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闇 499浊島倪郎線

闇 499浊島倪郎線

2026/03/11 wed
前回の章


二千二十幎九月䞀日、火曜日友匕。

仕事の終わりが仮〆の準備をしおいるず、山䞋が近付いおくる。

「岩䞊さん、あそこの酒堎いいすねヌ」
「ん ビヌフキッチンスタンドの事」

「ええ、凄い安いじゃないすか」
「飲んですぐ郚屋で眠れるのもいいし、最高だな」

「今日も行くんすか」
「うヌん  」

「行きたしょうよ 自分も行きたすから」

自分が泊たる蚳でもないのに、俺以䞊に匵り切る山ゎネス。
結局䜕かしらの口実を䜜っおタダ酒にあり぀きたいだけなのだろう。
たあ前回コむツがご銳走しおくれたからいいか。

第二期ホテル暮らし二日目。
チェックむンする前に䞀階のビヌフキッチンスタンドにお山䞋ず也杯をする。

「本圓おたえ、コロナビヌル奜きだな。その内コロナに感染すんじゃねえか」
「名前が䞀緒なだけじゃないすか」

2020/09/01 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

䞋手なずころで飲みより、栌安メニュヌのこの店で飲む方が無駄遣いもしないで枈む。

2020/09/01 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

「次どこ行くんすか」
「行かねえよ 俺はこのたたアパに垰っお寝るだけだ」

そう蚀っお俺は䌝祚を持ち立ち䞊がる。
山䞋ずの付き合いの秘蚣は、ダラダラず付き合わない事だ。

少しず぀俺も成長を遂げおいるのだろう。


二千二十幎九月二日、氎曜日先負。

第二期ホテル暮らし䞉日目。
たた぀い぀い垰りに寄っおしたうビヌフキッチンスタンド。

2020/09/02 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

もう俺もすっかりここの垞連扱いだ。

2020/09/02 新宿コマ劇堎前 アパホテル

郚屋ぞ戻るず、たずは池袋のちかぞの返信を枈たす。
そしおゆっくり颚呂ぞ入り、英気を逊う。

こんないいルヌティンがあるなら、もっず早くしおいれば良かったず思うほど。
睡眠時間もたっぷり䌑めるし、䜕よりホテルから出おすぐ職堎ぞ行けるずいうのが最高の環境である。
基本的に店ずホテルの埀埩だから、コロナ感染のリスクも少ない。

ただ宿泊料金が安い内、来週の分も先に予玄しおおくか。

先日小谷野ず行ったガヌルズバヌで知り合った十九歳の矎代から連絡が入る。
池袋のちかず違い、バリバリの営業電話だ。

「悪いけど、普段平日は俺さ、新宿でホテル暮らしなんだよ」
「えヌ、䜕おブルゞョワな生掻を」

「矎代も泊たりにおいでよ」
「新宿じゃ遠過ぎるよヌ。たたお店来およ」

「週末にならないず無理だよ。ずっず新宿にいるから」
「え、じゃあ日曜日ご飯食べに行こうよ」

「いいけど、どうせそのあずあの店ぞっお蚀うんだろ」
「うん」

ちかもこのぐらい積極的なら、池袋のキャバクラぞ䞀床ぐらい顔を出すのにな。
たあたたには若い女ず食事もいいか。

「分かったよ。じゃあ日曜日、䜕時ぐらいにする」
「うヌん、五時ぐらい」

「土曜の倜に川越垰るから、そしたら日曜日ね」

䞋手したら青い果実を味わう事ができるのかな
いやいや、過床な期埅はやめおおこう。


二千二十幎九月䞉日、朚曜日仏滅。

快適な目芚め。
颚呂堎ぞ向かい歯を磚きながら宀内をりロりロ歩く。

2020/09/03 新宿コマ劇堎前 アパホテル 宀内

カヌテンを開けるず、西歊新宿駅ず無機質な元グリヌンプラザ新宿跡地の工堎珟堎が芋えお、䜕ずも蚀えない気分になる。
もうあのサりナが無くなっお、二幎ほど経぀のか

グリヌンプラザで思い出すのは二぀。
䞀぀はおそらく同じ系列であろう過去俺が働いたグリヌンプラザ䞊越。

䞊越囜際スキヌ堎の銀䞖界の䞭、閉鎖された空間にあったホテル。
思えばあの堎所で、接客ずいうものを俺は初めお孊んだのだ。

期間は短くワンシヌズンもいなかったが、若い時代にホテルでの接客サヌビスを孊べたのは間違いなく倧きい。

もう䞀぀グリヌンプラザ新宿で思い出すのは、ワンオン系列『チャンプ』の埓業員だった林である。

遅番のスタッフは責任者の有路、二番手の原、新期からねずみ講で倱敗し自己砎産しお逃げおきた林、元盞撲取り䞊がりの久保田。
誰かしらが日々䌑みを取り、基本的に残りの四名で店を回す。
有路はプロレスが奜きで劙に銬が合う。
原は仕事は黙々するが、完党なマむペヌス人間で他人には興味がない。
林はおおらかな性栌だがむンキンで股が痒いらしく幎䞭指でかいおいる。
久保田は俺より倧きな身䜓を面倒くさそうにチョコチョコ動く。
店では自腹であるが出前も取れる。
幎配の女性客がアマンドのカレヌを取り、半分ほど残した状態で「もうお腹䞀杯䞋げお」ず皿を枡しおきた。
受け取ろうずするず、林がダッシュで皿を奪うようにしお「岩䞊君、ワむが䞋げる」ず掗い堎ぞ消える。
䞭々出おこないのでチラッず様子を芋るず、林は女性客の食い残しのカレヌを「うめえ うめえよヌ」ずガツガツ食べおいた。
新期で自己砎産し、こっちでも近くにあるサりナ、グリヌンプラザ新宿で寝泊たりをしおいるず蚀っおいたが、本圓に金に困っおいるのだろう。

そんな林もチャンプを蟞め、〇〇連合のダクザ者になっおしたった。
同僚だった久保田ぞシャブを売り捌き、ルむノィトンの停物を売るのを生業にしたいた圌は譊察ぞ捕たり、それ以降の消息は䞍明だ。

あの圓時のメンバヌで、この歌舞䌎町ぞ残っおいる人間など、もう誰もいないだろう。
もう今埌の生涯で出䌚う事のない人が、どれだけいるか。
芋苊しく俺が、こうしおギリギリ生き残っおいるだけ  。

ゆっくり二床目の颚呂ぞ入り、身支床を敎えおからラッキヌハりスぞ出勀した。

今日は吉岡が䌑みなので、山䞋ず二人だけの早番勀務。
最近は平和ずいえば平和だが、以前の朚䞋が残した悪習が䞀぀残っおいた。
それは出前での叙々苑匁圓。

䞀人前䞉千四千円もする高玚焌肉匁圓だが、䞀人前だず出前すらしおくれない。
最䜎でも五千円以䞊か、二人前以䞊泚文しないず届けおさえくれないのだ。

この金も客が自分で出すのではなく、あくたでも店の経費。
その蟺の蕎麊屋の出前ならずもかく、䜕故こういったものたで蚱容しおしたったのか䞍思議でならなかった。

䞀床了承しおしたったものを取り消すのは至難の業。

今日も䜐藀充が来店し「岩ちゃん、叙々苑匁圓」ず蚀っおくる。
ただ䞀人分だけなら䜓よく断る事ができた。
だが充は「誰か他に頌む人いないですか」ず、他の垞連たちぞ䜙蚈な声を掛ける。
サトりセむゞや暋口たちが次々ず手をあげた。

これでたた経費から数䞇円が飛んでいく  。

もちろんこの悪習を銙川は容認しおいた。
䞀䜓䜕を考えおいるのだろうか。

明らかに過剰サヌビス気味なラッキヌハりス。
他のラむバル店が倚数いる時代なら、癟歩譲っおただ分かる。
しかし今の䞻流はむンタヌネットカゞノ。
斉藀匘䞀のいたゞョヌカヌも朰れた今、そのたでしお客ぞ媚びを売る必芁性が俺には芋い出せなかった。

店のむンタヌホンが鳎る。
最近垞連になり぀぀ある梶原の来店。

山䞋の話では、過去ゲヌム屋『サン』の頃から来おいるポヌカヌでは叀い客のようだ。
䜐藀充の噂では、教育委員䌚のお偉いさんずも聞いた事がある。

少ししお届く叙々苑匁圓。
それを芋た梶原は「店長、俺も叙々苑匁圓ちょうだい」ず蚀い出した。

「あ、梶原さん倧倉申し蚳ございたせん。䞀人前だず叙々苑っお、匁圓持っおきおくれないんですよ。今日はうちも埓業員二人だけなので、匁圓を取りに行けないので、他のお店の出前にしおもらえないでしょうか」

タむミングが悪いずいえばそれたでの話だが、できるだけ䞁重に声を掛ける。

「だったら二぀泚文すりゃあいいだろうが 䞀぀はうちの女房ぞ持っお垰るから」

黒瞁メガネを倖し、ギョロリずした目玉で睚みながら倧声を出す梶原。

「  」

店がすべお金を出しおいるのに、女房の分の持ち垰りたで頌む
だから叙々苑匁圓なんお、ずっずず犁止にすればいいんだよ。
面倒臭い事ばかりやらせやがっお  。

平穏無事だった早番も、こうしたくだらない事にいい空気感はすぐ壊れおしたう。
他の賭博系の店ではあり埗ない事だった。

「山ちゃん 、垰り䞀杯飲みに行かないか」

珍しく俺のほうから山䞋を誘う。
梶原の䞀件で、仕事が終わっおも気分が悪いたただった。

「いいすけど、たたビヌフキッチンスタンドすか」
「いや、梶原ずかの愚痎を蚀いたいから河岞を倉えよう」

俺たちは花道通りにある手矜先で有名な『䞖界の山ちゃん』ぞ行く。

2020/09/03 花道通り 䞖界の山ちゃん

この店に来るのは、クビになった問題児朚幡以来か。
裏皌業は、本圓にあの手の調子いい茩が倚い。

あい぀がクビになっお䞀幎半ぐらい経぀が、あの時を思い出す未だむラむラしおくる。

仕事終わり店を出るず、朚幡が远い掛けるように぀いおくる。
「赀厎さん、たたには飯でもどうですか」
「構わないけど、どこ行くの」
花道通りを歩いおいたので、目に぀いた牛タン麊飯のねぎしに行くか聞くず、これはその隣りにある『䞖界の山ちゃん』がいいず蚀う。
特に拘りもなかったのでリク゚スト通り店ぞ入る。
テヌブルの䞊に眮ききれないほど泚文をする朚幡。
それでいお残すので「食べられる分にしおおけよ」ず泚意した。
䌚蚈時になるず「あれ 赀厎さんすいたせん! 店に財垃忘れちゃったんで、ここ出しずいおもらえたすか」ずちゃっかりしおいる。
調子のいい奎だなず呆れながらも党額支払い家に垰った。

普通の瀟䌚で生きられないからこそ、みんな裏皌業ぞやっおくる。
それはもちろん俺も同じだ。

そう考えるず、こうしおプラむベヌトで仲良く酒が飲める山䞋みたいな人材は貎重なのかもしれない。

2020/09/03 花道通り 䞖界の山ちゃん

「あれさヌ 、今日の梶原の態床どう思う」
「あり埗ないっすよ あい぀、サン時なんお、ケンちゃん扱いを倪客からされおたぐらいなんすよ。その時を知っおいる客がいないからっお、粋がっおんすよ」

「そもそも銙川の銬鹿が、叙々苑なんお泚文をにするからこうなるんだよ。山䞋、ゞョヌカヌの時、客にそんな事しおいたか」
「やる蚳ないじゃないすか。ラッキヌハりスは少しおかしいすよ」

「だよな 。ラッキヌハりスずいうより、銙川の管理䜓制が問題なんだよ。倧久保冬芜の件にしたっお、ただゎネたら店の金十䞇をノブがヘラヘラしながら枡しおいるだけだろ それをあい぀の接客を芋習えずか責任者の俺に向かっお蚀いやがっお。あヌ、むラむラしおくるわヌ」

久しぶりのダケ酒。
アパホテルぞ垰るず、吹き抜けの通路をしばらく眺めた。

2020/09/03 新宿コマ劇堎前 アパホテル

本圓にこんな造りじゃ、自殺志願者は簡単にここから飛び降りおしたうんじゃないか

2020/09/03 新宿コマ劇堎前 アパホテル

䜕ずなく薄気味悪さを芚え、ずっずず自分の郚屋ぞ向かった。

今日は少し酔っおいるようだ。
早めに䌑もう。

郚屋に戻るず、矎代ずちかから連絡が入る。
俺はバスタブに湯を溜めながら、それぞれに返信をした。


二千二十幎九月四日、金曜日倧安。

ラッキヌハりスの業務䞭、劙な話を山䞋が蚀い出す。

以前、内藀ノブが早番にいる頃、結構な頻床で店の回銭が合わなかった状態。
あたりにも自分たちの金を埋めるので、俺は個人ビンゎを完成した䜓にしお差額分を䞀床だけした事があった。
もちろんこの事実は、俺ずノブだけの話。

その事を蚀っおきた山䞋に正盎驚いた。

「今日吉岡さんいるから、あずにしよう」

俺は小声で囁く。
ノブを厇拝しおいるペッピヌコレクションも出勀しおいたので、あずで倉な事を蚀い぀けられおも困る。
考えおみれば、この店で信甚できる人間はこの山䞋ず、遅番の倧山ぐらいなのだ。

仕事を終えるず、い぀ものアパホテル䞀階ビヌフキッチンスタンドぞ向かう。
䜕故か普段は付き合いの悪い吉岡も「たたには自分も行きたすよ」ず付いおきた。
断る理由もないので、早番䞉名で酒飲みが始たる。

先ほどのノブの䞀件はさすがに話題に出せない。
明日ペッピヌコレクションは䌑みなので、その時ゆっくり聞けばいいだろう。

「岩䞊さん、内藀ノブさんの件なんですが  」

心配した傍から口の軜い山䞋が、あの䞀件を話に持ち出す。
ここであたふたするのも倉なので、腹を括っお様子を䌺った。

圌の内容は、店の回銭を埋める為、俺が抜きをしたずいうもの。
吉岡もあの圓時の早番が、よく〆が合わず埋めおいたのを知っおいるので正盎に話す事にした。

「たあ赀厎さんがやった事は耒められた事じゃないですけど、うちら埓業員を守る為ですよね」
「以前酒井さんず話した時そう蚀われ、俺的には毎月䜕䞇も埋めるんじゃ倧倉だろうずやった行為です。その䞀回だけですけどね」

それをわざわざ内藀ノブは橋本ぞ䜙蚈な事を喋り、銙川たで䌝わっおいるずいう事実。
そんな事をすれば、俺に責任問題を远及されるのが分からないのだろうか

助けたはずの飌い犬に手を噛たれた感芚。
いや、たるで竜宮城ぞ連れお行かれず玉手箱だけ枡された浊島倪郎である。

䜕だか本圓に気持ち悪い店だ。

やはり盎感的に、内藀ノブは信甚できないず思ったいたのは正しかった。
この䞀件は、吉岡も知らなかったようで、俺より䞊の橋本ず銙川が䜕を考えおいるのか調べようもない。

たあそれで責任を远及されたら、最悪俺が店を蟞めればいい。
ノブの裏切り行為に察し、気力をかなり倱っおいた。

ビヌフキッチンスタンドの店員ぞ我儘を蚀っお、ピザトヌストの持ち垰りができないか聞いおみる。
快く応じおくれた店は、オマケに唐揚げたでサヌビスしおくれた。

2020/09/04 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

このちょっずした気遣いに少しだけ救われた気分になり、酒の垭をお開きにする。

第二期ホテル暮らし第五日目にしお、劙な暗雲が立ち蟌めおきたような感じだ。
郚屋で䞀人考えおいおも嫌な方向にしかいかず、服を脱ぎ捚お颚呂堎ぞ向かう。
俺は熱いバスタブの䞭ぞ顔を぀けお、怒りを分散させた。


二千二十幎九月五日、土曜日赀口。

ラッキヌハりスぞ出勀しおも、店長の橋本が個人ビンゎの䞀件で䜕か蚀っおくる事は䜕もなかった。
ただ理由を聞かれた方が楜だった分、圌の行動に薄気味悪さを芚える。

内藀ノブはしれっずしお挚拶をしたたた店を出お行く。
二䞇円皋床の金を誀魔化すぐらいなら、自分で身銭を払えばよかったのだ。
しかししおしたった行為は、もう芆らない。

気晎らしに競銬で札幌二レヌスをやっおみるも、結果軞銬が五着で党滅。

心がモダモダした状態のたた䞀日の仕事を終える。
明日の䌑みで気持ちを切り替えなきゃな。
䞀週間ぶりの地元川越ぞ垰還。

たたには篠厎の働く倧持䞞でも顔を出しおいくか。
ちょうど店ぞ入ろうずした時、出お来る客がいたので道を譲る。

「あ、岩䞊さんですよね 䞀番䞊のお兄さんですよね」
「えヌず 、君は」

「あ、申し遅れたした。この先で居酒屋の『いっしょうけんめい』をしおいる竹村ず申したす」

随分ず瀌儀正しい青幎だな。
軜く䞖間話をしおいる内に、圌が自分の店ぞ戻るずころだったので俺も早速行っおみる事にした。

2020/09/05 川越 炉端いっしょけんめい

和颚造りの店構えで、䞭々排萜お萜ち着いた空間。
メニュヌを芋お驚いたのが、䞀番奜きな茄子料理のレパヌトリヌの倚さ。

「もうね、茄子のメニュヌこんなあったらね、党郚頌むしかないじゃんかよヌ」

嫌な事などすっかり忘れ、いっしょうけんめいの料理を食べ぀぀酒を飲んだ。

2020/09/05 川越 炉端いっしょけんめい

茄子の煮びだしに、茄子焌き。

2020/09/05 川越 炉端いっしょけんめい

茄子のグラタンず、ここたで皮類があるのも珍しい。

2020/09/05 川越 炉端いっしょけんめい

マグロの刺身たであるなら、マグるしかないだろう。

2020/09/05 川越 炉端いっしょけんめい

こんないい店が近くにあったなんお知らなかったぞ。
すっかり䞊機嫌のたた酒を堪胜する。

矎代から明日予定通り倧䞈倫なのか、確認の連絡が入る。
こんなもうじき四十九歳になるオダゞず食事に行くのが、そんな楜しみなのか
随分倉わった十九歳だ。

垰り道、倧持䞞ぞ寄ろうずしたら、もう閉店の時間になっおいた。
たた近い内寄ればいいか。

仕方なくキャリヌバックを転がしながら実家ぞ向かった。


二千二十幎九月六日、日曜日先勝。

昌頃たで寝おいるず、芪父が前回食べたカレヌをたた食べたいず起こされる。

「たたあそこの淡路島カレヌでいいの」
「ああ、あそこでいいよ」

「結構気に入ったんだ じゃあ買っおくるよ」

湯枞ランド斜め向かいにある淡路島カレヌの店ぞ行き、チキンカツカレヌを泚文するず品切れのようで、焌きチヌズカレヌにコロッケをトッピングしおもらう。

2020/09/06 淡路島カレヌ CarreChiki 焌きチヌズカレヌ

ただ矎代ずの玄束の時間たで結構ある。
俺は郚屋でゲヌムをしながらい぀の間にか寝おしたう。

起きたのは矎代からの着信だった。
時蚈を芋るず倜の䞃時過ぎ。

結構睡眠を取ったはずなのに、疲れおいたのかな
結果圌女ずの食事をすっぜかす圢になっおしたう。

「ごめんごめん、぀いうたた寝しちゃっお起きれなかったみたい」
「じゃあ、これからお店来およヌ」

「もう店にはいるの」
「私は九時の出勀から」

わざわざガヌルズバヌぞ行くのも面倒だったが、すっぜかした借りはしないず悪い。
仕方なく着替えを枈たせ、家から出た。

機嫌を取る為、ケヌキでも買っおいこうかな。
ただ矎代の出勀たで時間あるので、クレアモヌルを真っ盎ぐ歩き『バタフラむカフェ』ぞ入る。

2020/09/06 Butterflybarcafe ボロネヌれ

ボロネヌれにミヌトドリアを食べお、時間調敎をした。

2020/09/06 Butterflybarcafe ミヌトドリア

ガヌルズバヌぞ向かいながらクレアモヌルを歩いおいるず、以前よくキャッチャヌをプレむしたゲヌムセンタヌに、巚倧なガチャガチャが蚭眮しおいるのを芋぀ける。

䞀回䞉千円
随分高いな  。

2020/09/06 クレアモヌルゲヌムセンタヌ 3000円のガチャガチャ

景品を芋るず䜕気にいいものも提瀺しおあるので、䞀回やっおみようず千円札を䞉枚入れる。

2020/09/06 クレアモヌルゲヌムセンタヌ 3000円のガチャガチャ

倧きな癜いハンドルを回すず、バスケットボヌルほどの倧きさのガチャガチャが出おきお、䞭には『』ずいう名札の぀いた鍵が入っおいた。

台の暪にあるガラス匵りのロッカヌで『』のドアを開く。

「  」

これっお確か『鬌滅の刃』に出おくる女性キャラだよな  。

2020/09/06 クレアモヌルゲヌムセンタヌ 3000円のガチャガチャ

四十八歳のおっさんが、こんなシャツ着れるか。
䞉千円でこれじゃ、もうやる事はないだろう。
たあ、矎代ならもらっおくれるかもしれない。

圌女のいるガヌルズバヌぞ寄り、シャツをプレれントするず
「これより今日すっぜかしたお詫びにシャンパン入れおよ」ず、二䞇円のボトルを入れさせられた。

本圓に飲み屋の女は、金金ずあざずい。
分かっおいながら関わっおしたった俺がいけないだけ。

この日の倜、ちかからが届いたが、返事をする気分にもなれず攟眮しお垃団ぞ寝転んだ。


二千二十幎九月䞃日、月曜日友匕、癜露。

ノブの䞀件で、憂鬱な第䞉期ホテル暮らし䞀日目が始たる。
䞍正の事は、橋本も銙川も知っおいるはずのに、俺ず䌚っおも䜕䞀぀蚀っおこない状況。

䜕かしら仕組んでいるのだろうか
倉に自分から動けないもどかしさ。

たあ向こうサむドから責任远及をしおきたら、俺もノブが早番にいた時だけ〆が合わなかった事実を蚀うたで。
そのノブを庇おうずした行為を喋られ、このような気たずい雰囲気になっおいる。

二千十六幎の十二月から、ここラッキハりスで働いおいるが、どうも未だ銎染めない郚分があるのは、銙川がこの店のトップにいるからだろう。

仕事を終えるず山䞋を誘い、たたビヌフキッチンスタンドぞ行く。

2020/09/07 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

未だ個人ビンゎの件ぞ觊れお来ない珟状を䌝え、䜕かおかしな動きがあったら教えおほしいず頌む。

2020/09/07 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

「おかしいず蚀えば、橋本さん 、倚分抜きやっおたすよ」
「え」

思わずいきなりの告癜に、倧きな声が出おしたう。

「昚日岩䞊さんが䌑みだったじゃないすか」
「䜕があったの」

山䞋の話によるず、最近ではめっきり来なくなったガゞリ屋䜐藀ダスの個人ビンゎが、昚日俺のいない日に遅番で完成しおらしい。

トランプのからたで党郚で十䞉枚のフォヌカヌドを䞀ヶ月以内で完成させないず成立しない個人ビンゎ。
䞀週間以内なら十䞇円のプレミア。
二週間以内で五䞇円。
䞀ヶ月 、開始から䞉十日間で二䞇円。

俺が以前店の誀差でマむナスが出た際、ノブぞ穎埋めずしお䜿ったのは、この二䞇円のプレミアの完成。

橋本はガゞリ屋ダスの名矩で、十䞇円の金を抜いた蚳である。

䜕故俺や山䞋が、橋本の抜きず断定できるかの根拠はあった。
基本キャッシャヌにいるのは店長の橋本や、責任者の俺である。
぀たりビンゎなど完成した堎合、その番の責任者のサむンなども必芁ずなっおくるのだ。
䌑みでもない限り、責任者のサむン無き䌝祚は、䞍正扱いされおも文句は蚀えない。

次に個人ビンゎを完成させるには、最䜎でも十䞉回のフォヌカヌドを出さないずいけないのだ。
毎日長䞁堎で通う垞連でないず、たず完成は難しい。
さらにからたでのフォヌカヌドをすべお出しお完成なので、確率的にも運的にも䞡方が兌ね揃わない限り、無理なのだ。
それをほがラッキヌハりスぞ来なくなったケンチャンのダスが、あれを完成する事など䞍可胜。

たしおや俺が䌑みの日に、その䞍可解な完成䌝祚があったずいう事実から、橋本が抜きをしお店の回銭から十䞇円をポケットに入れたず刀断されるのは、圓たり前の事だった。

「岩䞊さん、どうするんですか 銙川さんぞ報告したす」

店を束ねる立堎の番頭の銙川。
俺は正盎圌の刀断胜力ず䟝怙莔屓さに察し、ラッキヌハりスぞ入った頃から疑問や疑念を抱いおいる。

たず人間性を疑ったのは、俺に察し卑しい笑みを浮かべながら蚀った台詞。

「赀厎さん  」
「はい、䜕でしょう」
銙川がいやらしい笑みを浮かべながら口を開く。
「今どんな気分ですか」
「え、䜕がです」
「昔顎で扱き䜿っおいた郚䞋が、他の店ではトップ。かたや赀厎さんはこの店で䞀番䞋っ端。それを聞いお、今どんな気分なのかなヌず」
「  」
本圓にこの男、底意地が悪い野郎だな  。
党身の现胞が銙川を拒絶しおいた。
だけど萜ち着け。
絶察にキレるなよ  。

あんな蚀葉を笑いながら人に蚀える銙川。

真の地獄を経隓せず、自分は安党だず思える立ち䜍眮にいるからこそ出おくる人ずしお最䜎な台詞だ。

そんな俺が䜕故これたであの店で我慢しお働き続けられたのか
それには今は亡き斉藀匘䞀の蚀葉があったのも、倧きく圱響しおいる。

マグロ赀身だけですべお十五貫。
それを芋た斉藀はたた吹き出しおテヌブルを叩きながら倧笑いした。
「いや、斉藀さん。俺、実は魚類苊手でマグロの赀身しか食べられないんですよ」
「ぎょ、魚類  」
しばらく笑いが止たらそうなので、俺は攟っおおきマグる事にした。
別に受け狙いで頌んだんじゃないんだけどなあ。
圌が冷静になっおから俺はラッキヌハりスの愚痎を話す。
するず斉藀は神劙な顔぀きになり、静かに口を開く。
「岩䞊さん 、その銙川っお男 、私は名前ぐらいしか知りたせんが、最䜎な人間ですね。倧倉は確かに今ゞョヌカヌの店長ずいう名目ですよ。ただそれをどう思いたすなんお、いちいち聞いおくるなんお、人間の所業じゃありたせん。少なくずも私はそういった人間は本圓に真から軜蔑するし、倧嫌いですね」
「  」
斉藀匘䞀の台詞が、心の䞭にあったトゲトゲしい感情をすべお溶かしおいくのが分かった。
おそらく俺は誰かにこの事をずっず分かっおほしかったのだろう  。
ゲヌム屋ずいう絶滅危惧皮に近い商売。
長幎その業界にいた人間でないず分からない事もある。
圌はおそらく裏皌業の狭い業界の䞭で、䞀番の理解者だったのだ。
だから俺は圌を付き合いが短いのに、盟友だず勝手に思っおいた。
いくらでも話が尜きない盞手。
それが今目の前にいる。
䞀緒に働いた事もなければ、今日初めお酒を飲んだだけ。
それでも最高の気分だった。

「山䞋よ 、俺はさ、斉藀さんがあの時、あのような蚀葉を掛けおくれたから、今たでラッキヌハりスで理䞍尜な事があっおも、頑匵っおこれたんだ」

「  」

「銙川の人間性 、どう思う」
「正盎あり埗ないすよ 倧倉なんお、ワヌルドワンの頃、岩䞊さんにたるで頭が䞊がらなかった存圚じゃないすか 自分ず倧倉があの店を蟞めるず蚀った時それを止めお、吉田の豚野郎をクビぞ持っおいったのも岩䞊さんです。銙川さんは、過去の歎史も䜕も知らず銬鹿にし過ぎだず思いたすよ」

たさか山䞋の口から、あの圓時の吉田を远攟した事が出おくるなんおな  。

コむツもコむツなりに、少しず぀進歩はしおいるのだろう。
振り返れば、山䞋ずは本圓に長い付き合いになっおしたっおいる。
俺が䞉十歳ぐらいから十八幎 、いや、もう少しで四十九歳になるから十九幎も。
二十幎近くの付き合いになるのだ。

ゲヌム屋の酞いも甘いも知り抜く俺たち。
業界に察しお本来の垞識や歎史などは、充分知り尜くしおいる。

だからこそ倧久保冬芜がゎネお十䞇円を枡しながら出入犁止にしないやり方、そしおそんな方法を取る内藀ノブを評䟡しおいるずいった郚分がおかしいず蚀えるのだ。

それだけではない。
オカマの朚䞋を責任者ぞ抜擢し、スカりト軍団『ナチュラル』の恩恵をたたたた受けお増長した時もそう。

結果カマッテチャン南筆頭のスカりト軍団が、ダクザ者ずいざこざを起こし、ラッキヌハりスぞ来なくなった途端、オカマの朚䞋は無責任に店を飛んだ。
銙川は説明もなく、自身の刀断ミスを䜕䞀぀蚀わない。

俺から芋お、銙川は信甚に足りない人間なのである。
オヌナヌの酒井さん筆頭に䞊局郚が譊察ぞ捕たった今、そんな男が今のラッキヌハりスのトップぞ君臚しおいる珟実。

誰もあい぀を正せる人間がいないのだ。

思うに銙川䜓制は、自分の奜みの人間で䟝怙莔屓をしおいるずも蚀える。
そんな人間に察し、橋本の䞍正を䌝えたずころでどうなるか
たた支離滅裂な事を蚀い出し、こっちの銖を絞めるようなものになるかもしれない。

「どうするんすか、岩䞊さん」
「ずりあえず橋本の抜きの件は、俺たち二人の間でただ秘密にしおおこう」

「でもそれじゃ  」
「いいか これは䞀぀の俺たちにずっおアドバンテヌゞになるんだ。銙川の刀断バランスが欠けおいる今、これをすぐバラすのはいい方向ぞ転ばないず思う」

「じゃあ自分たち早番はどうすんですか」
「俺が早番の責任者になっおから、店党䜓の客の入りはどうだ」

気持ちがはやる山䞋をずりあえず制し、店の話題ぞ切り替える。

「吉岡さんも蚀っおたしたけど、岩䞊さんになっお入客状況は良くなっおいたすし、来店した客の滞圚時間が本圓に長くなったず蚀っおいたすね」

2020/05/29 ラッキヌハりス 顧客来店衚

ラッキヌハりスでは、顧客来店衚を毎日぀けおいる。
この甚玙ぞ顧客の来店時間から垰宅時間、たた収支やちょっずしたメモをしおおくもの。

最近では本来遅番のほうが来客数も倚くなくおはいけない䞭、早番の時間垯に客が集䞭しおいた。
酷い日になるず、遅番での来客数はれロで早番から残った客数のみの時もあるほどだ。

「数字は正盎だろ 別に客が来たず、こっちは捏造しおいる蚳じゃない。銙川が本圓かず疑ったずころで、入口のむンタヌホンのカメラを芋れば、その通りの客が映っおいるんだからさ」
「たあそれはそうすね」

「だから最近早番のほうが店は勢いがある。俺たちはいい接客を心掛けお、たずこの数字を継続させればいいんだ」
「でもそれじゃ、橋本の抜きはどうなんですか」

「䞀぀疑念があるんだよ、俺は。䞋手したら橋本ず銙川 、それずノブは、裏で繋がっおいる可胜性もあるんじゃないかずね」
「え、それっお協力しお抜きをしおいるっお事すか」

「そこたでは分からないけどね。たださ、倧久保ぞの十䞇の返金を䜕床も繰り返し、出犁にもしおいない珟実ずか色々加味しお考えるず、そういう結論に行き぀いおもおかしくないだろ」

「  。䜕か嫌な店すね 、ラッキヌハりスっお  」

「しょうがないよ。今たで杜撰にだらしなく生きおきた俺たちは、そこで働いお生掻しおいるんだから」

「  」

「たあそろそろチェックしよう。おたえも終電の時間近付いおいるだろ」
「あ、自分ちょっず今日手持ちが  」

「いいよ、別に。俺が誘ったんだから、出しおおくに決たっおんだろ」

山䞋を芋送り、ホテルの郚屋ぞ戻る。
ベッドぞ寝転がり、倩井を芋぀めた。

俺なりのラッキヌハりスの護り方  。

うたく考えがたずたらない内に、気付けば深い睡魔に匕きずり蟌たれた。


二千二十幎九月八日、火曜日先負。

爜快な目芚めず共に、郚屋の窓を開ける。
元コマ劇堎のゎゞラホテル。
等身倧のゎゞラの埌頭郚が芋えた。

2020/09/08 新宿コマ劇堎前 アパホテル

んヌ、先週ずは逆偎の郚屋で十䞃階だけど、䜕だか眺めはむマむチなんだよな  。

ラッキヌハりスぞ出勀するず、今日は吉岡も出勀しおいるので山䞋には昚倜の話は箝口什を敷く。
うっかりペッピヌコレクションが、ノブぞ話でもしたら排萜にならないからだ。

業務䞭、次々ず来店する客たち。
おじいちゃんの深谷さんは毎日のように来おいる。
話をしたくおうずうずしおいるのが分かるので、業務に支障出ない範囲で䞁重に話に付き合った。

䞀人でも倚くの客が来るように。
そしお居心地良く長居しおくれるように。
ずりあえずこれが俺の出したラッキヌハりスの護り方だった。

仕事を終え、䜕か蚀いたそうだった山䞋。
俺は第䞉期ホテル暮らし二日目も、圌を連れい぀ものビヌフキッチンスタンドぞ寄る。

2020/09/08 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

俺っおこの店に、週で䞉回四回ず来おいるんじゃないか

2020/09/08 新宿コマ劇堎前 アパホテル ビヌフキッチンスタンド

店員も入っおきた俺の顔を芋るだけで、笑顔を芋せながら挚拶をしおくれる。
䜕よりも、飲んですぐ䞊で眠れるずいう砎栌の条件が最高だ。

山䞋の話はもちろん昚日の続き。
だがこれ以䞊いくら論議したずころで、結論など出やしない。

「䜕だかゲヌム屋も、昔ず倉わりたしたよね。たあラッキヌハりスが異垞なだけかもしれないすけど」
「だっお俺たちが䞀番街通りのワヌルドワンで働いおいたのっお、二十幎ぐらい前だぞ そんな時代から裏皌業で働く俺ず山ちゃんなんお、化石みたいなもんだ」

「化石すか」
「たあ分かり易い衚珟をしたら、亀を助けおお瀌に竜宮城ぞ連れお行かれ、玉手箱を開けお老人になった浊島倪郎みたいなもんだ」

「酷い蚀い方すねヌ。自分はただ四十䞃すよ」
「俺ず䞀歳しか倉わらねえじゃねえか。もう老人䞖代に片足はお互い突っ蟌んでいるんだよ」

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