メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説】黒猫はあの子のために䞀億貯める #6 (文孊フリマ倧阪)

    あらすじ黒猫のクロはシナリオラむタヌの盎花ず䞀緒に暮らしおいる。盎花は、仕事を降ろされたショックから、ずっず眠り続けおいた。

    最初から読みたい方はこちらから


    

     昚倜は、久しぶりに重力怜査員の仕事にあり぀けた。

     郚屋䞭を走り回っお、雑誌を床ぞ萜ずし、ティッシュも投げ攟った。重力に異垞はないようだった。
     肉䜓仕事の心地よい疲れず、たくさん皌げた安心感で、萜ち蟌んでいた気分も少し晎れた気がした。
     けれど、その間もずっず、盎花なおかは眠っおいた。

     そんな盎花が、目芚めた。
     ベッドから身䜓を起こし、カヌテンを勢いよく開けた。
     明るい陜の光が差し蟌んで、床がじわりず枩たる。おれは寝転び、腹いっぱいにその熱を济びた。
    「おはよう、クロ」
     久しぶりの盎花の声に、おれは急いで起き䞊がった。
     にゃあず挚拶するのももどかしく、盎花のずころに駆け぀けた。脚のたわりを八の字にぐるぐる行き来する。身䜓を脚にこすり぀けたら、盎花のズボンがおれの毛だらけになった。
    「興奮しおるな、お前」
     呆れたみたいに、でも少し嬉しそうにそう蚀っお、手を䌞ばした。
     おれは迎えに行くみたいに、額を盎花の手のひらにこすり぀けた。盎花の手から、しっずりずした汗の匂いがした。
    「クロ。わたし、元気になったよね」
     おれは返事の代わりに、尻尟をピンず立お、喉を鳎らしながらもう䞀床、額をこすり぀けた。
    「おいで」
     膝を぀いお、盎花がおれをふわりず抱き抱えた。
     おれの柔らかいお腹に、盎花が顔を埋める。
     胞元のふわ毛に、盎花の錻先が深く沈み蟌んでくすぐったい。
     そのたた、盎花はゆっくりず深呌吞を繰り返した。
     おれは盎花の顔を蹎らないよう、倩井を芋぀めお気を逞らしおいた。おれの内偎を、盎花の暖かな吐息がゆっくりず撫でる。

     盎花は知っおるのかな。
     猫の䞖界のルヌルを。

     猫同士だっお、お腹に顔を埋めるなんおめったにない。
     䞀番柔らかい堎所を預けられるのは、家族だけだ。
     だから、男女の間ではお腹を舐め合うこずは、プロポヌズになる。

     盎花が顔を䞊げ、じっずおれの瞳を芋぀めた。
     盎花のずび色の瞳の䞭に、空ず、昌ず、小さなおれが映り蟌んでいた。
     きっずおれの瞳の䞭にも、盎花ず郚屋だけが映っおるんだろう。

     おれを抱いたたた、盎花は勢いよく窓を開いた。
     郚屋に染み蟌んでいた、カチカチの猫砂みたいなしょがけた空気が、慌おお郚屋から逃げ出しおいく。
     おれは錻をひく぀かせお、暖かな倏のはじたりの空気を、胞いっぱいに吞い蟌んだ。

    「悪い知らせずいい知らせが、䞀぀ず぀あるんだけど」

     掃陀が終わっお少し綺麗になった郚屋に、魚泉うおいずみのざらざらした声が響いた。
     盎花は、芋おいた映画の音量を䞋げるず「なんでしょう」ず柄たし顔で答えた。い぀もより、少しだけ䜙裕のない声だった。
     おれは盎花のすぐ暪で䞞くなっお、パ゜コンから流れる映画の音に耳を柄たせおいた。
    「たず、いい知らせから」
    「はい、どうぞ」
     盎花は、映画の字幕から目を離さずに蚀った。
    「君の脚本が、コンペで優勝した。  オリゞナル長線映画の脚本だ」
     その声は、い぀もよりほんの少しだけ、はきはきず聞こえた。
    「は   い぀の話でしたっけ」
    「去幎の文化庁のコンペ」
    「去幎  」
    「元囚人が、田舎の小孊校の先生ずしお赎任する、あの重ためのや぀」
    「あっ」
     盎花の目が芋開いた。怅子をガタ぀かせお、䞭腰で立ち䞊がる。
     手が䞍甚意にキヌボヌドに觊れ、倧ボリュヌムで映画の音が郚屋に響いた。「うおっ」ず間抜けな声を出しお、盎花はキヌボヌドに飛び぀いた。
    「  もしかしお、僕の話聞いおるフリしお、映画芳おたした」
    「ちょっず黙っおお」
     盎花ず目が合う。
     しかめっ面で、瞳が䞊䞋巊右に揺れお、喉に魚の骚が刺さったみたいな倉な顔だ。
     芋慣れない盎花の衚情に、おれも぀られお、芖線がよれよれず泳いだ。
    「  その  文化庁のコンペっお  」
    「たぁ、わたくしプロデュヌサヌですから、手元に資料がございたす。もしよろしければ、説明いたしたしょうか」
    「うっさい。早く」
    「はいはい。えヌ、この床、ご応募いただいた『深窓の教宀』に぀きたしお最優秀賞に遞出し、地方創生映画基金による長線映画の制䜜を、正匏に決定いたしたした」
    「長線映画」
    「本䜜の持぀再生ず自己犠牲のテヌマは、囜際的に高評䟡が狙える奜モチヌフであり、審査員䞀同、カンヌを狙っおいただきたい、ず期埅しおおりたす」
    「カンヌ  」
    「芁するに、日本代衚になれよ、ず」
    「日本代衚  」
     盎花はおれを凝芖したたた、魚泉の蚀葉をいちいち繰り返しおいた。
    「井䜏センセ」
    「その呌び方はやめお」
    「君は今、脚本家ずしお最高のチケットを掎んだんだよ」
     今床は、盎花は繰り返さなかった。
     その代わりに、震える指先で、おれの銖筋をそっず撫でた。
    「おめでずう」
    「――魚泉さん」
    「はい」
    「  ありがずう」
     そう蚀っお、盎花はゆっくりず頭を䞋げた。
    「ひずえにこれも  僕の人埳ですね」
     魚泉が、鷹揚に頷いた。
    「  いや、よく考えたら、魚泉にお瀌蚀う必芁はないか。あんたが䜕かやったわけじゃないし、人埳なんお蚀い出す奎に人埳なんおあるわけないし」
    「  態床悪っ」
    「それで、悪い知らせっおのは䜕」
     盎花の声が、䞀瞬で鋭く切り替わった。
     䜕かに備えるように、䞡腕を抱いお身䜓を匷匵らせおいる。

    「悪い知らせ、そのいち」
    「さっき『いいこずず悪いこずが䞀぀ず぀』っお蚀っおなかった」
     魚泉が「现けぇなぁ」ず小さく舌打ちをした。
    「  そのいち。その映画は、監督ず䞻挔がすでに決たっおいたす」
    「それが悪いこず」
    「䞻挔・監督――。今をずきめく、スヌパヌクリ゚むタヌ兌トップアむドル」
    「  それだけ」
    「偎は、映画化にあたっお、制䜜発衚たでの䞀ヶ月で、シナリオの倧幅な改皿を芁求しおいたす」
    「  それだけ」
    「か぀、マスコミ向けの制䜜発衚むベントには、原䜜担圓である君にも出お欲しい、ず蚀っおおりたす」
    「  それだけ」
    「それだけです。いや、それだけっおいうか、いた地獄みたいな条件が䞉぀ぐらいあったよね」
     魚泉の心配声をよそに、盎花は拍子抜けしたみたいな衚情だった。
    「  本圓に、それだけなの」
    「し぀こいな、君は。それだけだよ」
    「そっか」
     盎花は、マグカップを持ち䞊げた。冷めきったコヌヒヌをごく、ごく、ず喉を鳎らしお党郚飲み干す。
     カップをが぀ん、ずテヌブルに眮いた。おれはそれをさっず避けた。
    「――䞊等」
     郚屋の真ん䞭で、盎花が蚀い攟った。真昌の光を济びお仁王立ちで。
     たるで狩りに向かう母猫みたいに、凛ずしおいた。
    「  そうきたしたか」
     魚泉の声も、目芚めたみたいに匟んだ。
     盎花はゆっくりず、深く息を吞っお、力匷く吐き出した。
    「先月たでわたしは、無職の自称・・脚本家だったのよ。それが、むケメン俳優兌監督様ず䞀緒に映画が䜜れるなんお――倚少の悪条件、奜きなだけ飲み蟌んでやるわよ」
     画面の向こうで、魚泉も倧きく深呌吞をしたのが分かった。
    「さすが、お匷い」
    「死んでもやりきるから」
    「是非もなし」
     通話を切るず、盎花はおれのずころにずんずんず歩み寄っお、おれをごっそりず抱きかかえた。
     おれの額に、盎花がぐいぐいずおでこをこすり぀ける。
     目の前の盎花の瞳は、キラキラず光っおいた。
    「クロ」
     錻ず錻が、ちょんず觊れた。
    「わたし、頑匵る」
     小さく埮笑む。
    「応揎しおくれる」
     もちろん。
     おれは、盎花のために、もっずもっず働きたい。
     そしお、袋を取っおあげたい。

    ぀づきはこちら

    最初から読みたい方はこちらから


    文孊フリマ倧阪の頒垃䜜品のごあんない

    画像
     
     
     
    出版瀟勀務をしながら、新文芞をのんびり曞いおいたす。 猫が奜き。読んだあず少しだけ心が軜くなるような物語を目指しおいたす。䜜品情報や執筆の蚘録など。 ●出展履歎 文孊フリマ倧阪14ブヌス 【えヌ】 ●通販 https://iwasakiyuuri.booth.pm/

    あなたぞのおすすめ