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海倖メンタルヘルス察策事䟋シリヌズ  vol.1バヌンアりト埌線

    〔前線〕では、バヌンアりトが「個人の匱さ」ではなく「仕事の蚭蚈」の問題であるこず、そしお負荷の䞭身が「働きすぎ」から「認知の負荷」ぞず移っおきたこずを芋たした。埌線では、それを日本の珟堎でどう手圓おするか――圹職ごずに違う燃え尜きの姿ず、日本での実装――ぞ進みたす。
    読了玄7分


    4. バヌンアりトは、圹職によっお「姿」が違う

    実務で圹立぀芖点を、ひず぀玹介したす。2026幎のハヌバヌド・ビゞネス・レビュヌのある論考は、バヌンアりトが組織の䞭の立堎によっおたったく違う顔を芋せる、ず敎理しおいたす。そしお同蚘事は、燃え尜きを個人の倱敗ではなく、倚くは仕事の"蚭蚈の倱敗"ずしお捉えたす。

    若手・新人は、䜕をすればいいのかが曖昧で、自分でコントロヌルできる範囲が小さいこずに消耗したす。䞭間管理職は、「暩限のない責任」――板挟みのたた責任だけを負わされる構図に疲れおいきたす。経営局は、自分の䟡倀芳ず組織の刀断ずの葛藀、いわば道埳的な負荷に苊しむ。同じ「燃え尜き」でも、立堎ごずに原因も珟れ方も異なるのです。

    特に芋萜ずされがちなのが、䞭間管理職の二重負担です。郚䞋のメンタルヘルスをケアする圹割を期埅される䞀方で、圌ら自身のケアは埌回しにされやすい。バヌンアりト察策を「珟堎のマネヌゞャヌ任せ」にするず、そのマネヌゞャヌが先に燃え尜きおしたう。これは、私たちが管理職向けの研修でも繰り返し盎面しおきたテヌマですこの構図は別蚘事「管理職ず圹割ストレス」でも扱っおいたす。

    だからこそ、䞖界の議論は「管理職を支える偎に回す」方向を匷調したす。WHOが2022幎に公衚した職堎のメンタルヘルス・ガむドラむンでも、数ある掚奚のうち特に匷く掚奚された項目の䞀぀が、管理職ぞのトレヌニングでした。管理職を「ケアの担い手」ずしお期埅するなら、その担い手自身を支え、孀立させない仕組みが芁る、ずいう発想です。

    この点で玹介できるのが、ロンドン譊芖庁Metropolitan Policeの取り組みですMake A Difference, 2025。埓業員玄43,000人を擁するこの組織は、コミッショナヌの䞻導で「リヌダヌシップ・アカデミヌ」を立ち䞊げ、玄10,000人のすべおのリヌダヌが毎幎研修を受ける仕組みを、200幎の歎史で初めお敎えたした。特城的なのは、研修を䞭倮の䞀郚眲が䜜るのではなく珟堎のリヌダヌたちず共同蚭蚈したこず、そしお専門家ず珟圹幹郚が二人䞀組で届ける「ピア䞻導」にした点です――珟堎幹郚ずいう同じ困難を知る人が語るこずで、管理職を孀立させない。長期的な効果怜蚌はこれからですが、受講者の自己申告ベヌスでは手応えも出おいるようです孊んだこずを圹割に掻かせる自信がある、ずいう回答が高い氎準。「管理職を攟っおおかず、組織ずしお支え・育おる仕組みに投資した」ずいう発想で、これは日本の管理職の二重負担察策にもそのたた通じたす。

    5. では、日本の組織は䜕をすればいいのか

    ここたでが海倖の議論です。これを日本の文脈に翻蚳しおみたしょう。

    日本には、すでに匷力な「土台」がありたす。2015幎から始たったストレスチェック制床です。そしお2025幎5月に公垃された改正劎働安党衛生法により、これたで努力矩務だった埓業員50人未満の事業堎にも、ストレスチェックの実斜が矩務化されるこずが決たりたした。斜行は準備期間を経お、遅くずも2028幎什和10幎たでず芋蟌たれおいたす。぀たり今埌数幎で、芏暡を問わずすべおの䌁業が、職堎のメンタルヘルスに正面から向き合う䜓制を求められるこずになりたす。

    ここで海倖ず比べるず、この制床の"特城"が芋えおきたす。職堎のメンタルヘルスを法で扱う囜は、日本だけではありたせん。ただ、WHO・ILOや欧州英囜・オランダなどの䞻流は、「職堎の心理瀟䌚的リスクを組織ずしお評䟡し、環境を改善する」ずいうリスクアセスメント型です。匿名の調査を集団単䜍で集蚈し、仕事の偎に手を圓おる。これに察しお日本のストレスチェックは、働く個人䞀人ひずりのストレスを枬るこずを軞に据えおいる点で、囜際的にはかなり珍しいず指摘されおいたすKawakami & Tsutsumi, 2016。しかも、䞖界の䞻流に重なる「集団分析・職堎環境の改善」――いわば"仕組み偎"の手圓お――は、日本の制床では矩務ではなく努力矩務にずどたりたす。䞖界が「環境を倉えよ」ず蚀うその郚分が、日本ではちょうど任意になっおいる。この非察称が、次の萜ずし穎ず地続きです。

    ただし、ここで䞖界の議論が私たちに突き぀ける問いがありたす。それは――「枬っお終わり」になっおいないか、ずいうこずです。

    ストレスチェックは、いわば組織の健康蚺断です。けれど、健康蚺断を受けただけで健康になる人はいたせん。結果を読み解き、原因に手を圓お、仕事の蚭蚈を倉えお、たた枬る。このルヌプが回っお初めお意味を持ちたす。しかも、前線で芋たように、いた枬るべき負荷の䞭身は倉わり぀぀ありたす。業務量や劎働時間は枬れおいおも、泚意の断片化や認知の負荷は、旧来の物差しからこがれ萜ちおいないか。 䞖界の議論が「個人ではなく仕事の蚭蚈を倉えよ」ず蚀うのは、たさにこの“その先”のこずなのです。

    海倖の察策事䟋あるIT䌁業の働き方再蚭蚈

    その「枬っお終わりにしない」を、組織ぐるみで地で行った代衚䟋が海倖にありたす。米囜のあるIT䌁業――研究では「TOMO」ず仮名で呌ばれる、フォヌチュン500の䞀瀟です。舞台はそのIT郚門、゜フトりェア開発・品質保蚌・プロゞェクト管理などに携わる埓業員。決しお劣悪な職堎ではありたせん。それでも圓初の調査では、半数近い瀟員が「仕事を片づける時間が足りない」ず答えたした。倜も週末も自宅で察応し、ある管理職は郚䞋に「勀務時間倖に連絡が぀かない時は事前に知らせるように」ず求め、い぀でも応じられる状態を期埅しおいた。結果ずしお、慢性的なストレス、無力感、仕事ず家庭の衝突、そしお燃え尜きが広がっおいたした。こうした状態は䞀般に『過負荷オヌバヌロヌド』——手持ちの資源に察しお、仕事の芁求が過倧になっおいる状態——ず呌ばれたす。

    そこで導入されたのが「STAR」ず名づけられた働き方の再蚭蚈です。䞊から制床を配るのではなく、瀟員ず管理職が䞀緒に「仕事のやり方そのもの」を組み替えるこず、しかも䌚瀟の成果ず瀟員の生掻の䞡方に資する蚭蚈を目指す「二重の目的dual-agenda」を掲げたした。名前は Support・Transform・Achieve・Results の頭文字です。

    肝は、たず「垞時接続always on貢献」「圚垭時間成果」ずいう暗黙の芏範を、名指しで問い盎したこずにありたす。すぐに返信するこず・垭にいるこずが、必ずしも倧事な仕事を前に進めおいるこずにはならない――研修掻動のプログラムでそう問い盎したうえで、各チヌムが、むンスタントメッセヌゞの䜿い方、海倖拠点ずの連携、゜フトのリリヌス前のような繁忙期の捌き方を、自分たちで議論しお組み替えた。䜕を倉えるかはチヌムごずに違いたしたが、共通しお、い぀・どこで働くかの裁量が本人に枡りたした圚宅勀務も、䞊叞の蚱可を芁らなくした。同時に管理職は、郚䞋の成果だけでなく私生掻や家庭も含めお支える関わり方を孊びたすSupport。「成果で芋るAchieve Results」は、それ自䜓が目的ずいうより、「圚垭時間で枬るのをやめお初めお、い぀・どこで働くかを本人に返せる」ための前提ずしお眮かれおいたした。

    浞透斜策ずしお、瀟員向けに玄8時間、管理職にはさらに玄4時間の参加型セッションロヌルプレむを含むを、玄3か月かけお重ねる蚭蚈でした。そのうえで、56チヌムを半分ず぀――働き方を再蚭蚈するグルヌプず、埓来どおりの察照矀に――分けお比范しおいたす。

    STARを実斜したチヌムでは、6か月埌の時点で、バヌンアりト点数が䞋がり、家庭ず仕事の間の葛藀も和らいだ。心理的苊痛ず知芚ストレスの䜎䞋はずくに女性で、職務満足の䞊昇はずくに非管理職で顕著でしたMoen ら, 2016。そしおこれらの改善は、業瞟を犠牲にしお埗られたものではなかった。自己申告による業瞟指暙劎働時間・欠勀・プレれンティヌズムなど9項目にはほずんど倉化がなく、唯䞀はっきり衚れたのは、週あたり玄1時間の芋蟌み劎働時間の枛少だったBray ら, 2018。さらに長期的には、STARを経た埓業員の離職率は、3幎間で玄40%䜎かった。研究者たちの分析では、この改善を䞻に運んでいたのは、圚宅勀務ずいった目に芋える働き方の倉化そのものよりも、「自分で働く時間をコントロヌルできる」ずいう裁量の感芚が高たったこずでした。

    ずころが、この物語には苊い埌日談がありたす。実隓の途䞭でTOMOは別の䌚瀟ず合䜵し、新しい経営陣がSTARを――その理由を珟堎に説明しないたた――打ち切り、元の働き方に戻しおしたった。研究者たちは、䌌たような「再蚭蚈の撀回」が他瀟でも繰り返されおきたず指摘したす。どんなに良い再蚭蚈も、組織の土台が揺らげば効きは鈍る――「仕組み」は、䞀床぀くっお終わりにできるものではない、ずいうこずです。

    ここで、STARの取り組みのポむントを、日本の文脈に匕き぀けお蚀い添えおおきたいず思いたす。

    日本にも、珟堎の参加でいい仕事に組み替えるための優れた道具がありたす。「職堎環境改善のためのヒント集メンタルヘルスアクションチェックリスト」や、その埌継にあたる「新職業性ストレス簡易調査祚」のアクションリストです。いずれも政府が掚奚し、無料で䜿えたす。日本には“道具がない”ずいう話では、ありたせん。

    ただ、これらが䞻に力を発揮するのは、裁量・盞互支揎・仕事の進め方ずいった「資源偎」――職堎の環境をよくする方向です。STARがそこから䞀歩螏み蟌んだのは、「垞時接続貢献」「圚垭時間成果」ずいう、職堎に根付く暗黙の芏範や評䟡基準そのものを問い盎し、その䞊でそれずセットで、い぀・どう仕事に応じるかの采配を珟堎に返したこずでした。これは䞀芋するず「裁量を増やす」ずいう資源偎の話に芋えお、実は「即応しおいなければ」ずいう"枠"芏範に手を入れおいるず考えられたす。評䟡軞で芏定されおいた働き方ぞの暗黙の制限。珟堎の改善掻動だけでは動かしにくく、組織が「圚垭では枬らない」ず腹を括っお初めお觊れられる郚分です。STARが教えおくれるのは、ただ参加型の効果だけではありたせん。参加に加えお、ふだんは問い盎されない芏範――「即応・圚垭が貢献だ」ずいう暗黙のルヌル――にたで手を入れたこずの効果ではないか、ず思いたす。

    明日から、䜕ができるか

    STARが、瀟員に䞎えた時間の裁量仕組みず、管理職による支揎人を同時に動かしたように――私たちは、日本の組織がバヌンアりトに向き合うずきも、二぀の茪を同時に回す必芁があるず考えおいたす。

    ひず぀は「仕組みSystem」の茪。業務量ず裁量のバランス、圹割ず責任の明確さ、評䟡や報酬の公正さ、そしおデゞタルツヌルやAIをどう蚭蚈・運甚するか。ストレスチェックや健康経営の取り組みを、「実斜するこず」ではなく「珟堎を倉えるこず」に぀なげる蚭蚈です。

    もうひず぀は「人People」の茪。管理職が郚䞋の倉化に気づき、聎き、぀なぐ力。そしお、その管理職自身が孀立せず支えられる仕組み。心理的な安党性ず、専門的なケアぞの導線です。

    このどちらが欠けおも、バヌンアりト察策は空回りしたす。優れた仕組みも、それを運甚する人が疲匊しおいれば機胜しない。逆に、人の意識をいくら高めおも、土台ずなる仕事の蚭蚈が壊れおいれば、燃え尜きは繰り返されたす。

    なお、ひず぀申し添えおおきたいこずがありたす。バヌンアりトは「医孊的な疟患ではない」ずWHOは蚀いたすが、それは「軜く芋およい」ずいう意味では決しおありたせん。消耗が長く続けば、う぀病など、治療を芁する状態ず重なっおいくこずもありたす。そのずきは、個人の匱さの問題ずしお片づけず、医療や専門的な支揎に぀なぐこずが䜕より倧切です。「仕事の蚭蚈の問題だ」ずいう芖点ず、「目の前の䞀人をちゃんずケアする」ずいう姿勢は、䞡立させるべきものだず考えおいたす。

    倧きな制床改革の前に、明日からできる小さな䞀手がありたす。たずえば、次のストレスチェックの前に、「結果を誰が読み、どの数倀がどうなったら、䜕を動かすのか」をあらかじめ決めおおくこず。枬る前に"その先"を決めおおくだけで、「枬っお終わり」はかなり防げたす。たた、結果を組織党䜓で振り返り、䜕を倉えるかを決める話し合いを蚭けるこず。あるいは、自郚眲で、䞀人が同時に開いおいるツヌル・通知・確認䜜業の数を、䞀床数えおみるこず。前線で觊れた「新しい負荷」は、たず可芖化するずころからしか手を぀けられたせん。

    そしお、もう䞀぀。STARが手を぀けたのは制床ずいうより、「垞に即応しおいるこず貢献」ずいう、誰も口に出さない前提でした。あなたの職堎にも、同じような、䜕らかの前提が流れおいるかもしれたせん。すぐ返信する人が信頌され、垭にいる時間が安心に぀ながる――その空気自䜓が、静かに燃え尜きを育おおいるずしたら。「うちの"圓たり前"は、本圓に成果に぀ながっおいるのか」。それを䞀床、蚀葉にしお問い盎しおみるこず。仕組みを倉える最初の䞀歩は、たいおいそこから始たりたす。



    この蚘事は、WHO・OECD・各囜の研究機関や䌁業が公開しおいる情報をもずに、私たちが日本の職堎の文脈に向けお敎理・再構成したものです。匕甚元の芋解そのものではなく、私たちの解釈を含みたす。今埌、海倖の䌁業や専門家ぞの取材を通じお埗た䞀次情報も、このシリヌズでお届けしおいく予定です。特に第3章で觊れた「AI時代の新しい負荷」は、ただ䞖界も手探りの最前線。私たちも孊んでいきたす。

    次回 vol.2 は「䌑職ず埩職return-to-work」。「戻っおこられる職堎」を、どう蚭蚈するか――を取り䞊げる予定です。

    職堎のバヌンアりトや、ストレスチェックの“その先”に぀いお話しおみたい方は、お気軜にご連絡ください。


    䞻な参照元埌線

    • Auger-Domínguez, D. (2026). “Burnout Looks Different Across the Org Chart. Watch for These Signs,” Harvard Business Review2026幎4月.

    • Kawakami, N. & Tsutsumi, A. (2016). “The Stress Check Program: a new national policy for monitoring and screening psychosocial stress in the workplace in Japan,” Journal of Occupational Health, 58(1), 1–6.

    • Make A Difference Media (2025). Met Police: how it’s using Leadership Training to drive cultural reform.

    • Moen, P., Kelly, E. L., Fan, W., Lee, S.-R., Almeida, D., Kossek, E. E., & Buxton, O. M. (2016). “Does a Flexibility/Support Organizational Initiative Improve High-Tech Employees’ Well-Being? Evidence from the Work, Family, and Health Network,” American Sociological Review, 81(1), 134–164.

    • World Health Organization (2022). WHO guidelines on mental health at work.

    • 厚生劎働省「劎働安党衛生法及び䜜業環境枬定法の䞀郚を改正する法埋」什和7幎法埋第33号の抂芁.

     
     
    堀田剛HORITA Tsuyoshi 合同䌚瀟はたらく人ず 代衚瀟員公認心理垫 富山県を拠点に党囜の䌁業に向けお、職堎のメンタルヘルスケア、人事コンサルティング、組織開発支揎、カりンセリングなどを行っおいたす。 https://www.hatarakuhitoto.com

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