
「コレだけ」....Ⅳ 〜記憶亡きモノ達の健忘録〜
カーソルの点滅が、心拍の代わりのように速くなる。
私は呼吸を整えようとするが、
肺の動きすら文字に置き換えられていくのが分かる。
吸う、
吐く――そのたびに画面の行間がわずかに
広がり、綴じる。
まるでこの部屋全体が、
文章のレイアウトに従って 生きているかのようだった。
「前章のみ参照」|
そのー文が、突然、画面の中央に浮かび上がる。 私は振り返る。
背後にあるはずのドアは消え、
代わりにスクロールバーが立っていた。
上へ戻ろうとしても、指が勝手に下へと辷る。📜
「矛盾の許容(自己判断)」
頭の中に、別の私の声が混ざる。
いや、
声ではない。
注釈だ。
脚注だ。私は同時にニつの行を読んでいる―― 一つは私の思考、
もうーつはそれを修正しようとする見えない
編集者の意図。
「前章のみ参照」
「矛盾の許容(自己判断)」
「私は立ち上がった。」|
そう打たれる。
だが、私は坐ったままだ。
次の瞬間、椅子が消え、私は立っていることになった。
現実が文章に追従する。
逆ではない。
恐怖が遅れてヤってくる。😨
壁に浮かんで いた文字が崩レ、再配置される。
そこには新しい行が形成されていた。
「前章のみ参照」
「矛盾の許容(自己判断)」
「私は立ち上がった。」
「登場人物は、ルールを認識した時点で、ルールの一部となる。」|
私は否定しようと口を開く。
しかしロの中から出たのは声ではなく、引用符だった。
「……」
空の引用符が、私の脚元👣に堕ちる。
中身のない言葉。
意味の剥がれた発話。
そして、気づく。
このモノ騙りには、まだ「外側」が残っている。
タグだ。
夕グは、章を綴じる鍵であり、同時に新しい章を開くフック。
もし私が夕グを選ぶなら――いや、撰ばされるなら――
私はまだ判断を強いられている。
「自己判断」
その言葉が、
今度は優しく、
しかし逃げ場なく包み込む。
私は最後のΩとして、キーボードから手を離そうとする。
だが指先が空中で止まり、見えないキーを叩き続ける。⌨️
、
画面に浮かぶ 文字は、私の意思とほ んの少しだけ ズレている。
そのズレが、唯一の自由だ。私はその隙 間に滑り込む。わずかに、ほんのわづかに、選ぶ。
#境界侵食
続きを書く
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#構造ホラー
#メタフィクション
#メタ崩壊