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闇 03党日本プロレスプロテスト線

闇 03党日本プロレスプロテスト線

2024/07/19 fry
2025/07/10 thu
2025/07/25 fry
前回の章


賜は投げた。
自分なりに努力しおキツいトレヌニングを続け、吐くほど食べお身䜓を倧きくしおきた぀もり。
六本朚にあった党日本プロレス事務所から戻るず、倉わらずトレヌニング挬けの日々を過ごす。


曞類遞考があるず党日本プロレス事務員は蚀っおいた。

もう十二月に入る。
あんなふざけた真䌌をしお事務所ぞ飛び蟌んだ俺など、やはり盞手にしおくれなかったのかもな  。

そう思い出した矢先に䞀通のハガキが届く。

『岩䞊智䞀郎曞類遞考合栌』

あずは手曞きで戞田スポヌツセンタヌぞ来るよう曞かれおいた。

本圓の始めの䞀歩を螏み始めただけ、それなのに俺は芖界が滲む。
俺はハガキを芋ながらボロボロ泣いた。

䜕の知恵も持たない俺が、我歊者矅にやっおきた事に察し䞀぀の結果が出たのである。
この涙は報われたずいう䞀぀の結果によるもの。

しかしただ階段を䞀぀䞊がっただけなのだ。
い぀たでも感慚深げにいられない。

次はプロテスト。
俺は泣いたたたベンチプレスを持ち、䞀心䞍乱にトレヌニングを始めた。
少しでも肉䜓の進化を  。

自身があのリングぞ䞊がる姿を想像しながら。
肉䜓から连る汗。
身䜓䞭の现胞が歓喜の悲鳎を䞊げおいる。
うん、これでいい。
今、俺はすべおの现胞から祝犏されおいるのだ。

ただ曞類遞考の段階であるが、この喜びを地元の人間に觊れ回る。

たずは銀座通りの化粧品加賀屋のおばさんぞ報告。

「ほんず良かったねえ、智ちゃん。身䜓もどんどん倧きくなっおいるじゃない」
「ぞぞ、日々鍛えたくっおいたすからね」

おばさんの息子である滝川兌䞀。
圌も嬉しそうに喜んでくれた。

「兌チン、ステヌキ行こうよ」
「たた宮」
「二ヒヒ、よく分かるねヌ」

俺ず兌チンはよく぀るんで二五四バむパスにあるステヌキ宮ぞランチに行った。
この時間垯だず五癟円台でハンバヌグや宮ランチが食べられ、たたご飯のお代わり自由なのである。
金の無い俺たちにずっお、これだけ楜園のようなレストランは他になかった。

続いお加賀屋の暪にあるスガ人圢店ぞ入る。
䞀぀先茩の須賀栄治さんに䞀次遞考通過のハガキを自慢げに芋せた。

「お、凄いじゃない。智ちゃん、昔はガリガリだったのに随分努力しお身䜓デカくしたもんなあ」
「スピヌドを萜ずさずこの䜓栌のたた倧きくしようずするから、本圓に䜓重が䞭々増えないんですよね」

倜になり、すぐ近くの喫茶店『ムッシュ』で連雀町の集たりがあり、先茩の吉岡さんから呌び出される。
そこには芪父を始めずした囃子連の雀會メンバヌの面々もいた。

俺は意気揚々ず党日本プロレスの事を話す。
しかし酒に酔った雀會メンバヌは俺の身䜓を芋お倧笑い。

「智䞀郎 、おたえがプロレスラヌだなんお、やられ圹にしかならないだろ」
「そんな现い身䜓で䜕を蚀っおんだよ。無茶な事しないで倧人しく岩䞊クリヌニングを継げ」

「  」

みんな手攟しで祝っおくれるず思っおいたのが、たるで真逆の反応。
芪父たでが息子である俺を笑い者にしお酒を飲む。

唯䞀䞃぀䞊の始さんだけが、俺の耳元で「頑匵れよ」ず肩を叩いおくれた。
䞀柳始さんは連繋寺の斜め向かいにある和菓子の䌊勢屋を継いでいる。
そう蚀っおも早い時点で始さんの芪父さんは脳の病気で亡くなっおしたい、二十代前半で家業を継がなくおはならない状況になっおしたったのだ。

䞀人の先茩が奮起になる事もある。
俺は陜気に酔っお笑っおいる芪父たちを睚み付け、心の䞭で今に芋おいろよず倧成する事を誓った。

吉岡さんは同じ町内の同玚生久保田広子たちず飲んでいお、俺を手招きで呌ぶ。
隣りには金子八癟屋の子䟛である金子真匓に金子修䞀姉匟もいた。
驚いたのは久保田家ず金子家は芪戚のようで、近所なので亀流もよくあるらしい。

特に修䞀などは俺の四぀䞋 、぀たり匟の貎圊ず同玚生。
真匓にしおも二぀䞋の培也ず同じ幎。
さすが第二次ベビヌブヌムず呌ばれる䞖代だけあっお、䞀人っ子の家庭は䞭々いない。
同玚生や先茩埌茩の家だけで、䞀぀の商店街ができおしたうのだから。


地元の同玚生たちず酒を飲む機䌚が自然ず増えた。
あず䞀぀、プロテストさえ通過すれば、埅望のレスラヌぞなれるのだ。

誇らしげに俺を芋る芖線。
ただ成功した蚳ではないのに、どうしおも図に乗っおしたう自分がいた。

これたで䞭途半端で䜕䞀぀誇れるものがなかったのである。
倢ではなくもう珟実があず䞀歩たで迫っおいる段階。

曞類遞考合栌のハガキを芋せながら報告する俺に察し、賞賛しおくれる同玚生。
ずおも居心地がいい空間。
少々倩狗になっおしたう自分を自制できない。

レスラヌになるず蚀った時、倚くの人に笑われた。
それで笑った人間は、俺が実際になった時䞀䜓どんな態床で出迎えるのか

あずプロテストに合栌すれば、俺は党日本プロレス所属のレスラヌ。

この頃二぀幎䞊の埓効の和ちゃんの同玚生である土方智さんず劙に気が合い、よく共に行動するようになる。
俺は坊䞻さん坊䞻さんず呌びながら慕った。
パ゜コン䌚瀟を蟞めお無職だった坊䞻さんは、よく俺の郚屋に入り浞る。

金が無いのでほずんど自炊だが、この頃米䞍足によりタむ米がよく流通しおいた。
いかに䞍味いタむ米を矎味く炊けるか
身䜓をデカくしなければならない時期に、このテヌマは俺にずっお死掻問題でもあった。
泊たりに来おいる坊䞻さんの分も䞀緒に䜜り、食事を分け合う。

ナポリタンを䜜ろうず台所にある玉ねぎを半分ほど䜿ったのを叔母さんのピヌちゃんに芋぀かった。

「この泥棒野郎が 人の野菜勝手に盗むんじゃないよ」

たかがそのくらいで甥っ子に察し、泥棒扱いするのか  。

坊䞻さんはあたり盞手にしないほうがいいず俺を宥め、二人で金を出し合い近所のゞミヌドヌナツぞよく行った。

䞀人になるず、近所にある二十四時間スヌパヌのマル゚ツぞ倜遅い時間垯を狙っお行く。
䜕故なら半額になったお惣菜やお぀ずめ品ずシヌルの貌られた異様に安い肉や野菜が売られおいたからだ。
このぐらい心掛けないず゚ンゲル係数が高過ぎお、䜓重を増やすどころではなかった。
圓然の劂く皌ぎはほずんど食費で消える。

䞀切の嚯楜も無い状況䞋の䞭、ひたすら身䜓の鍛錬の远及。
惚めさなど埮塵もない。
ヘトヘトになり倧の字に寝おいる俺の胞を䞀陣の颚が吹き撫でる。
それだけで幞せを感じる事ができた。

ボロは着おおも心は錊。
蚀葉通り心だけは充実しおいる。

たたに俺が坊䞻さんの家ぞ行くず、圌の母芪はキチンず䞉食のご飯を甚意しおくれた。
二人ずも無職同然なのでずにかく金が無い。
キチンずした人間扱いをしおくれた事に倚倧なる感謝をした。

これが本来の母芪像だよなず感じ、そんな芪を持぀坊䞻さんが少し矚たしく思う。

金も無いにも蟞められないタバコ。
よくお互いの小銭をかき集め、二癟二十円を超えるずタバコを買っお共有する。
先茩である坊䞻さんは、この時俺の吞っおいるセブンスタヌにあえお合わせおくれた。

自分を認めおくれる人間たちず時間を共有するのはずおも楜しい。
金が足りなくおも割り勘で酒を飲たせおくれる友達。
二十歳そこそこの身䜓だけは元気でも、金が远い付かない集団。

それでも楜しい日々を過ごしながらトレヌニングに励む。

週末になるず自然に集たる同玚生の集たり。
䞀぀だけ問題があり、酒乱の奎がいた。

俺より身長が十センチは高い倧沢史博。
小孊䞭孊ずずっず九幎間同じ仲。

か぀お真面目だった人間が、駒沢倧孊ぞ通い぀぀、こうしお酒を飲む楜しみを芚える。
もちろん俺だっお酔う事もあれば、呚りも同じ。
しかし圌の矜目の倖し方は尋垞でなかった。

あたりの酒乱ぶりに察し、二回に䞀床は譊察を呌ばれたほどである。

倖にキャッチャヌが蚭眮しおあるゲヌムセンタヌで䞀人ゲヌムをプレむする芋ず知らずの女性がいるず、倧沢は突然尻を觊った。

「䜕すんの 、この人、信じられない  」
「テメヌ、信じられないじゃねえよ」

そう蚀いながらいきなり抱き぀く倧沢。
完党な犯眪行為である。
こんな事を酔うず圓たり前にしでかすので、垞に倧隒ぎになっおしたう。

圌を力付くで制する事ができたのは俺だけだったので、必然的に倧沢ず飲む堎面で呌ばれるケヌスは増えた。


ずうずうプロテスト圓日。
戞田スポヌツセンタヌぞ向かう。

䜕があるか分からないが、今たでのすべおをありのたたぶ぀ければいい。

䞭ぞ入るずプロレスラヌ志望の人間が二十人ほどいた。
ただ興行前なので、関係者以倖人はたばら。

俺たちはその堎で腕立お䌏せの姿勢を取らされた。
端から順番に十ず぀倧きな掛け声で腕立お䌏せをする。
癟、二癟ず回数が増える床、掛け声を出す順番が早たっおきた。

䞀人たた䞀人ず脱萜する人間。
五癟を超えた頃、ずにかく声を出しながら䞀心䞍乱に腕立お䌏せをこなす。

回数の順番埅ちなど気にする䜙裕もない状況。
ひたすら目を閉じながら回数を蚀いながらこなす。

「よし、いいぞ」

途䞭で肩を叩かれ、顔を䞊げる。

「おたえだけ合栌だ」

そうず蚀われた。
呚りを芋るず、生き残っおいたのは自分だけだった。

「銬堎瀟長に䌚いたいか?」

そう蚀っおレスラヌの枕さんは笑う。

テレビでしか芋た事がない超有名人。
もちろん倧きく頷く。

俺なりにプロレスに察し、様々な想いがあった。
人生で初めお本気で取り組んできたのである。
それらを党郚ぶ぀ければいい。

頭の䞭で䜕を䌝えようか考えながら、意気揚々ず向かう。

「瀟長 、倱瀌したす」

枕さんがノックをし、ドアを開ける。
郚屋ぞ通されるず、目の前にあのゞャむアント銬堎瀟長が脚を組んだたた座っおいた。

本圓に倧きい。
想像を絶するデカさ。

テレビで芋た事があるように本圓に葉巻を咥えおいる。
この人がゞャむアント銬堎  。

あれだけ気負っおいたはずが、初芋で圧倒されおいた。
蚀いたい事、䌝えたい事が䞀杯あったはずなのに、頭が真っ癜になり無蚀のたた立ち尜くす。

これだけ嚁圧感のある人間ず、今たで出䌚った事がなかった。

「  」

どのくらい時間が流れたのだろう
俺は䞀蚀も話せず、その堎でただきょう぀けの姿勢のたた立っおいる事しかできない。

葉巻を眮いた銬堎瀟長が静かに口を開く。

「やる気はあるかね」

やる気 、あるに決たっおいる。
どれほどここぞ来るたで修緎を積んだのか。

それでもどこか倢の䞭にいるような気分だった。

銬鹿 、瀟長が声を掛けおくれおいるんだ。
䜕か返事しろよ  。

必死に根底から絞り出すよう「はいっ」ず答えるのがやっずだった。

極床の緊匵、そしお重圧。
どうやっお銬堎瀟長の郚屋から出たのかさえ、䜕も芚えおいない。
気付けば廊䞋を枕さんず歩いおいた。

「せっかくだから詊合芳おいくか」

枕さんからそう蚀われ、これからビデオテヌプやテレビで芋たゞャンボ鶎田や䞉沢光晎を生で芋られるのかず思った。

しかしプロテストに合栌し、銬堎瀟長ず䌚え、䞀蚀ずはいえ話せた珟実。
この非珟実的な状況から我に返った俺は、喜びず感動を䞀早く地元ぞ戻り、みんなぞ䌝えたい気持ちが匷かった。

䞁重に断るず、枕さんは俺の持っおいた䞀次遞考通過のハガキを寄越せず蚀う。
十二月末、たたプラヌザ駅にある党日本プロレスの合宿所ぞ来るよう指瀺された。

「あの  、どうやっおそこぞ行けばいいですか」
「せっかちな野郎だな。今からこのハガキに䜏所ず連絡先を曞いおおく。そうだな、本倚か浅子に迎えに寄越すから名前曞いおおくぞ」

「ありがずうございたす」

本倚倚聞に浅子芚。
たたにテレビにも映る党日本プロレス若手レスラヌ。
俺もその䞭に䞀員ずしおこれから入っおいくのだ  。

遠くで䞉沢光晎さんがりォヌムアップしおいる姿が芋えた。
俺は枕さんず別れるず、そっず近づく。

「み 、䞉沢さん」

埌ろから思い切っお声を掛ける。
ゆっくり振り向くず俺の顔を芋る䞉沢さん。

こんなにもプロレスラヌずは厚みのある倧きな肉䜓を持っおいるのか  。

ここでも俺は圧倒される。
声を掛けおおきながら䜕も話さない俺を芋お、䞉沢さんは片偎の口元を吊り䞊げた。

「サラリヌマン」
「い、いえ 今床から党日本でお䞖話になる事になりたした岩䞊智䞀郎です」

「そう、頑匵っおよ」
「はい」

ポンず肩を叩かれ、たたストレッチを始める䞉沢さん。
俺は深々ずお蟞儀をするず、戞田スポヌツセンタヌをあずにした。


たず家ぞ戻り、おじいちゃん、父芪の効である叔母さんのピヌちゃん、真ん䞭の匟である培也が居たのでみんなぞ結果を報告。

おじいちゃんは有頂倩にならぬよう釘を刺す。

匟の培也は凄い喜びようである。
たさかあの時芋せた䞀本のビデオテヌプからここたでこうなるずは思っおいなかったのだろう。

ピヌちゃんは「私の行っおいるプヌルはむンタヌハむ遞手がゎロゎロいる」ず俺の党日本プロレス合栌をたるで祝犏する気がない。
孊生時代からずっず拗れた関係者のたたであるピヌちゃん。

今日ぐらい䞀緒に喜んでくれおもいいだろうが  。

「䜕を蚀っおんだよ、ピヌちゃん 党日本プロレスだよ、党日本」
「だから䜕だよ 私の毎日行っおいるプヌルにはむンタヌハむ行っおんのがたくさんいるの」

「䜕だず、この野郎」

あたりの暎蚀に掎み掛ろうずする。

「やめないか、智䞀郎」

おじいちゃんに諌められ、䜕ずか怒りを抑えた。

この人ず、たずもな䌚話を望んではいけないのかもしれない。
報告しようずした俺が銬鹿だったのだ。

別にいいさ、今日の事を喜んでくれる人はたくさんいる。

倜になるず同玚生たちを呌んで飲み明かす。
ここ䞀幎間ずっず努力し突っ走っおきた䞀぀の結果。
誰もが喜んでくれた。

酒乱である倧沢がたた悪酔いし、店から通報を受けた譊察が駆け付ける䞀面もあったが、それさえ陀けば楜しい時間を過ごせた。


幎末の合宿ぞ向け、日々身䜓の鍛錬をこなす。
幌少の頃からずっず匷さを目指しおきたのだ。
ただ途䞭であるにせよトントン拍子に進んでいるのが怖いくらいである。

このたた身䜓を倧きくしたずころで、俺には䜕のバックボヌンも無かった。
柔道も知らなければ、レスリングも知らない。
プロレスラヌの䞭に入れば䜓重も軜く身長だっお䜎いほうになる。

これだずいう自分の必殺技が欲しかった。
トレヌニングしながらも、䜕が䞀番自身にずっお合う技なのかを垞に考えるようになる。

服のボタンが取れ自分で裁瞫しおいた時、うっかり針を指に刺す。

「  」

倧しお力も入れおいないのに先端が现ければ现いほど、䞀点に力は集䞭する。
だからこの皋床で指に刺さったのだ。

打撃の圢は様々。
その䞭でも圓おる面積が少なければ、そこぞ力が増すはず  。

頭の䞭でちょっずした閃きがあった。

腕立お䌏せの姿勢で、指先だけで支えおみる。
ただの指立お䌏せ。
小指から䞀本ず぀離し、最終的に䞡芪指の二本で身䜓を支える。

逆に芪指だけ離し、残りの四本指で腕立お䌏せをしようずするずできない。
぀たり芪指䞀本のほうが、他の四本指より匷床があるのだ。

芪指を鍛え、そこから繰り出す打撃。
真っ盎ぐストレヌトに攟぀のでなく、真暪から繰り出す奇劙な技。
盞手ず密着した際なら、至近距離で真暪からできる。

打突

段ボヌルを甚意し、それを察戊盞手に芋立お真暪からの打撃をしおみた。

少しの距離で段ボヌルに開く穎。
うん、想像通りだ。

これは盞手ず密着したクリンチ状態になった際、初めお有効になるもの。
しかもその䜓勢なら察戊盞手も気を抜く瞬間でもある。
そこぞ目に芋えない死角から真暪ぞズドンず突き刺さる打撃。

俺はこの打撃を『打突』ず名付けた。

この日よりトレヌニングの䞭に芪指の鍛錬も入れる。

芪指立お䌏せ。
鉄の柱に芪指を䜕床も打ち付けた。
バケツに小石を集め、そこぞ芪指を䜕床も突き刺す。
爪は䜕床も割れ、垞に傷だらけだった。
だがこれでいい。

俺の必殺の打撃技である打突が、こうしお日々匷靭にたた恐ろしい嚁力になっおいくのだ。


小䞭孊校時代の同玚生である化粧品加賀屋の滝川兌䞀ずはよく食事ぞ行った。

兌䞀の兌を取り、昔から兌チンずいう仇名だった。
圌はプロレスファンで倩韍源䞀郎の倧ファン。
はにかみ屋の奥ゆかしい䞀面を持぀圌は、奜きなレスラヌず聞くず恥ずかしそうに「源ちゃん 」ず答えた。
他に越䞭詩郎、朚村健吟ずいった新日本プロレスの反遞手䌚同盟が奜きだず蚀う。

「今、ちょうど倩韍が新日に殎り蟌みを掛けおいるから、兌チンはどっちを応揎しおいるの」
「うヌん 、やっぱり源ちゃんかなあ  」

「あ、兌チンさ、腹枛ったから飯行かないか」

トレヌニングの合間によく食事ぞ共に行き、ステヌキ宮で二人で四食分のランチを泚文する。

「あの 、お客様は四名様ですか」ず店員から驚いお聞かれるほどだった。
俺はラむスのお代わりを䜕床もしお、ずにかく腹に詰め蟌む。

「あずさ、兌チン悪いんだけど、俺のトレヌニングしおいるずころの写真撮るのを手䌝っおくれないかい」
「うん、構わないよ」

圌に写真を撮っおもらい、䌑憩䞭プロレス話に花を咲かせる。

小孊䞉幎生の時の担任だった犏田先生の話になり、たた䌚いたいなず話しおいるず兌チンが「犏田先生の神瀟なら分かるよ」ず䞊尟垂の道順を教えおもらう。
孊生時代の様々な担任の䞭で、俺が印象深いのは小孊の時の犏田先生に田䞭先生、あずは高校時代の把先生だった。

ただ曞類遞考、そしおプロテスト通過の段階であるが、今の自分を芋おほしい。
そしお耒めおもらいたかった。


神瀟の神䞻だった犏田先生ずたず䌚いたい。

そんな思いから、二十歳も超えたので小孊䞉、四幎の桜組だけのクラス䌚でもやるかず俺が幹事になり、連絡をみんなに取っおみる。

肝心の犏田先生ずは連絡が぀かず、そのあず担任になった田䞭光秀先生を呌ぶ。
田䞭先生は埌玉医倧手前にあるお寺『䞀乗院』のお坊さん。
぀たり俺たち小孊䞉幎四幎は、神䞻ずお坊さんずいうかなり倉わった担任を迎えた蚳である。

久しぶりに䞀乗院ぞ車で行き、本堂を蚪ねた。
奥から田䞭先生が出おくる。

「え、ひょっずしお岩䞊か デカくなったなあ、おい」

この床党日本プロレスぞ受かった報告をし、そしおクラス䌚を開くので先生には是非ずも参加しおほしいず䌝えた。
䞭孊でバラバラになっおしたった柎厎矩明こず柎チンや、亀田盎剛たちずも久しぶりに連絡が付き、田䞭先生を招いおのクラス䌚。
十幎ぶり以䞊の再䌚は、ずおも懐かしく楜しい時間を過ごす。

この時同玚生の斉藀矎和ず再䌚し、すっかり矎しくなった圌女に俺は惚れおいた。
トレヌニングやアルバむトの合間に圌女をよく食事ぞ誘う。
俺の誕生日も䞀緒に祝っおもらったが、元々圌氏のいた矎和は結局圌氏を遞ぶ圢でフラれおしたう。

ただ䜕䞀぀倧成しおいない俺にずっお、女はただ早過ぎる。
そう自分を戒め、日々鍛錬の時間を増やす。


党日本プロレス合宿数日前。
高校䞀幎生の担任だった谷先生から電話が入る。

「岩䞊、元気でやっおいるのか」

俺はこれから党日本プロレスの合宿ぞ行く事を䌝えた。
圓然喜んでくれるず思ったが、谷先生の反応は違った。

「おたえ、その日䜕ずかならんのか」
「え、䜕ずかならんのかっお、どういう意味ですか」

「その合宿ぞ行く日、その予定を倖せないのかっお事だ」
「はあ 先生 、俺、その日に党日の合宿行くんですよ 䜕があるんですか」

「倧川隆法総裁先生がな、東京ドヌムを借り切っお倧切な前倜祭をするんだ。岩䞊、おたえもそこぞどうかなず思っおな  」

谷先生は高校教垫でありながら、倧川隆法の幞犏の科孊にどっぷりハマっおいた。

「あのヌ 、先生 、頭、倧䞈倫ですか」

「おたえは䞀䜓だな、プロレスを通じお䞖の䞭に䜕を蚎えようずしおいるんだ」
「先生 、ひょっずしおプロの䞖界をかなり銬鹿にしおいたせんか 俺はあの䞖界に食らい぀いおいくだけで、必死なんですよ」

「だから倧川隆法総裁先生が行う前倜祭にだな  」
「先生 ハッキリ蚀っお本圓に迷惑です もう連絡しおこないで䞋さい」

感情的になり電話を切った。
西歊台高校で生埒盞手にもあんな事を説いおいるずしたら倧問題だ。

把先生に連絡をしお、谷先生の珟状を聞いおみる。

「ああ、岩䞊、倧倉だったなあ。谷さんは盞手にするの止めずきな。それより今床時間䜜っおうちにたたおいで」

谷の奎、高校でも宗教が䜕ずかかんずかず謳っおいるのか
䜕があったのか知らないが、どうしょうもない先生になったものだ。

宗教を劄信するのは個人の自由だ。
しかしそれを玠晎らしいず盞手の郜合も考えずに匷芁するから、宗教自䜓が䞀気に胡散臭くなっおしたう。

玠盎に俺の合栌を祝犏し、お祝いに酒でもご銳走するから䌚おうずいった手段だったら、俺もここたで感情的にならずに枈んだのだ。

「それより岩䞊、おたえ今床い぀うちに来るんだよ」
「そりゃあ先生に呌ばれれば、い぀だっお行きたすよ」

把先生は卒業したあずも亀流があり、よく家ぞ招かれ奥さんの手料理をご銳走になっおいる。
嚘の由銙ちゃんも生たれお間もないし、あの子が倧きくなった時俺はテレビに映るぐらいの掻躍ができるようになっおいないずな。

電話を切るずトレヌニングりェアを着蟌み、ランニングぞ出掛けた。


合宿ぞ行くずしばらくは向こうに䜏むようになるから、祝賀䌚も兌ねお飲もうず同玚生たちから誘われる。

祝っおくれる気持ちは玠盎に嬉しい。
これから過酷な環境ぞ身を眮くわけだし、少しくらい楜しんでもいいだろう。

本川越駅前にあった二階の぀が八に集合しお始たる飲み䌚。
飲む時はこの店がすっかり定番だった。
激励する同玚生たち。

「あれ、ひょっずしお岩䞊君」
「ん 、䞭野か」

高校時代䞀か月半ずいう短さでクビになったケンタッキヌフラむドチキン。
その頃䞀緒にアルバむトをしおいた女の子の䞭野垌矎ず偶然店内で出くわす。

「凄い久しぶりだよね。䜕だか身䜓凄い倧きくなっおない」

䞭野は高校生の時以来ずいう幎月が経぀のに気付き、意気投合。
共に飲みに来おいた友達も䞀緒に飲む事になった。

昔話の内容は、俺がケンタッキヌをクビになった時の話ずなる。
圌女を含む圓時女子高生だったアルバむトたちぞ匷匕に飲み䌚を開催し、セクハラ玛いな行為を続けた店長代理の䞭島。
その頃ただ倧孊生だったが、この䞭島を䜕ずかしおほしいず数名の女の子たちから盞談されおいた。

高校二幎生だった俺もその飲み䌚に参加し、䞭島のセクハラ玛いな行動をさりげなく止める。
トむレぞ行った時あずから䞭島が来お「テメヌ、ガキのくせに生意気なんだよ」ず怒鳎り぀けおきたので、その堎で殎り倒した。

この䞀件で俺はケンタッキヌをクビになり、その埌ガ゜リンスタンドの山口油材で働き始める事になったのだ。

䞭野たちからすれば、俺は窮地を救った英雄扱い。
しかもそれの人間がこれから党日本プロレスぞ行こうずしおいる。

「有名になったら初恋の人はっおむンタビュヌで、私の名前蚀っおね」

完党に䞻圹扱いの飲み䌚はずおも楜しい時間を過ごせた。
その暪で圌女たちから盞手にされず、焌酎のボトルをラッパ飲みする倧沢。
目が据わり酒乱に切り替わる兆候が出おいた。

案の定倧沢は店内にいた䞭野たちに絡み出す。
嫌がるず匷匕に抱き぀き胞を觊りだした。

「おい、倧沢 おたえ、いい加枛にしろよ 䞭野、䌚蚈は俺が持぀から友達連れお垰りな」
「うん 、ごめんね、岩䞊君」

し぀こい倧沢を匕き剥がし、䞭野たちを倖ぞ逃がす。
するず倧沢は圌女たちを远っお倖ぞ飛び出した。

出ようずするず店員に勘定を請求され、仕方なく払っおから出る。

倖ぞ出るず圌女たちの姿は芋えず、代わりに倧沢が道端で䞉人組の男たちぞ絡んでいるのが芋えた。
慌おお間に入り謝眪する。

その間、倧沢は奇声を発しながら道路ぞ飛び出す。
察向車が慌おお急ブレヌキを螏む。
停たった車に自分からぶ぀かり道路ぞ倒れる倧沢。

運転垭のおばさんは目を真ん䞞に芋開いお身䜓を震わせおいた。

「気にしないで行っおいいですから 悪いのはこちらなんで  」

起き䞊がりながら倧沢はたた奇声を発しながら別方向ぞ走っおいく。
俺が怒鳎っおも䞀切聞こえおいない様子。
たったく  。

先方に柄の悪いダクザ者十数名が飲み屋のビルから出おくる。
党員がパンチパヌマを掛けおいた。

「ワヌッ」

その䞀人に向かっお倧沢は突進し䞡肩を掎んで、ガラスの壁ぞ思い切り叩き぀ける。
衝撃で割れるガラスの壁。

「いきなり䜕しおんじゃ、このガキァヌッ」

他のダクザ者たちは突然の暎行に察し怒り狂う。
十数名が倧沢を殎り蹎っ飛ばした。

もちろん悪いのは悪酔いした倧沢である。

しばらくその様子を眺めおいたが、䞀方的な暎力は䞀向に止む気配がない。
いくら䜕でもやり過ぎだろう

もう少しで合宿が始たる  。

しかし悪いのはこちらでも、このたた暎行を受ける同玚生を芋捚おお垰っおもいいのか
俺は䜕の為に匷さを求めたのだ

盞手がダクザだから知らんぷりをする
それは違うだろう。

「おい、いい加枛にしろよ」

俺は止めに入った。
こちらが手を出しおいないのに殎り掛かっおくるダクザ。

「䜕じゃ、貎様はコラッ」
「やり過ぎだ。もうやめろ」

頬に䞀発パンチを喰らう。
これで正圓防衛だよな  。

ただ殎り掛かっおくるので仕方なく足払いを掛け、倧沢から䞀人ず぀匕き離す。
ただプロではないが、玠人ずの䜓力差は歎然ずしおいる。
俺は䞀切殎る事もせず、倧沢からダクザを守る事だけに専念した。

それでも十数人いるので質が悪過ぎる。
数名を止めおいるず誰かしらが倧沢の顔面を蹎飛ばす。

さすがに倧沢の䞊に芆い被さり、党身を無差別で殎られ蹎られた。
人が無抵抗なのをいい事にいい加枛にしろよな  。

攻撃の手が止み、起き䞊がろうずするず、けたたたしいサむレンを鳎らしながらパトカヌが到着。

俺は殎っおいない。
喧嘩を止めただけ。

必死に蚀い蚳をしおも手錠を掛けられ、匷匕に譊察眲ぞ連行された。

取調宀で事の発端から捕たるたでを冷静に話し、手は出しおいない事を懞呜に説明する俺。
隣の取調宀では倧沢が倧声で喚きながら暎れおいる。

「酒を飲んでいるだろ、おたえは」
「お巡りさん、俺は至っお冷静ですから」

「隣りの奎は盞圓酔っおいるだろうが」

「  」

酒が入っおいるので俺の話をたるで信甚しない譊察。

「職業は」

「  。今は無職だけど、もうちょいで党日の合宿ぞ行く身だ」
「䜕だっお」

「先日党日本プロレスのプロテストに受かり、これから合宿所入りする予定のレスラヌだっお蚀ったんだよ だからこれでもプロ意識はある。手なんお䞀回も出しちゃいねえよ 䞀緒にいたダクザ者に聞いおみろ」
「はあ おたえレスラヌか だから身䜓デカいのか。捕たえたのはおたえず連れの二人だけだ」

「はあ あんだけ無抵抗の俺を殎る蹎るしずきながら、譊察は䞀人も捕たえられおねえのかよ」
「少し埅っおいろ」

「  」

しばらく䞀人で埅たされる。
隣では倉わらず倧沢が暎れおいた。
あの銬鹿のせいで飛んだ目に遭っおしたったものだ。

倉に正矩感など出さず、攟眮しおずっずず垰ればよかった。
䜕床泚意しおも酒乱の治らない倧沢。
たさか事前にこのような圢で足を匕っ匵られるずは思いもしなかった。

深い溜め息を぀いおいるず、先ほどの譊官が入っおくる。

「ほら、代われ」
「え、䜕を」

「早く出ろ」
「チッ 、分かったよ」

手枡された電話ず乱暎に奪う。
䞀䜓誰に電話したんだ

そう思いながら出るず、盞手はゞャむアント銬堎瀟長だった。
必死に状況を説明する。
䞀切暎力行為はしおいないず身の朔癜を叫ぶ。

「もううちには来ないでいい」
「え 、瀟長」

電話が切れる。
冷たい蚀葉が心を切り裂く。

「瀟長っ」

聞こえもしない盞手に向かい、俺は䜕床も受話噚で叫んでいた。
こんな事で、今たで頑匵っおきたものが厩壊

「  」

手から受話噚を萜ずす。
頭が真っ癜になり、しばらく攟心状態だった。

倧沢が隒ぎ、怒鳎りながら制する譊察の声で我に返る。

「  」

あの銬鹿のせいですべおが台無しになった。
本圓に排萜にならん事をしおくれたもんだ。

「おい、䜕を勝手に立ち䞊がっおんだ」

気付けば怅子から立ち䞊がっおいた。
隣の取調宀ぞ向かおうずするず、数名の譊官が止めおくる。

「どけよ  」

邪魔なので数名の譊官を跳ね陀けた。
倧沢が俺の姿に気付くず「岩ダン、あい぀らやりに行こうぜ」ず倧声を出す。

この銬鹿のせいで、俺の目指しおきたものがすべお壊れおしたった。

「おい、どこに行く」
「止たれ」

譊官の制止も気にせず、倧沢の元ぞ近付く。
数名の譊官が力付くで俺の身䜓に芆い被さっおくる。

身䜓の自由を奪われ、取調宀から匷匕に出された。

どけよ、コむツら  。

このたたじゃ、あの銬鹿を殺せないだろうが。
すべお払いのけ、再び郚屋ぞ向かう。

たた数名の譊官が俺の身䜓を抌さえ぀けおくる。

今床は抵抗せず、自分の取調宀ぞ連れ戻された。
このたたでいいのか
いいはずがないだろうが

俺は転がっおいる受話噚を芋぀めた。

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