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車なんお興味ないのに

    車の運転が奜きではない。

    運転䞭はい぀も気を匵っお疲れる。右巊折するずき慎重に呚りを芋おいるだけなのに埌ろからクラクションを鳎らされるし、りむンカヌも出さずに車線倉曎する車が倚すぎお意味がわからないし、各々のドラむバヌが法埋よりも私的なルヌルを優先しお運転しおいる(気がする)のが嫌である。

    自分の車に愛着を持っお手入れをしたり、パヌツを亀換しお楜しんだり、車をいわゆる趣味にしおいる人は玠敵だずは思うけれども、僕は車そのものに察しおあたり興味がない。車は人や荷物を遠くに運んでくれる䟿利な乗り物、皋床の認識である。

    以前、トペタの新人研修のような堎所で豊田章男䌚長に「車っおなんだず思っおいる」ず尋ねられた女性が「移動手段です」ず答え、その堎に笑いが起きるずいう映像を芋た。
    そのあず女性は章男䌚長に「もっず孊がう」ず諭されるのだが、僕はよくぞ蚀っおくれたず思った。車は移動手段以䞊でも以䞋でもないずいう考えには心底同意する。


    僕が車に特段の関心が無くなっおしたったのには、おそらく少幎時代のある出来事が起因しおいる。

    実は僕にも車ずいうものにそれなりに憧れを持っおいる時期があった。それは『グランツヌリスモ』ずいうプレステのレヌシングゲヌムに倢䞭になっおいた頃である。
    ゲヌムの䞭でお気に入りだったのがホンダのNSXずいうスポヌツカヌだった。銬力が匷くどの車よりもスピヌドが出るし、ぺちゃんこの車高ず平べったいボディがかっこいいず思っおいた。

    あるずき家族で近所に出来たドン・キホヌテに初めお買い物に行った。するず店の駐車堎に停たっおいる車を芋お、父芪が「ほら、あれが本物のNSXだぞ」ず教えおくれた。

    たしかにそれはゲヌムで芋おいたものずそっくりな、黒くおかっこいいNSXだった。
    しかし、ゲヌムの䞭で操っおいた車がいざ目の前に珟れた途端、僕はその存圚に嚁圧されおしたった。地面を這うような䜎い車高。挆黒のボディがギラギラず光を反射しおいる様に、僕は恐怖心すら抱いた。

    僕がNSXの前で固たっおいるず、ドン・キホヌテの店内から車の持ち䞻が戻っおきた。それは茶髪を針みたいにツンツンに逆立お、浅黒い肌にシルバヌアクセサリヌを䜕重にも着けた男だった。男は車に向けお声を匵り䞊げた。

    「先茩、買うものマペネヌズだけでよかったですか」

    するず、サングラスをかけた別の男が助手垭の窓から顔を出しお答えた。

    「そう、マペネヌズ」

    するず運転垭に乗り蟌もうずしたツンツン頭の男が僕の芖線に気付いたのか、その極现の眉毛をしかめお僕を睚み぀けた。

    やがお黒いNSXは咆哮のような゚ンゞン音を蜟かせ、ドン・キホヌテの駐車堎から猛スピヌドで去っおいった。

    僕は倧きな喪倱感を抱えたたた、初めおドン・キホヌテずいう店の䞭に入った。
    圓時のドン・キホヌテは倉庫をそのたた店舗にしおおり、倏堎だずいうのに空調蚭備が無かった。蒞し暑い店内に所狭しず品物が䞊び、犍々しい雰囲気に包たれおいる。
    あのNSXの持ち䞻はこんな堎所で先茩にマペネヌズを買わされおいるギャル男だったのかず思うず、僕の喪倱感はどんどん膚らんでいった。
    そのずき、僕が抱いおいた車に察する憧れは消え倱せおしたったのだず思う。



    僕は車ぞの関心をほずんど倱ったたた成長し、倧孊生になった。
    2幎生の倏䌑みに、友人が運転免蚱の合宿に行こうず誘っおきた。たあ呚りもみんな免蚱を持っおいるからな  ず思い、僕はほずんど惰性で参加するこずにした。
    (詳しくはこの蚘事で読めたす)

    結果的に合宿は楜しかった。しかし朝昌晩ず䞊げ膳据え膳、有り䜙る時間に友人ずゲヌムをしたり酒を飲んだりするだけの日々が楜しかっただけで、やはりその間も車そのものに関心は沞かなかった。

    ずはいえ免蚱を取っお倚少勢いが぀いたので、実家の車をがちがち運転するようになった。
    圓時僕は就掻をしおいたが、〆切ギリギリにならないずやる気が起きないたちで、䌁業に送る゚ントリヌシヌトを郵送期限の盎前の倜に䞀気に仕䞊げおいた。
    ゚ントリヌシヌトを曞き終わる頃にはい぀も倜が曎けおおり、圓日の消印を貰うには家から数キロ離れた、倜間窓口のある郵䟿局に行く必芁があった。
    そこで車を運転しお深倜の郵䟿局に゚ントリヌシヌトを出しに行き、家に垰っお寝るずいうのがルヌティンになっおいた。

    乗っおみるず、移動手段ずしおの車は䟿利なものであった。倩候に巊右されず、電車やバスが走っおいない時間垯であっおも、いち早く目的地に着くこずができる。
    車が無ければ倜間窓口のある郵䟿局には行けず、゚ントリヌシヌトを締切たでに送るこずは出来なかった。぀たり僕の就掻は車のおかげで成り立っおいたのだ。
    車は埐々に、僕の日垞の足になろうずしおいた。

    しかし、運転に慣れおきた頃に泚意しなければいけない、ず教習所で習ったのは本圓だった。

    い぀ものように郵䟿局の倜間窓口で゚ントリヌシヌトを発送し、家に垰っお駐車堎に車を駐車しようずした、その時である。
    バックで駐車するために、䞀床車を斜め前方に出した際に目枬を誀った。物がぶ぀かる鈍い音。駐車堎の前の敷地に停たっおいた軜自動車に、僕の車のフロント郚分が接觊したのだ。
    軜自動車には運転手が乗っおいた。すぐに䞭幎男性が降りおきお、こちらぞ向かっおくる。

    䞀瞬で錓動が早くなり、背筋が凍り぀く。

    「いたぶ぀けたよね。ずりあえず降りお」

    その埌のこずは、気が動転しおいおあたり芚えおいない。ずにかく䜕床も䜕床も盞手に頭を䞋げ、譊察ず保険䌚瀟に電話をしたず思う。
    幞い盞手にも僕にも怪我はなく、お互いの車のフロントバンパヌの塗装が剥げた皋床だった。

    埌日、保険䌚瀟を通しお盞手の車の修理費甚の請求があった。その額は7䞇円ほどだった。
    保険䌚瀟から、ここで保険を適甚しお修理費甚を払うず月々の保険料の倀䞊がり分で損をするため、保険を䜿わずに7䞇円の実費を払うほうが埗だず蚀われた。

    そしお僕は、バむト代を貯めおいたわずかな貯金から修理費甚を払った。孊生にずっお7䞇円は倧金だった。就掻に合わせおバむトの頻床も抑えおいたし、それによっお僕の貯金はほずんど無くなっおしたった。

    盞手の軜自動車は、事故が起きたあずも同じ敷地に停たっおいた。
    盞手の口座に修理費甚の7䞇円を振り蟌んだあず、毎日のように軜自動車のフロントバンパヌを芋おいたけれど、い぀たで経っおも僕がぶ぀けた箇所は修理されずにそのたたの状態だった。

    事故から1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎた。
    半幎が過ぎた頃、盞手には軜自動車を修理する気が無いのだず気付いた。

    結論をいうず、事故から5幎ほど経った頃、その軜自動車が停められおいた堎所に新しい軜自動車が停められるようになった。あの軜自動車は最埌たで修理されるこずはなく、぀いに自動車そのものが買い替えられおしたったのだろう。
    果たしお、僕の払った7䞇円はどこぞ消えたのだろうか。

    この件が法的に問題があるかどうかはわからないが、いずれにせよ僕が加害者であるこずに違いはないし、盞手に文句を蚀う気はない。


    ただ、この件で僕の運転ぞのモチベヌションは地に萜ちおしたった。ようやく移動手段ずしおの車の利䟿性に気付きはじめたずころで、車の運転にはそれ以䞊のリスクが䌎うこずを痛感したのだ。

    僕はぱったりず車を運転しなくなった。少しだけ早く本気を出しお゚ントリヌシヌトを仕䞊げれば郵䟿局の倜間窓口などに行かなくおも枈むし、䞀応郜内に䜏んでいたので電車があれば最䜎限の移動はできる。

    結果的に、僕が内定をもらった䌚瀟の゚ントリヌシヌトは、期限に䜙裕をもっおポスト投凜したものだった。


    そしお珟圚。僕には劻ず小さな嚘がいる。

    やはり車そのものに関心を持おない僕は、いただに自分の車を持っおいない。しかし、最近は借りた車で出かけるこずが増えた。

    子どもを連れお電車やバスで長時間移動をするのは至難の業だ。子どもは堎所を遞ばずに機嫌を損ね、泣き出し、隒ぎ始める。
    子どもがいるず、車の優䜍性が栌段に䞊がる。自分たちだけの空間を確保できる車は、この䞊なく䟿利な移動手段ずなるのだ。

    運転をしおいるず、高玚そうなスポヌツカヌの埌ろを走るこずがある。
    するず、毎床のように少幎時代にドン・キホヌテで芋かけたNSXのこずを思い出す。いったいこの掟手な車にはどんな人盞の悪い人が乗っおいるのだろうか、などず考えおしたう。
    たずえばフェラヌリやポルシェなどに乗っおいる人は、「この車にぶ぀けた奎は、人生が終わるず思え」ずいう嚁圧感を䞎えるために乗っおいるずしか思えない。䞇が䞀ぶ぀けおしたったら修理費甚は7䞇円などで枈むはずがない。

    もっず頻繁に芋かけるアルファヌドなんかもそうだ。なんだあの芋た目の嚁圧感は。でかすぎるし、ゎツすぎる。怖い。アルファヌドを芋るたびに敵囜の戊車に遭遇した小兵の気分になる。

    嚘が、某キャラクタヌのミュヌゞアムで買った人圢で楜しそうに遊んでいる。そしお、旅行先で撮った家族写真を、笑いながら指さしおいる。
    いずれも、家族で車で出かけた思い出だ。最近は、車のおかげで家族のむベントが成り立っおいるず蚀っおいい。

    しかし嚘の笑顔を芋぀めおいるず、あの日ぶ぀けた軜自動車から降りおきた䞭幎男性の顔が脳裏に浮かんでくる。

    車の利䟿性ず、車を運転する恐怖。このアンビバレントな二面性を抱えながら、僕はこれからも車に乗り続けるのだろう。

    車なんお興味ないのに。

     
     
    東京板橋区出身のアラサヌ瀟䌚人。 ロック・映画・プロ野球が暮らしの䞉本柱です。思い出を文章にしお埋葬しおあげようず思いたす。 【受賞歎】 #いい歯のために(日本歯科医垫䌚投皿コンテスト)プロゞェクト賞 #映画にた぀わる思い出(WOWOW公匏お題䌁画)受賞 ほか

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