
Webtoon脚本『消えたい夜用の便箋』
↑原作はこちら↑
小説『消えたい夜用の便箋』をベースに、Webtoon(縦スクロール漫画)用のシナリオを作成しました。文章がスマホ画面のコマに落ちていく感覚をぜひお楽しみください。
作品名:消えたい夜用の便箋
ジャンル:現代ヒューマンドラマ・ヒーリング
ターゲット:20代〜30代の、日々の生活に漠然とした生きづらさや疲れを感じている男女
キャッチコピー: 「死にたいわけじゃない。でも、生きたい理由もなくて――」 言葉をなくしたあなたに寄り添う、深夜の文房具店の物語。
あらすじ: 終電後の静まり返った街。仕事や愛想笑いに疲れ、生きる理由を見失っていた主人公は、深夜のシャッター街でぽつんと灯る不思議な文房具店に迷い込む。 そこには『泣けなかった夜のためのインク』『戻れない人へ送る便箋』といった奇妙な道具が並んでいた。 年齢不詳の店主から「言葉にできなかった人たちのためのもの」として手渡された、雨の前の空の色をした『消えたい夜用の便箋』。 自室に戻り、白い紙を前にした主人公は、喉の奥に仕舞い込んでいた「死にたい、でも、本当は生きたい」という矛盾した本音を文字として紡ぎ出していく。言葉にすることで自分自身を繋ぎ止め、かすかな光と共に新しい朝を迎える、魂の救済の物語。
【キャラクター設定イメージ】
私(主人公):どこにでもいるような、少し疲れた表情の女性。モノトーンやアースカラーの服。
店主:ミステリアスで穏やかな青年。アンティークなエプロンや眼鏡。
【第1話:前編(書けなかった人へ)】
プロローグ:夜の底
[コマ1]
画面:真っ黒な背景に、白い文字のモノローグだけ。
モノローグ: 私が死んでも、世界はまわる。
[コマ2]
画面:夜空を見上げるアングル。星は見えず、うっすらと雲がかかっている。
モノローグ: それは、誰が死んでもそうなんだろうけど。
[コマ3]
画面:少し引いた構図。終電が去った後の、誰もいない静まり返った駅前。
モノローグ: 昼間はあんなに騒がしい街も、 終電が行ってしまうと、まるで役目を終えたみたいに息を潜める。
シーン1:置き去りの夜
[コマ4]
画面:暗闇の中で、コンビニの白い看板の明かりだけがぼんやりと強く滲んでいる。
モノローグ: コンビニの白い灯りだけが、 夜に置き去りにされたみたいに滲んでいた。
[コマ5]
画面:主人公の足元のアップ。冷えた缶コーヒーを持った手が、歩く振動でかすかに揺れている。
SE(効果音):コツ……コツ……(寂しい足音)
[コマ6]
画面:シャッターが閉まった商店街を、うつむき加減でぼんやり歩く主人公の横顔。
モノローグ: 死んだ後に、誰かの中にその人がいるかどうかは、 その人の生き方による、気がする。
[コマ7]
画面:主人公の目元アップ。目に光がなく、虚ろ。
モノローグ: 私が死んだら、 私は誰かの心の中に存在させてもらうことができるのだろうか。
[コマ8]
画面:主人公が小さくため息をつく。
演出:吐いた息が白く小さく広がる。
モノローグ: 別に理由があって死にたいわけじゃない。 でも、生きる理由もない。 なんか、疲れちゃったな。
シーン2:奇妙な文房具店
[コマ9]
画面:縦に長くスクロール。暗いシャッター街の奥の一角に、ぽつんとオレンジ色の暖かな灯りが見える。
主人公:「(ハッとして足を止める)」
[コマ10]
画面:古びた、けれどどこか温かみのある小さな文房具店の外観。店先のランプが静かに揺れている。
モノローグ: 閉まっているはずのシャッター街の奥に、 ぽつりと灯りが見えた。 こんな時間に、開いているはずがないのに。
[コマ11]
画面:吸い寄せられるように、店の硝子戸の前に立つ主人公の引きの構図。
[コマ12]
画面:硝子戸の横。古びた木枠に貼られた、手書きの小さな貼り紙のアップ。
文字(貼り紙): 『書けなかった人へ』
[コマ13]
画面:主人公の手のアップ。ドアノブに触れかけた指先が、ピタッと止まる。
[コマ14]
画面:貼り紙を見つめる主人公の、驚きと戸惑いが混ざった表情。
モノローグ: その文字は、 まるでずっと前から、 私が来るのを知っていたみたいだった。
シーン3:店主との邂逅
[コマ15]
画面:主人公の脳裏に浮かぶ、ぐるぐるとした思考(背景は黒)。
モノローグ: 私が死んでも、誰か私のこと覚えていてくれますか。 それとも、何もなかったみたいに消えるの? ……夜になると、どうしようもなく怖くなる。
[コマ16]
画面:不意に、硝子戸が内側から静かに開く。
SE:ガララ……
男の声:「——入らないんですか」
[コマ17]
画面:主人公がびくりとして顔を上げるアップ。
[コマ18]
画面:店の奥、暖色の優しい光の中に佇む店主。静かで穏やかな目をして、主人公を見つめている。
モノローグ: 年齢のわからない人だった。 静かな目をしている。
[コマ19]
画面:店主が少し目を細めて、優しく微笑む。
店主:「そのままだと、冷えますよ」
[コマ20]
画面:主人公が意を決して、一歩足を踏み入れる。
SE:チリン……(ドアの小さなベルの音)
演出:画面全体が、冷たい青色(夜の街)から、温かいオレンジ色(店内)へとじわっと変わっていく。
(第1話後編へ続く)
【第1話:後編(消えたい夜用の便箋)】
シーン4:言葉にできなかった人たち
[コマ21]
画面:店内の棚に並ぶ、色とりどりのインク瓶や美しい便箋たち。
SE:コト……コト……(古時計の秒針の音)
モノローグ: 棚には、万年筆やインクや便箋が整然と並んでいる。 けれど、そのどれにも、小さな札が添えられていた。
[コマ22]
画面:それぞれの札のアップが、スクロールに合わせて流れる。
文字(札): 『泣けなかった夜のためのインク』 『戻れない人へ送る便箋』 『言いそびれた「ごめんね」用』
[コマ23]
画面:それを見て、少し息を呑む(胸に手を当てる)主人公のカット。
主人公:「書けなかった人って……なんですか」
[コマ24]
画面:カウンターの向こう、少し目を伏せる店主。
店主:「言葉にできなかった人たちのことです」
[コマ25]
画面:少し引きの構図。暖色の灯りの中、静かに話す店主。
店主: 「助けて、が言えなかった人」 「死にたい、を書けなかった人」
[コマ26]
画面:店主の優しい、けれど全てを見透かしているような瞳のアップ。
店主:「本当は寂しかったのに、平気なふりをしてしまった人」
[コマ27]
画面:大きくスクロール(余白)。店の奥の古時計のアップ。
SE:ボーン……(かすかに響く音)
店主の声:「人は、本当に苦しい時ほど、ちゃんと言葉にできなくなるので」
シーン5:大丈夫という呪い
[コマ28]
画面:反射的に視線を逸らし、自嘲気味に(作り笑いで)微笑む主人公。
主人公:「私、何にも苦しくないし……」
[コマ29]
画面:主人公の回想(セピア色調、または少し暗い画面)。 「愛想笑いで仕事をしている姿」「夜、暗い部屋でスマホの明かりに照らされている姿」。
モノローグ: 苦しい人なんて、もっとちゃんと苦しそうな顔をしていると思う。 私はただ、毎日をなんとなくやり過ごしているだけだ。 仕事に行って、帰って、気づいたら夜になっている。 ちゃんと、生きている。
[コマ30]
画面:うつむく主人公。
主人公:「だから、こんな場所に来る資格なんて、ない気がして」
[コマ31]
画面:店主の手元。カウンターのインク瓶を、指先で静かに回している。深い青色が灯りの下でゆっくり揺れる。
店主:「人は」
[コマ32]
画面:店主が顔を上げ、主人公をまっすぐ見つめる。
店主:「本当に壊れる直前まで、自分のことを“大丈夫”だと思い込もうとするんです」
[コマ33]
画面:主人公の目元アップ。瞳が揺れ、言葉を失う。
モノローグ: 笑おうとした。でも、うまくできなかった。 その代わり、喉の奥に小さな棘みたいなものが引っかかる。
[コマ34]
画面:主人公の、絞り出すような小さなセリフ。
主人公:「……別に、死にたいわけでもないです」
店主:「ええ」
[コマ35]
画面:さらにスクロール(少し長めの黒い余白)。
主人公:「でも、生きたい理由もなくて」
[コマ36]
画面:店主が深く、静かに頷く。
店主:「それは案外、いちばん疲れる状態かもしれませんね」
[コマ37]
画面:主人公の引きの構図。肩の力が少し抜けたような、寂しげな背中。
モノローグ: 悲しい、とは少し違う。苦しい、とも言い切れない。 でも、ずっと浅く息をしているみたいに、どこかが張りつめている。 それはなんか、そうかもしれなかった。
シーン6:雨の前の空の色
[コマ38]
画面:主人公が意を決して、棚の便箋を見つめる。
主人公:「……私に合う便箋、ありますか」
[コマ39]
画面:店主がしゃがみ込み、棚の一番下から古い箱を取り出す動作。
[コマ40]
画面:カウンターに置かれた、一通の便箋。 白でも灰色でもない、絶妙なニュアンスカラー(雨の前の空の色)。
店主:「これは、“消えたい夜”用です」
[コマ41]
画面:便箋をそっと指先で撫でる主人公の手元。
主人公:「そんな便箋あるんですね」
店主:「よく出ます」
[コマ42]
画面:主人公が店主を見上げる。
主人公:「書くんですか、みんな」
店主:「(静かに)いいえ。書けない人のほうが、多いですよ」
[コマ43]
画面:主人公の少し救われたような表情。
主人公:「これ……持って帰ってもいいですか。いくらですか?」
[コマ44]
画面:店主が少し考えるように沈黙した後、いたずらっぽく、優しく微笑む。
店主:「書けた分だけで」
[コマ45]
画面:主人公がふっと本当に自然な笑顔をこぼす。
主人公:「……変なお店」
店主:「よく言われます」
[コマ46]
画面:便箋を胸の前で大事そうに抱え、店の外へ一歩踏み出す主人公の後ろ姿。
SE:チリン……(ドアのベルが鳴る)
[コマ47]
画面:夜明け前の、ほんの少しだけ紫がかって明るくなり始めた空。
モノローグ: なぜだろう。それだけなのに、少しだけ、何かを持ち帰れる気がした。 死にたいわけじゃない。 でも、このまま何も感じないふりを続けていたら、 いつか本当に、自分が消えてしまう気がしたから。
(第1話・完 / 第2話「自室での執筆編」へ続く)
【第2話:私が私を繋ぎ止める言葉】
シーン7:白い紙の前の静寂
[コマ1]
画面:真っ暗な部屋。窓の外から街灯の光がかすかに差し込んでいる。
SE(効果音):ブーーーン……(冷蔵庫の低い駆動音)
モノローグ: 部屋は静かだった。 冷蔵庫の低い音だけが、夜の隅で小さく鳴っている。
[コマ2]
画面:机の上にぽつんと置かれた、あの「雨の前の空の色」をした便箋。
モノローグ: 私は机に便箋を置いて、しばらく何も書けずにいた。
[コマ3]
画面:椅子に座り、ペンを持ったまま固まっている主人公の引きの構図。
モノローグ: 白い紙を前にすると、頭の中にあったはずの言葉は、 急に輪郭を失ってしまう。
[コマ4]
画面:主人公の葛藤する表情。
モノローグ: 何を書いたらいいかわからない。 わからないけど…… 何か書かなくちゃと、よくわからないけどそう思った。
シーン8:消えたい夜の告白
[コマ5]
画面:主人公の手元。意を決して、ペン先を紙に落とす。
SE:サリ……(紙とペンが擦れるかすかな音)
[コマ6]
画面:インクがざらついた紙にじわっと滲んでいくアップ。
文字(便箋): 『私、なんで生きてるんだろうね。 別につらくてつらくてってわけじゃないけど、 生きるのはなんだか得意じゃないみたい』
[コマ7]
画面:ひたすらペンを動かし続ける主人公。髪が少し顔にかかっている。
文字(便箋): 『この便箋、“消えたい夜用”だって。 私、消えたいのかな。 よく考えてみても、自分の気持ちって案外わからないものだね』
[コマ8]
画面:大きく縦にスクロール(長い余白)。主人公の幼少期のイメージ(シルエットなど)が背景に薄く重なる。
文字(便箋): 『死にたいって言っちゃいけないって、子どもの頃よく言われたよね。 でもさ、死にたいって言うことで、 自分の気持ちに気づけて楽になることもある気がするんだ』
[コマ9]
画面:主人公の手元が止まる。ペンを持つ指に少し力が入っている。
文字(便箋): 『私は、死にたいの?』
[コマ10]
画面:主人公の目元のアップ。涙は流れていないが、静かで強い光が戻っている。
文字(便箋): 『ううん、たぶんね、私は生きたい』
[コマ11]
画面:優しく、自分を包み込むような筆跡のアップ。
文字(便箋): 『器用には生きられないってわかってるけど、 死にたい気持ち抱えたまま、生きたい。 そんなわたしでいいよって、認められたい』
シーン9:行き場のない感情の名前
[コマ12]
画面:主人公が深く、長く息を吐き出し、ペンを机に置く。
SE:コトッ……(ペンを置く音)
主人公:「ふぅ……」
[コマ13]
画面:胸に手を当て、少しスッキリしたような表情で見上げる主人公。
モノローグ: 誰かに見せるわけでもない。送る相手もいない。 それなのに、胸の奥に沈んでいた何かが、 ほんの少しだけ浮かび上がった気がした。
[コマ14]
画面:縦に長いスクロール(夜空のグラデーションが、ゆっくりと濃紺から薄い紫へと変化していく)。
モノローグ: 「死にたい」 その言葉は、本当に死を望む声だけじゃないのかもしれない。 ちゃんと苦しいって認めてほしい、とか。 消えたいくらい疲れた、とか。
[コマ15]
画面:窓の外、夜明け前の薄明かり。
モノローグ: このままじゃ駄目だって、本当は誰かに気づいてほしい、とか。 そういう、行き場をなくした感情の名前なのかもしれなかった。
シーン10:今日、言葉を残したから
[コマ16]
画面:主人公が便箋をそっと折りたたむ手元。まだインクが少し湿って光っている。
主人公:「……書けた」
[コマ17]
画面:便箋を愛おしそうに見つめる主人公の横顔。微笑みが自然に戻っている。
モノローグ: たったそれだけのことなのに、胸の奥が少し熱かった。 私はまだ書ける。 まだ、自分の気持ちをちゃんと探そうとできる。 ぐちゃぐちゃでも、矛盾してても、綺麗じゃなくても。 それでも、言葉にしようと思えた。
[コマ18]
画面:引き出しの奥へ、その便箋を静かに、大切にしまう。
SE:カチャリ
主人公:「……大事にしよう」
[コマ19]
画面:窓の外。朝の光(オレンジ色と黄色)が街全体をゆっくりと照らし出す。
モノローグ: 窓の外では、朝がゆっくり街を薄く照らし始めていた。 世界は今日も、何事もなかったみたいに動き出していく。 電車が走って、誰かが仕事へ向かって。 たぶん、私がいなくなっても、世界は同じようにまわり続ける。
[コマ20]
画面:ベッドに潜り込み、目を閉じる主人公の穏やかな寝顔。部屋には心地よい朝の光が満ちている。
モノローグ: でも。 それでも私は、今日、自分の言葉をひとつ残した。 それは案外、生きるってことに近いのかもしれない。
[コマ21]
画面:白い背景に、優しいフォントのセリフだけ。
主人公(心の声): すこしだけ寝よう。 それで、明日もまたがんばろうね。
(第2話・完)