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君も、見えるのかい? 六、榊葉司 #小説

榊葉は雲の合間から降り注ぐ陽光に目を細めた。爽やかな朝だ。
鳥の鳴き声を聞きながら学生鞄を肩に掛け直す。

通学路の商店街はこの小さな街のトレードマークだ。朝っぱらから人々がぱらぱらと買い出しに来ている。
気持ちの良い気候におじいちゃんおばあちゃん達も散歩に出てきたらしい。

入り口に立っている門はレトロな金属の鳥居みたいな形で、時代遅れのフォントでフラワーロード商店街の文字が彫られている。

門の上でまどろんでいる猫を眺めながら歩いていると、高野の爺さんに話しかけられた。

よく独り言を言ったりぼうっとしているからそろそろお年ね、とたまに噂されていたきがする。

「君も、見えるのかい?」

にこにこしながらひん曲がった腰の後ろで手を組んでいる。
「えっ……あの……っ?」
「あいつだよ。」
ひょいと頭上を指し示すといててと呟いた。

「ああ、じゃああれも」
「あれは猫又だよ。」

「お前さん、いつから見えるのかい。」
「え……旅行で……沖縄に行った後、からです。」
あれは確か——8年前だっただろうか。
「君は運が良いね。」
「え、あ、そうですかね、ありがとうございます……?」

「最近は妖より怖いもんも多いからの。気をつけるんじゃよ。」
「そ、そうですね……。」

急に真顔になると高野さんは言った。
「そうそう、七福神には気をつけなさい。」
「……え……。」
「あーぁ、すまないね、こんな老人の話に付き合わせて。行ってらっしゃいね。」
「いやそんな……い、行ってきます!」

高野の爺さん、案外……いや、実は全然ボケてなんかないんじゃないかな。

視えるようになってから、たまに本物と妖怪の見分けがつかないことがある。明らかに変な形の物や、怪しい挙動ならわかりやすいけど。

目の端に角のあるチノパン姿の男の人が、両手に買い物袋を持ってサンダルで歩いていくのが見えた気がした。だいたいこの街は妖怪が馴染みすぎている。

それに猫って元々、なんだか異質で妖怪っぽいからな。
「うわっつ」急に背中を押されてびっくりした。
「キバくん、どしたのぼーっとして。」高橋だ。昔っから元気が良くてちょっかい出してくる幼馴染。
「いや別に。」

「ふーん。そうだ、バイト探してるって言ったじゃん?見つかったの。」
聞いて聞いて、と言った感じで目を輝かせている。
「何のバイト?」
「巫女さん。千現神社の。」
「巫女?!そういうのバイトなんだ……。」千現神社か。確かここらの檀家も請け負っていて墓地のある寺と半々の敷地だったような。

待てよ、それって厄介なものが棲みついていたりしないだろうか。
「明後日舞の練習することになってさ。」
「早いね。」すでに申し込んだのか。行動が迅速すぎる。フッ軽って言うのか?
「1週間後にお披露目だって。15日。せっかくだから見にきてよ。」
「う、あ、僕が行くの?良いけど……」

「うん!15日ね。」高橋は、あ、時透君と綾華、と言ってこちらを振り返った。

「来なかったらタリーズでハニーカフェラテ奢ってね!」めちゃくちゃなことを言ってパシパシと僕の背中を叩くと、高橋はポニーテールを揺らして大股で歩いて行った。

「綾華また歩きながらゲームしてる!ユキコサン出るかもよ。」
「えー何それ。」
「知らないのー?」

「……はいはい」
一応だけど、今日は千現神社によって様子見してから帰ることにしよう。
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短編オムニバス/長編です。続きはこちらです。


※この小説に登場する名詞は、現実の同名の人物その他とは一切関係ございません。何卒宜しくお願い致します。

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