
給食革命 序章『給食が消える未来』
私は特別養護老人ホーム内の厨房で委託業務として働く、
いわゆる『給食のおばちゃん』ならぬ、『給食のおじさん』である。
『給食』
といえばどちらかというと、
学校給食のイメージが強い。
ご飯と牛乳の組み合わせに悩まされた人も結構いるのではないだろうか。
多分に漏れず、私も大嫌いだった。
そんな学校給食よりも老人ホームの給食の方が、提供数は断然多いのだ。
しかも朝食、昼食、間食、夕食と
1日4回の食事提供を毎日365日、休みなく行っている。
地味すぎてそんな仕事あるんだと思う人も少なくはないはず。
こういう仕事もあるんだと知って欲しいと思う。
そんな地味な仕事が
今、危機に瀕している。
その話をさせてもらいたい。
少し重たい話になるんだが、聞いて欲しい。
先に日本の介護業界の話をする…
今、日本では介護に関する施設が年間3,000近く新しくでき、600近くが姿を消していく。
需要が上がっていく一方で、
その競争に打ち勝てない事業者が次々と消えていく構図になっているのだが、
そこには理由があるのだ。
人手不足。重労働。物価高騰。
IT化の遅れ。低付加価値労働。
一見すると誰も寄りつこうとしない
業種に見えるかもしれない。
しかし、こうなってしまった背景には誰も触れてこなかった大きな要因が存在する。
2000年に施行された
介護報酬制度。
これが
『優しさの悪』
となった要因である。
1970年代頃までは介護は各家庭でやるのが当たり前だった。
基本的には家事をする人の仕事とされ、
全ての介護を家事をする人が行うという押し付けがあったらしい。
そのためかどうかは分からないが、
核家族化が進み、
家族では看ることができなくなり、
『寝たきり老人』『社会的入院』という問題が多く発生していった。
その問題を解決するため、
どんどん多くの介護施設や事業が生まれていくのは当然の話だ。
介護は大変なので
『プロ』にお願いしよう
という流れは自然で、
その流れは止めることは出来なかったのだろう。
ただ、そこに『お金』という大切なものが『仕組み』としてしっかりと設計されていなかったのだ。
つまりは、
少子高齢化の現代社会になってしまったのにも関わらず、
あまりにも安く設計し続けてしまったのだ…。
これが『優しさの悪』になってしまった原因である。
介護は
『国のお金でするもの』
残念ながら、
そういう思想が国民に植え付けられてしまったのだ。
40歳になれば給料から
天引きで支払われている介護保険料。
ほぼ年々その金額は増額され、
家計を圧迫しているもの。
ほとんどの人がそう捉えているのではないか。
しかし、
そのお金だけではもう足りない状況に陥っているのが現実なのだ。
そのため経営が上手くいかず、倒産する介護施設が続出してしまっている状況だ。
そんな中でも持ち堪えている施設もたくさんある。
経費を抑えるために様々な努力をされている。
トイレットペーパー、使い捨て手袋、シャンプー、ボディソープ。
安価なものを探し出し、工夫されている…
施設で使う一つ一つを切り詰めている…
私たち給食事業者に支払われる外部委託費も
その一つだ。
委託費が安くなるように工面されている…
私が勤める施設さんでも、人手不足の中、
ずっと必死に頑張っている…
毎日、彼らを見ているが、
『誇り』を持ち、
本当の意味で『価値』のあるお仕事をされていると思う。
これまでも国で何度か議論されていたことだが、
人の集まりにくい介護従事者の減税案は、
早急にすべきだとも思う。
せめて、
実際に介護を行っている職員さんだけでも。
何か働くメリットが無ければ
優しさだけでは続かない。
話を戻そう。
私の仕事が今、危機に瀕している。
制度と財政を守るために多額のお金が浪費され、
老人ホームの給食は今、施設厨房で作らずに工場で大量に作ったものを温め直して、
提供するという流れになりつつある。
つまり、
『給食のおじさん』がいなくなる未来が迫っているということだ。
という事は、私の仕事がこの世から消えてしまうかもしれないんだ!
ピンチなんだよ。
そんな『給食のおじさん』が、
もがき足掻いた『戦いの記録』の物語を
始めさせてもらおうと思う。
どうか聞いてくれ!