「コミュ力が高い」って、話すのが上手いこと?|会話をほどく・前編
「コミュ力が高い人」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか。
話題が豊富な人。初対面でもすぐに打ち解けられる人。沈黙が生まれても、すぐに次の話を振れる人。
「コミュ力が高い」と聞くと、こうした「話すのが上手い人」を思い浮かべることがあります。
だから、
「何を話せばいいか分からない」
「初対面だと話題が続かない」
「沈黙になると焦ってしまう」
そんな自分を見て「自分はコミュ力が低いんだろうな」と考えてしまうこともあります。
でも、本当に会話は「話す力」だけで成り立っているのでしょうか。
今回は、そこを少しほどいてみます。
「聞く」は黙っていることではない
自分には、会話の中で昔から自然にやっていることがあります。
相手の話を聞いて、その中から気になったことを質問する。それだけです。
たとえば、こんな会話です。
A「昨日、久しぶりに高校の友達と会ったんだ」
B「へえ、何年ぶりくらい?」
A「5年ぶりかな。全然変わってなかった(笑)」
B「5年ぶりでもそんな感じなんだ(笑)。昔から仲良かったの?」

ここでBは、新しい話題をほとんど作っていません。
Aが話してくれた「久しぶり」「高校の友達」「5年ぶり」「変わっていなかった」という言葉を受け取って、そこから次の質問をしています。
「次は何を話そう」と必死に新しい話題を探さなくても、相手が話してくれたことの中に、次の会話につながるものがすでにあることがあります。
ここで大事なのが「聞く」ということです。
聞くというと、相手が話している間は黙っていることや「うんうん」「へえ」「そうなんだ」と相づちを打つことを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それも聞いていることを伝える大切な反応です。
でも、聞くことはもう少し広く考えられます。
相手の話に注意を向ける。何を伝えようとしているのか理解しようとする。そして、受け取ったことを言葉や反応で相手に返す。
近年の研究でも、高品質な傾聴には注意を向けることや理解しようとすることだけでなく、フォローアップ質問や言葉による受け止め、視線や表情など相手から見える反応も含まれるとされています。
話してくれた言葉の中に次の会話はすでにある
相手が直前に話したことを受けて、さらに尋ねる。こうした質問は「フォローアップ質問」と呼ばれます。
先ほどの会話でいえば「何年ぶりくらい?」がそれにあたります。
何もないところから思いついた質問ではなく「久しぶりに高校の友達と会った」という相手の言葉の中に、すでに質問のきっかけがあったということです。
だから、会話を続けるために毎回新しい話題を外から持ってくる必要はありません。
相手が話してくれた言葉の中に、次の会話につながる種が置かれていることがあります。
実際、2025年に発表された646人を対象とする2つの研究があります。フォローアップ質問や相手の発言を受け止める言葉などを含む「質の高い聞き方」が、人とのつながりを示す複数の指標とどう関係するかを調べたものです。
ただし、結果はどんな会話でも同じだったわけではありません。短い雑談では、フォローアップ質問だけではつながりの一部の指標との関連が確認されなかったという結果も出ています。
この研究でも質問だけではなく、言葉による受け止めや表情、相づちといった反応を含めた「聞き方」が扱われています。
つまり、
「質問をたくさんすれば、会話が上手くなる」
という単純な話ではありません。
質問の数を増やすことが目的になると、会話ではなく「質問攻め」になってしまうこともあります。
大事なのは質問の数よりも、
「相手が話してくれたことを、ちゃんと受け取って返すこと」
なのだと思います。
次に何を聞けばいいか分からないときは
とはいえ「それは分かったけど、実際には何を聞けばいいの?」と思うこともあります。
そんなときは、何か気の利いた質問を考えようとしなくても大丈夫です。
相手が最後に話してくれた言葉を、もう一度見てみます。
* 「昨日、久しぶりに友達と会った」→「どれくらい久しぶりだったの?」
* 「最近、仕事が忙しくて」→「今の時期が忙しいの?」
* 「この前、旅行に行ってきた」→「どこが一番よかった?」

新しい話題を考えるというより、相手が置いてくれた言葉をひとつ拾って、もう少しだけ聞いてみる。
それだけでも会話は続いていきます。
もちろん、毎回質問しなければいけないわけではありません。
「それ、楽しそうだね」
「5年ぶりでも変わらないっていいね」
そんなふうに、受け取ったことを返すだけでもいい。
大切なのは次の話題を生み出すことよりも、今の話をすぐに終わらせないことなのかもしれません。
「何を話そう?」ではなく、「何を話してくれた?」
会話の前に「何か面白い話をしなきゃ」「話題を用意しておかなきゃ」と身構えてしまうことがあります。
沈黙が訪れると「何か話さなきゃ」と焦ってしまうこともあります。
でも、会話が始まったあとに必要なのは、新しい話題を次々と繰り出すことだけではありません。
相手がすでに話してくれたことに、もう少しだけ目を向けてみる。
「何を話そう?」ではなく、
「何を話してくれた?」

視点をこちらに変えてみると「自分が会話を続けなければ」と一人で抱えていた負担が、少し変わって見えるかもしれません。
話す力だけが、コミュ力ではない
「コミュ力が高い人」と聞いて思い浮かべる、話題が豊富で沈黙を作らず、誰とでも話せる人。
それも、ひとつのコミュニケーションの力だと思います。
でも、それだけが会話ではありません。
相手が話してくれたことに耳を傾ける。その中から気になった言葉を拾う。もう少し聞いてみる。受け取ったことを返してみる。
そこにも、ちゃんとコミュニケーションがあります。
話題が次々に浮かばないからといって、それだけで「自分はコミュ力が低い」と決めなくてもいいのだと思います。
次の会話で何を話せばいいか分からなくなったら、一度だけ、
「この人は今、何を話してくれた?」
と考えてみる。
次の言葉は、そこにあるかもしれません。
ただ、ここまで考えるともう一つ疑問が出てきます。
「じゃあ、聞き上手になれば、それで全部解決するの?」
相手の話に興味を持って質問する。相手は楽しそうに話してくれる。
でも、いざ自分が話し始めると「へえ、そうなんだ」で終わってしまう。こちらには何も聞き返してくれない。そして、いつの間にかまた相手の話に戻っている。
家に帰ってから、
「今日、自分の話ほとんどしてないな」
と思う。
あるいは、
「この人は、自分にはあまり興味がないのかな」
と感じる。
聞くことは大切です。でも、それは「一人がずっと聞き役として会話を支え続ければいい」という意味ではないはずです。
話すのが上手い人が一人で会話をつくるわけではない。
では、聞くのが上手い人が一人で会話を支えればいいのでしょうか。
そこは後編で、もう少しほどいてみます。
後編はこちらからどうぞ👇
参考資料
West, T. N. ほか(2025)
“High-quality listening behaviors linked to social connection between strangers”
Communications Psychology
2つの事前登録研究で、フォローアップ質問や言葉による受け止めなどの傾聴行動と、会話における社会的なつながりとの関連を検討しています。
【YouTubeでも公開しました】
この記事の内容を、前編・後編をまとめて一本の動画にしました。
文章で読むより、音声や映像のほうが入りやすい方はこちらからどうぞ。
▼「コミュ力が高い」って、話すのが上手いこと?|会話をほどく
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これからも、ナギと一緒に。
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