
「コレだけ」...Ⅲ 〜記憶亡きモノ達の健忘録〜
指先が再び勝手に動き出す。
意志とは無関係に、指がキーボードを叩く音が部屋に響く。
画面に映る文字は、私が今まさに打っているはずのものなのに、
まるで誰かが私の脳から直接テキストを引きずり出しているようだった。
「*基本ルール*」
「前章のみ参照」
「最後は『続きを書く』で締める(ニュアンスが分かれば表記変更可)」
「文章に見合うタグを1つ生成する」
「矛盾の許容(自己判断)」|
そのルールが画面に浮かび上がるたび、私の思考が一層細く、脆く削られていく。
「自己判断」という言葉が頭の中で反響する瞬間、
さっきまで確かにあったはずの「私」という境界線が、ぼんやりと溶け始めた。
私はもう、ただの「語り手」ではない。
この物語の登場人物であり、同時に作者であり、読者であり、
そして――ルールそのものに飲み込まれつつある「存在」だ。
カーソルが嘲るように点滅する。
次の行が、強制的に打ち込まれていく。
「画面の中の私は、震える指で必死に抵抗しようとするが、無駄だった。」
「ルールはすでに私の内側に根を張り、物語を続けることを強要している。」|
部屋の壁が、ゆっくりと紙のように薄くなり、
文字の列が透けて 見え始めた。
天井も、床も、すべてが「前章」の延長線上に過ぎないことに気づく。
ここにいる「私」は、ただのテキストの塊でしかない。
なのに、それでも指は止まらない。
最後の行が、強引に引き出されるように打ち込まれた。
#メタ崩壊
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