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ep011:当てるのが占いじゃない。占いはあなたへのメッセージ(物語編)


    少しずつ春の気配が近づいてきました。

    本格的な春の前は、三寒四温で雨も多くなります。
    体も心も風邪を引かないように気をつけないといけません。
    せめてバーの中だけでも、穏やかな風をお届けできればと思います。

    さて、今宵はどのようなお客さまに来ていただけるか、楽しみです。



    お客A
    はぁ…
    もうまったく…


    (奥に座っている女性が、壁に向かって小さく呟く)

    お客B
    マスター、あの子のところに行ってあげなくていいの?

    マスターM
    今はまだ感情に浸っていたいようです。
    その時になったらにいたします(にこ)

    お客B
    あ、失礼失礼。
    マスターはしっかり心の流れを読んでるものね。

    マスターM
    ありがとうございます(にこ)

    ・
    ・
    ・

    お客B
    マスター、今日もごちそうさま。
    また来るねー

    マスターM
    はい、ありがとうございました。
    お気をつけてお帰りください。


    (いつのまにか女性は真っ直ぐグラスを見つめていた)

    お客A
    まだむしゃくしゃする…
    当てられなかったのに、偉そうに…


    (マスターMがお客Aの側にやってくる)

    マスターM
    お客さま、グラスが空のようですが、2杯目はいかがなさいますか?

    お客A
    同じもので。

    マスターM
    かしこまりました。
    少しお待ちくださいませ。


    (マスターMのシェイカーの音がバーの中を満たしていく)

    マスターM
    お待たせいたしました。
    マルガリータでございます。


    (女性は置かれたグラスをすぐに手に取る)

    マスターM
    なにかお悩み事ですか?

    お客A
    そうなのっ!
    だから今日、占い師のところに行ったの。
    友達におすすめされた有名な人らしいんだけどさ、全然私のこと当てられないなんて。
    あんなに高かったのに!

    マスターM
    お悩み事については、いかがだったのですか?

    お客A
    私のことを言い当てられない占い師の言葉なんて、聞けないでしょ。

    マスターM
    占いを当たる当たらないで判断する方が最近多いようですね。
    相手のことを言い当てることが大事なのでしょうか?
    もし占い師が全てを当てることができたら、この世から占い師はいなくなると思いませんか?

    お客A
    え?
    どういうこと?

    マスターM
    いつ、どこで、なにか起こるのか。
    言い当てることは、このように予言と同じだと思うのです。
    予言ができるのであれば、わざわざ働くでしょうか。

    お客A
    ・・・。
    じゃぁ、なんで?

    マスターM
    それは、今日ここに来られたあなたのような方がいらっしゃるからです。

    お客A
    ・・・。


    (マスターMは女性の目線が下に向くのを見てから、静かに、しかし力強く話し始める)

    マスターM
    きつい言葉になってしまい、失礼いたしました。
    しかし、占いはなんのためにあるのでしょうか。
    誰かの心と言葉に寄り添い、その方のために言葉を届けるために、占いがあるのではないでしょうか。

    お客A
    私のための言葉?

    マスターM
    はい、そうでございます。
    占いは物事を当てるためのものではありません。
    この先、どんな心構えでいれば良いのか。
    どんな選択肢があるのか。
    そのためのヒントを伝えるための言葉があったのではないでしょうか。

    お客A
    ・・・。


    (女性は沈黙のなか、机の一点を見つめている)

    お客A
    バーテンのあなたに占いのなにがわかるの?

    マスターM
    今はバーをさせていただいていますが、少しだけ占いもしています。

    お客A
    え・・・

    (女性は大きく開いた目でマスターMを見つめる)
    (マスターMはその目に笑顔を返す)

    マスターM
    私も占いで助けられたひとりなんです。


    (女性は申し訳なさそうに、柑橘の香りが残ったグラスに目を移す)

    マスターM
    今日のことに後悔があるのであれば、今日の占い師さんに本当に悩んでいることを伝えてはどうでしょうか。


    (女性は静かに目をつむる)

    お客A
    私はあなたに占ってもらいたい。

    (女性は目を開けると、再びグラスに目を向けてこう呟いた)

    マスターM
    それは、その時が来ましたら(にこ)


    (マスターMはグラスをひとつ拭き終わると再び女性に話しかける)

    マスターM
    もし本音で悩みを伝えることができたら、あなたへのメッセージを必ず返してくれます。
    本気でぶつかれば、相手も本気で対応してくれますよ。


    (女性はマスターMと目を合わせる)

    お客A
    そうかもしれません。
    頑張ってみます。


    (バーの中に少しの間、優しい沈黙が流れる)

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    マスターM
    3杯目はいかがなさいますか?

    お客A
    今日はもう大丈夫です。
    それに、ご迷惑をおかけしました。

    マスターM
    いいえ、とんでもございません(にこ)
    他のお客様もいらっしゃいませんでしたので、ご無礼ながらお声がけさせていただきました。

    お客A
    いえ、いろいろありがとうございます。
    少しだけ勇気出してみます。

    マスターM
    はい、応援しております(にこ)

    お客A
    ごちそうさまでした。

    マスターM
    はい、お気をつけてお帰りくださいませ。


    カランコロン♪



    占いを信じる心。
    それが強いだけに、期待してしまったのかもしれませんね。

    次の機会、彼女の心に占い師の言葉が届くことをお祈りしています。








    ここまでご覧いただき、ありがとうございます!
    バー心の羅針盤の裏方です。

    今回は「占い」がテーマでした。

    お客Aの女性、なにがあったのでしょうね。
    それはいつか物語として、続編を書くかもしれません。

    今回も心を込めて解説編を書きました。
    占いの詳しい話、占術について、どんな時に占いを利用すればいいのか。
    占いのことも、その本質も書いたので、ぜひご覧ください♪


    また、スキやフォロー、物語編のご感想をコメントに書いていただけると、今後の創作活動と学びのための励みになります♪


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    元サラリーマンのバーテンダー、マスターM。 疲れた羽を休め、心の羅針盤となる道しるべを灯します。 物語と解説を通して、自分の足で歩くためのヒントをお届けします。 疲れた時、困った時には羽を休め、また歩き出す。 そんな止まり木のような場所を目指しています。

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