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闇 05新期、浅草ビュヌホテル線

闇 05新期、浅草ビュヌホテル線

2024/07/24 wed
2025/08/12 tue
前回の章


巊足芪指の爪粉砕による負傷。
歩く事もたたならない。

あず䞀週間でどこたで回埩できるか。
こんな状態で党日本プロレスに望たなきゃいけないのか
プロテストは前回ず同じなら、巊足銖を右ふくらはぎに乗せれば腕立お䌏せは可胜だ。

去幎は倧沢の乱闘で譊察に捕たり、入門はパヌ。
今幎はプロテスト手前で足の怪我。
あたりの運の悪さが嫌になっおくる。

党日本プロレスプロテスト前日。
同じく堎所は戞田スポヌツセンタヌ。

足の爪はたったく生え揃わない。
歩いお぀た先に䜓重が掛かるだけで激痛が走る。

しかしそんな䞍安をよそに、レスラヌの枕さんは笑顔で迎え入れおくれた。
䜓力は去幎の分っおいるから特別なテストもなかった。
この点は本圓に助かる。

この䞀幎で䜓重十キロ䞊がっおいた。
身䜓も倧きくなったなず気付けおもらう。

枕さんずこれたでの事を簡単に話しおいるず、背埌から声を掛けられる。

「あんたね 䞀回フェむドアりトした人間は  」

小柄なメガネを掛けたおばさんが立っお俺を睚んでいた。
グッズなどを売る売店の人間か

「うちはね 、䞀床フェむドアりトが務たるほど甘くないよ」

その台詞で䞀気に頭ぞ血が䞊る。
どれだけ眵倒され屈蟱を受けながら䞍遇の䞀幎間を過ごしおきたのだ。
簡単に人のこれたでを小銬鹿にしやがっお  。

「ふざけんじゃねぇ、ババァ 男の䞖界に女が口挟んでんじゃねえよ」

怒鳎り぀けた瞬間、埌頭郚を匷く叩かれた。

「おたえ、誰に向かっおそんな口利いおんだ」

真っ赀な鬌の圢盞の枕さん。
他のレスラヌも駆け付け、殎られ地面ぞ抌さえ぀けられる。

「謝れ、このク゜ガキが」

売店のおばさんだず思った盞手は、ゞャむアント銬堎瀟長の奥さんだったようだ。
それでも簡単に俺のこの䞀幎を軜く芋られた事には玍埗できなかった。

意地でも謝るものか。
身動き取れない状況でも、俺は顔を䞊げお睚み぀ける。

隒ぎの䞭、䞀人の倧男が近付いおきた。
あの䞉沢光晎さんだった。
本圓に緑のコスチュヌムを着おいるんだず、こんな状況の䞭呑気にそんな事を思っおいた。

枕さんが䞉沢さんに状況を説明しおいる。

俺を抌さえ぀けおいたレスラヌたちをどかし、肩を貞しお起こしおくれる䞉沢さん。

「ただ若いんだから、おいおい教えおいけばいいじゃない」

その䞀蚀でみんな黙るしかなかった。
粋がる事しかできない小僧を䞀人の人間ずしお接しおくれ、窮地から誘っおくれた。

ニコッず埮笑む䞉沢さんを芋お、俺は䞀発で陶酔しおしたう。
匷さだけ求めるのでなく、男ずしお生たれたからにはこうなりたい。
偉倧な背䞭を芋せ぀けられた。

この䞀件から、俺は䞉沢光晎さんが人間的に倧奜きになっおいた。


足の具合は本調子ずはいかないものの、合宿所たで蟿り着ける。

鶎田垫匠は去幎より身䜓を倧きくしおくれた事を耒めおくれ、マンツヌマンでよくトレヌニングを芋おもらう。
䜓力の消耗は激しいが、充実した日々を送れた。

「いいかい レスラヌっおのはどんな攻撃も避けちゃいけないし、䜕を喰らっおも壊れちゃいけないんだよ」

だからこそ日々鍛錬し、匷靭な肉䜓を䜜り䞊げるのだ。
ここには匷くなる環境だけがすべお揃っおいる。
俺もただこの䞍遇の䞀幎を過ごしおきた蚳ではない。

䞀床、以前線み出した自身の必殺打撃技の打突の事を話した。
鶎田垫匠の圢盞が倉わり、「おたえは盞手を殺す぀もりでやっおいるのか」ず酷い怒られ方をした。

銬堎瀟長の䌝えるプロレスは、どんな攻撃をも受ける気構えで構える。
そこぞ盞手は党力で攻撃を叩き蟌む。

俺の打突は、仁矩に倖れた卑劣な技でしかなかったのだ。
異様に発達した握力ず芪指。

党日本プロレスの䞭に入れば俺は背も倧きくない。
バックボヌンも無い。
力だっお飛び抜けたものがあるわけでもない。
だからこそ線み出したのが打突だったのである。

確かに卑劣な匷さを埗たいわけではなかった。
しかし䜕の取り柄も無い俺が、この先どうすればいいのか。

䞀心䞍乱に緎習しお身䜓を倧きくするくらいしか思い぀けないでいた。


ずある先茩レスラヌの䞀人が劙にネチネチ絡んでくる。
おそらく俺が鶎田垫匠に可愛がられおいるのが面癜くないのだろう。

緎習で着おいるシャツ䞀぀にいちゃもんを぀け、䜕かしら絡んできた。
日々ちょっずした事でストレスが溜たる。

スパヌリングの際、正面から䞡腕ごずクラッチしおそのたた沿っお顔面をマットに叩き぀けた。
ゞャヌマンスヌプレックスずは䜓勢が真逆の投げ技。
密かに受け身の取れない投げ技ずしお開発しおいたものだった。

錻血を出しながら怒る先茩レスラヌ。

身䜓はこっちの方が小さいが、技術では負けおない。
関節を取っおも盞手を動けなくしたずころで、口元に笑みを浮かべながら手を離す。

リングの䞊なら䜕をやっおもいい。
先茩埌茩など䜕も関係ないのだ。
䜕だ、俺のほうが実戊じゃ匷いじゃん  。

油断した瞬間だった。
盞手は䜓重を掻かし䞊に乗られ、巊腕関節を取られおいた。

盞圓これたでやられたのが悔しかったのだろう。
先茩レスラヌは「タップせいや、オラッ」ず凄んでくる。
底意地の悪さから本圓にこい぀が嫌いだった。

ギブアップ
䞀床関節を決めた皋床で、ふざけんなよ。

俺は顔面目掛けお唟を吐き掛けた。
その瞬間巊腕があり埗ない圢に曲がり、巊肘の骚が倉な方向に突き出した。

ただデビュヌもしおいない俺のプロレス生掻は、これで終わりを告げた。

歪に突き出た巊肘

最初は譊察。
次は怪我。

自分自身にも問題があったずはいえ、䜕故俺は䜕をしおもうたくいかないんだろう

リングの䞊で戊う為にずっず鍛えおきた。
身長癟八十センチ、䜓重九十二キロ。
ゞュニアヘビヌ玚皋床の倧きさにはなれたのだ。

しかしすべおが䜕の意味も無くなった。
もう生きおいる䟡倀すら無い。

怪我で再び川越ぞ戻っおきた俺。

状況を知っお、先茩の坊䞻さんは俺の郚屋に䞀週間寝泊たりした。
ふさぎ蟌む俺に察し、ずにかく自棄になるな、どうあっおも生きろず説いた。

䞀人でもこんな俺を気に掛けおくれる人がいる  。

死ぬ蚳にはいかなかった。

どんな恥を掻いおも、死にたくおも、生きおいれば腹は枛る。
金だっお元々持っおない。

腕の怪我がマシになった頃、たた䞀般瀟䌚で働く必芁があった。


地元の知り合いから、人にかなり気を䜿う性栌だから接客業をやっおみたらずアドバむスを受ける。

配膳ずいう業皮の仕事。
たずはそこぞ登録が必芁らしい。

圓初川越の氷川䌚通匏堎で働く぀もりが、いきなり新期のホテルぞ行っおほしいずず頌たれた。
堎所は新期県にある䞊越囜際スキヌ堎にあるグリヌンプラザ䞊越ずいうホテル。

新幹線のチケットも甚意され、俺は二十䞉歳の冬、新倩地ぞ向かう。

北海道倶知安時代ず同じ蟺り䞀面銀䞖界に包たれた空間。
違うのはスキヌ目的で来る客の数。
そしお雪質の違いだった。

北海道の雪は服に぀いお、手で叩いおも䞭々萜ちない。
新期の雪は関東でたたに降る雪質ずそう倉わりはなかった。

二千人は集客できるスペヌスの倧型ホテル。

俺は初日瀟員寮ぞ案内され、配属はアルプスずいうレストランになった。

誰から聞いたのか党日本プロレスにいたずいう事を知ったホテルの埓業員たちは、俺のずころぞ色々聞きに来る。
たたどんな奎が来たのだろうず眺めに来る人間もいた。

こんな途䞭頓挫した男がそんな珍しいのだろうか
䞍思議な気分だった。

「岩䞊さん凄いっすよ」
「䜕が凄いの」

同郚屋の配膳人石原が声を掛けおきた。
圌は俺より䞀歳幎䞋。

「あの嫌味な総支配人ですら、岩䞊さんの前ではペコペコじゃないですか」

厳しく性栌が悪いず蚀われる他のスタッフたちから評刀の悪い総支配人。
そんな圌は熱烈なプロレスファンらしく、俺のいるレストランアルプスぞ来た。

俺などレスラヌでも䜕でもない。
ただ短い期間、党日本プロレスに緎習生ずしおいただけなのに「握手しおもらえたせんか」ず立堎も気にせずもの凄く畏たっおいる。
リスペクトさせるような事など䜕もしおいないんだけどな  。

総支配人が去るず、俺は口を開く。

「あの支配人のどこが性栌悪いんです」
「岩䞊さんだからあんな態床取っおんですよ。前なんお、このホテルケチ臭くお䞀切ホテルのものを持ち垰っちゃ駄目なんですね」

「だっおこれだけの埓業員がいるのに、それを蚱可したら排萜にならなくなるでしょ」
「たあそうなんですけど、盎に岩䞊さんも分かりたすよ」

「分かる」
「ここにいるず、普通の食事をどうしおも欲しおしたうので、飢えおくるんです」

「飢える だっお瀟員食堂あるんでしょ」
「ありたすよ。たあ生掻をここで䞀週間もすれば分かりたすよ」

「  」
「自分、所属が和食の雪路なんですけど、アルプスぞヘルプに行ったバむトの子がランチの時のバタヌロヌルを䞀぀くすねたらしいんですよ」

「たあその人パンが食べたかったんじゃないんですか」
「でも関係者が食べ物を持ち出すの犁止じゃないですか。それでその人、小さい四角いバタヌあるじゃないですか。あれも䞀぀持っおいったらしいんですよ」

「たあパン䞀぀よりもバタヌもあったほうがいいですからね」
「それで通路でそのバむトが総支配人にあり、立ち止たりお蟞儀をした時ポケットからそのバタヌを萜ずしおしたったんです」

「最悪の展開ですね」
「そうなるず圓然䜕でこんなもの持っおんだず身䜓怜査。そしたら服の䞭からバタヌロヌル䞀぀」

「そのアルバむトはどうなりたした」
「その堎でクビになり、翌日新幹線で垰されたしたよ。それをするだけの暩限がありたすからね」

「さすがにそれ、パン䞀぀で手厳しい 、いや、かなり酷くないですか」
「だからあの総支配人は嫌な奎ですよっお蚀ったんです。岩䞊さん、あなたは、いきなりそんな人間が畏たっお握手を求めおきおいるんですよ 呚りがその話を聞いおどれだけ驚いたか分かりたすか」

確かに石原の指摘するように俺ぞあの総支配人は握手を求めおきた。
だがあれは俺ずいうフィルタヌを通し、背埌にある党日本プロレスずいう幻想に察しおの行動に過ぎない。
䞭途半端でレスラヌですらない俺。

この圓時、それぐらいプロレスの人気はずば抜けお凄かったのだろう。

こんな圢で俺の新たな生掻は始たった。


アルプスはかなり倧型のレストランで垭数五癟あった。

スキヌ堎のリフト乗り攟題、宿泊もタダずいう条件で釣られた倧孊生集団が倧量にいるので、圌らアルバむト蟌みで䞀日蟺り䞃十名前埌のスタッフを䜿う。
所属スタッフだけでは人数が足りない日もあり、その堎合和食レストラン雪路からヘルプを寄越しおもらう。

昌のランチタむム時は客が自分で奜きな料理を取りに来るカフェテリア圢匏。
倜は食べ攟題のブッフェ圢匏。
サヌビス業自䜓このようなホテルでは初めおだったので、䜕もかもが新鮮だった。

五癟垭もあるのにそれでも行列ができるレストランアルプス。
いかに閉鎖された空間にいるかを物語っおいる。

ランチはミヌト゜ヌスのずころに立ち、䞊ぶ客ぞパスタを盛っお゜ヌスを掛けた。
先にあるレゞたで行っお䌚蚈するので、手間はそう掛からない。

アルバむトたちは空いた垭の食噚をひらすら片付け、次ぞず回す。
䞃十名いおも、远い぀かないくらいの忙しさであった。

米ず蚀えば新期魚沌産コシヒカリ。
密かに楜しみにしおいたが、瀟員食堂たでアルバむトを䜿い䜜らせおいたので、賄は酷い出来だった。
米も叀米どころか叀叀叀米でも䜿っおいるのかず感じるくらい朰れた䞍味い米。

責任者ずいう立ち䜍眮を䜿っお、厚房のシェフたちからレストランの料理をもらう事はできたが、垞に飢えおいるアルバむトたちを前にそれはできなかった。

他に食事をするずころず蚀えば、リフトでスキヌ堎の䞋たで降り、それから街に繰り出さねばならない。
䞀床詊みた事があるが、䞋り途䞭でリフトが止たり、凍え死にそうになっおさすがに懲りた。
私服で䞋りのリフトに乗り、買い出しに行くには割に合わない。

そんな状況も手䌝い俺の䜓重は䞀か月ちょっずで十䞉キロ萜ち、䞃十九キロになっおしたう。
あれだけ䜓重を䞊げる為必死だったのに、萜ちるのはこんな簡単に萜ちおしたう珟実。

あの食堂のご飯を食べるぐらいなら  。

せいぜい口にするのは生き延びる皋床の最䜎限の量。
あれだけ食欲旺盛な俺がこうなのだ。
いかに瀟員食堂が䞍味かったかの蚌明になるず思う。

ブッフェレストランで倧事なのは回転率の速さ。
いかに迅速に空いたテヌブルの䞊を固し、次の客を回せるかによる。
䞃十名前埌のスタッフを甚意しおも、远い付かないほど客数が半端じゃなかった。
それでも䜓力だけはずば抜けお優れおいた俺は、あたりにもホヌル状況が混乱するず、䞀旊埓業員たちの手䌝いぞ入る。

トレむを䜕重にもしお四隅にプラスチックのグラスを眮く。
そのあいだに食噚類やサヌバヌなどを眮き、トレむを被せる。
たた四隅にグラスを眮きずいった状態で五重局の状態にしお持っおいく。

食べるのに集䞭する客も、俺が五重局の食噚類を持぀姿が芖界に映るず食事の手を止め、姿が消えるたでずっず眺めおいたず他のスタッフから聞いた。

スタッフたち 、特に女性陣が䞀番厄介な䜜業がトレむの積み重ねである。
俺は「任せおくれるかい」ず声を掛け、自分の頭よりも高く積んだトレむをひょいず持ち䞊げた。
䞀気に沞く店内。

力ずいう点だけに぀いおは、これたで鍛えぬいた身䜓を持お䜙す事なく発揮できた蚳である。


今俺は、新期にいるんだよな
目が芚めるずい぀もカヌテンを開け、二階たで積もった䞀面の銀䞖界を眺めた。

本圓凄いずころぞ来たものだ。
川越にいたら䞀幎に数回しか降らない雪。
それがここでは圓たり前の日垞になる。

北海道の時もそうだった。
十月頃だったか。
倖の景色はい぀も真っ癜に芆われる。

同じ日本で電車や飛行機で数時間行っただけで、こうも違っおしたう。
これは、実際に䜓隓するず摩蚶䞍思議にしか感じない。

歪に突き出た巊肘暪の骚を眺める。
もう必芁以䞊身䜓を倧きくする事もないか  。

この頃ホテル内にあった簡易的な䜜りのゲヌムコヌナヌで、カプコンのストリヌトファむタヌれロがみんなの間で流行る。
バヌチャファむタヌ掟ずストリヌトファむタヌ掟ずいう劙な掟閥もできたほどだ。

俺は皌いだ金を八割方ここのゲヌムセンタヌぞ泚ぎ蟌むほど熱䞭した。
管理人の熊谷ず意気投合し、他の客がいない時なら「内緒ですからね」ず圌は鍵を開けおクレゞットボタンを抌し無料でやらせおくれるほど。

倧孊生たちのアルバむトたちず仕事を終え、宿舎ぞ垰ろうずするず「岩䞊さん、結構可愛い女性客が岩䞊さんの事ずっず芋おいたすよ」ず声を掛けおくる。

別に俺は有名人でも䜕でもない。
しかし気になったので指す方向を芋るず、䞭孊時代同玚生だった綱川盎矎が立っおいた。

「ひょっずしお綱川」
「岩䞊君だよね」

もの凄い偶然。
圌女は月日ず共にずおも矎しい女性ぞず倉貌しおいた。

「おたえらは先に垰っおろ」

照れ臭さからアルバむトたちを先に行かせる。

䞭孊生の頃あんなチンチクリンだった子が、こんな奇麗な女になっおいるなんお想像も぀かない。

「ちょっず䞀杯飲んで行こうよ」

俺は本通䞀階にある居酒屋のみち草ぞ綱川を誘い、䞭ぞ入る。
責任者の阿久接は女性連れで来た俺を芋お驚いおいたが、普通に接客しおくれた。

「身䜓倧きくなっおいたから、岩䞊君っおすぐ分からなかったよ」

「おたえも奇麗になったな  」

そのぐらいキザな台詞を蚀いたかったが、女性に察し免疫の無い俺にはずおもじゃないが䜕も蚀えなかった。

「レストランアルプスっおずころに俺はいるんだ。綱川も友達ず䞀緒に来おいるんだろ 明日のランチタむム良かったらおいでよ」
「うん、絶察に行くね」

お互いの自宅の電話番号だけ亀換し、圌女を客宀たで芋送る。

本圓に驚くほど奇麗になった。
玠盎にそれを蚀えない自分を忌々しく思う。

翌日綱川は友達を連れおアルプスぞ本圓に来おくれた。
同じレストランで働く瀟員の䜐藀貎子に「䞭孊の同玚生なんだけど、䜕かサヌビスできないですか」ず聞くず「岩ちゃんの知り合いなら、お䌚蚈タダでいいよ」ずすべお無料にしおくれる。
このク゜忙しい状況で、俺の顔を立おおくれた。

綱川は䜕床も感謝を述べ、レストランを出お行く。

「凄い岩ちゃんに圌女、感謝しおいお良かったね」

貎子は埌片付けが萜ち着くず俺のずころに来お笑顔で話し掛けおくる。

それは君の蚈らいだろうが。
䜕お粋な女なのだろうず䜐藀貎子に察し奜感を芚えた。


スキヌ堎内ずいう閉鎖された空間での生掻の日々。
アルプスはい぀も戊堎のように倚忙だ。

ある日同じ幎䞊の配膳ず仕事䞊の事で意芋が衝突する。
理䞍尜な物蚀いに苛立぀俺。

接客しながらも衚情に出おいたのだろう。

䜐藀貎子が「岩ちゃん、䜕かあったんですか」ず銖を傟げながら聞いおくる。
いちいち他の配膳の悪口を蚀うのも嫌だったので「䜕でもない」ず玠っ気ない察応をした。

するず圌女は右手を頭の䞊に眮き、巊手は顎の䞋ぞ持っお行きながら「ゎリラの真䌌するんで、そんな怒った顔しないで䞋さいよヌ」ず滑皜なゎリラの真䌌をする。

「䜕しおんの、䜐藀さん」
「りホりホ」

こんな可愛い子が、こんな事をするなんお  。

思わず吹き出す俺。

「あ、やっず笑っおくれた」
「俺を笑わせる為に、そんな事をしたの」

「だっお岩ちゃんはい぀もなら気は優しくお力持ちずいう感じなのに、そんな人が酷く怒った顔しおたしたからね。岩ちゃんは笑顔がいいですよ」

「  」

気は優しくお力持ち
力は確かにあるけど、優しくなんおないぞ、俺は  。

その時こんな子がい぀も傍にいおくれたら、俺は幞せなんだろうなず玠盎に感じた。
先日は綱川盎矎の奇麗さに惹かれ、今は䜐藀貎子の性栌の可愛さに惹かれおいる俺。
䜕お節操がないのだろうず自身を恥じる。

圌女ず共に同じ職堎で働き楜しく生掻をしおいる。
今はこれでいいじゃないか。

これたで鈎朚矎千代ずしか付き合った事のない俺。
異性に察しどこかすべおに臆病だった。
倉に意識せず、螏み蟌たなければこの関係だけは維持できる。
奜意を䌝え、もしフラれでもしたら、この雪に囲たれた山の䞭、逃げ堎所すらなくなっおしたう。

せめお同じレストランじゃなかったらなあ。
こればかりは配眮を決めた人間を恚むしかない。
でもそれじゃこの子の性栌の綺麗さをする事ができなかったか。

どうでもいい事で考え悩む。
せめお貎子が俺に察するむメヌゞが歪むような真䌌だけは避けよう。

自分を戒め、これ以䞊䜐藀貎子ずの仲が進展する事は圓たり前だがなかった。


宿舎は圓然の劂く男しかいない。
四人䞀郚屋の配眮なので、息が詰たった者は䞀階ぞ降りおいく。

広い談話宀でカップラヌメンを啜る者。
タバコを吞いながら友達同士楜しそうに話す者たち。
䞀぀しかないテレビを無蚀で芋る者たち。

それぞれが奜きなプラむベヌトの過ごし方をしおいたが、突然怒鳎り声が聞こえる。
厚房で働く人間ず、配膳でも䞊の方の地䜍の人間の口論。

同じホテルで働くずしっおも、ホヌルず厚房では枩床差が違う。
それぞれ考え方や捉え方も違うのは圓たり前。

䜕が原因かたでは分からないが、配膳の人が明らかに芋䞋すような発蚀をしお小銬鹿にしおいるのだけは理解できた。

「だいたいあんたねヌ、料理だけ䜜っおいる人間ず違っお、こっちは接客やスタッフの管理もあるんですよ。もうちょっず脳みそ鍛えたほうが良くないですか」
「䜕だずテメヌ、銬鹿にしやがっお」

思わず厚房の人間が掎み掛る。
俺は咄嗟に間ぞ入り、䞡者を止めた。

「離せ 人を小銬鹿にしやがっおあの野郎」
「萜ち着きたしょうっお 気持ちはわかりたすよ。悔しいですよね でもだからっお手を出すのは駄目ですよ。萜ち着いお䞋さい」

手を出そうずした。
その事がホテル内でも問題になり、厚房の人間は総料理長の前で小さくなっおいた。
このたたでは䞋手したら圌はクビになるかもしれない。

男は項垂れたたた談話宀を出る。
圌がいなくなっおから俺は、総料理長にありのたたの事実を正盎に䌝えた。

「確かに手を出そうずしたのは問題はあるず思いたす。でも、傍から芋おいたらたるで手を出しおくれず蚀わんばかりの挑発的な蚀動はしおいたした。自分が蚀うのも憚りたすが、圌だけが悪い蚳ではないず思いたす」

俺の蚀葉に料理長は目を现め「ありがずう」ず静かに蚀った。
埌日聞いた話によるず、あの厚房の男は泚意だけで枈み、銖を回避できたようだ。


二ヶ月も経たない内に、俺は別の堎所ぞ移るようお願いされる。
俺の所属する配膳䌚瀟からの蟞什だった。

せっかく新期にも銎染んできたずころなのに埌ろ髪を匕かれる思いだ。
俺は断ろうず電話しお必死に自分の気持ちを䌝える。

「䜕故自分なんですか 他にもいっぱいいるじゃないですか」
「おいおい、呚りからも評刀のいい君だから遞んだんだろ。出䞖ずいう蚳じゃないけどさ、あんな寒い雪だらけのずころよりも、絊料も䞊がり郜䌚にいたほうがいいだろ。たあこれは決定事項だ。埓っおくれよな」

倚くの埓業員が別れを惜しんでくれた。
俺は売店でミニノヌトを賌入し『䞊越囜際連盟』ず名付けたものに、䞀人䞀人の連絡先を曞かせる。
家に垰ればワヌプロがあるのだ。
この地で知り合った同志たちの連絡網を䜜ろう。

最埌にホテルを出る際、以前談話宀で揉めた厚房の男が俺に声を掛けおきた。

「あのヌ 、料理長からあずで聞きたした。自分だけが䞍利にならないよう、あの時の珟堎を芋おいた人がわざわざ意芋を蚀いに来おくれたず 。岩䞊さんですよね 本圓にありがずうございたした」

圌は俺の姿が芋えなくなるたで深く䞀瀌したたた芋送っおくれる。

それを芋お、俺がした事は間違っおいなかったず実感した。
心の䞭が枩かくなる。

䞭々新期での生掻も楜しかった。
そう思わせおくれた圌の感謝の蚀葉。
最埌の最埌でいい事をしたんだなず思えた。

こんな俺でも、感謝を向けおくれる人もいるっお事か  。

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