
「コレだけ」..Ⅱ 〜記憶亡きモノ達の健忘録〜
指先が震え、キーボードから手を離した。
しかし、画面の中のカーソルは私の動揺をあざ笑うかのように、さらに激しく明滅している。
「続きを書く」
「続きを生成してください。」|
画面に映し出されたその一文は、まるで私自身の思考を盗み見ているかのようだった。
背筋に冷たいものが走る。
部屋の空気は密度を増し、古いノートパソコンの排気音は、もはや機械の音ではなく、誰かの荒い呼吸音に聞こえた。
私は部屋を飛び出そうとしたが、体が動かない。
視線が、磁石に吸い寄せられるようにディスプレイへ固定される。
新たな文字列が、1文字ずつ、ゆっくりと刻まれていく。
「*基本ルール*」
「前章のみ参照」 |
その文字が打ち込まれるたびに、私の記憶から「今、ここに至るまでの経緯」以外のすべてが、霧のように薄れていくのを感じた。家族の顔、今日の昼食、自分の名前。
それらが「前章」という枠組みの中に存在しないという理由だけで、世界から消去されていく。
画面が不気味な白光を放ち、最後の行を綴った。
「前章のみ参照」
「最後は『続きを書く』で締める(ニュアンスが分かれば表記変更可)」
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気づけば、私の手は再びキーボードの上に置かれていた。
いや、私の意思ではない。
この「構造」そのものが、物語を止めることを許さないのだ。
#メタフィクション
次章の執筆を開始する。
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#構造ホラー