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部下にイライラしている時、あなたが見落としている“もう一つの景色” ー 視点転換マネジメント ー

    今回は、すべての管理職の方に読んでいただきたい「できない社員への対応法」です。
    (正確には、あなたができないと思っている社員への対応法。)
    ちょっとした心構え一つで、あなたは組織力を最大化することができるようになり、あなた自身のストレスも激減します。
    私自身の(本当は秘密にしておきたかった)赤裸々な失敗談を交えてお伝えします。

    1. 『なぜこの部下はできないのか?』あなたのその怒りが組織を壊している

    管理職として働いていると、一度はこんなことを感じたことがあるのではないでしょうか。

    「なぜ、この部下はこんな簡単なことができないのだろう」
    「同じことを何度言っても改善しない」
    「やる気がないようにしか見えない」
    「正直、自分の方が何倍も頑張っている」

    そして、気づけば部下の顔を見るだけでイライラしてしまう。

    そんな経験はありませんか?

    実は私自身も、かつてまったく同じことで悩んでいました。

    管理職になると、自分の成果だけではなく、部下の成果にも責任を持たなければなりません。
    だからこそ、思うように動いてくれない部下を見ると焦ります。

    周囲からは、

    「部下育成もマネジメントの仕事ですよ」

    と言われる。

    しかし現実には、

    「いや、育成以前に本人がもっと頑張るべきではないか」

    と思ってしまうこともあります。

    特に、管理職に就いている人は、基本的に努力家で、結果を出してきた人なので、この悩みに直面します。
    なぜなら、自分が当たり前にできることが、相手には当たり前ではないという事実を受け入れにくいからです。

    でも、少し考えてみてください。

    もしその部下が、本当に怠けているわけではなかったとしたらどうでしょうか。

    もしその部下が、あなたには見えない場所で必死にもがいていたとしたらどうでしょうか。

    もしその部下が、自分なりに精一杯頑張っているにもかかわらず、能力的な壁に苦しんでいたとしたらどうでしょうか。

    その見方ができるようになると、部下との関係は大きく変わります。
    そして組織の空気も変わります。
    実際に私は、この考え方にたどり着いてから、能力差のある部下たちを含めて全員が前向きに働く組織文化をつくることができました。

    今回は、

    「なぜ、この部下は無能なのか?」

    という悩みを抱える管理職の方に向けて、

    リーダーに本当に必要なものは何なのか?

    そして、部下を見る目を変えることで組織がどう変わるのかをお伝えしていきます。

    2. できない社員だと思っていた部下が、私に大切なことを教えてくれた

    私は以前、年上の部下を持っていました。

    その部下は仕事のスピードが遅く、成果物のクオリティも高いとは言えませんでした。

    依頼した仕事は期限ギリギリ。
    場合によっては期限を過ぎることもある。
    報告も少ない。
    改善提案も少ない。

    正直に言えば、その頃の私はこう思っていました。

    「お願いだから、もっと真剣に仕事をしてくれ」
    「危機感が足りないんじゃないか」
    「本気で努力しているようにはとうてい見えない」

    さらに悪いことに、
    「ひょっとしたら、自分がなめられているのではないか?」
    という感情まで生まれていました。

    会議中にその部下が発言すると、
    「また的外れなことを言うんじゃないか」と身構える。

    仕事をしている姿を見ても、
    「もっと必死に取り組んでくれ」と思ってしまう。

    今振り返れば、私は完全に相手を「能力が低い人」と決めつけていました。
    そして、その人の立場や気持ちを想像しようとしていませんでした。

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    ところが、人生というのは面白いものです。

    ある日、私は社長室への異動を命じられました。

    社長室と聞くと秘書室のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。
    しかし、私が配属された部署は違いました。
    社長の右腕として経営課題を扱う部署でした。

    全社の重要テーマを推進する。
    経営会議の重要な資料を作る。
    各部門を横断して全社プロジェクトを動かす。

    そうした役割を担う部署です。

    そこには各部門から選抜された優秀な人材が集まっていました。

    経理のスペシャリスト。
    営業のトップクラス。
    企画のエース。
    人事のプロフェッショナル。

    そして私はエンジニア出身でした。

    これまで積み上げてきた専門知識がほとんど役に立たない。

    会議では知らない言葉が飛び交う。
    経営指標も分からない。
    財務も分からない。
    マーケティングも分からない。

    周囲は当たり前のように理解している。
    でも自分だけが分からない。

    そんな状態でした。

    さらに厳しかったのは、経営層の要求レベルです。

    これまでの部署では、「Good」で高く評価される仕事も多かった。
    しかし社長室では違いました。
    求められるのは、「Excellent」です。

    80点では通らない。
    90点でも足りない。
    95点でも修正が返ってくる。

    そんな世界でした。

    私は毎日必死でした。

    朝早く出社し、夜遅くまで勉強する。
    休日も本を読む。
    資料を作り直す。
    会議の内容を録音して聞き直す。

    それでも追いつけない。

    想像してみてください。
    これまで仕事ができる側だった人間が、突然できない側になるのです。

    周囲の人たちが輝いて見える。
    自分だけが取り残されているように感じる。

    「自分はこの部署にいる資格があるのだろうか」

    そんなことばかり考えるようになりました。

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    夜中に目が覚めることもありました。
    会社へ行くのが怖くなることもありました。

    発言するのが怖い。
    質問するのが怖い。
    失敗するのが怖い。

    すると何が起きると思いますか?

    萎縮するのです。

    そして萎縮すると、本来持っている能力まで発揮できなくなります。

    ミスが増える。
    判断が遅くなる。
    さらに自信を失う。

    典型的な悪循環です。

    そして、ようやく気づいたのです。

    「あの部下も、こんな気持ちだったのかもしれない」

    と。

    私から見れば仕事が遅い。成果も低い。

    でも本人は必死だったのかもしれない。

    周囲についていこうと必死にもがいていたのかもしれない。

    失敗するのが怖かったのかもしれない。

    自信を失っていたのかもしれない。

    私は初めて、相手の立場から物事を見られるようになったのです。

    そして、その瞬間から部下への見方が大きく変わりました。

    「なぜできないんだ」ではなく、「どうしたら力を発揮できるだろう」へ。

    「もっと頑張れ」ではなく、「何を支援すれば前に進めるだろう」へ。

    この視点の転換が、その後の私のマネジメント人生を大きく変えることになりました。

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    3. 部下を見る目を変えた瞬間、チームは動き始めた  ー 視点転換マネジメント ー

    では、こうした状況に対する解決策は何なのでしょうか。

    「なぜ、この部下は無能なのか?」

    という問いに対する解決策、実はちゃんとあるんです。

    その解決策とはずばり、

    「能力を評価する前に、相手の景色を想像すること」

    です。

    リーダーの仕事は、能力の高い人だけを集めることではありません。

    さまざまな能力を持った人たちが力を発揮できる環境をつくることです。

    ここで一つ考えてみてください。

    プロ野球チームには4番バッターもいれば、送りバントが得意な選手もいます。
    全員がホームランバッターではありません。

    会社も同じです。

    全員がエースである必要はありません。
    むしろ組織とは、多様な能力を組み合わせることで成果を出す仕組みです。

    ところが管理職になると、
    「なぜ自分と同じレベルでできないのか」
    という見方をしてしまいます。

    しかし、人には能力差があります。
    これは残念ながら事実です。

    努力で埋められる部分もあります。
    しかし努力だけでは埋められない差が存在することも事実です。

    だからこそ上司に求められるのは、

    「できないことを責める力」

    ではなく、

    「できるように支援する力」

    なのです。

    実際、私は部下との接し方を変えました。

    例えば、以前なら期限内に業務を終えられないと言ってきた部下に対して、次のような会話をしていました。

    私 「どうして期限に間に合わないのですか?」
    部下 「すみません・・・」
    私 「まだ3日あるので、間に合うはずです。もっとやり方を工夫して、仕上げてください」

    これで終わっていました。

    しかしある時から、

    私 「どうすれば期限に間に合いますか?」
    部下 「業務に優先順位をつけてもらえないでしょうか」
    私 「なるほど。では、今抱えている業務に優先順位をつけて、捌ききれない業務については、ヘルプを入れましょう」

    という会話に変えました。

    こう書くと、ごく当たり前の対応をしているだけだと思われるでしょう。

    しかし、想像してみて下さい。

    この部下が年上だったら、「こんなこともできないのか」
    この部下によって、いつも業務が遅延していたら、「勘弁してくれよ」
    この部下が普段から反抗的な態度なら、「いっそのこと異動してくれた方が助かる」
    このような傲慢な気持ちになりませんでしょうか?

    このような気持ちがあると、「この部下に対して、何を支援すれば前に進めるだろう」という建設的な提案をすることは、思いのほか難しいものです。

    しかし、ここは湧き上がる怒りの感情をぐっと抑える必要があります。

    実際、私は対応を変えることで、少しずつ成果が出始めたのです。

    ある40代の技術者の部下は、資料作成が苦手でした。
    以前なら、
    「もっと、ちゃんと伝わる日本語で書いて下さい」
    で終わっていたかもしれません。

    しかし詳しく聞くと、論理構成よりも文章化が苦手だとわかったので、箇条書きだけ先に作る方法を教えました。
    すると、資料のクオリティが大きく改善しました。

    また別の20代の若手社員は、ITに強いのですが、報告が遅いことが課題でした。

    ところが話を聞くと、
    「途中経過を報告すると怒られる気がしていました」
    と言うのです。

    そこで、
    「失敗報告ほど早く聞きたい」
    と伝え続けました。

    すると報告量が増え、問題が大きくなる前に対処できるようになり、彼のIT能力が発揮されるようになりました。

    つまり、
    「何ができないか」ではなく、「何なら力を発揮できるか」
    を見るようにしたのです。

    実はこの考え方は研究でも支持されています。
    ハーバード大学の心理学者であるエイミー・エドモンドソン教授は、成果の高い組織には「心理的安全性」が存在すると述べています。

    人は安心して挑戦できる環境でこそ能力を発揮します。

    逆に、
    「また怒られる」
    「また否定される」
    と思う環境では能力が縮小してしまいます。
    私自身が社長室で萎縮した経験があるからこそ、この意味が痛いほど分かります。

    だから私は管理職の方にお伝えしたいのです。

    部下にイライラしたときは、

    「この人はどんな景色を見ているのだろう?」

    と自分に問いかけてみてください。

    その瞬間からマネジメントは大きく変わります。

    実践ワーク①

    今、最もイライラしている部下を一人思い浮かべてください。
    そして紙に次の質問を書いてみてください。

    「もし私がこの人だったら、何に困っているだろう?」

    答えは正解でなくて構いません。
    想像すること自体に価値があります。

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    4. 共感すると成果は下がる? 多くの管理職が抱く誤解

    とは言っても、こう思いませんか?

    「いやいや、それは分かるけど、本当に能力不足の人もいるでしょう」
    「甘やかしたら組織のレベルが下がるんじゃないですか?」
    「厳しくしなければ成長しない人もいると思います」
    「本当にこれでうまくいくの?」

    そう思いますよね。

    実際、私もそう思っていました。

    想像力が大事だと言うと、「優しすぎるマネジメント」のように聞こえるかもしれません。

    しかし、誤解しないでください。

    私は能力差を無視しろと言っているわけではありません。
    成果を求めなくていいと言っているわけでもありません。

    むしろ逆です。

    成果を出すためにこそ、想像力が必要なのです。

    5. 甘やかしではない。本当に成果を伸ばす上司の関わり方

    まず理解していただきたいのは、共感と甘やかしは全く違うということです。

    共感とは、「相手の立場を理解すること」です。
    一方で甘やかしとは、「基準を下げること」です。
    これは別物です。

    例えば、
    部下 「できませんでした」
    上司 「仕方ないね」
    これが甘やかしです。

    一方で、
    部下 「できませんでした」
    上司 「なぜできなかったのか一緒に整理しよう」
    これが共感です。

    求める基準は下げていません。
    むしろ改善に向かっています。

    また、
    部下 「自信がありません」
    上司 「そう感じているんだね。では成功確率を上げる方法を考えよう」

    これも同じです。

    相手の感情は受け止める。
    しかし行動基準は下げない。

    これが一流のマネジメントです。

    スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授も、人は能力そのものよりも「成長できる」という認識によって行動が変わることを示しています。

    つまり上司がやるべきことは、「お前はダメだ」というラベル貼りではなく、「どうすれば前進できるか」を一緒に考えることなのです。

    そして現実的な話をしましょう。

    部下にイライラしている状態では、あなた自身も苦しいはずです。

    朝からストレスがたまる。
    会議でもイライラする。
    帰宅しても気になる。

    そんな状態で良い仕事ができるでしょうか。

    できませんよね。

    だからこそ、部下のためだけではなく、あなた自身のためにも、

    「この人にも事情があるかもしれない」

    という視点を持つ価値があるのです。

    視聴者ワーク②

    次の1週間だけ試してみてください。

    部下に注意したくなったら、まず質問を3つしてください。

    「何が起きたの?」
    「どこで困ったの?」
    「次はどうすればうまくいくと思う?」

    この順番を守るだけで会話は大きく変わります。

    6. 弱みを直すな、強みを活かせ ― 強い組織をつくるリーダーの視点 ―

    さらに一歩進んだ考え方があります。

    それは、

    「弱みを改善するだけでなく、強みを活かす」

    という考え方です。

    管理職はつい弱みに目が向きます。

    しかし組織成果を最大化するなら、強みにも目を向けるべきです。

    例えば、

    資料作成は苦手だが対人関係が得意な人。
    分析は苦手だが行動力がある人。
    企画は苦手だが継続力がある人。

    人には必ず得意分野があります。
    その強みを活かせる配置や役割を考える。

    これもリーダーの重要な仕事です。

    優秀な上司とは、全員を同じ人間に育てる人ではありません。
    能力の異なる人材を活かせる人です。

    オーケストラの指揮者が全員に同じ楽器を持たせないように、リーダーも全員を同じ能力にしようとしてはいけないのです。

    多様性とは単なる理想論ではありません。

    組織成果を高める現実的な戦略なのです。

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    7. 『無能な部下』はいなかった。変わるべきはリーダーの見方だった

    最後にお伝えしたいことがあります。

    私はかつて、
    「なぜ、この部下は、こんなに仕事ができないのか」
    と思っていました。

    しかし社長室で挫折を経験したことで気づいたのです。

    本当に無能だったのは、相手の立場を想像できなかった昔の私だったのだ、と。

    リーダーの仕事は評価者になることではありません。
    人を活かすことです。

    能力差はあります。

    それは現実です。

    しかし、その現実を受け入れながら、一人ひとりが前向きに働ける環境をつくることはできます。
    そして、そのような組織こそが長期的には強い組織になります。

    もし今、部下にイライラしているなら、ぜひ今日から一つだけ実践してみてください。

    「この人は何に苦しんでいるのだろう?」

    そう問いかけてみることです。

    その問いが、あなたのマネジメントを変えます。

    そして、組織を変えます。

    さらに言えば、あなた自身の人生も変えるかもしれません。

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    今回の内容をぜひ明日からのマネジメントに活かしてみてください。

    また次回も、現場で本当に使えるリーダーシップやマネジメントの本質についてお伝えしていきます。

    ぜひ楽しみにしていてください。


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