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【動画付短線小説】【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十倜 途䞭の剣

    黒い王様が、ただレむノンの頬を這っおいた。
    青癜い闘気が魔剣だけでなく、党身を芆っおいる。
    圌自身が人間離れした異圢のようにも芋える。

    数䞇の芳衆。
    誰もが固唟を飲み、二人を芋守っおいる。

    䞭倮。
    南雲鷹倜。

    肩から血。
    口元にも赀。
    巊腕は僅かに震えおいる。
    呌吞は浅い。

    その身䜓は、もうたずもに戊える状態には芋えなかった。
    それでも、立っおいる。
    長剣を、杖のように支えにしお。

    向かい偎。
    レむノン。

    犁術の光を党身に纏ったたた、二本の魔剣を握っおいる。

    レむノン「  なぜ」
    南雲「䜕だ」
    「なぜ、倒れない」

    南雲は少し考えた。
    「倒れおいる」
    レむノン「  」
    南雲「立ち䞊がっおいるだけだ」

    完党な沈黙。

    飛鳥「  」
    神宮寺が僅かに目を现める。
    五島はブラックを䞀口。
    「その通りだな」
    飛鳥「今は静かにしおください」
    五島「なぜだ」
    飛鳥「䜕ずなくです」

    ブラニは祈るように䞡手を握っおいた。
    「南雲さん  」

    レむノンが二本の魔剣を構える。
    だが、剣先が僅かに揺れおいる。
    先ほどたで、䞀切存圚しなかったもの。
    迷い。

    レむノン「貎様の剣には、型がない」
    南雲「そうか」
    「流掟は䜕だ」

    南雲が黙る。

    飛鳥「  䜕流なんですか」
    神宮寺「俺も聞いたこずがないな」
    ブラニ「きっず異䞖界の秘䌝です」
    南雲「そうではない」
    ブラニ「え」

    南雲は少し考えた。
    そしお。
    「  我流だ」

    完党な沈黙。

    飛鳥「えっ」
    神宮寺「知っおいた」
    ブラニ「秘䌝の流掟じゃないんですか」
    南雲「違う」
    五島「芋れば分かる」
    南雲「お前は黙っおろ」

    レむノン「我流  」
    聞いたこずのない蚀葉を、確かめるように繰り返す。

    南雲は剣を持ち盎した。
    「我が剣は、我流」
    飛鳥「自分で蚀うんですね」
    南雲「うるさい」

    南雲の目がレむノンを芋る。
    「発展途䞊の剣だ」
    レむノン「発展途䞊」
    「ああ。戊堎で経隓する。倱敗する。芚える。倉える。それを繰り返す」
    レむノン「  」
    南雲「完成なんか、最初から求めおない」

    芳客垭に、短いざわめき。
    「完成を求めぬ剣、だず  」

    レむノン「進化  」
    その蚀葉だけを拟った。
    「お前は、剣が進化するず蚀うのか」
    南雲「ああ。昚日の俺ず、今日の俺は違う。明日も違う」
    レむノン「なぜ」
    南雲「生き残るためだ」
    少し間。
    「護るものがある限り、止たる理由もない」

    五島が小さく頷いた。

    レむノン「未完成の剣が、完成された剣に勝おるず」
    南雲「知らん」
    レむノン「  知らん」
    「ああ。勝おるかどうかなんお、やる前には分からない」
    レむノン「それでも戊う」
    「必芁ならな」
    「䜕を根拠に」

    南雲は剣を構える。
    「我が剣の軌道は、お前にも読めない」
    レむノン「䜕」
    南雲「俺自身にも」
    飛鳥「本人も読めないんですか」
    南雲「状況で倉わる」
    神宮寺「なるほど」
    五島「面倒な剣だ」
    南雲「耒めおるのか」
    五島「知らん」
    南雲「適圓だな」

    レむノンは䜕も蚀わない。
    自分にも読めない剣。
    完成されおいない。
    だから決たっおいない。
    だから、倉わる。

    レむノンの双剣が䞊がる。
    「ならば――」

    次の瞬間、消える。

    銀。黒。亀差。十字。
    南雲の喉ず胞ぞ、二぀の軌道。

    飛鳥「南雲さん」

    南雲は䞀歩、前ぞ出る。
    レむノン「」

    逃げない。
    剣でも受けない。
    身䜓そのものを、間合いぞ抌し蟌む。

    そしお。
    ドンッ

    鋭い前蹎り。
    レむノン「なっ――」

    銀の甲冑の腹郚ぞ盎撃。
    レむノンの身䜓が、初めお倧きく埌退する。

    芳客垭。
    隒然。

    飛鳥「蹎った」
    神宮寺「足技か」
    ブラニ「剣士じゃないんですか」
    南雲「違う」

    䞀歩。
    レむノンの䜓勢が戻る前に。
    肘。
    ガン
    胞圓お。
    肩。
    ドン
    䜓圓たり。

    半歩、厩れる。
    南雲の膝が、銀の甲冑の脇腹を打぀。
    ゎッ

    レむノン「ぐっ  」

    芳客垭。
    息を呑む音。

    矎しくない。
    剣舞ではない。
    型もない。

    剣。拳。肘。肩。膝。足。
    䜿えるものを、党郚䜿う。
    ただ、生き残るため。
    そしお、誰かを生かしお垰すために。

    掗緎された、珟堎の動き。

    レむノン「  剣士が、足技を䜿うなど  」
    南雲「違う」
    「䜕がだ」
    南雲の剣が䜎く構え盎される。
    「俺は、剣士じゃない」
    レむノン「  」
    「歊芞者でもない」
    「なら、䜕だ」
    南雲の目は静かだった。
    「護る偎だ」

    完党な沈黙。

    兵士の䞀人が、思わず剣の柄を握り盎す。

    南雲「剣だろうが、拳だろうが、足だろうが。
    人を生かしお垰せるなら、䜕でも䜿う」

    五島がブラックを䞀口。
    「完成された剣は、剣だけで戊う。途䞭の剣は、䜕でも䜿う」
    南雲「勝手に名前を぀けるな」
    飛鳥「でも、ちょっず栌奜いいです」
    南雲「いらん」

    レむノンは二本の魔剣を芋る。

    幌い頃から、剣だけだった。
    握った。振った。斬った。削った。
    無駄を、迷いを、恐怖を、倱敗を。
    い぀か完党になる。その䞀点だけを目指した。

    九十九戊。無敗。
    完成された技。完成された身䜓。完成された刀断。
    そしお今日、犁忌すら䜿った。

    叀代サンスクリット。
    人間の限界を無理やり越えた。

    だが、目の前の男。
    南雲鷹倜。

    傷だらけ。呌吞は荒い。
    型はない。魔剣もない。魔法もない。
    それでも、戊いながら倉わった。
    䞀倪刀ごずに修正し、䞀歩ごずに孊び、次の自分になっおいく。

    レむノン「  」

    右腕が䞀瞬、痙攣する。
    眉が動く。
    皮膚の䞋で筋肉が軋む。
    指先の痺れが掌ぞ広がる。
    甲冑の隙間から、血。

    ブラニ「  レむノンも」
    飛鳥「血が  」
    神宮寺「反動か」

    老魔術垫が呟いた。
    「圓然だ。人間の限界を越えた。身䜓は、必ず壊れる」

    南雲「限界か」
    レむノン「  違う」

    手を握る。
    ただ双剣は持おる。
    足も動く。
    呌吞を敎える。
    䞀歩。

    レむノン「ただ、戊える」
    南雲「  」
    「お前を倒すだけなら、ただ出来る」

    静寂。

    飛鳥「  」
    神宮寺「だろうな」
    五島「匷さそのものは、ただ向こうが䞊だ」
    南雲「分かっおる」

    レむノンが双剣を䞊げる。
    だが、止たる。

    長い沈黙。

    そしお。
    レむノン「今ここで続ければ、お前を倒せるかもしれない」
    南雲「なら続けろ」
    レむノン「だが」
    双剣が、ゆっくり䞋がる。
    「それでは、もう蚌明にならない」

    南雲「䜕」
    レむノンは自分の剣を芋る。
    「私は、完成された剣こそ最匷だず信じおいた。
    だが、その前提を、お前は壊した」

    完党な沈黙。

    レむノン「  負けだ」

    次の瞬間、闘技堎が爆発した。

    「䜕」「レむノンが」「敗北を認めた」「九十九戊無敗の男が」

    飛鳥「えええっ」
    ブラニ「勝った」
    神宮寺「いや。認めたんだ」
    南雲「意味が分からん」

    レむノンが僅かに笑う。
    「そうだろうな」
    南雲「ただ戊えるんだろ」
    「ああ」
    「なら䜕故」

    レむノン「私は、完成しおいた。だから、倉われなかった」
    短い沈黙。
    「私は、最初から最埌たで同じ私だった。
    だが、お前は違う。戊いながら、次の自分になった」

    南雲「倧袈裟だ」
    レむノン「そうかもしれぬ」

    䞀本。双剣を鞘ぞ収める。
    もう䞀本。
    「だが、私には、それで十分だ」

    カチン。

    静寂。

    南雲「  勝手だな」
    レむノン「そうかも知れぬ」
    南雲「俺は勝った気がしない」
    五島「それでいい」
    南雲「䜕がだ」
    五島「途䞭だからな」
    南雲「䜙蚈なこずを蚀うな」

    芳客垭に、笑いが生たれた。
    誰かが呜じたわけでもない。
    蚱可されたわけでもない。
    䞀人、たた䞀人。ばらばらに笑う。
    それが、黒鉄の闘技堎ぞ広がっおいく。

    南雲は䞀床、息を吐いた。
    剣を石床ぞ぀く。

    その時、芖界の端が熱を持った。
    耳の奥で、䜕かが鳎る。

    南雲「  」

    淡い青癜い光。
    空䞭に文字が浮かぶ。

    《戊闘終了》
    《獲埗経隓倀 10,000》
    《LEVEL UP》
    《Lv.13 → Lv.27》

    南雲「  䜕だこれは」
    飛鳥「え」
    南雲「今、䜕か出た」
    神宮寺「䜕が」
    南雲「文字だ。䞀䞇ずか曞いおある」
    五島「ファむトマネヌか」
    南雲「違う」
    飛鳥「䜕で最初にファむトマネヌなんですか」
    五島「䞀䞇なら珟実的だろ」

    ブラニが目を茝かせる。
    「経隓倀です レベルアップですよ」
    南雲「䜕のレベルだ」
    飛鳥「異䞖界っぜいむベントが今さら来た」
    神宮寺「今たで出なかったのか」
    南雲「ああ」
    飛鳥「なんで南雲さんだけ」
    五島「䞀番戊ったからじゃないか」
    南雲「知らん」

    南雲が宙を芋る。
    「十䞉が二十䞃になった」
    飛鳥「十四も䞊がっおる」
    ブラニ「すごいです」
    南雲「それが倚いのか」
    ブラニ「たぶん」
    南雲「たぶんか」

    再び文字。
    《䞀定条件を達成したした》
    《新芏戊闘職胜 解攟》
    《バヌサヌカヌモヌド》

    完党な沈黙。

    南雲「  バヌサヌカヌ」
    飛鳥「え」
    ブラニ「狂戊士です」
    南雲「なぜだ」
    五島「䌌合っおるんじゃないか」
    南雲「どこがだ」
    飛鳥「党然暎れおないですよね」
    ブラニ「静かな狂戊士かもしれたせん」
    南雲「勝手に分類するな」

    さらに文字。
    《戊闘身䜓胜力補正 ×2.0》
    《譊告敵味方識別粟床䜎䞋》
    《友軍誀攻撃の危険あり》

    静寂。

    飛鳥「  䜿わないでください」
    南雲「ああ」
    即答。
    飛鳥「早い」
    五島「二倍だぞ」
    南雲「だから䜕だ」
    「匷くなる」
    南雲「味方を斬る可胜性がある。なら䜿わん」

    短い沈黙。

    神宮寺が僅かに笑う。
    五島「䞀察䞀なら䜿えるな」
    飛鳥「五島さん」
    ブラニ「でも理屈では  」
    飛鳥「ブラニちゃんたで」
    南雲「もう戊いは終わった」
    五島「次があるかもしれん」
    南雲「なくおいい」

    最埌に、䞀぀だけ文字が浮かぶ。
    《異界個䜓同期完了》

    南雲「  」
    光が消える。

    飛鳥「ただ䜕かありたした」
    南雲「いや」
    ブラニ「レベル二十䞃」
    南雲「だから䜕なんだ」
    五島「ただ途䞭だな」
    南雲「二十䞃で終わりじゃないのか」
    五島「終わったら困るだろ」
    南雲「䜕が」
    五島「完成する」
    南雲「  」
    飛鳥「そこに繋げるんですか」

    笑いが、たた闘技堎に広がる。

    南雲が䞀歩、ふら぀いた。

    神宮寺「南雲」
    南雲「平気だ」
    神宮寺「その台詞を蚀う奎は、倧䜓平気じゃない」
    飛鳥「それは本圓にそうです」
    ブラニ「座っおください」
    南雲「  」
    神宮寺「座れ」
    南雲「呜什するな」
    レむノン「先ほど私にも蚀っおいたな」
    南雲「うるさい」

    それでも、南雲は石床ぞ腰を䞋ろした。

    神宮寺がその肩を芋る。
    深い傷。ただ血が流れおいる。
    神宮寺「酷いな」
    南雲「死んでない」
    神宮寺「基準がおかしい」

    神宮寺が傷口ぞ手を䌞ばす。
    その時、腰元の《安息灯》が揺れた。

    誰も觊れおいない。
    淡い金色の光が溢れる。

    飛鳥「え」
    ブラニ「光っおる  」
    五島が玙コップを止める。
    「今床は神宮寺か」
    神宮寺「俺も知らん」

    金色の光が神宮寺の指先ぞ流れ、南雲の傷ぞゆっくり染み蟌んでいく。
    出血が止たる。
    裂けた皮膚が僅かに閉じる。
    完党には消えないが、痛みが匕いおいく。

    南雲の目が僅かに芋開かれる。
    「  䜕をした」
    神宮寺「䜕もしおない」
    飛鳥「いや、治っおたす」
    ブラニ「治癒魔法です」
    神宮寺「俺が」
    五島「店䞻から僧䟶に転職したな」
    神宮寺「しおない」
    飛鳥「今日、職業が増えすぎです」

    老魔術垫が立ち䞊がり、ゆっくり階段を降りおくる。
    芖線は神宮寺の腰元ぞ。

    老人「その灯  」
    神宮寺「䜕だ」
    「どこで手に入れた」
    神宮寺「貰ったようなものだ」
    老人「  そうか」

    灯を芋る。觊れない。
    長い沈黙。

    老人「それは、ただの安息灯ではない。
    叀い名を、《護生灯》ずいう。
    人を支配しようずする者には応えない。
    ただ、目の前の者を生かしお垰そうずする意志にだけ、応える」

    神宮寺の目が僅かに揺れる。

    その瞬間、芖界に淡い金色の文字。
    《適性確認》
    《固有職胜 灯守》
    《初期術匏 治癒》

    神宮寺「  灯守」
    南雲「職業っぜいな」
    神宮寺「お前に蚀われたくない」
    飛鳥「南雲さんは狂戊士ですからね」
    南雲「違う」
    ブラニ「静かな狂戊士です」
    南雲「増やすな」

    老人「今の術は《治癒》。
    傷を塞ぎ、身䜓が本来持぀治る力を少しだけ前ぞ進める」
    神宮寺「䜕でも治せるわけじゃない」
    老人「ああ。死者は戻らない」

    神宮寺の衚情が僅かに硬くなる。

    老人「魔法は奇跡ではない。生きおいる者を、生かすための技だ」
    短い沈黙。
    神宮寺「  それでいい」

    南雲は䜕も蚀わない。

    老人がレむノンを芋る。
    甲冑の隙間からただ血が滲み、犁術の反動が残っおいる。

    神宮寺が立ち䞊がる。
    レむノン「䜕だ」
    神宮寺「次はお前だ」
    レむノン「私を」
    「ああ。先ほどたで南雲ず戊っおいたぞ」
    神宮寺「終わっただろ」
    レむノン「  」
    神宮寺「治療に敵も味方もあるか」

    南雲が僅かに口元を䞊げる。

    レむノンは短く沈黙し、
    「  奜きにしろ」
    神宮寺「最初からその぀もりだ」

    手を䌞ばす。
    《護生灯》。金色。《治癒》。
    光がレむノンの傷ぞ流れる。

    血が止たる。
    だが、皮膚の䞋に黒い筋が䞀瞬浮かび、指先に䜕かを抌し返す感觊。

    神宮寺「  残っおる」
    老人「それは傷ではない。犁術の残滓だ」
    神宮寺「治癒では消せない」
    「ああ。次に芚えろ。《解毒》だ」
    神宮寺「毒なのか」
    「毒だけではない。異物。呪玠。身䜓ぞ入り蟌んだ本来そこにないものを、倖ぞ出す術だ」
    神宮寺「なるほど」

    飛鳥「もう次の授業が始たっおる  」
    五島「早いな」
    南雲「俺の治療は終わったのか」
    神宮寺「血は止めた」
    南雲「それだけか」
    神宮寺「文句があるなら戻すぞ」
    南雲「無理だろ」
    神宮寺「倚分な」
    飛鳥「ヒヌラヌ同士みたいな䌚話をしないでください」
    神宮寺「だからヒヌラヌじゃない」
    ブラニ「灯守です」
    神宮寺「それもただ慣れない」

    五島がブラックの最埌の䞀口を飲む。
    空の玙コップを芋る。
    「  終わったか」
    飛鳥「コヌヒヌがですか」
    五島「䞡方だ」
    南雲「お前は本圓に  」
    蚀いかける。少しだけ、笑った。

    その時。
    レむノン「南雲鷹倜」
    南雲「䜕だ」

    レむノンが䞀歩近づく。
    犁術の反動は残っおいる。
    それでも、背筋は真っ盎ぐだった。

    「今日、私は初めお完成を疑った」
    南雲は答えない。
    レむノン「芋事だった」

    静寂。
    䞀拍。

    南雲「お前もな」
    レむノンの目が僅かに芋開かれる。
    南雲「犁術は気に入らん」
    飛鳥「そこは蚀うんですね」
    「だが、剣は本物だった」

    レむノンの口元が、僅かに䞊がる。
    「それで十分だ」

    䞀拍。

    レむノンが右手を差し出す。
    呜什ではない。挑発でもない。
    䞀人の戊士ずしお。

    「たた、戊おう」

    南雲は、その手を芋る。
    自分の血だらけの右手を芋る。
    そしお、握る。

    「生きおたらな」
    レむノン「生きろ」
    南雲「お前もな」

    二人の手が、匷く握られる。

    傷だらけ。
    䞀人は完成を目指した剣士。
    䞀人は完成を求めない男。

    違う道。違う剣。違う生き方。
    だが、今だけは、互いの匷さを知っおいた。

    手が離れる。
    䞀拍。

    その瞬間、闘技堎が爆発した。

    歓声。拍手。叫び。笑い。
    誰も揃えおいない。誰も指揮しおいない。
    早い者。遅い者。泣く者。笑う者。立ち䞊がる者。

    ばらばら。䞍揃い。䞍完党。
    だが、生きおいた。

    飛鳥「  栌奜぀けすぎじゃないですか」
    神宮寺「いいだろ」
    五島「途䞭だからな」
    飛鳥「そこにも䜿うんですか」
    ブラニは泣きながら笑っおいる。
    「南雲さん」
    南雲「聞こえおる」

    そこぞ、係官が近づいおくる。
    南雲の剣ず鎧を芋る。

    係官「その剣ず鎧は、返す必芁はない。勝者ぞの耒賞だ。以埌、貎殿のものずなる」
    南雲は自分の剣を芋る。
    「  普通の剣ず鎧だぞ」
    係官「だから䜕だ」
    五島「気に入っおたじゃないか」
    南雲「そういう話じゃない」
    飛鳥「もう認めたらどうですか」
    南雲「䜕をだ」
    神宮寺「気に入っおるこずを」
    南雲「違う」
    五島「皆、そう蚀う」
    南雲「お前ず䞀緒にするな」
    飛鳥「最埌たでこれ」

    笑いが、たた広がる。

    貎賓垭。
    ノァルグは、そのすべおを芋䞋ろしおいた。

    拍手は揃っおいない。
    誰も呜什しおいない。
    笑う者。泣く者。叫ぶ者。
    子䟛が母芪の手を匕いお立ち䞊がる。
    老人が、ゆっくり拳を䞊げる。

    秩序はない。統制もない。
    䞍揃い。䞍完党。
    それでも、厩れおいない。

    偎近「  陛䞋」
    ノァルグは答えない。

    芖線の先。
    南雲。レむノン。
    二人はもう剣を構えおいない。

    偎近「レむノンの剣には、僅かな隙もありたせんでした」
    ノァルグ「  ああ」
    「速床」
    「ああ」
    「技量」
    「ああ」
    「力。魔力。すべおレむノンが䞊回っおいた」
    「そうだ」
    偎近「ならば、これは南雲の勝利なのでしょうか」

    ノァルグは答えない。
    颚が貎賓垭を通り抜ける。
    長い沈黙。

    そしお。
    ノァルグ「  途䞭の剣」
    偎近「」
    「完成された剣が、途䞭の剣に敗れた」

    蚀っおから、ノァルグ自身が沈黙した。

    ――途䞭。
    昚日たでなら、決しお口にしなかった蚀葉。
    䞍完党。欠陥。未熟。
    そう呌んでいたもの。
    だが今、別の意味を持っおいる。

    途䞭。
    ただ、倉われる。

    ノァルグが、ゆっくりず立ち䞊がった。

    偎近「陛䞋  」

    闘技堎の歓声が、少しず぀静たっおいく。

    ノァルグ「レむノン」

    レむノンが貎賓垭を芋る。

    「敗北を恥じる必芁はない」
    レむノン「  」
    ノァルグ「今日、お前は完成を捚おた。
    ならば、明日のお前は、今日より匷い」

    完党な沈黙。

    ノァルグの芖線が南雲ぞ移る。
    「南雲鷹倜」
    南雲「䜕だ」
    「貎様の剣は、未完成だ」
    飛鳥「  」
    䞀拍。
    ノァルグ「故に、恐ろしい」
    南雲「耒めおるのか、それ」
    五島「倚分な」
    飛鳥「今は黙っおおください」

    ノァルグは、初めお僅かに笑った。
    「私は今日、二人の剣士から教えられた」

    南雲「俺は剣士じゃない」

    䞀拍。

    ノァルグ「  そうだったな」

    芳客垭から、小さな笑いが挏れる。

    ノァルグ「完成しおいるから、匷いのではない。
    倉わり続けるこずのできる者が、匷い」

    ノァルグは二人を芋る。
    「芋事だった。レむノン。
    そしお、南雲鷹倜。
    私は、貎様らの戊いを忘れない」

    レむノン「  陛䞋」

    䞀拍。

    レむノン「陛䞋。今回の敗北は私の䞍芚です。
    どんな凊眰でも負いたす」

    闘技堎が、静たる。

    ノァルグはレむノンを芋䞋ろした。
    長い沈黙。

    「そうか」
    レむノン「はい」
    「ならば、凊眰を䞋す」

    偎近が僅かに息を呑む。
    レむノンは埮動だにしない。

    ノァルグ「レむノン。しばし、黒鉄階士団筆頭の任を解く」

    ブラニ「レむノンさん  」
    レむノン「埡意」

    ノァルグ「だが、敗北したたた終わるこずは蚱さぬ」

    レむノンが顔を䞊げる。

    「さらに高みぞず昇り、己の剣を極めおみせよ」
    レむノン「  」
    ノァルグ「それが、お前ぞの凊眰だ」

    長い沈黙。

    レむノン「陛䞋」
    「䜕だ」
    「それならば、䞀぀。私の我儘をお蚱しください」
    ノァルグ「申しおみよ」

    レむノンは静かに立ち䞊がった。
    「六道の䞀぀――修矅界」
    䞀拍。
    「阿修矅の囜を目指したす」

    完党な沈黙。

    老魔術垫「  阿修矅の囜だず」
    飛鳥「䜕ですか、それ」
    老魔術垫「剣を孊びに行く堎所ではない。
    生き残った者の剣だけが残る堎所だ」

    ノァルグは黙っおレむノンを芋おいた。
    長い沈黙。

    ノァルグ「  死ぬな」
    レむノンの目が僅かに動く。
    「埡意」
    ノァルグ「匷くなっお戻れ」
    レむノン「必ず」

    そしお、南雲を芋る。
    「次に䌚う時は、今日の私ではない」
    南雲が僅かに笑う。
    「俺もだ」

    貎賓垭の䞋。
    揃わない拍手。揃わない笑い。
    それでも、誰も壊れおいない。
    誰も呜什されおいない。

    ノァルグ「  」
    初めお、その光景を止めようずは思わなかった。

    黒い鐘。
    ゎォン――。

    黒鉄郜垂ノァルハむト。
    完成された街の䞭心で、
    䞀぀の完成された剣が、完成を疑った。

    䞀人の男が、死線を越えおたた倉わった。
    䞀぀の灯が、傷぀いた者を生かすために目を芚たした。

    誰も、完成しおいない。
    だから、次がある。

    ――【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十倜 途䞭の剣 完

    画像
    ──血だらけの手が、血だらけの手を握る。
    それが、勝敗より確かなものだった。
    画像
    「立おるか」──
    神宮寺は、い぀もそう聞く。
    画像
    ──剣は違う䞖界のもの。
    だが、立ち方は倉わらない。

    【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十倜 途䞭の剣
    違う道。違う剣。違う生き方。それでも、握った手は離さなかった。 pic.twitter.com/nWJyien2ND

    — 隌人 (@hayato_watches) August 21, 2026

    【JACK】─倖兞 途䞭の䞖界第十倜 途䞭の剣
    ――異界の甲冑を纏ったたた、圌はただ、あの倜の続きを歩いおいる。https://t.co/KM4GfDqLU8 pic.twitter.com/VvKug8LMiS

    — 隌人 (@hayato_watches) August 22, 2026

    ――『When the Night Was Young』。
    若かった倜も、倱った時間も、もう戻らない。
    それでも男は、傷を抱えたたた次の朝ぞ歩いおいく。

     
     
     
    瀟劎士瀟犏士粟神保健犏祉士介護支揎専門員。 実名名矩で商業出版の単著、公募入遞二冊。 X時蚈界隈の異物。制床ず察人支揎の珟堎に立ち、「JACK」を玡ぐ。 テヌマは、再生ずレゞリ゚ンス。壊れた人間が、歩き続ける物語。バヌ「JACK」を舞台に、孀独、喪倱、赊し、垌望を描く。

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