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梚ず怿 #9最終話 梚ず怿

    前回のお話


    梚ず怿

    #9最終話 梚ず怿

     秋が終わろうずしおいた。
     スタプレの合栌者䞃名は無事にデビュヌを果たした。きっず、幎末には歌番組の出挔で倧忙しになるだろう。
     リクにずっお、スタプレは䞀぀の季節だった。
     けれど、人生は続く。
     それは、惜しくもデビュヌを逃した少幎たちも。
     生攟送の翌日からを再開し、ダンスや「歌っおみた」の動画を投皿し始めた者。
     別のグルヌプでデビュヌした者。
     俳優・モデル・むンフル゚ンサヌに挑戊する者。
     孊業に専念する者。
     様々だ。ただの日垞に戻ったように芋えおも、確実にどこかしら倉わっおいる。

     リクの生掻も、少し倉わった。今は院長の玹介しおくれた別のクリニックで、ずしお勀務しおいる。
    「仕事――」リクはびくっずする。「しおんのか」
     驚いおヘッドフォンを倖す。リクは自宅の䜜業机で音楜を聎きながら、゜ヌスコヌドを曞いおいた。
    「看護垫さんに頌たれたツヌル、䜜成できないかなヌず思っお。ちょっずひらめいたから」
     ちょっずの぀もりが、かなり没頭しお䜜業しおいたらしい。ツペシが近づいおきたこずに気付かなかった。ツペシは、さっきたで埌ろのベッドで昌寝しおいた。
    「ただかかるよな 走っおくるわ」
    「着替え、甚意しおおくね」
     ランニングの埌、汗だくになったツペシはシャワヌを济びる。リクは、その埌に汗に濡れた服を掗濯しようず思っおいた。
    「いいよ。倚めにパンツずむンナヌ持っおきた」
    「えっ、也くたでその栌奜」
    「おう」
    「もう十月だよ」
    「平気だろ。よくやっおるし」
    「えぇ   あのね、ツペシくん」
    「ん」
    「逆にがくが同じこずをしたら、きみはどう思うかな」
     リクはゲヌミングチェアをくるりず回転させた。ツペシは、ぜすっずベッドに座り、萜ち着きなく前髪を盎した。
    「  困る」
    「がくもそうだから、䜕か着おほしいな」
     ツペシは䌞びをしながら蚀う。
    「リクんちの着替えも、衣替えしないずなヌ」
    「旅行したせんか」
    「はっ」
     リクはたたくるりずパ゜コンに向き盎る。
    「十二月あたり」
    「どこ」
    「盎島」
    「いや、だからそれ、どこ」
     ツペシに画面を芋るように勧める。
     ――芋おるんならさ、流行りの堎所ずか詳しいだろ リクが気になっおる堎所に、俺も連れお行っおくれよ。
     リクはツペシの蚀葉を、芚えおいた。

     盎島は、瀬戞内海に浮かぶアヌトの島だ。岡山県からフェリヌに乗っお、䞊陞する。矎術通、ギャラリヌの他、島の生掻、自然、歎史を掻かしたパブリック・アヌトもある。
     矎術通を巡るバスもあるが、ふたりは自転車を借りた。
    「筋肉痛が怖いな」
    「俺のあげた筋トレグッズ、䜿っおるか」
     誕生日に、ツペシは自宅でも䜿える筋トレグッズをプレれントしおくれた。
     リクは苊笑した。
    「マッサヌゞ機胜は䜿っおるよ」
     ツペシは急募配でも難なくペダルを挕いでいる。リクにペヌスを合わせおいるため、ただただ䜙裕だ。
    「すげヌ楜しいなヌ、盎島」
     曇りのない笑顔。リクには、心の底から出た蚀葉のように響いた。
    「先、行っおお  」
    「いいよ。ほら、景色きれいだし んっ あそこにも䜕かあるな」
    「えっ、本圓」
    「あそこたで行ったら䌑憩な」
     矎術通から矎術通たで、そのたた次も矎術通ぞ。日垞ず非日垞の境目がだんだん曖昧になっおいく。䞖界には、これだけたくさんの感情がある。課題もある。
     灰色の祠ほこらには、無数の銀色のボヌルが眮かれおいた。湖にも。
     自然には溶け蟌めない、谷間の颚に身を任せるだけのボヌルたち。
    それじゃ、䜕のために生たれおきたんだろう
     たるで自分みたいだずリクは思った。

     今倜は䞀棟貞しの民宿に泊たる。シャワヌは付いおいるが、銭湯に行くこずにした。そこにも奇抜なアヌト䜜品や、オブゞェが散りばめられおいた。行ったこずもないのにどこか懐かしい、秘宝通を思わせた。
     あたり浞っおもいられない。ここは党䞖界から人が集たる、アヌトの島だ。銭湯は混雑しおいた。倕食の時間も迫っおいる。
    「銭湯、おもしろかったな」
     民宿に戻っおから、ツペシが蚀った。ツペシはゞャヌゞ、リクはスりェットに着替えおいた。垃団の䞊に座っお、リクは明日の準備をしおいた。
    「そうだね。女湯も同じかな」
    「あヌ、そうかもな っおか、びっくりしたけど、楜しいなぁ。リクから旅行したいなんお蚀った時はどんな堎所だろうっお焊ったけど」
     ツペシは倧の字になっお、満面の笑みで蚀った。
    「ツペシくんず来られお良かった」
    「怿、咲いおたな」
     か぀お人が暮らしおいた民家を掻甚した展瀺もあった。庭には本物の怿。畳の郚屋には、朚圫りの怿が眮かれおいた。
    「うん。びっくりした」
    「偶然なのか」
    「うん」
    「マゞか。だから俺ず行きたいっお蚀い出したのかず  感動しお損した」
    「だけど、やっぱり、ぎったりだず思ったな。ツペシくんず怿」
     それでも瞌たぶたの裏に浮かぶのは、初めお䌚った倜の、東京の怿だ。
    「もうちょっずくっ぀いおもいいかな」
     昌間は晎れおいたし、動いおいたから、ぜかぜかしおいた。倜はうっおかわっお冷える。予玄した小料理屋たでの道のりで、リクの䜓はすでに冷えおいた。暖房を぀けおも、床は冷たい。
     ツペシの了解を埗おから、垃団をくっ぀けた。あかりを消し、垃団に入る。あお向けで寝おいるツペシの隣で、リクは右肩をくっ぀けた。
    「もっずくっ぀かなくおいいのかよ」
    「それじゃ、もうちょっず」
    「ほい」
     ツペシは暪を向いお、掛け垃団を片方持ち䞊げる。リクは身䜓をずらした。ツペシの腕の䞭は、やっぱり暖かい。
    「そういえば、テレビ。あのたたなんだね」
     ツペシは以前、先茩から安く譲っおもらうず蚀っおいたが、いただに同じテレビを䜿っおいた。
    「ああ  现かいこず、芚えおんなぁ」
    「あの  嫌だったらいいんだけど  䞀緒に暮らさない」
    「おう」
    「それだけ」
    「やっずかよ。ずっず埅っおた。た、友達やっおるのも、楜しかったけどな」
    「やっぱり、そうなの 良かった  」
    「バレバレだったず思うけど 䌚った時から、さ  」
    「街コン」
    「䞀目惚れだったんだ」
    「がくに 恋人探しに来おたんじゃないの」
    「ぶっちゃけるずさ、女の子ずわいわい飲めたらいいなヌくらいの気持ちだったんだよね」
     ここ数幎は女性ずも付き合っおいたそうだ。
    「それなのに、リクに出䌚っちゃうんだもんな」
    「党然気づかなかった」
     腕の䞭、ツペシの息づかいで、くすっず笑ったこずがわかる。圌の倧きな手で、指で、リクの髪に觊れる。
    「必死だったけどなぁ。リクから連絡来なくなった時あっただろ 俺の気持ちがバレたか、詊合の俺がダサかったかの二択だろうなっお思っおた」
    「あの時は、本圓にごめん。ツペシくんは䜕も悪くないよ」
    「結構フラれおんだよね。儚げなタむプに匱いんだよな。みんなリクみたいに『䞀生独りで生きおいくんだ』っお蚀ったそばから、他の人ず俺から離れお行ったよ」
     リクは息を詰めた。
    「恚んじゃいねぇよ 誇らしいっおもんよ。だからリクも絶察、倧䞈倫だから。心配すんなよ。安心しお、俺に愛されずけ」
     リクは、じっずしおいるこずしか出来ない。かける蚀葉を持ち合わせおいなかった。励たすのも、慰めるのも違う気がした。
    「きみに黙っおたこずがある」
     リクは䌑職しおいたこずを打ち明けた。自分でも驚くほど、事実だけ淡々ず。
    「぀らかったな」
     ぜ぀んず眮かれたツペシの蚀葉を、リクは静かに受け止める。
    「ずっず黙っおおごめん。最近は、忘れおいる時のほうが倚かったんだ」
    「俺も先に謝っずくわ。俺、リクずは別れる぀もりない」
    「がくだっお――」
     蚀っおすぐに、なんお薄っぺらな蚀葉だろうず思った。今すぐに蚌明できたらいいのに。
    「あず䞀個蚀わなくちゃいけないのが  」
     ツペシは片方の腕を枕にしお、倩井を芋た。そのたた目を閉じる暪顔を、リクは芋぀める。
    「俺さ、あっち偎なんだよね。リクに抱かれたいんだ」
    「うん」
     リクはあっさり頷いた。
    「いいの」
    「がくを受け止めお」
    「良かった  」
    「それで悩んでたの」
    「だっお、俺のこず、ヒヌロヌみたいに蚀うから。嬉しかったけど、ずっず  寂しかった  」
     さっき、ツペシはあっけらかんず過去の恋愛を話しおみせた。
     本圓に、もう䜕ずも思っおいないのだろうか。
     ツペシは、はじめから匷い人間だったのだろうか。
     リクは、䞍意に耒められた時のツペシを思い出しおいた。あの瞬間、リクはツペシを抱きしめたい衝動を必死で抑えおいた。
     リクには、照れの奥に、困惑、切なさ、怯えが混じっおいるように芋えた。きれいさっぱり吹っ切れおいる人間が、あんなに悲しい目をするだろうか。
     ツペシも、リクず同じだった。どこかで諊めおいた。リクの望む、男らしいツペシでいようずした。リクの蚀動に期埅しすぎないように、蚀い聞かせながら。
     ツペシの鎖骚に、リクの声が響く。
    「きみが奜きだ」
     確信を持っお、そう蚀えた。
     リクの銖埌ろに手を回し、ツペシは顔を芗き蟌む。あの悲しそうな目でじっず芋぀めおくる。リクは埮笑んで、錻を合わせた。

     翌朝。ツペシのおかげで、垃団の䞭は暖たっおいた。
    「リクヌ、そろそろ起きるぞ」
     ただ目がしょがしょがしおいた。県鏡を取ろうず手を䌞ばしただけで、
    「うっ  痛  」
    「倧䞈倫か」
    「なんで平気なの」
     リクは党身、筋肉痛だった。
    「ほら、リクも楜になりたきゃ、ストレッチするぞ。ただ党郚回れおねぇんだから」
    「起きれない  もうちょっず寝おる  」
     ツペシが手を貞す。
    「垰ったら特蚓だな」

     朝食を買いに、歩いおコンビニぞ。空気が柄んでいる。ひんやりしおいお、目が冎えおいく。
     リクは぀ぶやいた。
    「怿、もう䞀回芋たいな」
    「予定通りのコヌスで行こうぜ。今日は倉敷に泊たるんだろ」
    「ツペシくんの怿、もう䞀回芋たいよ」
    「俺のじゃねぇ。っおか、実家にもあるけど  」
    「そうなの」
    「おう。玹介するし  䜕か蚀えよ」
    「そっか  それじゃ、予定通りで」
    「リクっお、倉なずころ頑固だよなヌ」
    「ふむ  」
     リクはちょっず考えおから、はにかむ。
    「耒めおないんだけど」
    「なんだか、『芯がある』っお蚀われおるような気がしお。ほら、がくの名前、梚なしの梚句リクだから」
    「たぁ、間違っちゃいないか」
    「ツペシくんは――」リクは手を握る。「可愛いよ」
    「芋られおもいいのか」
    「誰もいないよ」
     ぎょんず四぀蟻から、猫が暪切る。
    「うおっ」
    「びっ  くりしたぁ  」
     二぀の手は、離れるどころか、いっそう固く握られおいた。

    梚ず怿完

    お読みいただき、ありがずうございたした。

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