
#02 解離が始まった、小学生のあなた | 17歳のあなたへ
※この作品は事実をベースにしていますが、プライバシー保護のため、一部の事実を変更・省略しています。
※この作品には、自傷・希死念慮・摂食障害など精神的に辛い内容が含まれています。読み進める際はご自身の状態に合わせてペースを調整してください。
あなたは、笑い方を知っていた。
いつ笑えばいいか。
いつ悲しそうな顔をすればいいか。
いつ驚いた表情をすればいいか。
それを、感情からじゃなく、頭で計算していた。
「ここは笑う場面だ」と判断して、笑っていた。
誰も気づかなかった。
あなた自身も、しばらく気づかなかった。
友達と話している。楽しそうにしている。
先生に褒められる。嬉しそうにしている。
誰かが泣いている。心配そうにしている。
でも内側は、静かだった。
周りの子たちの感情が、どこか遠い場所の出来事のように見えた。
あの子はなぜあんなに笑えるんだろう。
なぜあんなに泣けるんだろう。
なぜ些細なことであんなに怒れるんだろう。
理解できなかった。
でも、理解できないことを悟られてはいけなかった。
だからあなたは、周りをよく観察した。
どう反応すれば「普通」に見えるか。
どんな言葉を返せば「ちゃんとした人」に見えるか。それをずっと、学び続けた。
家では、空気を読んで動く子。
学校では、何も問題のない優等生。
どちらも本物じゃなかった。
でも、どちらが本物の自分なのかも、もうわからなくなっていた。
鏡を見ても、自分の後ろ姿を眺めているような感覚があった。
この顔は私の顔だ。
でもどこか、他人の顔みたいだった。

感情がないことは、ある意味では楽だった。
傷つかなかった。
怒鳴り声を聞いても、心がざわつかなかった。期待を裏切られても、深く沈まなかった。
痛いはずのことが、痛くなかった。
これが「普通」だと思っていた。
感情がある方が、むしろおかしいと思っていた時期すらあった。
でも夜になると、理由のわからない重さが胸の奥にあった。
名前のつけられない、出口のないつらさがあった。壊れないように必死で、耐えていた。
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