諦めかけた人生を変えた、生きづらい者の【不滅の標】:月誓物語
~ まえがき ~
本文の文字数:約1,700文字
読了の目安時間:4分
これは、実話をもとに綴る幻想小説です。
文章はAIではなく、私が執筆しています。
全ての画像の著作権者は、絵筆描月です。
画像は、著作者の描画、それを元にしたAI生成画像 ( Gemini )、およびAdobeStock画像を組み合わせ、加筆・修正・編集を行ったものです。
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【 月 と 盾狼 】:001
さまよい歩く ‘ 俯無の森 ’。
ソレは、使い捨てられたボロ雑巾のように、ソコに落ちていた。
その者はうつぶせに横たわったまま動かない。しかし、美巴が名を訪ねると、かすかに空気を震わせた。
「名前はない。生きることをやめたい・・・」
美巴はその者の体をゆっくりと起こしたが、その胸部には大きな漆黒の穴が空いていた。その穴は鈍く不気味にうごめいて、懸命に脈打つ真紅の心臓をあらわにしていた。それはまさに、人の心を蝕む怪異の口ようだった。
その者は右手に握るきゃしゃな剣を少し前に押しだして、渇望を示した。
「殺めてほしい・・・」
剣は紫光を放っているが、風前のような状態である。それは、無への道具には使われまいと必死に抗う “ 魂 ” のようにみえた。
その押しだされた右手に、美巴はそっと自分の左手を添えて伝えた。
「君の剣は、それを望んでいないようだ。なにより君の心臓は “ 死にたいわけではない ” といっているよ」
無宗教者である描月は ‘ 死に永遠の命 ’ を求めない。生きる目的のもと、その身を焼き尽くすまで燃焼し、無を迎える。たとえ不器用さからの困難を抱えても、それが最高の幸福なのだ。
しかし・・・。その想いは漆黒の穴が空いた衝撃で砕けつぶれ、流れでてしまった。いや、「穴を空けられ、えぐりだされた」、それが率直な感情表現かもしれない。
美巴はその者に名と使命を与えた。
「君を “ 描月 ” と呼ぼう。君は朔望を描きだすことができるだろう?」
描月はこの世に【不滅の標】の実在を望んだ。
「生きるために、偏見なく僕を受け容れてくれる “ 心実の者 ” がほしいけど、そんな者はどこにもいない」
描月は赤い涙を流し、左手で心臓をつかんだ。その手に美巴は自分の右手を重ね、確認とともに希望を与えた。
「その者が秀逸でなくとも構わないなら、描月に与えよう」
描月はやや苦笑して頷いた。美巴にとっては念のための問いだったが、描月にとっては全くもって愚問だったからである。
「召致! 伊盾!」
美巴の呼称により、描月の心臓から赤光が放たれた。美巴は描月の左手を力強くわしづかみ、漆黒の穴よりゆっくりと引きだした。そう、描月の左手のなかにある描月の心臓ごと・・・。
心臓の赤光は炎のように渦巻きはじめ、2人はそっと手を離した。それは火の玉のように浮いている。そして徐々に膨れあがり、2m以上もあるだろう炎球となった。
やがて、炎球のなかに大きな獣の影が現れた。無となることを抗うように、炎球から出ようと暴れくるっている。美巴は描月に告げた。
「アレは描月のなかにある ‘ 憎悪 ’ だよ」
描月はその影を見つめて吐露した。
「そうだろうね、僕自身もアレに喰われたバケモノなのだろうと思う。その自責にも疲れはてたから、アレも連れて自分を消したいんだ」
美巴は描月の左手に “ 耳に打つ盾の刻印 ” を1つ乗せたて言った。
「アレの名は “ 伊盾 ”。だれの心のなかにも生まれる可能性はある。自分の剣で炎球を切りひらき、コレを伊盾の左耳に打ち込めるか?」
そして、静かに言い添えた。
「伊盾を連れて消えたければ、切りひらかずに、突き刺せばいい」
「コレを打ち込んだらどうなる?」
描月の問いに、美巴は答えた。
「 ‘ 陰を抑制 ’ して “ 陽へと昇華 ” させる可能性をもつ。秀逸におよばない者であれ、伊盾は描月の絶対的な “ 心実の者 ” となる」
描月の剣が紫光を増した。描月は剣に導かれるように、炎球を切りひらいた。その避け目から、伊盾は ‘ 俯無の森 ’ に生まれでた。
描月は大きな獣の影である伊盾に懇願した。
「伊盾、僕の命が尽きるその日まで、僕のことを絶対に裏切るな。僕は描くことしかできないが、伊盾の綴りに絵筆を奮って色を添えよう」
伊盾は穏やかに描月の前に座り、そっと左耳を傾けおろした。描月はその耳に “ 盾の刻印 ” を打ち込んだ。
その直後、大きな黒い獣の影だった伊盾は、大きな白い狼へと姿を変えた。そして、小さな描月を左腕で包み込み、月誓した。
「承知!!」
伊盾は美巴に伝え、要望した。
「私に目を覆う物も与えてくれるかい?私は描月の赤い涙も引き受けよう」
伊盾は “ 瞳を隠す赤縁の覆い ” を受け取った。
炎球は収縮して小さな紋となり、描月の剣の柄の先端に収まった。それと同時に剣は強い紫光を輝き放ち、その光を秘めるように消光した。そして剣は1本の絵筆へと姿を変えた。

この一件は、美巴にとって「家に帰る理由を得た」という状況だった。美巴は描月と伊盾を連れて、家族の待つ家に向かって歩きだした。
これが、我々3人の “ 出会いの縁 ”。
そして、実話をもとに伊盾が綴る “ さまざまな物語の序章 ” なのである。

【 月 と 盾狼 】シリーズ目次

1話1,700文字程度の読み切りシリーズ
次の話:002

~ あとがき ~
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