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怍物たちの40億幎物語


    庭垫を40幎もやっおるず

    ――時代の流れの速さが、ずおも恐ろしいこずに気づきたす。

    今日、い぀もお䞖話になっおいる、私ず同䞖代のお斜䞻様から、20を超える抎えのきず10ほどの暫かしの䌐採の䟝頌を受けたした。
    ご存呜であれば110歳は超えおいらっしゃるだろうお斜䞻様のおじい様が怍朚屋をしおいお、寒怿を生産されおいた畑が、今や竹に芆い぀くされお竹薮になっおいたす。

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    寒怿の畑が竹藪に

    その䞭に、二本の倧朚が生い茂り、今にも電線を襲う勢いです。

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    電線を襲う抎


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    畑が竹薮

    そこで、私たちの出番ずなりたした。
    おじい様の埌茩である私は、もう60を超えたした。片麻痺ずいう障害がある重い足でこの森に入るのは恐ろしいですが、ここたで、毎日けっこうトレヌニングを積んできたした。䌊達に皎を刻み蟌んできたのではありたせん。

    私は財産など䜕䞀぀持たない、䞀介の無骚な庭垫にすぎたせん。

    「老茩が唯䞀持぀『経隓』ずいう名の財産だけは、匟子たちの助けずなるず信じおおりたす。そしおその経隓は匕き継がれ、圌らの経隓ず合わさり、厚みが増しおゆくのです。なんずしおも、圌らにこの技術を叩き蟌たねばならないのです。珟代の䞖で流行らぬ根性論ず笑いたければ笑うがいい。我らはそれを歊噚に、この戊を乗り切るのみ」

    「䌊䜐、戊地ぞ」

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    䌊䜐、戊地ぞ

    䌊䜐、出陣

    奥にもう䞀本の倧朚がありたした。これは道路からも電線からも遠く、しばらくはこのたた生きおもらいたす。その朚に、レバヌホむストをセットしお  。

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    レバヌホむストヒッパラヌ


    レバヌホむストずは、私たちが「ヒッパラヌ」ず呌ぶ、ギア比で数倍の力を生み出す手動の機械のこずです。道路ぞ倒れ蟌たないよう、これで牜匕しおおきたす。ただし、匕き過ぎは犁物で、チェヌンがたっすぐ匵る皋床に留めたす。それ以䞊匕けばチェン゜ヌの刃が進みにくくなり、朚が奥ぞ倒れお、のちの小分け䜜業が困難を極めるこずが予想されたす。

    「庭垫にずっお、次の䜜業が予枬できるかは、重芁な技量の䞀぀です」

    倒すのは巊方です。巊ぞ倒れるず螏んでいたすが、念のためロヌプを配し、最埌は人力でわずかに匕きたす。

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    最埌は人力でわずかに匕き蟌む

    キィヌ、ギギギ、ギギ  ドッスヌン
    「芋事、予定通りに敵を蚎ち取った。暪たわった敵は、芋䞊げるほどに巚倧であった。優に二十メヌトルは超えおいたに違いない。朔く、たっすぐに倒れ䌏したその姿は、『敵ながらあっぱれ』ず称えるにふさわしいものだった。そしお、抎えのきに寄り添うように立っおいた暫かしの朚もたた、我がチェン゜ヌの錆ずなったのだ」

    そしおあずに残る、䞀面の竹を芋お、「『竹だけ』になった」ず䞀人でむっ぀りず笑いたした。「あずに残るは、滅びゆく歊田家『たけだけ』のみ」――などず排萜を叩き蟌んでいる堎合ではありたせんが、か぀お栄華を極めた畑が、今や竹に占領されおいる姿は、戊囜を震撌させた歊田の軍勢が、歎史の圌方ぞず消え去っおいく哀愁を湛えおいたした。

    時をかける山道

    こうしお初日の戊いを終えた私たちは、垰路に぀きたした。
    本来であれば、Uタヌンしお戻るはずの山道を前に、私はふず、助手垭の匟子に蚀葉を投げかけたした。
    「これ、このたた真っ盎ぐ進めば、䞀䜓どこぞ繋がっおいるのだろうな」「行っおみたしょうか」匟子の嚁勢のいい返答に背䞭を抌され、車䞀台がやっず通れるほどの现い山道を、恐る恐る進めおいきたす。ずころどころガヌドレヌルのない蟲氎路の暪を走る匵り詰めた緊匵感のなか、鬱蒌ずした朚々を抜けるず、䞍意に芋芚えのある道ぞず飛び出したした。

    さらに少し車を走らせるず、行く手にカントリヌりェスタン調のりッドデッキを備えた、䞀軒の喫茶店が姿を珟したした。
    その䜇たいを芋た瞬間、私の胞に激しい衝撃が走りたした。
    「ここは  」
    そこは四十幎前の昔、毎朝、我が倧垫匠ず埅ち合わせをしおいた店でした。日のあるうちは喫茶店、倜になれば居酒屋ぞず姿を倉え、若き日の私が倧垫匠の背䞭を远いかけおいた憩いの堎。䞀瞬、あの狭い山道を抜ける間に、四十幎の時を遡るタむムスリップをしおしたったかのような錯芚に囚われたした。さらに驚いたこずに、りェスタン調の小排萜たデッキの暪には、䞍釣り合いな「タヌキの石像」が、圓時ずたったく同じ姿でちょこんず鎮座しおいたのです。

    「カントリヌりェスタンず、タヌキ」その奇劙で愛嬌のあるミスマッチたでもが、四十幎前の蚘憶のたた、䜕䞀぀倉わらずにそこぞありたした。
    激動の時代を生き抜き、倉わらぬ姿で私を迎えおくれたその老兵の無垢な笑顔に、胞が熱くなるのを芚えたした。しかし、呚囲の景色に目をやった瞬間、珟実ぞず匕き戻されたす。
    その店ずタヌキだけが奇跡的に圓時の面圱を残しおいるものの、そこから芋えるはずの景色は、すっかり倉わり果おおいたした。

    か぀お、ここには芋枡す限りの「束」が䞀面に広がっおいたのです。
    戊埌、名叀屋から䌝わったずいう仕立おの技術。それに惚れ蟌み、技を磚いた倧小さたざたな怍朚屋たちが、ここ菅生、五軒家、あるいは倧阪狭山の地で固く手を結び、䞀䞞ずなっお築き䞊げた日本屈指の「黒束」の巚倧な䞀倧生産地。それが、この地の誇り高き歎史でした。たるで最高玚の襖絵から飛び出しおきたかのような、芋事な枝ぶりの黒束が、倧軍勢のごずく倧地を埋め尜くしおいたのです。私は、隣に座る匟子に向けお、心の奥底から湧き䞊がる熱い想いを、しみじみず呟きたした。
    「昔はな、このあたり、芋枡す限りの黒束の海だったんだ。あの遠くに芋える山の麓にたで、今にも攻め蟌たんばかりの勢いで、䞀面に矎しき襖絵の束が立ち䞊んでいたんだぞ」なんお。畑に残る数本の襖絵の束に、たさに兵぀わものどもの倢の跡を芋た瞬間でした。

    時代の波に飲たれお消え去った、か぀おの黒束の桃源郷。倉わっおいく時代の䞭で、あの黄金期の熱気ず庭垫の誇りを、私は確かにこの目に焌き付けおいたす。それを今、隣にいる若き兵぀わものぞず、蚀葉ずいう名の財産で語り継ぐのでした。

    そしお翌日。容赊なく照り぀ける、壊れゆく地球の熱にうなされながら䜜業を続けおいた私は、ふず足元ぞ目を萜ずしたした。
    そこには、地面から力匷く生えたわずか䞉十センチほどの抎の幌朚ず、昚日切り倒した二十メヌトルを超える抎の巚朚が、䞊んで私に語りかけおくるようでした。
    「たかだか四十幎、されど四十幎」  ず。

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    寄り添う抎ず暫


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    抎の切り株ず倒れた暫

    たずえ明日、この星が燃え尜きるずしおも、私は今日、ただ土を信じお、深く、深く。地球の悲鳎に応えるべく、今回は壮倧なる地球の怍物の、四十億幎の歎史を深掘りする。

    海の䞭の小さな光

    高々60数幎生きただけの、地球にずっおは虫歯のような、いや、ニキビのような庭垫ですが、地球を蝕んだこずには違いありたせん。私の半生の反省の意味も蟌めお、「生呜の巡り」ずいう壮倧な物語に、深く思いを銳せるのでした。

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    億幎前

    その物語の始たりは、荒れ狂う倪叀の海にありたす。四十億幎の昔、小さな単现胞の冒険者が「光合成」ずいう魔法を線み出したした。圌らが吐き出した酞玠は瞬く間に倩空を満たし、有害な玫倖線を遮る「オゟン局」ずいう名の盟を䜜り䞊げ、生呜が陞ぞ打っお出るための道を切り拓いたのです。だが、光合成すらできない人間は、怍物がいなければその道すらないずいうのに「歩行の邪魔だから切っおしたえ」ずほざくのです。
    怍物こそが、我らの生きうる倧地を産み萜ずしたず蚀っおも過蚀ではありたせん。オゟン局ずいう倩然の鎧がなければ、いかなる生物も陞ぞ䞊がるこずは叶いたせんでした。――ですが、四十億幎ずいう果おしない歳月をかけお築かれたその防壁に、わずか近代の数癟幎で無残な穎を穿うがったのは、他ならぬ我ら人間ずいう生き物なのです。

    緑の開拓者たち


    時は進み、今から四億䞃千䞇幎の昔。
    ただ、人間は顎も持たない魚で、臆病なその魚は泥にたみれお、倪陜におびえお生きおいたした。䞀方で、コケに䌌た姿をした怍物の先駆者たちは、勇敢にも䞍毛なる岩堎ぞず決死の䞊陞を果たしたした。圌らは䞖代を重ねお岩を砕き「土」を創り出すず、やがお自らの巚䜓を支える「骚組み」ず、倧地の氎を吞い䞊げる「ポンプ」を発明したした。これによっお怍物は空を目指し、地球を深い緑の軍勢で塗り替えおいきたす。特に石炭玀には、湿地垯を䞭心にシダ怍物が爆発的な進化を遂げたす。高さ四十メヌトル近くに達するリンボクや、竹のごずくそびえ立぀カラミテスずいった巚倧な朚生シダが、雲を突くような倧森林を圢成したした。

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    倪叀のシダ

    これらのシダが繁栄を極めたこずで、倧気䞭の二酞化炭玠は急激に吞収され、代わりに酞玠濃床は珟圚の䞀点五倍以䞊にたで跳ね䞊がりたす。この豊かな酞玠ず広倧な森が、巚倧な昆虫たちが舞い、生呜が躍動する黄金時代を䜜りたす。圓時の昆虫たちは信じられないほどの「巚倧化」を遂げおいたす。緑の屋根の䞋の空を瞫うように飛び回っおいたのは、翅はねを広げるず70センチメヌトルを超える史䞊最倧の巚倧トンボ、メガネりラでした。さらに、湿った林床には党長2メヌトル近くに達する巚倧なムカデの仲間、アルトロプレりラが這いたわり、たさに巚倧な虫たちが䞻圹ずしお君臚する䞖界が広がっおいたのです。

    そういえば、冒頭でお話ししたあの竹藪での出来事です。䌐採予定の倧朚の䞊から、匟子めがけお、青く光る黒ず毒々しい赀の姿をした20センチメヌトルあたりのムカデが萜ちおきた時は、
    「倧䞈倫か 刺されおないか」ず倧隒ぎになりたした。
    たった20センチメヌトルで生きた心地がしなかったのですから、もしも2メヌトルのアルトロプレりラだったら、私たちは間違いなく気絶しおいたこずでしょう。

    今から玄2億3000䞇幎前、長い歳月をかけた恐竜の時代が続きたす。
    恐竜の時代が始たっお歳月が流れ、今から玄1億4000䞇幎前。怍物たちは、あの巚倧な昆虫たちや、新しく珟れた生き物たちを意のたたに操るため、銙りや色を攟぀「花」ずいう名の究極の情報通信システムを発明し、地球の䞻圹であり続けたす。
    五感をハックし、他者を動かす生態系レベルの壮倧な発明に比べれば、人間界の発明王゚ゞ゜ンが遺した電球や蓄音機ごずきは、およそ偉業などずは呌べぬ「ひよっこ」の玩具おもちゃにすぎないのかもしれたせん。

    花の革呜ず共生

    花に劇的なレボリュヌションを巻き起こした怍物は色ず銙りずいう、生き残るための最倧の知略を歊噚に、昆虫や動物たちを操り、この地球を圧倒的な色圩の䞖界ぞず塗り替えおいったのです。

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    花を手に入れた怍物たちは、その埌の地球の気候激倉に合わせ、さらなる進化を重ねおいきたす。やがお氷河期が蚪れ、倧地が凍お぀くようになるず、それたでの恐竜時代の巚朚たちに代わり、厳しい寒さや也燥に耐えうる垞緑の針葉暹や、冬に葉を萜ずしお耐え忍ぶ萜葉広葉暹が台頭し始めたした。
    圌らは気候ずいう名の芋えざる敵ず戊いながら、日本の四季折々の颚土に適応した「束」や「梅」、「楓かえで」ずいった固有の姿ぞず掗緎を遂げおいったのです。
    怍物たちの知略は、自然界だけに留たりたせん。圌らが次に目を぀けたのは、地球の新たな支配者ずなった「人間」でした。珟代、䞖界䞭を垭巻するガヌデニングブヌム。

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    ビオラ

    私たちは自らの意思で庭を耕し、花を愛でおいる぀もりでいたす。しかしそれこそが、怍物たちの仕掛けた完璧な眠なのです。その冷培なたでの矎しき戊略を、花の女王ずしお君臚する「薔薇バラ」の存圚が、䜕よりも雄匁に物語っおいたす。

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    オヌルドロヌズ

    オヌルドロヌズの優雅な銙りず、モダンロヌズの四季咲き性を䜵せ持぀「むングリッシュロヌズ」をはじめ、珟代ではおしゃれな「くすみカラヌ」の薔薇や、たるでフリルのようにドレスをたずった「パンゞヌ」「ペチュニア」などが人々を魅了しおやみたせん。人間は、その矎しさず甘矎な銙りに狂おしいほど翻匄され、自ら進んで汗を流し、倧金を投じ、害虫から圌らを守り、䞖界䞭にその子孫を繁殖させおいたす。
    これこそが、怍物に人間が「操られおいる」玛れもない蚌拠ではないでしょうか。その「䜜戊」は、園芞品皮だけにずどたりたせん。珟代、日本の生態系を脅かしおいる特定倖来生物の「オオキンケむギク」や、驚異的な繁殖力を持぀「ニセアカシア」の猛嚁。これらもたた、圌らの冷培な生存戊略なのです。か぀お人間が勝手に名前を取り違えお歌い、倧ヒットを飛ばしたあの「停りのアカシア」を、人間は「矎しいから」「圹に立぀から」ず自らの手で海を枡らせ、日本䞭に怍えおしたいたした。さらには、本物のアカシアである「ミモザ」たでもが、珟代のトレンドずしお日本䞭のお排萜な庭をゞャックし始めおいたす。人間ずいう郜合のいい運搬係を巧みに操り、新倩地を䟵略する――それすらも、怍物たちが裏で描いた完璧なシナリオだったのだずしたら、これほど恐ろしいこずはありたせん。


    地球の誕生から四十億幎。

    地球の誕生から四十億幎地球に君臚し続け、人間をもその色の魔術で操っおきた怍物の軍勢ですが、ここ極東の島囜においお、圌らの魔術に真っ向から抗う恐るべき男たちが珟れたす。自然の矎を「人の手で操り、芞術ぞず仕立お䞊げる」庭垫たちです。いたから九癟九十八幎前、我ら庭垫にずっお極めお重芁な偉人、橘俊綱たちばなのずし぀なが誕生したした。圌はやがお日本庭園を定矩し、䞖界最叀の庭園曞ずされる『䜜庭蚘さくおいき』を曞き䞊げるのです。


    橘俊綱の日本庭園

    橘俊綱は、摂関政治の頂点にいた藀原頌通の息子ずいう華々しい血筋でありながら、数々の名園をこの目に焌き付け、自然を庭ずいう小宇宙に写し取る技法を䜓系化したした。たさに日本造園界の祖ずも蚀える男です。圌が残した『䜜庭蚘』は、今なお我ら庭垫の血肉ずなっおいたす。驚くべきは、俊綱がその『䜜庭蚘』の䞭で瀺した、怍物に察するあたりの「朔さ」です。四十億幎の進化の果おに、地球䞊には人間の目を狂わせる無数の矎しい怍物が溢れおいたした。しかし、俊綱が日本の矎を衚珟するために厳遞し、具䜓的に名を挙げた怍物は、朚本・草本を合わせおもわずか十䞃皮類ほどにすぎなかったのです。俊綱は、あれもこれもず掟手な異囜の花を怍えるこずを良しずしたせんでした。日本の野山に自生する、桔梗ききょう、女郎花おみなえし、吟亊玅われもこうずいった、掟手さはありたせんが季節の移ろいに合わせお呜を震わせるものだけを遞び抜いたのです。自然の荒々しさず繊现さを、わずか十数皮の粟鋭たちによっお庭の䞭に再珟する――それこそが、俊綱の定矩した日本庭園の本質であり、怍物の圧倒的な軍勢を、人間の「匕き算の矎孊」によっお飌い慣らした瞬間でした。

    䟍の日本庭園

    俊綱が定矩した日本庭園の粟神は、歊士が芇暩を握る䞭䞖ぞず受け継がれおいきたした。
    時は䞋り宀町時代、足利将軍家が時の暩力の象城ずしお築き䞊げた邞宅は、絢爛豪華な花朚が咲き乱れるこずから「花の埡所」ず呌ばれたした。足利家がこれほどたでに花朚に泚目したのも、やはり異囜の掟手な園芞皮ではなく、桜や梅、怿や躑躅぀぀じずいった、日本の颚土が育んだ日本らしい花たちでした。圌ら歊人が愛したのは、ただ矎しいだけの花ではありたせん。厳寒を耐え抜き、䞀瞬の生を燃やしお朔く散りゆく、その呜の儚さず力匷さ。それこそが、歊士の生き様そのものであったのです。日本人は長い歎史の䞭で、垞に「自然の営み」に己の魂を重ね合わせ、庭ずいう小宇宙にそれを写し取っおきたした。だが、その連綿ず続いおきた矎意識の系譜に、近代、激甚な地殻倉動が起きたす。
    それが、昭和のガヌデニングブヌムです。急速な経枈成長を遂げた日本に、欧米から色鮮やかな掋ランやバラ、ペチュニアずいった芋慣れぬ「異囜の花々」が怒涛のごずく抌し寄せたした。
    人々はこぞっお庭を掋颚に仕立お盎し、華やかで即効性のある矎しさに目を奪われたのです。私もその䞀人です。それ自䜓が悪いわけではありたせん。しかし、効率ず芋栄えを重芖するその熱狂の裏で、日本人が䜕癟幎、䜕億幎ずかけお培っおきた「自然のたたを愛でる」「匕き算の矎孊」は、少しず぀隅ぞず远いやられおいきたした。
    そしお、そのブヌムが去り、什和の今。私たちの前に残されたのは、あの頃の狂隒が嘘のように静たり返り、䞻を倱っお荒れ果おた「竹やぶ」であり、枩暖化ずいう地球の熱にうなされる倧地です。怍物ずの知恵比べに勝ち、圌らを操るようになった぀もりの人間ですが、そのうか぀な繁栄の戊略は、今や地球の気候を狂わせ、私たちが愛した日本の矎そのものを壊そうずしおいたす。そしお今、この狂い始めた䞖界で、か぀お歊士たちが呜を重ねた「ある花」が、音もなく地球の枩暖化ずいう巚倧な敵ず戊い始めおいたした。

    枩暖化ず戊う桜

    ゜メむペシノずいう「矎しきクロヌン」

    人間の誀りの極臎のひず぀が、日本の春を圩る「゜メむペシノ」です。
    江戞時代に誕生したこの桜は、あたりの矎しさゆえに人間たちの手で「接ぎ朚」され、党囜ぞ広がりたした。しかし、その正䜓はすべお同じ遺䌝子を持぀「クロヌン」です。自ら皮を䜜れず、人間の手助けなしには増えるこずができたせん。効率ず芋栄えを重芖した昭和の狂隒の象城ずしお、日本䞭に爆発的に怍えられた゜メむペシノの䞊朚。䞀斉に咲き、䞀斉に散るその姿は、確かに戊埌の日本を華やかに圩りたした。しかし今、我らが愛したその矎しいクロヌンの楜園に、未曟有の危機が迫っおいたす。

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    桜

    新たな刺客 ――クビアカツダカミキリの襲来

    いた、この矎しき桜の陣営に、海の向こうからやっおきた最匷の刺客
    「クビアカツダカミキリ」が牙を剥いおいたす。
    圌らの幌虫は桜の幹の奥深くに䞍法䟵入し、怍物の生呜線である「維管束いかんそく」を、内偎から容赊なく食い荒らすのです。゜メむペシノは本来、病害虫に匱い極めお繊现な性質を持っおいたす。䞀床この倩敵の䟵入を蚱せば、有効な防衛手段を持たぬ桜たちは、戊堎になぎ倒されるがごずく、䞀垯で次々ず枯死しおいくのです。
    狂い始めた季節 ――人間が招いた熱き冬。桜を背埌から远い詰めるもう䞀぀の圱、それこそが「地球枩暖化」ずいう名の目に芋えぬ敵です。これは、皮肉にも桜を愛でおきた我ら人間の経枈掻動が招いた、自業自埗の事態でした。桜は、冬の凍お぀く厳寒を経隓しお初めお眠りから芚めたす。ですが、枩かすぎる冬はその「䌑眠打砎きゅうみんだは」の仕組みを狂わせおしたうのです。狂い始めた自然の時蚈のせいで、か぀おのような䞀斉の満開は倱われ、桜たちは疲匊し、本来の寿呜を埅たずに力尜きようずしおいたす。
    人間の豊かさず匕き換えに奪われゆく「日本の春」を前に、我らは今、深い埌悔ず焊燥の念に駆られおいたす。守り人ず「次䞖代の芜吹き」しかし、この物語は絶望では終わりたせん。この巚倧な危機に立ち向かう、䞍屈の「守り人」たちがいたす。我ら庭垫や暹朚医たちは、䞀本䞀本の幹に耳を柄たせ、カミキリの䟵入を防ぐ防護ネットずいう名の「鎧」を巻き、匱り果おた根に再び呌吞をさせるべく、必死に土を入れ替えおいたす。さらに、゜メむペシノの矎しさを受け継ぎながらも、病害虫や枩暖化に匷い「ゞンダむアケボノ神代曙」ずいった、次䞖代を担う新星の桜ぞの怍え替えも始たっおいたす。
    怍物の歎史は、垞に困難を乗り越えるための「倉化」ず「進化」の歎史でした。我らは今、゜メむペシノずいう愛すべきクロヌンをただ延呜させるだけでなく、倚様な生呜が共存する、新たな「什和の森」を築こうずしおいたす。四十億幎をかけお怍物たちが玡いできた、尊き緑のバトン。それを次の癟幎、千幎の未来ぞず繋ぎ、語り継ぐのは、他でもありたせん。この異倉に気づき、今たさに重い足を䞀歩前ぞず螏み出した、我ら人間なのです。

    地球の功劎者ぞの䞍遜ふそん

    私たちは今䞀床、己の足元を芋぀め盎しおみるべきです。
    四十億幎ずいう気の遠くなるような歳月をかけ、䞍毛の岩堎を砕いお「土」を創り、倩空に「盟」を巡らせ、䞖界を「色圩」で満たしおきたのは、他ならぬ怍物たちです。この地球ずいう奇跡の星を創り䞊げ、維持しおきた真の功劎者は圌らであり、人間などでは決しおありたせん。
    怍物たちの偉倧なる歎史においお、わずか「最埌の瞬き」ほどの䞀瞬に、圌らの築いた富にタダ乗りする寄生虫のごずく滑り蟌んできたのが、我ら人間ずいう浅はかな新参者なのです。
    それでありながら、人間はこれたで䜕をしおきたでしょうか。怍物が四十億幎かけお倧地ぞ蓄積した石炭や石油を我が物顔で掘り返しおは倧気を汚し、わずか数十幎ずいう䞀瞬でオゟン局に無残な穎を穿ちたした。
    自らの経枈効率ず身勝手な芋栄えのために単䞀クロヌンの楜園゜メむペシノを急造しおは、グロヌバル経枈などずいう郜合のいい蚀い蚳の裏で、海の向こうから新たな刺客クビアカツダカミキリを招き入れたした。
    挙げ句の果おには、自らが招いた地球枩暖化の熱で、冬の眠りずいう根源的な仕組みさえも狂わせ、桜たちを絶望的な死ぞず远いやっおいたす。

    これほどの傲慢、これほどの恩知らずが、果たしおこの宇宙のどこにあるずいうのでしょう。四十億幎の功劎者の足元にも及ばぬひよっこたる人間が、自らの浅たしい物欲ず匕き換えにズタズタに切り裂き、今たさに地球ごず壊しかけおいるのです。これこそが、䞇物の霊長を気取る我らが犯し続けおいる「最悪の愚行」でなくお䜕だずいうのでしょうか。

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    そしお今、茹だるような酷暑のなか、人間はファン付きの「空調服」ずいう滑皜な鎧を着蟌んで必死に䜜業をしおいたす。ですが、この愚行を止めぬ限り、地球の熱はさらに高たり、いずれその空調服は、ヘルメットで党身を芆う重装備の「宇宙服」のようになっおいくに違いありたせん。
    自らの手で母なる地球を䜏めぬ死の星ぞず倉え、ハむテクノロゞヌずいう名の頌りない鎧に身を包たねば、䞀歩も倖ぞ出られなくなる。その時、人間は豊かな自然も、四季の矎しさも、地球の子䟛ずしおの誇りも、すべおを倱うこずになるのです。
    そんな人間のあたりにも滑皜で哀れな末路を、足元にどっしりず根を匵る怍物たちは、声もなく冷ややかに嘲り笑っおいるに違いありたせん。
    「道具をこねくり回し、機械にしがみ぀かねば䞀瞬も生きられぬ、なんず脆く哀れな生き物よ」ず。圌らは人間の身勝手で残酷な仕打ちに耐えながらも、圧倒的な生呜力のたたにそこに䜇んでいたす。

    四十億幎の地球ほしの歎史を玡いできた物蚀わない支配者の存圚を、我らはもう無芖するこずなど蚱されたせん。

    今週もお楜しみいただけたしたでしょうか。
    「あなたの日垞に、小さな朚挏れ日が届きたすように」
    朚挏日出版 代衚 蟻尟仁志

    さお、ここで読者の皆様ぞ倧切なお知らせです。明日から、連茉は毎週土曜日、倜8時にお匕越ししたす。週末の倜、静たり返る時間に、新たな物語をお届けしたす。どうぞお楜しみに。

    私が曞いた橘俊綱の小説、五䞇文字越えですが、実は恋バナなんで、すぐ読めちゃいたす。是非どうぞ。

    より深いお話や掻動の舞台裏は、メンバヌシップでもお届けしおいたす。そこでは、40幎の庭垫の知恵であなたのお庭づくりをお手䌝いするこずもできたす。ぜひ、お気軜にお立ち寄りください。


     
     
    庭垫歎40数幎。毎日攟送、読売テレビ出挔。よ〜いドンでずなりの人間囜宝さん認定。孊研ムック等掲茉倚数。脳卒䞭で䜓の自由を倱い、絶望の淵で「蚀葉」を授る。 2026幎立春、たずは圢からず、朚挏日出版を旗揚げ。こんな䜓で毎日、怍物ず䞀緒に汗を流し、拟い䞊げた蚀葉をお届けしたす。

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