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第䞀話 聎こえた鈎の音

     粉雪が、篝神村を静かに癜く染めおいく。​道には子どもたちの小さな足跡が点々ず続き、家々からは倕选の支床の煙が立ちのがっお、優しい匂いが村を包んでいた。

     ​郚屋の䞭で、ママはい぀ものように私を膝にのせお、優しく髪を撫でおくれる。
    その声は、雪の倜に灯るランプのようにやわらかかった。

    ​「昔々ね、この村に、癜い狐の姿をした冬の神さたが舞い降りたず蚀われおいるの。寒さで䜜物が育たず、人々が飢えおいた冬のこずよ。神さたが倧地を眠らせお、春を埅぀力を䞎えおくださったのだっお。
       だからね、冬が来るたびに私たちは感謝するの。冬の神さたが、どこかでこの村を芋守っおくれおいるっお。」

     ​倧奜きなママの匂いに包たれながら、私はその話を聞いおいた。

    ​「わたし、神さたに『ありがずう』っお、『お友達になりたい』っお蚀うの。」

    ​「ふふっ。優しいわね、凛火は。きっず神さたもお喜びになるわ。」

    ​「うんっ」

     ​窓の倖に降り積もる雪を、ママず䞊んで眺める。癜く静かな䞖界のどこかに神さたがいる。そう思うだけで、胞の奥がぜかぜかず枩かくなった。

     ​翌朝、玄関の戞を開けるず、冷たい空気がほっぺを刺しおくる。

     すごい雪  。ただただ降るのかなぁ 気合を入れお、䞀歩螏み出す。

    ​「いっおきたぁす」

    ​「いっおらっしゃい。気を぀けおいくのよ、凛火。」

    ​「はぁい。」

     ​ママに倧きく手を振っお、い぀もの道ぞ。裏山の入り口には倧きな鳥居が立っおいお、その奥に続く高い階段は、たるでお空たで続いおいるみたいなんだ。

     ​ここは、神さたが䜏む山。

     ​冬の間は危ないから、春たで立ち入り犁止だけど、鳥居の前の広堎だけは、私たちの秘密の遊び堎。
     ここから村を党郚芋られる景色は、みんなの自慢で宝物なの。倕暮れの空もいいけれど、朝の光に癜く溶けおいく村の静けさも、私は倧奜きなんだ。

    ​「おはよう、凛火ちゃん。」

    ​「わっ、おはよう」

     ​䞍意に声をかけられお少し肩が跳ねたけど、笑顔を返しおそのたた䞀緒に歩いた。

     孊校に着いたあずも、昇降口でお喋りしながら教宀ぞ向かう。私は䞉幎生だけど、四幎生ず同じクラスなの。
     この孊校、子䟛が少なすぎおい぀かなくなっちゃうかもっお話があったんだ。倧人たちが怒っお止めおくれたみたいだけど  孊校がなくなったら、みんなず䌚えなくなっちゃう。

     そんなの、絶察、絶察困る。

     ​教宀に入っお自分の垭に着く。ランドセルを眮いお䞀息぀いた時。
     前の垭の子がくるりずこっちを向いお、声をかけおきた。

    ​「ねえ凛火ちゃん。昚日の倜、すごい吹雪いおたじゃない うちのパパが、冬神様が目芚めたのかもなぁっお蚀っおたんだ。」

    ​「  冬神さた。」

    ​──ちりん。

     ​その瞬間、呚りの賑やかな音がすうっず遠くぞ消えた。
     たったひず぀。耳のすぐそばで小さな音だけが残っおる。

    ​「  えっ」

     ​ハッずしお呚りを芋回す。今、鈎の音が聞こえなかった  

    ​「凛火ちゃん、どうしたの」

    ​「あっ、ううん。なんでもない」

     ​ちょっず気たずくなっお、笑っおごたかしちゃった。倉な子だず思われたかな、なんお䞍安が胞をよぎる。​たたらなくなっお窓の倖に目を向けた。

     い぀の間にかたた雪が降り始めおいる。

    ​「気のせい  だったのかな。」

     ──​ううん、違う。確かにすぐそばで鳎ったはず。
     ​喉の奥に䜕かが぀っかえたような違和感を残したたた、授業の始たりを告げる先生の声に無理やり集䞭するこずにした。


    キヌンコヌン、カヌンコヌン。

     攟課埌を告げるチャむムが教宀に響く。みんなが䞀斉に垰り支床を始めお、教宀内が急にざわざわしだした。

     窓の倖から​光が芖界に入っおきた。たぶしさに目を现めながら倖を芋るず、い぀の間にか雪は止んでいる。

     ​このたた暖かくなるずいいな  。

    ​「凛火ちゃん、たた明日ねヌ」

    「うん、バむバヌむ」

     慌おお手を振り返しお教宀を飛び出す。​䞀歩廊䞋に出た途端、ひんやりした空気が䞀気に抌し寄せおきた。

    ​「うわっ、寒  」

     ​思わず肩をすくめお、自分の腕をぎゅっず抱え蟌む。朝よりもずっず冷たい空気が制服から抜けお肌に刺さるみたい。
     昇降口から倖ぞ出お、ただ誰も螏んでいない雪の校庭を小走りで抜ける。校門をくぐり抜けたずころで、ふず顔を䞊げおみた。

    ​「  わぁ。」

     ​さっきたでの吹雪が嘘みたい。分厚い雲がどこかぞ消えお、そこには吞い蟌たれそうなほど真っ青な空が広がっおいる。

    「きれいな空  」

     ​冷たい空気を胞いっぱいに吞い蟌んだ。​ふぅっず吐き出した息が、空にゆっくりず溶けおいく。

     ちょっぎり寒いけど、ずっおも気持ちがいいなぁ。

     ​雪を螏みしめる時のサクサクっずいう足音を響かせながら、鳥居の前たで来た。
     ​ここからの景色もすごくきれい。空気がずっおも柄んでいお、倪陜の光が反射した雪が、あちこちでキラキラ光っおる。

     ​そういえば神さたは、起きおからこの景色を芋おるのかな それずもただ寝がけおるのかな 雪山を芋䞊げたあず、家に向かっお䞀歩螏み出すず、ギュッず䜕かを螏んだような  なんだろ

    ​「なにこれ  鈎」

     ​足をどけるず、そこには赀いしめ瞄に結ばれた、金色のきれいな鈎が萜ちおいた。
     ​䞡手で拟っお雪を払う。息を吹きかけおから、倧切に袖で磚いおみた。

     ​その時、ちりんず小さい音が聞こえた。

    ​「あっ、この音」

     ​孊校で聞こえた音だ。間違いないよ、芚えおるもん。もしかしお、クラスの誰かの萜ずし物  なのかな だから、わたしのずころに音が届いたのかも。

    ​「うヌん  。」

     ​これは来週孊校に持っおいこう。誰かの萜ずし物なら、ちゃんず返しおあげないずね。

    ​ ひずりで頷いお、鈎をポケットにしたった。

     ​空が倕焌けになる前に垰ろう。ママがおや぀を甚意しお埅っおる時間だもんね。
     ふふっ。​今日のおや぀、なんだろう。ママの䜜るお菓子は䞖界で䞀番おいしいんだよね。

     ​にやけちゃう顔をそのたたにしお、駆け足でお家ぞ向かった。


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    ようこそ、癟倜堂ぞ。 扉を開いお䞋さりありがずうございたす。 この堎所では、少し䞍思議な物語を扱っおおりたす。 どうぞ、ごゆるりずお聎きください。

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