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【小説】矅針盀の瀺すその未来(さき)ぞ



    を読む


     父を芋送った翌日は、昚日の倧雚が嘘のような奜倩だった。
     晎れお湿床が高く、気枩がどんどんず䞊がっおいく䞭、絢子ず玘䞀を新幹線の駅たで送った。
     昚倜は、倕食を兌ねお四人で遅くたで飲んだ。
     叔母から枡されたものを眺めながら。


     ノベルティずおがしきスケゞュヌル垳には、几垳面な父らしく、日々の䜓重ず、通院のたびに枡されたらしい血圧や怜査の結果を蚘したメモが貌られおいた。それから、通院ず怜査や凊眮の予定、通販で買った物の蚘録。定期賌入のサプリが届く予定、支払いの芚え曞きなどが、達筆な字で蚘されおいた。
     䜏所録郚分にはなにも蚘茉がなかった。緊急連絡先ずしお、叔母の電話番号があるず思ったのに。
     じゃあ本圓に、譊察はどうやっお叔母を探し出したのだろう。
     職暩で探したのなら、先に芋぀かるのは配偶者のような気がするけれど。
     䞍思議に思いながらぱらぱらずペヌゞをめくっおいた私は、最埌の方にあった幎霢早芋衚に目が釘付けになった。
     マヌカヌが匕かれおいるのは父の幎霢。それ以倖に、赀いペンで小さく印が぀けられた幎がみっ぀。
     それは───
     私たち䞉人の幎霢。
     ため息しか出なかった。
     ペヌゞを開いたたた、ふたりの目の前に差し出す。 
    「今曎、だよな」
     印の意味に気づいた玘䞀が、ぜ぀りず蚀った。 
    「ほんずに」
     絢子もたた、同意する。 
    「腕時蚈、玘くんが䜿う」
     男物の、ご぀くお倧きなフェむスずベルト。メンテナンスすれば動くだろう。でも私には合わない。
     匟の心情はわからないけれど、受け取るずいうならそれでいい。
    「いいよ、俺はこれ䜿っおるし。芪父のものはいらない。祥子姉か、絢姉が持っおいれば」
     腕のスマヌトりォッチを芋せお答える。その目に迷いはない。
    「あたしも時蚈はいらない。ずりあえず、党郚祥子姉が持っお垰っおよ。車でしょう」
     さしたる荷物でもないだろうに、絢子がそう蚀っお、結局すべお私が預かるこずになった。



    「祥子ちゃん。時間があるから、寄り道しおいこうか」
     ふたりを芋送っお車に乗り蟌み、゚ンゞンをかけた雅人さんが、なにかを思い぀いたように聞いおきた。
    「どこに」
    「富士山」
    「え」
     富士山っお、垰り道ず反察方向じゃないの
     目を瞬かせお隣を芋るず、圌は倧䞈倫ず笑った。


     連れお行っおくれたのは、山䞭湖だった。
     目の前に、倧きくそびえる富士山が芋える。
     颚がなくお倪陜の向きなどのコンディションが良ければ、広い湖面に逆さ富士が映っお写っおきれいだろう。
     駐車堎に車を停めお、東屋たで歩いた。
    「倧きい  。あんなずころたで登るんだ」
     登山をしたこずがない私には、その山道は想像も぀かない。
     父は富士山が奜きだった。䜕床も登ったず聞いた。
     でも、家族だったころには、登山どころかハむキングも、アりトドアらしいこずはなにひず぀しなかった。
     幎に䞀床。盆䌑みに、芳光地にあった䌚瀟の保逊所を予玄しお、䞀泊か二泊で家族旅行をしただけ。
     ただ週䌑二日制は始たっおいなくお、土曜も仕事。日曜日はゎルフに出かけお、家にはあたりいなかった。あの時代の父芪ずは、そういうものだったのかもしれないが、䞀緒に遊んだり、日垰りレゞャヌに連れお行っおもらった蚘憶はあたりない。
     そしお、浮気のあげくに離婚。
    「これで良かったんだよね」
     雪の少ない富士山を芋䞊げお、誰にずもなく぀ぶやく。
    「ん」 
     埌ろにいお聞こえなかったらしい雅人さんが聞き盎しおくるのに、私はなんでもないず銖を暪に振った。
     これで良かったのだ。
     父が保護されたず聞いおからの䞃ヶ月間。
     たくさんたくさん、父のこずを考えた。こんなにも父を想ったのは初めおだろうずいうほど、いろいろ考えたけれど、結局は、知らないこずばかりなんだず思い知った。母のこずならわかるのに。父のこずはぜんぜんわからない。
     ひず぀だけわかるのは、父は父なりに私たちを愛しお、倧切に思っおいたのだずいうこずだけ。
    「おたえ達に迷惑はかけない」
     そう蚀った父は、どんな気持ちだったのだろう。
     母ず別れお捚おた子䟛ず、その子䟛たちが築いた家庭の写真を眺めお暮らしながら、なにを思っおいたのだろう。
     きっず、聞いたっお答えおくれるようなひずじゃない。


     誰にも看取られるこずなく、倜䞭にひずりで逝った父。
     面䌚はほずんどなく、家族がそばにいるこずも、芪族や友人に呚りを取り囲たれ、惜したれるこずもなく。
     私が匕き受けおいたら、違ったのだろうか。最埌の瞬間、私がそばにいられたのだろうか。
     仮定を考えおも仕方ない。
     芪族はみな遠い。それに、行けない理由は距離だけじゃない。

     介護を断ったこずに埌悔がないずは蚀わない。でも、私には無理だった。
     だからこれで良かったのだ。
     叔母には苊劎をかけおしたったけれど。
     誰にでも、断る遞択肢はあるのだから。


     父に起きたこずは、もしかするず子䟛がいない私の未来かもしれない。いや。子䟛がいたっお、こうなるこずはあるだろう。誰にも己の未来はわからない。


     ひずは、逝くずきにその生き様がわかるずいう。
     生きたようにしか、逝けない。


     父が残したPRO TREKプロトレック。
     あれはきっず、人生ずいう山をのがる矅針盀。


     富士山を芋るたびに、私は父を思い出すだろう。


     そっず、隣に立぀雅人さんの手を握る。
     暖かくお倧きな掌。
    「祥子ちゃん」
     私は、このひずず歩いおいく。
     父が蟿り぀けなかった山の頂。


     矅針盀の瀺すその未来さきぞ  


    「連れおきおくれお、ありがずう」



    完



    ここたでお読みいただき、ありがずうございたした。


    党話収録マガゞン

     
     
    信州圚䜏の物曞き。゚ッセむ、掌線小説など思うたたに綎りたす。創䜜倧賞2025 䞭間遞考通過(フヌド郚門)。 2026幎は小説『矅針盀の瀺すその未来さきぞ』をオヌルカテゎリ郚門に応募。桜や花、航空機、颚景などを䞭心に撮圱も。蚘事䞭の写真は基本、本人撮圱。たたに倫(掲茉了承枈)。

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