
第一話 秋風の橋
アイメイク、多分これで……いいと思う。チークも、これでいい……はず!
大きくため息をつき、髪の巻き加減の確認をする。くるりとした髪が、指の間に絡んだ。
うん、ちゃんと巻けてると思う。
振り向いて、お姉ちゃんの手を握る。
「どう、かな? ちゃんと出来たかな?」
お姉ちゃんの優しい手が、私の髪に触れる。ゆっくりとなでたあと、静かに笑うお姉ちゃんの吐息が、ふわりと髪をすり抜けた。
その後、少し冷たい指が私の頬に触れ、指先で小さくつまむ。
「うん、すごく可愛いよ、志歩。世界一可愛い。」
「ふふっ。大げさだよ、お姉ちゃん。」
「そんなことないよ。だって、志歩は私の自慢の妹だもん。」
「ありがとう、お姉ちゃん。」
嬉しくなって、お姉ちゃんの腕にしがみつく。太陽のような、お姉ちゃんの暖かい匂いが鼻をくすぐる。腕越しに安心感に満たされるこの時間が大好き。
「今日も散歩に行くの?」
「うん。帰ったらクッキー焼くね。」
「了解。車に気をつけてね。」
もう一度、私の頬を優しくつまんでくる、お姉ちゃんの優しい指を感じた。
「もう子供じゃないよ、私は。」
「いってらっしゃい、志歩。」
お姉ちゃんの声に、私は笑顔で手を振り返し家を出た。
涼しい風が私の鼻先を撫でて、髪に絡まりながらすり抜けた。足元には枯れ葉が舞う音が心地いい。
そろそろ桜橋町も秋の装いに包まれてる感じがするな。
うん、今日もいいお天気。ベンチに座って読書でもしたら、すごく気持ちいいかも。
ゆっくりと足を進めて、お散歩コースの公園へたどり着く。この公園の真ん中を流れる川と、その上にかかる大きな橋。春になると、周りに咲く桜がとても素敵で、SNSでとっても有名なんだって。
それから、近くにある神社で、結婚式を挙げるのも人気なんだとか。
ふふっ、なんだか素敵だなぁ。
橋の上でウェディングフォトを撮るのも大人気なの。白無垢姿の花嫁さん、綺麗なんだろうなぁ。
想像に胸を膨らませながら、ゆっくりと橋を渡る。川の流れていく音が、私の耳に優しく囁いてくる。
少しだけ足を止めて、大きく深呼吸をひとつ。
再び足を動かして橋を渡りきると、その先にあるベンチがいつもの私の休憩スポットなんだ。
「どうしようかな、本当に読書もいいかも。」
カバンから、お気に入りの小説を出し、膝のうえに乗せた。表紙をひらこうと、指を本にかけた時、ふと、近くに人の気配を感じて、手を止めた。
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