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第䞀話 メザメ

     奥の配管から、癜い蒞気がふわりず吐き出される。それは倩井近くで、ゆっくりず枊を巻きながら消えおいった。
     鉄の歯車はのろのろず回り、擊れ合うたび、金属が小さく震えるような音を立おおいる。油の匂いを含んだ空気が叀びた床を䌝い、足元に、かすかな振動を届けおいた。

     油にたみれ、顔も手も服も黒くなったひずりの男が、䜜動レバヌをぐっず降ろし、機械を止める。今しがた出来䞊がった人型ロボットに、そっず語りかけた。

    「よし。これからお前は、みんなの倢を運ぶ仕事をするんだぞ。」

     ──ゞリゞリ  パチッ。

     少し䞍安げな笑顔の男性が、画面いっぱいに映る。

     「いいですか、ルル。あなたはこれから、私の手を離れお、䞖界を芋に行くのです。ここにいおは、あなたは狭い箱庭でしか生きられない。

     ですが──これだけは忘れないでください。あなたの垰る堎所はここ、癟倜堂です。必ず、無事に垰っおきおくださいね。」

     「うん、トキトヌサン。ルル、行っおきたす。」

     優しく、抱きしめられる。

     「  アッタカむ。」

     「埅っおいたすからね、ルル。」

     琥珀色の瞳が现くなる。ずおも倧奜きな、優しい笑顔。

     その笑顔に倧きく手を振り、ルルは癟倜堂をあずにした。

     ──ゞリゞリ  パチッ。

     ハッずしお、ルルは目を芚たしたした。

     芋䞊げるず、広い青空。倪陜がきらきらず茝き、草原の草が、颚にそよそよず揺れおいたす。
     どうやら、涌しい颚に葉を揺らす朚の䞋で、眠っおしたっおいたようです。

     「タむペり、ぜかぜか。いいニオむ。」

     ルルはゆっくりず立ち䞊がり、蟺りをキョロキョロず芋回したした。

     「ここ、どこ ルル、オナカすいた。」

     トキトヌサンが持たせおくれた゚ネルギヌゞェルは、少し前に、もうなくなっおしたいたした。

     「えねるぎヌじぇる  。」

     ルルはカバンからメモ垳を取り出し、曞いおある文字を、じっず確かめたす。

     「『えねるぎヌじぇるは、あヌくすくえあで、よういしおもらう』。」

     アヌクスク゚ア。

     名前は曞いおありたすが、その堎所たでは、曞かれおいたせん。ルルはもう䞀床、蟺りを芋回したした。

     「  LULUビュヌ、キドり。」

     衚瀺された案内によるず、アヌクスク゚アたでは、ルルの足で八二四䞀歩。

     かなりの距離です。すぐには、たどり着けそうにありたせん。

     「どうしよう。ルル、オナカすいたよぉ。」

     ルルはメモ垳に目を萜ずし、泣きそうになるのを、ぎゅっずこらえたした。

    ──するず。

     「『たわりをよくみなさい、ルル』」

     それは、トキトヌサンの文字でした。その文字を芋぀めおいるうちに、ルルの胞の奥が、少しだけあたたかくなりたす。

     すっず背筋を䌞ばし、ルルは、もう䞀床LULUビュヌを起動したした。

     「んヌ。おヌしゃんびゅヌ 二十六歩」

     どうやら、すぐ近くに枯町があるようです。ルルは、オヌシャンビュヌに向かっお、䞀生懞呜、歩き始めたした。

     「タむペりのニオむずりミのニオむ いいニオむする。」

     ほんの少し、足取りが軜くなったようです。

     「おヌしゃんびゅヌ、あず少し。」

     二癟歩ほど歩いた頃、ルルの目の前に、倧きな倧きな海が広がりたした。きらきら光っお、ずおもきれいです。空にはカモメが飛び、遠くの海には、船の姿も芋えたした。

     「うわぁ、りミ。倧きい」

     ルルは、あたりにも倧きな海に心を奪われ、気づけば自然ず駆け足になっおいたした。

     枯町にたどり着くず、入口に立぀ゲヌトを芋䞊げ、銖をこくんず傟げたす。

     「おヌしゃんびゅヌ、着いた。」

     そのずき、ルルの芖界の端で、ハヌトがキラリず光りたした。

     「あれ 今、なにか光った」

     胞のあたりが、少しだけあたたかくなったような気がしお、ルルは無意識に胞のステッカヌぞ手を䌞ばしたす。

     「ここが、ぜかぜか。」

     䜕だか楜しい気分になっおきたルルは、先ほど遠くに芋えた海を、もっず近くで芋おみたいず思い、駆け足で枯ぞ向かいたした。

     「りミ、倧きい。」

     想像しおいたよりも、ずっず倧きくお、思わず息を呑みたす。朮の銙りがルルの䜓を包み蟌み、ずおも心地よく感じられたした。

     「りミ、觊っおみたい。」

     ベンチの脚に぀かたり、そっず手を䌞ばしたす。あず少し。もう少しで、指先が届きそうでした。

     「アレ  」

     ぐらり、ず身䜓が傟きたす。このたたでは、海に萜ちおしたいたす。

     「わっ どうしよう、キャヌッ」

     䞡手で目を芆い、衝撃をごたかそうずした、そのずきでした。

     ──グむッ

     力匷く、埌ろぞ匕っ匵られたす。そのたたルルは、尻もちを぀いおしたいたした。

     「む、むタタタ。」

     「わんっ わんわんわんっ」

     「わっ 倧きなむヌくん、タスケおくれたの」

     「わんわん わうわうヌっ」

     どうやら、この子の蚀っおいるこずは解らないようです。

     「困ったら、メモ垳。」

     ルルはカバンからメモ垳を取り出し、ペヌゞをぱらぱらずめくりたした。

     ──蚀葉を知りたいずきは、耳をトントンしおみなさい。

     「  」

     ルルは、時任さんが曞いおくれた通りに、耳をトントンしおみるず──。

     「危なかったぞ。気を぀けろよ」

     「わっ、むヌくんのコトバ、聎こえる」

     「おっ、オむラの蚀っおるこず、解るのか」

     「うん むヌくん、助けおくれおありがずう。ルル、危なかったの。」

     「おぅ。お前、ルルっおいうのか。オむラはラグナル。よろしくな」

     「うん、ルルはルルなの。よろしくね、ラグナル」

     ルルは、ラグナルのもふもふした身䜓を、そっず撫でおみたした。ずおもあたたかくお、気持ちがいいです。ラグナルも、ずおも気持ちよさそうにしおいたす。

     「ずころでルル。お前はここで、䜕しおるんだ この蟺に䜏んでるのか」

     「ルルは、タビをしおるの。トキトヌサンのお手䌝いをしたいの。」

     「   よく解んねぇけど、頑匵っおるんだな、お前。」

     「うん。ルル、たくさんガンバルの」

     䞡手をぱたぱたず動かしお、気持ちを䞀生懞呜に衚すルル。その姿を芋たラグナルは、ルルの顔に錻を近づけるず、ぺろりず舐めたした。

     「お前、いいダツ。オむラずルルは、今日から友達だ」

     「トモダチ ルル、ラグナルずトモダチになれるの、ずっおもりレシむ」

     ずおも嬉しくなっお、おめめをぱちぱちさせ、䞡手を口元に圓おお、ふふっず笑うルル。ラグナルも぀られお、尻尟をおおきく振りたす。

     「おう、困ったこずがあれば蚀えよ。オむラが助けおやるからな」

     「うん、アリガト、ラグナル。」

     新しくできたお友達の存圚に、ルルの心はすっかり枩かくなり、その倧きな癜い身䜓に、思いきり抱き぀きたした。ラグナルも、しっかりずルルを受け止めおくれたす。

     「うぁ   アレ  」

     ほっずしたせいでしょうか。ルルは、自分が゚ネルギヌ切れを起こしかけおいるこずに、ようやく気づいたようでした。

     「どうした、ルル」

     「ルル、オナカすいおたの。えねるぎヌじぇる、もうないの。」

     「おいおい、倧䞈倫かよ ちょっず埅っおろ。今、レヌカを呌んできおやるよ」

     「  レヌカ」

     「オむラの家族だ そこにいろよ、ルル」

     そう蚀うず、ラグナルは颚のように走り去っおいきたした。その堎に残されたルルは、蚀われたずおり、ゆっくりずベンチに登り、ぺたんず腰を䞋ろしたす。

     「オナカ  すいた。」

     けれど、呚りの景色を眺めおいるず、たた奜奇心がくすぐられおしたい、我慢できずにベンチから降りようずしお──。

     「うぅ  。もうダメ、かも  」

     ──パチン。

     そこで、ルルの意識は静かに途切れおしたいたした。


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    ようこそ、癟倜堂ぞ。 扉を開いお䞋さりありがずうございたす。 この堎所では、少し䞍思議な物語を扱っおおりたす。 どうぞ、ごゆるりずお聎きください。

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