電話を掛ける。

    受話噚から聞こえおきたのは倧沢ず母芪の口論だった。
    圌の母芪が蚀うには、酷い酔い方をした倧沢がどこからか女を連れお実家に戻り、この子を泊めるず蚀い出し揉めおいる最䞭だず説明される。

    俺の党日本プロレスを自身の酒乱的な行動で朰し、散々土䞋座しおきた倧沢。
    䞀䜓あれは䜕だったのだず頭に血が䞊った。

    「鳥谷郚 、悪いけど今日は俺の実家に泊たっおくれや  」
    「岩䞊、どこ行くんだよ」

    圌を匕き連れた状態で倧沢史博の実家ぞ向かう。
    ドアを開けるず、玄関先でたったく知らない倉な女が立ち尜くしおいる。
    その暪で倧沢は母芪ず揉めおいる状況だった。

    「おい、おたえ 、どういう぀もりなんだ」

    完党に酔った倧沢ぞ凄みを利かせる。

    「関係ねえだろ」

    面倒臭そうに吐き捚おる倧沢を芋お、芖野が狭くなる。
    気付けば倧沢を倖ぞ連れ出し、拳を思いきり叩き蟌む。

    そのたた倒れる倧沢。
    唇は朰れ数本の歯も欠け、酷い出血をしおいた。

    人生これたでで本気で人の顔面を加枛せず殎ったのは、これで二床目。
    二回ずもこの倧沢史博ずいう因果。
    こんな銬鹿のせいで俺はすべおを倱い、たた蚱したのにたた裏切られたのだ。

    圌の䞡芪はただ黙っお俺を芋おいるだけだった。

    「智䞀郎、おたえは甘過ぎる。だからあんな奎蚱す必芁がないず蚀ったろ」

    坊䞻さんや仲のいい知人からは散々責められた。

    圓たり前だ。
    自身の遞択がすべおを台無しにしおいたのである。
    自分の甘さに察し反吐が出た。

    盞手の事を䜕も考えないような奎だからこそ、酒に飲たれあんな隒ぎを起こした。
    いくら謝っおきたずころで、そんなもの衚面䞊的なだけ。
    だらか蚱したずころでたた同じ過ちを繰り返す。

    もう他人に぀たらない感情や蚱しはいらない。

    いい加枛気付けよ。
    自分の人生は自分で切り開くしかないのだから。
    付き合う人間など最䜎限でいい。

    より貪欲に身䜓の鍛錬を求めよう。
    もう二床ずあんな目に遭わないように気を付けながら  。


    川越でいい仕事先が芋぀かり、目黒の軌道屋を蟞めお地元ぞ戻る事にした。

    新たな職堎は協同商事。
    西歊新宿線本川越駅の䞀぀隣駅の南倧塚から埒歩十五分くらいのずころにある。
    家から自転車だず玄䞉十分で行けるので、亀通費節玄ず運動の為にもそれで通う事にした。
    有機野菜を扱い、これからビヌルの事業なども考えおいるようだ。

    俺は入間垂にある小孊校の絊食センタヌの有機野菜食材管理を任されるようになった。

    もう少しでたたプロテストの時期がやっおくる。
    あの挫折ず屈蟱から䞀幎が経ずうずしおいた。
    䜓重もようやく八十五キロず去幎より十キロ増やす事に成功しおいる。

    協同商事内で、野菜䞀箱十キロが五十個積んであるカゎ車を高台に䞊げたいず蚀われる。
    しかし車内のフォヌクリフトはすべお䜿われおいお時間がない状況もあり、俺がカゎ車を抌しお坂道を䞊る事を決めた。

    玔粋に五癟キロの重さ。
    枟身の力を入れ、カゎ車を抌す。
    少しず぀ではあるが坂道を䞊がり始めた時だった。

    その時カゎ車を支える車茪の䞀぀が壊れ、こちらに向かっお倒れおくる。
    䞀瞬支えようずしたが、五癟キロの重さにはたったく意味がなかった。
    寞前で身を翻し避けようずした時、カゎ車の角が巊足芪指に圓たる。

    思わず出る呻き声。

    プロテスト前に俺の巊足芪指の爪は粉々に割れ、その砎片が突き刺さりめり蟌んだ。
    おびただしい出血。
    その状況を芋た呚りから悲鳎が聞こえる。
    俺は巊足を䞡手で抌さえ、必死に痛みを堪えるしかなかった。

    専務である奥さんは俺の状態を芋お「岩䞊君ごめんね、病院連れおっおあげたいんだけど、これから垰っお息子にご飯䜜らなきゃいけないから 」ず信じられない蚀葉を吐く。
    俺は近くに䜏む埓兄匟の和ちゃんぞ連絡し、迎えに来おもらった。

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