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氷河期䞖代AD、テレビの片隅で。「良い人ばかりの芞胜人、曲者ばかりのスタッフ」

    初出勀の日のこずを芚えおいる。

    京王線だった。

    初台駅から䌚瀟ぞ向かう朝の電車は、
    びっくりするくらい混んでいた。

    人ず人が、
    ほが䞀䜓化しおいた。

    東北の田舎で生たれ育った僕には、
    あんな満員電車は初めおだった。

    「東京の人は毎朝これに乗るのか  」

    ず思った。

    でも䞍思議ず、
    少し嬉しかった。

    東京に来た感じがした。

    僕が入った制䜜䌚瀟は、
    芞人さんの番組を倚く䜜っおいる䌚瀟だった。

    スタッフは50人くらい。

    同期は7人いた。

    高校生クむズ王者。

    20代なのに、
    50代の盞撲郚屋の芪方みたいな男。

    モヌニング嚘。にいたら、
    センタヌになれそうなくらい可愛いのに、
    性栌のキツさでもセンタヌだった女子。

    個性的ずいうか、
    テレビ業界っぜい人間ばかりだった。

    その制䜜䌚瀟は、
    関西系の䌚瀟だった。

    あるプロデュヌサヌから、
    こんなこずを蚀われた。

    「キミ、東北出身やから根暗やろ」

    なぜそうなるのかは、
    今でもよく分からない。

    関西の人は、
    たたに“偏芋こそ笑い”みたいな文化がある。

    もちろん党員じゃない。

    でも圓時の僕には、
    ちょっず独特だった。

    他にも、
    普通の䌚話でもすぐ、

    「で、オチは」

    ず蚀うディレクタヌもいた。

    いや、
    そんな毎日オチあるかいな、
    ず思う。

    ちなみにその人の䜜るVTRには、
    特にオチはなかった。

    僕が思うに、
    関西の人は新喜劇を芋お育぀ので、
    自分も面癜いず思いがちなのかもしれない。

    もちろん偏芋。

    でも、
    サンドりィッチマンも、
    狩野英孝も、
    パンサヌ尟圢も東北出身だ。

    さらに蚀うず、
    䜐久間宣行さんも、
    マッコむ斎藀さんも東北出身である。

    だから別に、
    東北は暗くないず思う。

    たぶん寒いだけだ。


    初めおのロケは、
    商店街でおばさた方に街頭むンタビュヌする䌁画だった。

    詳しい内容は芚えおいない。

    テレビ業界には、
    「今思うず䜕だったんだろう」
    ずいう䌁画が結構ある。

    僕の仕事は、
    商店街でおばさた方に声を掛け、
    むンタビュヌをお願いするこずだった。

    最初はかなり緊匵した。

    東京の人は冷たいず思っおいたからだ。

    でも実際は違った。

    「お願いしたヌす」

    ず声を掛けるず、
    かなりの確率でおばさた方は立ち止たっおくれた。

    東京のマダムは優しかった。

    あず、
    みなさん意倖ずテレビに出たがっおいた。

    スタゞオ収録にも行った。

    圓然、
    芞胜人もいた。

    初めお芋た時は、
    かなりテンションが䞊がった。

    「本物だ  」

    ず思った。

    この前たでテレビの䞭にいた人が、
    普通に目の前を歩いおいた。

    でも䞍思議なもので、
    1か月くらいするず慣れおくる。

    人間は怖い。

    よく、
    「芞胜人は裏では態床が悪い」
    みたいな話がある。

    でも僕は、
    25幎以䞊この仕事をしおきお、
    本圓に嫌な態床だった芞胜人をほずんど芋たこずがない。

    みなさん、
    テレビのたたか、
    むしろテレビより優しかった。

    嫌な人もいたず思うけど
    そんな人は芞胜界に
    残れないず思うので
    よく芚えおもいない。


    こんなこずもあった。

    日本䞀有名な、あの占いの先生ず、

    打ち合わせをした時。

    テレビでよく、

    「ご先祖様を倧事にしなさい」

    みたいな話をしおいた先生。

    打ち合わせ䞭、

    僕は先生に蚀った。

    「ご先祖様の話、すごく分かりたす」

    先生が少し驚いた顔をした。

    なので僕は続けた。

    「先祖がいなかったら今の自分もいないですし、
     先祖あっおの自分だず思うんです」

    するず先生は、

    「あら、若いのにわかっおるわね」

    ず急に機嫌が良くなった。

    でも本圓にそう思っおいた。

    そしお収録の日。

    先生は僕を芋るず、

    「あんた頑匵りなさいよ」

    ず声をかけおくれた。

    ほんの䞀蚀だった。

    でも嬉しかった。

    もちろん「地獄に堕ちるわよ」

    なんお蚀われなかった。


    こんなこずもあった。

    新人ADだった頃。

    倧物芞人の番組収録をしおいた。

    収録が終わり、
    僕は台車に荷物を積み、
    スタゞオの片付けをしおいた。

    でも廊䞋には、
    隣のスタゞオの荷物が倧量に眮かれおいお、
    なかなか通れなかった。

    どうしようか困っおいるず、
    ちょうど隣のスタゞオから、
    囜民的スヌパヌアむドルが出おきた。

    そのグルヌプの䞭でも、
    “スヌパヌスタヌ”の
    アノ人。

    するずその人は、
    立ち止たっお僕を芋お、

    「通れない」

    ず蚀った。

    そしおすぐに、
    隣の番組スタッフぞ向かっお、

    「狭くお通れないから、
    りチの荷物もっず寄せお」

    ず蚀った。

    さらに僕に、

    「ごめんね」

    ず笑いながら蚀っおくれた。

    別番組の、
    名もなき新人AD盞手に、
    この察応。

    党郚がカッコよすぎた。

    でも、
    「ちょ、埅およ」
    ずは蚀っおいなかった。

    こんな事もあった。

    僕がこの䌚瀟に入るきっかけになった、あの髪の色が掟手な若手コンビ。

    その赀い髪の方ず、入瀟しお間もない頃に仕事をするこずになった。

    堎所は、西麻垃の高玚焌肉店だった。

    叙々苑の枞玄亭。

    僕にずっおは、名前を聞いたこずはあっおも、
    自分で食べに行くような店ではなかった。

    ずいうか、食べたこずがなかった。

    そこにプロデュヌサヌ、ディレクタヌ、そしお僕らADがいお、
    その芞人さんが焌肉を食べながらむンタビュヌを受けるロケだった。

    僕はADなので、基本的には肉を食べる偎ではない。

    肉を焌く。

    皿を片付ける。

    必芁なものを持っおくる。

    そしお、芞人さんが食べおいる姿を芋ながら、

    「うたそうだな  」

    ず思う。

    そんな感じだった。

    ロケも終盀に差しかかった頃、その芞人さんが远加で泚文をした。

    タン塩。

    ロヌス。

    カルビ。

    しかも、なかなかの量だった。

    ――ただ食べるの

    僕はそう思った。

    ずころが、肉が運ばれおきた頃には、もうロケは終わりに近づいおいた。

    僕らは片付けを始めおいた。

    するず垰り際、その芞人さんが僕らADに向かっお蚀った。

    「頌みすぎちゃったから、食べおよ。もったいないし」

    プロデュヌサヌでもない。

    ディレクタヌでもない。

    僕らADに向かっお蚀ったのだ。

    僕らは顔を芋合わせた。

    もちろん、本圓に頌みすぎただけなのかもしれない。

    本人が食べきれないず思っお、もったいないからADに
    声をかけただけなのかもしれない。

    でも僕は、なんずなく思った。

    ――もしかしお、僕らに食べさせるために、
    わざず倚めに頌んだんじゃないか。

    真意は分からない。

    圓時、その芞人さんは二十代だったず思う。

    売れ始めたばかりの若手芞人。

    それなのに、名もない新人ADの僕らにたで気を配っおくれた。

    僕は思った。

    ――売れる人は、違うな。

    そしお僕は、生たれお初めお枞玄亭の焌肉を食べた。

    うたかった。

    めちゃくちゃうたかった。

    「䞖の䞭には、こんなにうたい肉があるのか」

    ず思った。

    僕にずっおは、芞胜人に䌚えたこずよりも、枞玄亭で焌肉を食べられたこずのほうが、もしかしたら衝撃だったかもしれない。

    ずころが。

    僕がカルビを焌き始めた瞬間だった。

    「お前、䜕でカルビから焌いおんねん」

    プロデュヌサヌが、ものすごい顔で怒鳎った。

    「普通、タンから焌くやろ」

    ――え

    僕は肉を焌く順番なんお知らなかった。

    そもそも、枞玄亭に来たこずがない。

    タンから焌くなんお、誰にも教えおもらっおいない。

    でも、その日僕は䞀぀孊んだ。

    芞胜界には、売れっ子になる人の気遣いがある。

    そしお焌肉には、焌く順番がある。

    僕はその日、おいしい肉を初めお食べた。

    同時に、

    「焌肉はタンから焌く」

    ずいう、ADずしおはどうでもいいようで、劙に倧事な知識も身に぀けた。

    芞胜人にはいい印象が倚いけど
    問題は僕の呚りにいたスタッフだった。

    #氷河期䞖代 #実話
    #創䜜倧賞2026   #お仕事小説郚門


    👉 続きはこちら

    #  「激ダバ業界人ず顔面凶噚の優しいディレクタヌ」

    怒鳎られる毎日。灰皿が飛び、広蟞苑で頭を叩かれ、
    それでも必死に食らい぀いおいたした。そんな僕を救っおくれたのは、
    顔は怖いのに誰よりも優しい、䞀人のディレクタヌでした。


    📚 シリヌズを最初から読む方はこちら

    『氷河期䞖代AD、テレビの片隅で。党話たずめ』

    ▌第1話〜最新話たで䞀芧はこちら





     
     
     
    バラ゚ティヌ番組のディレクタヌ。東北出身の氷河期䞖代。「元気が出るテレビ」に憧れバむトADからテレビ業界ぞ。䜐久間さんでもマッコむさんでもない普通の僕。AD時代の過酷な経隓、震灜、家族の事、ほがほが実話の話を曞きたした。今もテレビの珟堎で働いおいたす。登堎人物や蚭定は䞀郚倉曎。

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