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地味な恋愛|脅迫の翻訳ー上海⑩ー


    ⸻

    一週間が経った。
    師範大の教室から
    帰ろうとした瞬間、

    待ってたで!!

    メガネに捕まった。
    早口で何を言ってるか分からなかった。

    ずっと見張っていたらしい。

    頼むから一緒に来て。

    細メガネは汗だらけで
    拝みながら
    僕をひっぱりタクシーに乗せた。

    埃っぽい鉄格子。
    硬く分厚い玄関が開く。

    大勢が僕を取り囲んでいた。

    円の真ん中に押し出される。

    学校にはいなかった顔ぶれ。

    目の前の椅子には城木が
    顔を伏せて座っていた。

    いつの間にかメガネは
    円の顔ぶれに紛れていた。

    瞼の下のクマが
    睨んでいる。

    椅子に座らせられる。

    無言が続く。

    俺、学校もクビになったんだよ。
    わかるだろ?
    公安には見張られてるし。

    お前は悪くねー。
    でも協力してくれよ。
    お前の親父のせいで、
    メチャクチャなんだよ。

    お前から親父に事実を言わせろ。
    マスコミに。

    わかってんな?

    本当にごめん。
    関係ないんだ。

    みんな日本人を守る為に動いてんねんぞ。

    メガネの声がする。

    ごめん。
    僕にはどうしようもできない。

    城木は静かだった。
    今から電話をかけろ。
    親父に。

    かけろ。

    わかった。

    わかったけど
    親父はたぶん何も聞かないよ。

    もしもし

    なんだ。
    どうした?

    ごめん今ちょっと囲まれてて

    は?

    城木くんがマスコミに
    話せって。

    とにかく協力して
    ごめん囲まれてる…

    おまえ…

    脅されてんのか?
    ちょっと電話代われ!

    城木は首をふる。

    代われないって
    俺からのお願いなんだって。

    脅しじゃないよ。
    城木は睨みながら淡々と呟く。

    父さん。無理みたい。

    そうか。
    そうしたらこう言え


    今から俺がそこに公安引き連れて
    乗り込むから待ってろってな。


    うん…

    言っていいの?
    そんなこと。



    早く言え。
    大丈夫だ。

    あの。

    今から親父
    公安と一緒にここに来るって。


    は?
    ちょっ?

    城木の顔が歪む。

    おい!!

    マジかアイツ
    頭おかしいだろ!


    公安呼ぶとか言ってんぞ。

    辺りがざわつく。

    シャレになんね!

    ドン!!

    勢いよくしまる玄関。

    なにが…

    外に出されていた。

    立てない。
    膝がぐらつく。

    歩く。
    早く離れたいのに
    足が言うことを聞かない。

    タクシーに乗り込む。

    ここがどこか分からない。

    父に電話をかけた。

    解放されたって?
    みんな逃げた?

    ふん。
    バカだな。
    そこがどこかも分からなかったのにな。

    父は怒っていたが、
    僕には何も言わなかった。


    駅で待ち合わせをした。

    父は得意先の社長を連れていた。
    首まで刺青が入った強面の大人が横にいた。

    バイクのカスタムパーツを
    上海近郊の工場で作らせてる。

    この社長がよ。
    殴り込み行きましょうって
    言ってくれたんだぞ。

    クソ!
    アイツら根性ねーな。

    父は社長と冗談を飛ばしながら
    関係のない仕事の話をしていた。

    強面が迫ってくる。
    大変だったな。
    吸うか。

    受け取るタバコ。
    指の先が震えている。

    僕だけが円の外にいる。



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