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なぜ反復だけでは足りないのか【理学療法とは何か #015】

この連載は、6本を1シーズンとして進めています。  
全体の流れを確認したい方は、以下の目次をご覧ください。

▶ このマガジンの目次  

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理学療法では、反復がとても大切です。

歩く練習を繰り返します。立ち上がりを繰り返します。腕を上げる練習を繰り返します。片脚立位やステップ動作を繰り返します。運動や学習において、反復が効果を持つことは昔から知られていますし、脳卒中後のリハビリテーションでも、課題特異的な反復練習が上肢機能や下肢機能の改善に役立つ可能性が示されています。Cochraneレビューでも、反復課題練習は脳卒中後の上肢・下肢機能に低から中等度のエビデンスで改善を示し、その効果が最大6か月持続する可能性が示されています。 

ですから、反復そのものは正しいです。問題は、「ただ繰り返せばよい」と考えてしまうことです。

理学療法において大切なのは、意味のある反復です。何を繰り返すのか、どの方向に繰り返すのか、どの負荷で繰り返すのか、何に気づきながら繰り返すのかが問われます。同じ反復でも、本人が何も気づかずに動いている場合と、自分の動きの変化を感じながら動いている場合では、意味が違います。

私は、反復には認知が必要だと考えています。動きながら、自分の身体に何が起きているのかに「気づく(awareness)」ことです。痛みが出る動きと出ない動きの違いに気づくことです。重心がどこに移っているのかに気づくことです。どの足に体重が乗っているのかに気づくことです。その気づきがあるから、反復は単なる回数ではなく、学習になります。

ここで大切になるのが、フィードバックとフィードフォワードです。フィードバックとは、実際に動いた結果を受け取ることです。うまく踏み込めたか、痛みが出たか、ふらついたか、足の裏にどのような感覚があったかを感じ取ることです。一方で、フィードフォワードとは、次の動きをあらかじめ予測して準備することです。前回こう動いたら痛かったから、今回は少し重心を変えてみよう、というような働きです。

つまり、意味のある反復とは、意識しない反復ではありません。認知によるフィードバックを伴い、その経験が次の運動の予測につながる反復です。自分の動きへの気づきが、反復の意味を押し上げます。

たとえば、膝が痛い人が立ち上がりを繰り返す場合を考えてみます。ただ10回立ち上がるだけなら、回数をこなしただけです。しかし、どの角度で痛みが出るのか、膝が内側に入りすぎていないか、足の裏のどこに体重が乗っているのか、座面の高さを変えるとどうなるのかを感じながら行えば、反復の意味は変わります。本人が、「この動きなら痛くないです」、「この角度だと怖いです」と気づけるようになることが、治療として重要です。

脳卒中片麻痺のステップ動作練習でも同じです。麻痺側へ体重を乗せること、そこから反対側の足を出すこと、足底からの感覚を受け取ること、視覚で姿勢を確認することは、すべて学習に関わります。理学療法士は、ステップ動作をただ繰り返させているわけではありません。視覚や体性感覚によるフィードバックを使いながら、重心移動を感じてもらい、痙縮や過剰な力みを自己コントロールする方向へ導いています。

このように、反復は古くから理学療法や運動学習の中で重視されてきました。小脳性運動失調に対する協調運動練習でも、反復的な協調運動トレーニングが運動パフォーマンスや失調症状の改善に関係することが報告されています。  また、PNFは古くから用いられてきた神経筋促通の方法であり、脳卒中後の歩行やバランスに対する有効性を示すレビューもあります。ただし、PNFについては研究の質や対象のばらつきもあるため、万能な方法としてではなく、特定の条件で意味を持つ治療技術として理解する必要があります。 

反復が危険になるのは、悪い動きをそのまま固定してしまうときです。代償動作そのものは、常に悪いわけではありません。麻痺がある人が歩くために、骨盤を少し引き上げるような動きを使うことがあります。痛みを避けるために、体重のかけ方を変えることもあります。それは、その人なりの適応である場合があります。

しかし、その代償が痛みを悪化させたり、過剰な負担を作ったり、アンバランスな癖として固定されたりする場合があります。そのときには、理学療法士が意味づけを行う必要があります。なぜその動きになっているのか、どこまで許容できるのか、どこから修正すべきなのかをフィードバックする必要があります。

つまり、反復には量が必要です。しかし、量だけでは足りません。

量をこなすことは絶対的に大切です。運動学習には一定の反復量が必要ですし、筋力や持久性を変えるにも負荷と量が必要です。ただし、質が低いまま量だけを増やすと、効果が出にくいだけでなく、痛みや誤学習を強める可能性があります。そこで理学療法士は、反復の中で質を見ています。

具体的には、重心移動を見ています。どの方向へ体重が移っているのか、左右差がどうなっているのか、前方への移動が止まっていないかを見ています。同時に、その重心移動を阻害している関節運動や筋活動を見ています。膝が曲がらないのか、股関節が伸びないのか、足関節が硬いのか、筋が必要なタイミングで働いていないのかを見ています。さらに、痛み、疲労、呼吸、表情、集中力も見ています。

ここで理学療法士がしていることは、単に正しい形を押しつけることではありません。より安全に、より効果的に、本人が自分の動きに気づけるように導くことです。反復の価値は、回数だけで決まるのではありません。気づきが起きるかどうかで、大きく変わります。

その意味で、意味のある反復の根幹には、awarenessがあります。日本語で言えば、「気づき」です。理学療法士は、動きを通してこの気づきを誘導しています。自分の足に体重が乗っていることに気づくことです。痛みが出る動きと出ない動きに気づくことです。力が入りすぎていることに気づくことです。怖さのために動きを止めていることに気づくことです。

そして、この気づきが起きると、治療室の中だけでなく、自宅での生活も変わります。階段を上るとき、椅子から立つとき、台所で向きを変えるときに、自分の動きへ意識が向くようになります。そうなると、反復は病院や施設の中だけで終わりません。生活の中で、動きを見直す機会が増えていきます。

理学療法における反復とは、ただ同じ運動を繰り返すことではありません。量を確保しながら、質を見て、フィードバックを与え、気づきを起こし、次の動きの準備を変えていくことです。

意味のある反復の根幹には、気づきがあります。
理学療法士は、動きを通してその気づきを誘導しています。

次回は、「家でできることまで含めて治療である」を考えます。反復に気づきが加わると、患者さんは治療室の外でも自分の身体を見直すようになります。理学療法は、病院や施設の時間だけで完結するものではありません。家での運動、日常の動作、生活場面での意識まで含めて、治療は続いていきます。

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