
答えのない仕事|コンサルタント由里子|最終話:正解のない世界で
前回:「第31話:正しさの先にあるもの」
四月上旬、リアムに入社して初めてまとまった休みを取り、
恋人の拓真を誘って高尾山を訪れていた。
「桜満開!めちゃくちゃきれいーーーーーー」
「この時期に休み取れてよかったな!」
二人で満開の桜をバックに、何枚も写真を撮りながら、
山頂を目指して歩き続ける。
暑すぎず丁度よい気候とはいえ、
歩いている内に体は火照り、息が切れる。
「由里子、運動不足じゃない?」
「うるさいな、最近ちゃんとジム通い始めたじゃん」
そんな軽口を叩きながらも、歩みは止めず、黙々と歩き続ける。
山頂に到着すると、桜シーズンのため、人でごった返していた。
「さすがに座るところは・・・確保できなさそうだけど、
一応探してみてくれる?
行列だけど、俺ソフトクリーム買ってくるわ」
列の最後尾に向かう拓真を見送ると、
人で溢れかえる広場を抜けて少し開けた場所に出る。
何かの間違いでリアムに入社してから半年と少し。
今でもちょっと資料を見せれば、山のような指摘事項が積みあがるし、
黒崎さんは相変わらず呆れ顔が通常運転だ。
コンサルティングスキルはまだまだで、業界知見も圧倒的に不足している。
一つ何かを知れば、その先に自分が知るべきことがまだ山ほどあると気づかされる日々で、一人前のコンサルタントだと胸を張って名乗れる日がいつ来るのか、今は想像もつかない。
でも、そのいつかは、きっと来る。
知識と経験を得て上り詰めた人は、
絶対的で、唯一無二の正解を持ってるんだと思ってた。
・・・どうやら、そんなものは無いらしい。
真に解くべき問いはなにか?
正解の姿をどう想像するか?
その想像に確信を持つためにどう行動するか?
そして、覚悟が決まったら、どんなに怖くても、
信じて一歩を踏み出せるか。
間違いに気付いたら、それを認めて、
見過ごさずやり直せるか。
――――わたしが考えて、行動し続ける限り、
そのいつかは、きっと来る
諦めず問い続けたい。
わたしが目指したいコンサルタントの姿を。
ますます不確実なこの世界で、
会社と社員と顧客のより良い幸せを願い、
恐怖から目を背けず、
前に進む決断をする人の傍らに立って。
****
「やっぱ座るとこはないよなー」
振り返ると、拓真がソフトクリームを両手に持って立っている。
「うん、でも大丈夫。そういえば、拓真に新発売のリクくん人形買ってあげるよ。わたしはカナちゃん買う」
「ちっちゃいころに着せ替えて遊んでたやつ?」
「そうそう、今日新発売なんだよ!これ見て」
携帯画面に映る安西は、EC販売システムのローンチに合わせて、
EC限定/数量限定で新発売となった、
リクくん・カナちゃん人形の開発秘話を一生懸命アピールしていた。
その姿がかわいくて、ハートボタンを連打し、購入する。
「今度はお困りごと、解消できたんだな?」
「そうだといいな?てか山登ったらお腹空いた!ごはん食べよう!」
拓真の手をひっぱり、歩き出した。
ここまで読んでくださった方がいらっしゃったならば、
本当にありがとうございました!!!!
――本作はこれにて完結です。
最後に、私が十数年命をすり減らしたコンサルの世界を舞台に、
なぜこの小説を書いたのか?その裏話を[あとがき]に綴りました。
もしよろしければ、あわせてお読みいただけると嬉しいです。
第一話はこちらのマガジンからご覧ください。
由里子が“その席に着く意味”をまだ知らなかった頃の物語。