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『前䞖に戻っお埳を積む』SF小説 第䞉話 厄介者

    翌朝、枅吉は早起きした。

    源助よりも早く起きお、身支床を敎え、源助が起きたタむミングで「おはよう」ず爜やかに声をかける。これが第䞀手だった。

    前の晩、決めたのだ。源助は埳が四十五。自分は四。十倍以䞊の差がある。䜕が違うのか、芳察すれば芋えおくるはずだ。

    「  お前、今日はやけに早いな」

    源助が、寝がけ県で枅吉を芋た。

    「ああ。気分転換に、い぀もより早く起きおみたんだ」

    「ふうん」

    源助は、特に䜕の感想もなく着替え始めた。爜やかな朝の挚拶ぞの評䟡はなかった。

    朝の仕事は、二人で井戞の氎を汲み䞊げお、店の前を枅める䜜業から始たる。源助は手際がいい。桶を運ぶ動䜜にも無駄がなく、氎の撒き方も均等で、終わったずきには通りの埃が舞わないようにきっちり打ち氎が枈んでいる。

    枅吉は隣で同じこずをした。

    桶を運んで、氎を撒いお、地面を箒で敎える。源助よりも䞁寧にやろうずした分、時間がかかった。源助は枅吉が終わる前にもう䞭に戻っおいた。

    懐で板を確認した。

    4埳

    動いおいない。

    打ち氎で埳が増えるなら源助はもっず高いはずなのだから、これは仕事の範疇で、埳の察象倖なのだろう。それはわかった。仕事は仕事だ。

    午前䞭、枅吉は源助に匵り付いお、䜕床か芳察を詊みた。

    源助は店の䞭で番頭から指瀺を受け、薬を秀で量り、玙に包み、客に枡しおいた。動䜜はすべお萜ち着いおいお、客に察する受け答えも䞁寧だった。垞連の客が「源助さん、い぀もすたないね」ず声をかけるず、源助は「いえ、お圹に立おお䜕よりです」ず頭を䞋げた。

    ——なるほど。

    枅吉は内心で頷いた。

    ああいう、自然な䜎姿勢、ずいうや぀だ。ぞりくだりすぎず、突き攟しもせず、お圹に立おお䜕よりです、ず笑顔で蚀う。この䞀連を自分もやればいい。

    しばらくしお、枅吉のずころにも客が来た。幎配の男で、咳止めの薬を買いに来たずいう。枅吉は薬を包み、銭を受け取り、その男に向かっおにっこりず笑った。

    「お圹に立おお䜕よりです」

    男は、倉なものを芋るような目で枅吉を芋た。

    「  お前さん、若いのに偉そうだなあ」

    「え」

    男は薬を懐に入れお、銖を傟げながら店を出おいった。

    枅吉は固たった。

    源助が蚀うず自然なのに、自分が蚀うず偉そうになる。どこで間違えたのかわからなかった。声色か、間か、頭の䞋げ方か、それずも党郚か。

    「䜕やっおんだ、お前」

    暪で芋おいた源助が、笑いをこらえながら蚀った。

    「いや、その、勉匷しようず思っお」

    「䜕の」

    「お前の」

    源助は、噎き出した。

    「気色悪いこず蚀うな」

    「気色悪いずは䜕だ」

    「俺の真䌌なんかしたっお意味ねえだろ。お前はお前のやり方でやれよ」

    源助はそう蚀っお、別の客の察応に戻っおいった。

    枅吉はその堎に立ち尜くした。

    源助のやり方を芳察しお真䌌する、ずいうのが自分の戊略だったのだ。それを「意味ねえだろ」ず本人に䞀蹎された。だが、源助は埳が四十五で、自分は四だ。明らかに䜕かが違う。違うものを真䌌しないでどうすれば远い぀けるずいうのか。

    懐の板を、ちらりず確認した。

    3埳

    「枛っおる」

    口から出おしたった。

    䜕が枛点察象だったのかは、もはや芋圓も぀かない。源助の真䌌をしたのが枛点なのか、客に偉そうだず蚀われたのが枛点なのか、その䞡方か。

    枅吉は、頭を抱えたくなった。

    昌前、店の衚で箒を握っおいるず、通りの向こうから隒ぎ声が聞こえおきた。

    最初は犬の鳎き声だず思った。だが近づいおくるに぀れお、それが人の声だずわかった。誰かが䜕かを叫んでいる。怒鳎っおいるのではない。困っおいるような、必死な声だ。

    「ちょっず、埅っお、埅っおください、もう、ちょっず、はい、はい、わかりたした、もうわかりたした——」

    声の䞻が芋えた。

    若い女だった。幎は十䞃、八くらいだろうか。地味な朚綿の着物を着お、髪は無造䜜にひっ぀めおいる。䞡手いっぱいに荷物を抱え、その埌ろから、頭に倩秀棒を構えた男が倧股で远いかけおいた。

    「だから、それ党郚、お代を払っおもらわねえず困るんだよ」

    「払いたす、払いたす、ちゃんず、あの、家に戻ったら、いや、家にもないんですけど、でも、なんずか、したす」

    「なんずかっおお前、それじゃあ困るんだよ」

    魚屋らしい男が、女を远い詰めおいた。女の腕の䞭には、新聞玙にくるたれた魚が二、䞉本芋えた。

    ——あれは、奉公人なのか。

    枅吉は蚘憶を探った。奉公人らしい。同じ䌊勢屋の。䞋女の——。

    「結だ」

    呟いた瞬間に、頭の䞭の蚘憶が匕っ匵り出された。結。十䞃歳。半幎前に䌊勢屋に入ったばかりの䞋女。仕事はそれなりにやるが、よく隒ぎを起こす。番頭からも女䞭頭からも、扱いに困られおいる。

    枅吉は、結のこずを盎接ほずんど知らなかった。䞋女ず䞋男では仕事の堎所が違うので、顔を合わせる機䌚も少ない。だが、噂は耳に入っおいた。あい぀はたた䜕かやらかした、あい぀のせいで仕事が滞った、そういう話を、源助や他の奉公人から聞いた芚えがある。

    結は今、たさにその「やらかし」の最䞭だった。

    「あの、本圓に、ごめんなさい、でも、あのお婆さんがあんたりお腹を空かせおいお、それで、぀い、立お替えお、いや、立お替える぀もりだったんですけど、お代を、こう、その、忘れちゃっお——」

    「忘れちゃっただず⁉」

    魚屋の男が倩秀棒を地面に叩き぀けた。

    「お代を忘れお魚を持っお垰る奎があるか」

    「いえ、忘れたずいうか、持っおきおいなかったずいうか——」

    「同じこずだろうが‌」

    結はぺこぺこず頭を䞋げながら、なおも荷物を抱えたたた埌退しおいる。埌退しながら、なぜか足元の䜕かを気にしおいる。よく芋るず、結の足の脇に、小さな子どもが䞀人、寄り添っおいた。䞉぀か四぀くらいの子どもで、痩せおいお、汚れた着物を着おいる。

    その子どもの手を、結はもう片方の腕で、しっかりず握っおいた。

    魚屋の男も、その子どもに気づいたらしい。

    「  その子は䜕だ」

    「あ、はい、これは、迷子で、それで、迷子のたただず危ないので、いったん預かっお、それで、お婆さんのずころに連れおいく途䞭で、お婆さんがあんたりお腹を空かせおいたから、それで魚を——」

    「埅お埅お埅お、話がわからん」

    魚屋は倩秀棒を構え盎した。

    枅吉は、店の前で箒を握りしめたたた、その光景を眺めおいた。

    結が䜕を蚀っおいるのか、半分以䞊理解できなかった。迷子の子どもがいる、それは分かる。腹を空かせた老婆がいる、それも分かる。なぜそこに結がいお、魚を持っお、代金を払い忘れお、奉公先である䌊勢屋ではない方向に向かっお走り去ろうずしおいたのか、その筋道が䞀切わからない。

    ただ、わかるこずがひず぀あった。

    結は今、間違いなく困っおいる。魚屋の男に远われ、子どもを匕きずり、奉公の仕事もたぶん攟り出しお、にっちもさっちもいかない状態だ。

    これは——

    枅吉の頭の䞭で、䜕かが点滅した。

    これは、埳を積むチャンスではないか。

    困っおいる奉公仲間を助ける。しかも事情は耇雑で、耇数の人間が関わっおいる。難易床が高い分、埳の倍率も高いはずだ。

    枅吉は箒を攟り出しお、駆け寄った。

    「すいたせん、ちょっず埅っおくれ。これは、䜕の隒ぎだ」

    魚屋の男が振り返っお枅吉を芋た。

    「䌊勢屋の奉公人か」

    「ええ。こい぀、結っお蚀うんですが、うちの店の者です」

    「だったらお前さん、こい぀の代わりに払っおくれるのか」

    「  魚はいくらだ」

    「䞉本で、癟二十文だ」

    枅吉は懐から銭を取り出した。手持ちは癟䞉十文ほどあった。

    ——いきなり癟二十出すのは、痛い。

    正盎、痛かった。これは䌊勢屋から貰った、わずかな小遣いだ。だが、これで結を助ければ、おそらく盞圓な埳が入る。投資ず考えれば安いものだ。

    「これで足りるか」

    文銭を数えお魚屋に枡した。男は数えお頷き、「次から気を぀けろよ」ず結に向かっお唞っおから、倩秀棒を担いで去っおいった。

    結は、ぜかんずした顔で枅吉を芋おいた。

    「  あの」

    「いいっお、いいっお」

    枅吉は手を振った。胞の䞭で、すでに次の動䜜に移っおいた。

    「その魚、お婆さんのずころに持っおいくんだろ。送っおやるよ。぀いでに、その子も」

    「い、いいんですか」

    「ああ、もちろん」

    枅吉は爜やかに埮笑んだ。

    正盎、店の仕事を攟り出すこずになるので、埌で番頭に叱られるかもしれない。だが、それも投資のうちだ。䞀日二日叱られたずころで、埳がしっかり入れば取り返しは぀く。

    懐の板に意識を集䞭した。今この瞬間、増えおいる気がする。倍率が高い善行のはずだから、五や十では効かない。䞉十、いや、五十は入っおもいい。

    結は、䜕床も頭を䞋げながら、ぺこぺこず瀌を蚀った。

    「ありがずうございたす、ありがずうございたす、本圓に、すみたせん、私のせいで、すみたせん」

    「いいから、急ごう。お婆さんが埅っおるんだろ」

    「は、はい」

    結が先に立っお歩き始めた。

    子どもの手を匕いお、魚を抱えお、ぺこぺこしながら歩く結の埌ろを、枅吉は぀いおいく。

    ——よし。

    頭の䞭では、すでに埳の蚈算が始たっおいた。

    老婆たで魚を届ける。これで埳が入る。

    子どもを家たで送り届ける。これでも埳が入る。

    結を助けた、ずいうのは倧本にあるから、それも圓然入る。

    䞉段重ね、いや、もしかするず四段、五段の埳が積み重なる可胜性がある。

    歩きながら、枅吉はそっず懐の板に手を入れた。

    歩きながら確認するのは難しかったが、暪目でちらりず画面を芋た。

    5埳

    「  」

    増えおいない。

    魚屋に癟二十文を枡した瞬間に、明確に**+2埳**入った気はする。だがそこから䞊がっおいない。今のずころ䞉段重ねどころか、䞀段目で停止しおいる。

    枅吉は内心で焊った。

    これから、お婆さんず子どもを順番に届けおいけば増えるはずだ。今はただ途䞭だ。途䞭だから増えおいないだけだ。そう自分に蚀い聞かせた。

    結は、盞倉わらず必死に歩いおいた。

    子どもの歩く速さに合わせなければならないので、進みは遅い。結はその子に時々「もう少しだよ」ず声をかけ、子どもの方は黙っお結の手を握っおいる。よく芋るず、結の巊手の甲には、小さな擊り傷があった。さっき魚屋に远い詰められたずきにできたのか、それずも別の機䌚か、わからない。

    「あの」

    結が、歩きながら振り向いた。

    「私、枅吉さんに、ご迷惑をおかけしおしたっお  」

    「いや、迷惑じゃない。気にするな」

    「でも」

    「本圓に、いいから」

    枅吉は爜やかに笑顔を䜜った。

    その笑顔の裏で、念のため懐の板を確認した。

    5埳

    「  」

    倉わらない。

    爜やかな笑顔を䜜っおも増えない。圓たり前ず蚀えば圓たり前か。誰も芋おいないずころで䜜り笑いをしおも埳にはならないのだろう。

    結の家、ではなく、結が「お婆さん」ず呌んでいる人物の家は、䌊勢屋から半里ほど離れた裏長屋の䞀角だった。途䞭で䜕床も道に迷い、結が「あれ、こっちじゃなかったかな」ず蚀うたびに匕き返した。子どもは黙っお぀いおきおいた。

    ようやく蟿り着くず、結は腰の曲がった老婆に魚を枡し、䜕床も頭を䞋げお、たた䜕床も謝った。老婆は最初「あんた誰だい」ずいう顔をしおいたが、結が事情を説明するず、ぜろぜろず涙をこがした。

    「ありがずうねえ、結ちゃん、こんな立掟な魚を  」

    枅吉は、その様子を脇で眺めながら、懐の板にそっず手を入れた。

    老婆が涙を流すほどの善行だ。これは間違いなく、倧きな埳になっおいるはずだ。

    暪目で画面を確認した。

    6埳

    「  」

    䞀埳。

    老婆を泣かせお、䞀埳。

    枅吉は、自分の䞭の䜕かが小さく厩れる音を聞いた気がした。だが、ただだ、ただ子どもがいる。子どもを家たで届ければ、そこで倧きく入るはずだ。あの子は迷子だ。芪も心配しおいるはずだ。それを届ければ感謝もされる。埳もたっぷり入る。

    「結。あずは、その子だ。家はどこだ」

    「あ、はい、それが、聞いおもよくわからなくお——あの、坊や、お家はどこ」

    結がしゃがんで子どもに尋ねた。子どもはぜ぀りず「あっち」ず指を差した。

    その「あっち」は、䌊勢屋ずも、老婆の家ずも違う方角だった。

    枅吉は心の䞭で「いいから入れ」ず念じた。䜕に察しおずも蚀えない念じだったが、確かに念じた。

    裏長屋を出お、子どもの指差す方ぞ歩き始めた。

    歩きながら、枅吉はもう䞀床、ちらりず板を確認した。

    6埳

    倉わらない。

    老婆を泣かせ、結を救い、子どもを連れ、迷子の家を探しお、これから半刻はかかるであろう道のりを歩こうずしおいる、この状況で、六。

    枅吉は、足を止めなかった。

    ——いや、ただだ。

    子どもを家に届けお、芪に瀌を蚀われる瞬間に、たぶんたずめお入る。埳ずいうのは、たぶんそういうものだ。途䞭経過では䌞びず、結果が出たずきに䞀気に動く。投資ず同じだ。我慢のずきだ。

    結の隣で、枅吉は内心の苛立ちを抌し殺しながら歩いた。

    ふず、結がこちらを芋た。

    「あの、枅吉さん」

    「ん」

    「もし、お急ぎでしたら、私䞀人でも、なんずか——」

    「いいっお。乗りかかった船だ」

    「でも」

    「気にするな。本圓に」

    枅吉は笑顔を䜜った。䞉床目だった。

    そのずき、懐の板で、ふず指の腹が画面に觊れた気がした。

    歩きながらの確認は危ないず思い぀぀、぀い、暪目で芋た。

    板の画面は、自分にではなく、結に向いおいた。

    その画面に衚瀺された数字を芋お、枅吉は、思わず立ち止たった。

    4823埳

    「  は」

    声が出た。

    結が振り返った。

    「どうしたした」

    「いや、䜕でもない」

    枅吉は反射的に答えた。だが、目はただ画面に釘付けだった。

    四千八癟二十䞉。

    桁が違う。

    自分は六で、結は四千八癟二十䞉。

    ——故障か

    枅吉は板を振った。指で叩いた。画面に向かっお息を吹きかけた。

    数字は、揺らがなかった。

    䜕床確認しおも、結は4823埳だった。

    宝くじが圓たるレベルが五千。

    そのすぐ手前だ。結は、宝くじが圓たるレベルの䞀歩手前にいる。

    枅吉は呆然ず結を芋た。

    地味な朚綿の着物を着お、髪をひっ぀めにした、十䞃歳の䞋女。さっきたで魚屋に远われ、子どもの手を匕いお、ぺこぺこ謝っおいた、䌊勢屋でも持お䜙されおいる厄介者。

    それが、四千八癟二十䞉。

    「枅吉さん」

    結が、䞍思議そうな顔で枅吉を芋おいた。

    「いや、䜕でもない。なんでも、ない」

    枅吉は無理やり笑った。

    子どもの家たでは、ただ遠かった。歩きながら、枅吉は䜕床も結に板をかざした。確認のためだった。䜕床かざしおも、結は四千八癟二十䞉のたたで、たたに少しず぀増えおいた。

    四千八癟二十五。

    四千八癟二十䞃。

    歩きながら、䜕もしおいないように芋えるのに、ただ子どもの手を匕いお、迷子の家を探しお、がそがそず話しかけおいるだけで、結の数字は、じりじりず増えおいく。

    枅吉の手元の板は、倉わらず六のたただった。

    子どもの家にたどり着いたのは、それからさらに半刻埌だった。

    子どもの母芪は、半狂乱で家の前を行ったり来たりしおいた。結を芋るなり駆け寄っお、子どもを抱きしめ、結に䜕床も頭を䞋げた。

    枅吉は脇で立ったたた、板を確認した。

    8埳

    「  」

    二埳。

    子どもの母芪が半狂乱になっおいた状況を解決しお、二埳。

    そしお、結の方を改めおかざした。

    4856埳

    増えおいる。

    枅吉は、母芪に頭を䞋げられおいる結を芋぀めた。結は盞倉わらず「いえ、本圓に、私、䜕も、ただ偶然で——」ず恐瞮しながら、汗を拭っおいた。

    䌊勢屋ぞの垰り道、枅吉は黙っお結の隣を歩いおいた。

    結は、枅吉の沈黙を心配したのか、䜕床か話しかけおきた。

    「あの、枅吉さん、本圓に、ご迷惑をおかけしお——」

    「いや、いいんだ」

    「でも、お店の方も、お仕事の途䞭だったのに——」

    「いいっお」

    枅吉は短く答えた。

    頭の䞭は、結の四千八癟五十六で埋たっおいた。

    なぜだ。

    䜕が違う。

    魚屋の代金を払ったのは自分だ。老婆の家たで䞀緒に歩いたのも自分だ。子どもの家を探したのも䞀緒だった。むしろ、銭を出した分、枅吉の方が貢献しおいたはずだ。なのに、枅吉は二埳しか入っおいない。結は䞉十埳以䞊動いおいる。

    ——いや。

    萜ち着け。

    そもそも、結はあの状況を䜜り出した匵本人だ。代金も払わずに魚を持ち出し、迷子の子どもを匕き連れお、䌊勢屋の仕事を攟り出しお町を歩き回っおいた。事情を聞けば党郚結の責任だ。それが、四千八癟五十六。

    枅吉は、結を暪目で芋た。

    結は、枅吉に申し蚳なさそうな目を向けながら、それでも歩く足取りは劙にしっかりしおいた。子どもがいなくなった分、䞡手が自由になっお、䜕かを探すように懐に手を入れた。

    「あの、お代を、枅吉さんに、お返ししなきゃ——」

    「いいっお。本圓に、いい」

    「でも、これは、私のせいで」

    「気にするなっお蚀っおるだろ」

    枅吉は、぀い匷い口調になった。

    結はびくっず肩を瞮めお、「すみたせん」ず小さく頭を䞋げた。

    枅吉は、自分が今、結に圓たり散らしそうになったこずに気づいた。

    ——いかん。

    ここで結に冷たくしたら、間違いなく枛点される。枛点どころか、これたで積んだ分も飛ぶかもしれない。

    「いや、すたない。怒ったわけじゃない」

    「  はい」

    「結が悪いんじゃない。気にするな」

    「  ありがずう、ございたす」

    結は、ぺこりず頭を䞋げた。

    䌊勢屋に戻るず、案の定、番頭から「どこに行っおいた」ず叱られた。

    枅吉は「結が困っおいたので、䞀緒に解決しおいたした」ず正盎に話した。結も暪で「私のせいで、枅吉さんが」ず頭を䞋げた。

    番頭は、深いため息を぀いた。

    「お前ら二人、本圓に、どうしようもないな」

    ただ、それ以䞊の凊分はなかった。たぶん、結が䞋女の䞭で半ば諊められた存圚で、枅吉も特に問題児ではなかったので、これ以䞊叱る䟡倀もないず刀断されたのだろう。

    その倜、垃団の䞭で、枅吉は板を取り出した。

    自分の数字を確認する。

    8埳

    朝の四から、四埳増えた。䞀日分の善行ずしおは、過去最高だった。

    念のため、垃団の䞭で、隣の源助に板を向けた。

    45埳

    源助は倉わらず四十五だった。

    そしお、最埌に、寝おいる結の方角に板を向けた。距離があるので䞍安だったが、画面はちゃんず反応した。

    4889埳

    「  」

    枅吉は倩井を睚んだ。

    たぶん、埳は積めば積むほど積たれにくくなる、ずいうルヌルがあるのだろう。最初は楜に入るが、ある段階を超えるず、同じ行動でも入りにくくなる。それで、結が䞉十入ったり、自分が二しか入らなかったり、ばら぀きが出る。

    そう考えるず䞀応の説明は぀く。

    ——ただ。

    そういう理屈なら、自分の方は今、初心者ボヌナス期にあるはずだ。むしろ自分の方が入りやすいはずだ。なのに、結に远い抜かれ続けおいる。

    䜕かが、おかしい。

    枅吉は寝返りを打った。

    明日、もう䞀床、結を芳察しおみよう。

    結が、いったい䜕をやっお、あの数字を皌いでいるのか。あの厄介者が、なぜあの数字なのか。

    源助ずは別の意味で、結を芋本にしおみる䟡倀がある。源助が芁領のいい先茩なら、結は——いや、結のは、芁領ずは違う䜕かだ。芁領のいい人間は、魚屋に远われたりしない。

    䜕にせよ、芋れば芋るほど、結は埳を皌いでいた。

    そしお、結のそばに匵り付いおいれば、自分にもそのおこがれが回っおくるはずだ。今日の最終結果は八埳。これは結に匵り付いた成果だ。源助に匵り付いおいた午前䞭は、ほずんど増えなかった。

    「結に匵り付く方が、たぶん、効率がいい」

    枅吉は呟いた。

    声に出しおから、したった、ず思っお合掌した。

    明日からは、結を芳察する。あの厄介者の䞀挙手䞀投足を、培底的に芋る。トラブルに巻き蟌たれるたびに、必ず近くにいお、埳のおこがれを取りに行く。

    そう決めお、枅吉は目を閉じた。

    ——埳の皌ぎ方が、ようやく芋えおきた気がする。

    垃団の䞭で、枅吉はかすかに埮笑んでいた。

     
     
    小説を曞く人向けに、 「ちゃんず読たれる䜜品」の䜜り方を発信しおいたす。 プロット蚭蚈肉付けAIの䜿い分けなど、 AIを䜿う際に“AIっぜい文章”から抜けるための実践的なノりハりを䞭心に発信。 小説を読たれる小説に

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