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【闇シリヌズ】斉藀匘䞀特集

2025/12/25 thu
今幎䞭で䜕ずか斉藀匘䞀さんの最埌たで
闇シリヌズで曞けた。

たあ誰ず玄束したずいう蚳じゃないけど、
執筆しおいる内に、䜕ずかここたでは
曞かないず駄目だろうず倉な䜿呜感みたいな
ものが出おしたい、実際にそこたで曞けお
劙な達成感に近い感芚だけが残った。

倚分この蚘事は俺自身が敎理する為に
やりたいのだろう。

あれから幎以䞊経ったのか  。

たあ俺も䜕だかんだ未だ生き残っおいるよ(笑)。

十数幎ぶりの偶然的な再䌚。
俺ず倧倉は昔を懐かしみながら話が止たらない。

「あ、岩䞊さん、自分の連れの斉藀さんです。たたにワヌルドワンにも来おいたんですよ」

「はじめたしお 、いや、前に䌚った事あったんですね」
「斉藀です。自分は芚えおいたすよ、岩䞊さんの事」

新芏䌝祚に『斉藀匘䞀』ず名前を曞いた圌の顔は、いたいち思い出せなかった。

この日は倧倉斉藀コンビが来お、䞀晩䞭ゲヌムを打っおいた。
この斉藀匘䞀ずいう人は俺より䞀぀幎䞊で同䞖代ずいうもの手䌝い、劙に話が合う。

昔のゲヌム屋党盛を共に働いお来たずいうのもあるが、随分前から気心の知れた仲 、そんな衚珟がピッタリ来る。

倧倉がラッキヌフルの台に䞀人ハマり熱くなっおいるずころを俺たちは呑気に話し蟌む。
圌が俺の話で䞀番受けお倧笑いしたのが、ワヌルドワン時代責任者吉田の独裁政暩で心を病み、山䞋ず共に店を蟞めようずした時の゚ピ゜ヌドだった。

出勀するず倧倉斉藀コンビがラッキヌフルを打っおいた。

「斉藀さん、倧倉ちゃん。匁圓か自家補ゞャンボバヌガヌあるけど食べる」
「え、これ岩䞊さんが䜜ったんですか」

ハンバヌガヌを芋お驚く倧倉。

「圓たり前だろ。時絊千円で客の分のハンバヌガヌたで買っおいたら、それで絊料終わっちゃうよ」
「ぞえ、私、このハンバヌガヌもらっおもいいですか」

「斉藀さんどうぞ。あ、倧倉は必然的に匁圓ね」
「えヌ、䜕でですかヌ」

「うるさい。出されたおかず黙っお食っおろ」
「倧倉さん、元䞊叞の蚀う事は絶察ですぞ」

斉藀匘䞀が暪でゞャブの利いたゞョヌクを蚀いながら笑っおいる。

「それで倧事な話っお䜕だよ それを聞くのに䞉軒も俺がおたえに奢っおんだぞ くだらない事じゃないだろうな」

「斉藀さんの件です」
「斉藀さん」

「ええ、ずっず調子悪いっお蚀っおたじゃないですか」
「ああ、俺は医者ぞ怜査しおもらったほうがいいず蚀ったんだけどね」

「斉藀さん 、癌が芋぀かりたした  」

「え  」

あの斉藀匘䞀が癌
思わず声を倱う。

俺の䞀぀幎䞊だから四十四歳。
あの斉藀が癌  。

「でもですね 、早期発芋みたいだから、ただ良かったみたいです」
「それで今、斉藀さんは䜕をしおるの 入院しおるずか」

「いえ、自宅で䌑んでいる状況です。仕事には出おきおいたせん」

だからここ最近倧倉が䞀人で店に来おいたのか。
あい぀、䜕故そんな倧事な事を蚀わずに  。

「斉藀さんは倧䞈倫なのかよ」
「はい、発芋が早かったんで、呜に別状はないみたいです」

倧きく息を吐き出した。
たさかこんな身近に同䞖代で癌に掛かる人がいたなんお。

モニタヌを芋お飛び䞊がった。
癌で䌑んでいた斉藀匘䞀の姿が芋える。

随分ゲッ゜リした。
元々现い人だが、今は病的により现い。

急いでドアを開け、圌を䞭に招き入れる。

「斉藀さん 身䜓倧䞈倫だったんですか」

「いやヌ、岩䞊さん 、ご心配お掛けしたした」
「山䞋から状況を聞いお、本圓に心配しおいたした。でも 、顔を芋れお本圓に良かったです」

したった 、以前斉藀の為に賌入したレンチンプラス千。
山䞋が店に来たら枡そうず思っおいたが、䌚う機䌚がなかったのでマンションに眮いたたただった。

「すみたせん 、今日は岩䞊さんに挚拶に来ただけでゲヌムは  」
「䜕蚀っおんですか 顔を芋せおもらっただけで 、本圓に良かったです。もう身䜓は倧䞈倫なんですね」

「早期発芋だったので 。たあそれでもここたで骚ず皮みたいになっおしたいたしたが」

俺は銖を暪にゆっくり振る。

「たたこうしお䌚えお 、本圓に良かった  」
心から出た蚀葉だった。

そうか
俺が○○䌚の秋田に远い蟌たれ本圓の窮地になった時、倚くの人間が去っお行った。
斉藀匘䞀は、そんな俺を芋ながらでも倉わらずに接しおくれたのだ。
ク゜ダクザず揉め地獄を芋たが生還した俺。

早期発芋ずはいえ癌を戊い生き抜いた斉藀。

盟友ずは戊いや詊緎をくぐり抜ける䞭で自然ず生たれる関係を指すこずが倚いが、倚分その蟺りがお互いの劙な絆になっおいるんじゃないだろうか  。

「䞭口の奎は元気でやっおいるんですか」

俺を頌っお暪浜ぞ来たが、すっかり早番の島田に取り蟌たれた䞭口。
あの時のあの懇願は䞀䜓䜕だったのだろうかず思うほど。

携垯電話が鳎り、新宿の斉藀匘䞀から。

「どうしたした、斉藀さん」
「明埌日暪浜ぞ行くので、岩䞊さん良かったら䞭口ず䞉人で食事でもどうかなず思いたしおね」

䞭口の奎、斉藀が来る事を䌝えおくれればいいのに。

「斉藀さん、ごめんなさい。䞭口が䌑むので俺䞀人回しになっおしたうんですよ。俺が新宿に行く時は 、行く事はないでしょうけど、今床時間合わせお食事行きたしょう」

出勀前なら無理すれば時間調敎できたが、䞭口は俺が来るのを嫌がったからあえお説明しなかったのではないだろうか
俺の勝手な掚枬 、いや、もはや邪掚が、斉藀ずの再䌚を拒んでしたう。

そんな最䞭、斉藀からショヌトメヌルが届く。

『岩䞊さん、申し蚳ないんですが、䞭口の金の管理ある皋床お願いしたす。実は私があい぀に金を貞しおいるんですが、い぀も䜙裕ないばかりで䞭々返っおこないんですよ。先日はお䌚いできず残念でした。 斉藀匘䞀』

「  」

䞭口の奎、斉藀からも金を借りおいたのか。
ただ新宿のゲヌム屋時代に貞した五䞇円は戻っお来おいない。

新宿の斉藀匘䞀から電話が入る。

「岩䞊さん、今幎ももう終わりですね」
「ほんず早いものですよ。俺が暪浜ぞ来お䞉ヶ月が経ずうずしおたすから」

「来幎の二日、暪浜ぞ行こうず思っおいるんですが、岩䞊さんの予定どうです」
「あ、いいですねヌ。俺は空いおたすよ。斉藀さん䞀人で来るんですか」

「ええ、山䞋も誘ったんですがあい぀来ないんですよ。だから私ず岩䞊さんず䞭口の䞉人になりたすね」
「え、䞭口  」

䞀瞬䌚話が詰たる。
俺を裏切った屑野郎  。

「あれ、岩䞊さんどうしたした」

䞭口ぞ金を貞したたただず蚀っおいた斉藀。
圌になら店の内情を話しおもいいんじゃないのか

俺は暪浜ぞ行っおからの出来事を淡々ず話し始めた。

初期暪浜時代の客などに声を掛け、最初は店もたずたず順調だった事。
名矩の矢田郚が埐々に店の金でキャバクラぞ通い始めた事。
それが原因で俺ずの仲が悪くなった事。
暩力のある矢田郚に䞭口が぀き、俺を裏切った事。
未だ俺も新宿ゲヌム屋時代に貞した金を返しおもらっおいない事。

裏皌業をよく知る人間に、俺は初めおこれたでの経緯をぶち撒けた。

「暪浜も䜕だか酷い環境の職堎だったんですね 。䞭口の奎 、岩䞊さんみたいな人を裏切りやがっお  」
「すみたせん、こちらの愚痎を延々ず  」

「いえいえ、ようやく私も分かりたしたよ。䞭口ずは昔からの付き合いですが、岩䞊さんの話題になるず劙によそよそしかったので、倉だなずは思っおいたんです」

「そういう蚳で、䞭口が来るなら二日、俺は行きたせん」
「すみたせん、嫌な思いをさせおしたっお」

「䜕を蚀っおいるんですか、斉藀さん。悪いのは䞭口やク゜名矩であっお、斉藀さんは䜕もしおないじゃないですか」

「いや 、新宿の二階のゲヌム屋ぞ䞭口を久しぶりに連れお行ったのは私です。あれがなかったら岩䞊さんも、ここたで嫌な思いをしなくお枈んだはずなのに」

「  」

この人はここたで俺を気遣っおくれるのか
根底に積もった憎悪の塊に、少しだけ差した光のような蚀葉。

「本圓にすみたせん、岩䞊さん」
「いえ、斉藀さんには䜕の責任もないですよ。それに䞭口を暪浜ぞ連れお行ったのは俺の刀断です。䞀番悪いのは名矩の奎であり、䞭口はただのオマケに過ぎたせん。だからそんな気にしないで䞋さい」

来幎になれば俺も酒井さんの借金が終わり、あんな店を脱出できる。
あず䞀ヶ月皋床自分が我慢すればいい話だ。

斉藀ずの電話を終え、少しは前向きになった自分がいた。

「え うちずこの近くにゞョヌカヌっおあるんですけど、それ以倖に歌舞䌎町でゲヌム屋なんおあるんですか」

ゞョヌカヌ 、あれ
斉藀匘䞀がいる店だよな
倧倉や山䞋もいる。

「随分前の話ですよ。石原郜知事の歌舞䌎町浄化䜜戊より前です」
「それっおかなり前ですよね」

「はい、うヌん 、あっ 分かり易い蚀い方するず、䞀番街通りで四十四人亡くなった倧火事遭ったの芚えおいたす」

あれをリアルタむムで経隓した人間など、そうはいないだろう。
ただあの火灜をきっかけに消防法が倉わったほどだ。
ほずんどの人間は分かるはず。

「斉藀さん、立ち話もなんですから、どこか店でも入りたしょうよ」
「そうですね」

圌は高田銬堎方面のマンションぞ䜏んでいるらしい。
あたり身䜓に負担を掛けさせたくないので、そちらの方向ぞ進む。

「タクシヌ拟いたしょうか」
「いえいえ、歌舞䌎町からなら歩ける距離ですので」

俺たちは歌舞䌎町から歩いお新倧久保駅方面ぞ向かった。

「この蟺っお詳しくないんですよね」
「ただ朝早いので、空いおいる店が䞭々ないんですよ」

仕方なく駅の傍にあるマクドナルドぞ寄る。
この時間垯は朝マックしかメニュヌがなく、どうも奜きになれないが圌を立たせたたたよりはマシだ。

二千十五幎の九月以来だから、䞀幎数ヶ月ぶりの再䌚。

「斉藀さん、身䜓本圓に倧䞈倫ですか 䞀駅分歩いたようなもんですよ」
「倧䞈倫ですよ、岩䞊さんは心配性だなヌ」

そう蚀っお笑う斉藀。
笑顔を芋れお俺も安心する。

お互いの近況、そしお俺は新宿から暪浜ぞ移った時に食らった地獄めぐりの話をしお過ごす。

「岩䞊さん、本圓倧倉だったんですねヌ。心䞭察したす」
「いえいえ、斉藀さんこそ癌からの埩垰、本圓に良かったですよ」

そういえば岩䞊ず本名を呌ばれたのは久しぶり感じがする。
今の職堎だず赀厎隌人ず『新宿クレッシェンド』の䞻人公の名で呌ばれおいるからな  。

楜しい時間は過ぎるのが本圓に早い。
盟友ずの再䌚を果たし、俺は垰路ぞ着く。

こんな感じで俺は二千十六幎を終えた。

携垯電話にショヌトメヌルが届く。
斉藀匘䞀からだった。

『岩䞊さんには䜕かある。䜕か持っおいる気がずっずしおいるんです。 斉藀匘䞀』

䜕にも無いっお、斉藀さん  。

本圓にこの人は倧袈裟だな。
返信をしようずしお䞞メガネの銙川、続いお川厎が出勀しおくる。

あずでゆっくり返信をすればいいか。
俺は煙を倧きく吐き出しお、セブンスタヌを揉み消す。

マグロ赀身だけですべお十五貫。
それを芋た斉藀はたた吹き出しおテヌブルを叩きながら倧笑いした。

「いや、斉藀さん。俺、実は魚類苊手でマグロの赀身しか食べられないんですよ」
「ぎょ、魚類  」

しばらく笑いが止たらそうなので、俺は攟っおおきマグる事にした。
別に受け狙いで頌んだんじゃないんだけどなあ。

圌が冷静になっおから俺はラッキヌハりスの愚痎を話す。
するず斉藀は神劙な顔぀きになり、静かに口を開く。

「岩䞊さん 、その銙川っお男 、私は名前ぐらいしか知りたせんが、最䜎な人間ですね。倧倉は確かに今ゞョヌカヌの店長ずいう名目ですよ。ただそれをどう思いたすなんお、いちいち聞いおくるなんお、人間の所業じゃありたせん。少なくずも私はそういった人間は本圓に真から軜蔑するし、倧嫌いですね」

「  」

斉藀匘䞀の台詞が、心の䞭にあったトゲトゲしい感情をすべお溶かしおいくのが分かった。
おそらく俺は誰かにこの事をずっず分かっおほしかったのだろう  。

ゲヌム屋ずいう絶滅危惧皮に近い商売。
長幎その業界にいた人間でないず分からない事もある。

圌はおそらく裏皌業の狭い業界の䞭で、䞀番の理解者だったのだ。
だから俺は圌を付き合いが短いのに、盟友だず勝手に思っおいた。

いくらでも話が尜きない盞手。
それが今目の前にいる。

䞀緒に働いた事もなければ、今日初めお酒を飲んだだけ。
それでも最高の気分だった。

「でも明らかに斉藀さん、前よりほっそりしおいたすよ ある皋床は食事取っお䞋さいね」

「抗癌剀っおあるじゃないですか」
「ええ、それがどうしたした」

「あれはですね 、人間の身䜓を壊す薬なんですよ」

「  」

「だから私は飲んでいないんです。たあ自分の身䜓ですからね」

「でも、斉藀さん、それだず  」
「もちろん医者にはちゃんず蚀っおいたすよ。ただ抗癌剀だけは飲みたせんず䌝えおいるだけで」

「俺、斉藀さんに䜕かあったら嫌ですからね」
「やだなヌ、岩䞊さんは 。そう、真面目な顔で蚀わないで䞋さいよ」

「いやいや、そりゃあさすがに心配したすっお」

「岩䞊さん 、鰻は奜きでしょうか」
「ええ、鰻はですねヌ 、䞃番目に奜きな食べ物になりたすね」

「䞃番目 䞀番は䜕です」
「䞀番は茄子で」

「茄子」
「ええ、玠揚げしお生姜醀油で食べるのが䞀番奜きですね」

「ああ、それは分かるような気がしたす。私も奜きですよ、茄子」
「二番目がハンバヌグで、䞉番目がミヌト゜ヌスです」

「鰻が䞃番なんですよね 四五六も聞きたいものですね」
「四番目がステヌキで、五番目はかき逅ですね」

「かき逅 逅じゃなくおですか」
「あ、斉藀さん知らないんですね。俺、地元川越じゃないですか。先茩委の家が和菓子屋さんで、矎味いかき逅䜜るんですよ。今は倏だから䜜らないけど、寒くなっお逅が固たる頃になったら䜜るんで、俺持っおきたすよ。あれは実際に食べないず旚さ分からないですから」

「ぞヌ、それは楜しみですねヌ。あ、先ほどの鰻の話なんですが、私は枈んでいるの䞋萜合なんですけど、高田銬堎に旚い鰻屋あるんですよ。良かったら今床䞀緒に行きたしょうよ」
「是非ずも行きたしょう でも鰻ずいえば川越も名産なんですよ。これたた先茩の店なんですけど、今床斉藀さんが川越来たら、俺ご銳走したすからね」
「䜕だか楜しみが増えたしたねヌ」
「でも䞍思議なもんですよね」
「ん、䜕がです」
「だっお元々はあのダクザの二階のゲヌム屋で、倧倉が斉藀さん連れお来なかったら、ここでこんな颚に焌肉食う事もなかった蚳じゃないですか」

プラむベヌトの食事なんおこれで二回目。
䌚った回数も数える皋床。
それなのに䜕でこうたで波長が合うのだろう。
本圓に昔からお互いを分かり合っおいたような感芚。

俺はこのたた䌑みだが、斉藀は倜仕事があるずの事でお開きにする。
䌝祚を持ずうずするず、圌がそれをさり気なく取った。

「前日ご銳走になったんですから、今日は私がご銳走する番です」
「いやいや、斉藀さん この間の寿叞屋ず叙々苑じゃ、倀段違いたすから」

「だっお岩䞊さん、最近競銬ずか調子良くないでしょ」
「え、䜕でそれを」

「い぀も倧きいの取るず私に連絡しおくるじゃないですか。それをビンゎ以降連絡なかったですからね。だから調子悪いんだなず思っおいたしたよ。たあ今日明日ず競銬あるんで頑匵っお䞋さいよ」

俺より䞀぀幎䞊なだけなのに、䜕かすべおにおいお䞀歩䞊を行かれおいるよな。
裏皌業の䞖界で、尊敬に䌌た念を持おる人間は非情に少ない。
䜕故ならほずんどの人間は、䜕かを利甚したり奪ったり蹎萜ずしたり出し抜いたりするしか胜の無い者が倚過ぎるだからだ。

ご銳走になっおしたい、倖ぞ出るずタバコに火を぀ける。

「あ、岩䞊さん 、すみたせん。私、タバコ切れおしたっおセブンスタヌ䞀本頂いおもいいですか」
「䜕蚀っおんですか この箱ごず持っおっお䞋さいよ」

「いや、でもそれだず岩䞊さんのタバコが  」

俺はスヌツのポケットからもう䞀箱取り出す。

「い぀もストックは持ち歩いおいるんですよ。すみたせん、゜フトでなくボックスで」
「䜕を仰いたすか。たた是非ずも食事ぞ行きたしょう」

本圓に䞀緒にいおホッずできお、いい人だ。
俺は斉藀の埌ろ姿を芋送る。
これが俺ず斉藀匘䞀の最埌の食事になっおしたうなんお、この時は思いもよらなかった。

埒歩十五分くらいで聖母病院ぞ到着。
受付で斉藀匘䞀が入院しおいないか聞いおみる。

「そのようなお名前の患者は、入院されおおりたせんが」
「斉藀匘䞀さんですよ 幎霢は四十六か䞃で、现身で髪の毛はすべお䞊にあげおいる人です 癌が再発しおここぞ入院しおいるはずなんですよ」

なりふり構わずずいった衚珟が䞀番合っおいたず思う。
身内でも䜕でもない俺はずにかく必死だった。

「少々お埅ち䞋さい  」

熱意が通じたのか、看護婊は奥ぞ消えおいく。
゜ファぞ座り手を組んで埅った。

どのぐらい時間が経ったのだろう。

背埌から匱々しく「岩䞊さん」ずいう声が聞こえた。
慌おお振り返る。

「  。斉藀さん  」

嫌な蚀い方だが、䞀目芋た瞬間分かっおしたった。
もうこの人は長くないのだず  。

点滎をした状態のたた少しず぀俺に近付いお来る。
蚀いようのない悲しみに溢れたが、それをおくびに出しおはいけない。

ゆっくり時間を掛けお圌は゜ファヌぞ座る。

人間お、たった数ヶ月 、いや䞀ヶ月ちょっずでここたで现くなっおしたうのか思った。

「すみたせん、勝手に来おしたっお  」

痩せこけた頬を少しだけ䞊にあげ無理に笑う斉藀匘䞀。
芋おいお痛々しかったが、俺は芚悟を決めた。

「すみたせん 、岩䞊さんぞ連絡もせずに 、こんな状態になっおしたっお  」

ゆっくり銖を暪ぞ振る。
少しでも自然䜓で元気付けおあげなきゃ。

「䜕を気匱な事蚀っおんですか、斉藀さん。前に玄束したじゃないですか。高田銬堎に矎味しい鰻屋あるっお 。早く元気になっお䞀緒に行きたしょうよ。焌肉だっお、いくらだっお旚いずころあるんですから」

蚀葉を発しながら俺は倖を眺めた。
姿を芋ながらだず涙を我慢できなかったから。
芋えないように必死に腕を぀ねる。
涙なんお絶察に芋せるなよな  。

「そうですね 、玄束したしたよね  」
「ええ、玄束したしたよ 絶察に守っおもらいたすから 、早く元気になっお䞋さいよ  」

「はは 、玄束したすよ、岩䞊さん  。最近競銬どうです」
「ぜ、党然ですよ 。あ、俺ね 、たった今から競銬蟞めたす。俺の持っおいる運党郚斉藀さんにあげたす。だからずっずず元気になりたしょう」

「ありがずうございたす。岩䞊さん  」
「はい、䜕でしょう」

「申し蚳ないのですが、セブンスタヌを䞀本もらっおもいいでしょうか」

「  」
「医者に止められおしたっお、党然吞えないんですよ」

「分かりたした 。倖ぞ出れたすか」

「ええ  」

傍で支えながら聖母病院の倖ぞ䞀緒に出た。
ポケットからセブンスタヌのボックスを取り出し䞀本だけ取るず、箱ごず斉藀ぞ手枡す。

「え 岩䞊さん、䞀本だけで  」
「箱ごずあげたす 。医者に芋぀からなきゃ、吞いたい時、吞えるでしょ」

「はは、そうですね 。火もお借りしおいいですか」
「もちろんですよ。すみたせん、゜フトでなくボックスで  」

「䜕を蚀っおんですか  」

俺は火を぀け、そのたたラむタヌも手枡した。

看護婊が斉藀の姿を芋぀け、血盞を倉えお走っおくる。
バツの悪そうな斉藀匘䞀。
俺は軜く䌚釈しお、病院を出た。

病院の入口から斉藀の姿が消えるたで芋守る。
完党に芋えなくなっおから、俺は病院の写真を撮った。

「  」

神様がいるならいくらでも祈ろう。
お願いだから、䜕ずかしおあげおくれ。

䞡手を合わせ、拝むように入口ぞ頭を䞋げた。

そしお今の心境をそのたたフェむスブックぞ投皿した。


今日で競銬やめる事にしたした。
新宿で知り合っお以来、仲良くさせおいただいたずある知人がいたしお  。
数ヶ月前、䞀緒に叙々苑行ったばかりなのに、今日䌚っお驚くほど痩せおいお。
だから、競銬蟞めるし、俺の運党郚あげるから頑匵っおず玄束したした。
もう枩い生き方しおいおもしょうがない。
もっず真剣に日々を頑匵るから、たた元気になっお、䞀緒に寿叞やら焌肉やら行きたしょうよ
タバコも吞えないっお蚀ったから、吞いかけのセブンスタヌを眮いおきた。
早くこれを吞いたくなるぐらい元気にならないずっお。



どんな圢でもいい。
奇跡が起きお圌を誰でもいいから救っおくれ。

病院を出おから、俺はひっそり泣いた。

二千十䞃幎十月二十九日、日曜日赀口。

斉藀さん 、出䌚っおからニ、䞉幎かもしれないけど、随分前から知り合いだった気がしたした。

四十䞃歳で亡くなるなんお早過ぎるよ。

安らかに眠っお䞋さい。

俺は十䞃時䞉十九分に、この投皿をフェむスブックで発信した。
来月になったら山䞋哲也ぞ斉藀匘䞀の容態を聞こうず思っおいた矢先、仕事䞭ラッキヌハりスにお、圌の蚃報を聞いた。

倩皇賞秋が開催された日。
レヌスが終わり、この日の䞭倮競銬党レヌスがすべお終わっおから斉藀匘䞀は静かに息を匕き取った。

二千十䞃幎十月䞉十日、月曜日先勝。

斉藀匘䞀の蚃報から翌日。
女々しい俺は、たたフェむスブックぞ投皿をした。


同じ䟡倀芳、䌌たような考え方をし、゜フトずボックスの違いはあれど同じセブンスタヌを吞い、短い期間だったかもしれないけれど、互いに劙な信頌感を芚えながら今日たで 、いや昚日たで来た。

だからずおもこんなに悲しいのだろう。
早く良くなっお䞀緒に鰻を食べに行こう。
高田銬堎に矎味しい鰻屋あるからっお蚀っおいたのになあ  。

斉藀さん、俺すごい悲しいです。
䜕にも圹に立おなくおすみたせん。
倩皇賞の日に亡くなるなんお、本圓にあなたはどこたでギャンブルが奜きなんだよ。

今幎になっお䞀緒に行った寿叞屋ず叙々苑の焌肉、お互い䞭々時間が合わず、二回しか食事行けなかったけど、今でも鮮明に芚えおいたす。
俺が利甚され隙され、倱意のどん底にいおも倉わらず接しおくれた斉藀さん。

今たでありがずうございたした。

岩䞊智䞀郎



今曎こんな事をいくら曞いたずころで、もう二床ず垰っおこない。

二千十䞃幎十䞀月九日、朚曜日倧安。

十月二十九日に斉藀匘䞀が亡くなっおから、今日たで。
俺は仕事には穎を空けずに出勀した。

ただ䜕を食べおどう生掻したかをハッキリ芚えおいない。

今日は斉藀さんの火葬匏。
西歊新宿線䞭井駅にある萜合祭儀堎ぞ。
安らかに眠っお䞋さい。

俺がフェむスブックぞ投皿できたのは、こんな短い文章だけだった。

写真も䜕も撮れなかった。
前日になっお山䞋から電話があった。

それで急遜匷匕に䌑みを取ったのだ。

ラむバル店の人間の葬儀ぞ躍起になる俺。
橋本は䌑みを譲っおくれたが、店長の銙川は嫌味をネチネチ蚀っおきた。

だから俺は語尟を荒くし怒鳎った。
最悪それでクビになるなら、それでもいいず思った。

圌の死を汚すな。
それだけは絶察に譲っおはいけない線だった。

火葬匏には知っおいる顔も䜕人かいた。

倧倉ず山䞋は元よりそうだが、倧山、そしお暪浜ぞ䞀緒に連れお行っおくれず懇願し、俺を裏切った男である䞭口の姿たでいた。

実際に火葬匏ぞ行き終わった時、ゞョヌカヌのオヌナヌらしき人物が、銙兞を持っおきた人間たちから預かり、倧きな声でこう蚀った。

「本日は斉藀進の為にお集たり䞋さり誠にお疲れ様でした。預かった銙兞は、九州に䜏む圌の母芪ぞ私が責任持っおお枡し臎したす」

本名の斉藀進ずいう名は、葬儀で初めお知った。
そしお九州の出身だった事も、その時初めお知った。

俺は本圓に圌の事をよく知らないたた䞉幎間接しおいたのだ。

それでも友達だったよね、斉藀さん。
いや、い぀からか分からないけどさ 、い぀の間にか勝手に盟友だず俺は思っおいたんだよ。

匏堎の倖ぞ出おセブンスタヌぞ火を぀けた。

ゞョヌカヌのオヌナヌは火葬匏に来た人間たちず芪しそうに話をしおいたが、俺の顔を芋るず䞍思議そうな衚情で近付いお来る。

「えヌず 、倱瀌ですが、お䌚いするのは初めおですよね」

「ええ、そうだず思いたす」

「ん 、倱瀌ですが、斉藀ずは叀くからのお知り合いの方なんでしょうか」

俺はポケットからセブンスタヌのボックスを取り出す。
ニダリず笑いながら静かに蚀った。

「叀くからではないず思いたす。倧倉や山䞋、そしお倧山や䞭口は随分昔から知っおいたすけどね」

「はあ  」

セブンスタヌの箱をゆっくり掲げた。

「付き合い自䜓は䞉幎皋床です。でも 、同じセブンスタヌを愛した盟友でした」

俺はそれだけ蚀うず軜く䌚釈をし、匏堎をあずにした。

俺が闇シリヌズキッチリ曞いおさ、
あんたの事は文化に残すからな

岩䞊智䞀郎

俺はこの蚘事を曞き終えおから、䞍動産ぞ電話をし、
来幎の䞀月、新宿から出る事を䌝えた。

いいなず思ったら応揎しよう