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第十二章 八岐の川

    䞘の䞊から、足名怎呜の環濠が芋えた。

    倕暮れだった。

    五村の長たちは、すでに兵を集めおいた。赀い盟を持぀者。銅剣を掲げる者。田を守るために来た者。山の民を憎んで来た者。そのすべおを束ねおいるのが、足名怎呜だった。

    堀が䞉重に巡っおいた。朚柵がその倖に立ち、芋匵り櫓が四぀、四方に突き出おいた。䞀番高い櫓の頂に、旗印が立っおいた。旗の色は赀。出雲の色だった。

    「川が守っおいる」

    知波倜比叀が蚀った。

    「䞉重の堀に、支流が䞃本入っおいたす。旱の季節でも、堀の氎は切れない。あの環濠は、川を匕き蟌んで䜜られおいる」

    男は黙っお芋おいた。

    「八本目の流れを、探しおいたす」

    「八本目」

    「氎が来る方向ず、来ない方向がある。氎が来ない偎に、堀が薄い堎所があるはずです」


    知らせが来たのは、その倜だった。

    山で砂を遞り分けおいた者が、走っおきた。

    足を匕きずっおいた。膝に血が぀いおいた。

    「炉が焌かれた」

    男は立ち䞊がった。

    「誰に」

    「足名怎呜の兵だ。赀い盟を持っおいた。倜明け前に来た。䞉方から囲んだ。逃げられなかった者は、そこに眮いおきた」

    男は倜の方を芋た。

    山の向こうに、赀い光があった。

    たたらの炉ではなかった。炉を囲んでいた小屋が燃えおいた。


    䞉時間埌、男は焌け跡に立った。

    炉は壊されおいた。送颚管が折られ、鉄床が砕かれ、薪が螏み荒らされおいた。炭の粉が地面に広がっおいた。

    砂鉄が散乱しおいた。

    黒い砂が、血に混じっおいた。

    知波倜比叀がしゃがんだ。焊げた地面の傷を指でたどった。

    「足跡の向きが分かりたす。南から来お、西ぞ退いた。堀の氎門を経由しお戻っおいる」

    男は答えなかった。

    鉄の道具が折れお転がっおいた。杭を削るための刃が、真ん䞭で砕かれおいた。

    砂鉄を拟う桶が、蹎り倒されおいた。

    それだけだった。

    なぜ来たのかは、分かる。なぜ炉を壊したのかも、分かる。分からないのは、どこたでやる぀もりなのかだった。

    「戊う」

    男は蚀った。

    知波倜比叀は立ち䞊がった。顔に䜕も出さなかった。

    「堀の南の流れを探したす。䞀晩あれば芋぀かる」


    䞉次から来た若者たちが集たった。

    山の民が来た。たたら民が来た。川沿いの集萜から、鉄の道具を持った男たちが来た。

    「山を削った土砂が田を埋めるずいう話なら、蟲民の怒りは分かる。だが、炉を焌き、人を殺したのは蟲民ではない。足名怎呜が兵を出した。田を守る兵が、山の民を民ずしお芋なかった」

    男は蚀った。

    「戊う理由を聞く者はいるか」

    誰も蚀わなかった。

    たたら民の長が前に出た。土ず炭で手が黒かった。

    「あの炉は、俺の垫が眮いたものだ。砂鉄から鉄が生たれた最初の堎所だ」

    「分かっおいる」

    「ならば十分だ」


    知波倜比叀が地面に棒を走らせた。

    堀の圢。朚柵の堎所。芋匵り櫓の䜍眮。氎門の向き。

    「南の支流が干朮に浅くなりたす。氎門から最も遠い堎所です。芋匵りが薄い。倜明け前に動けば、朚柵に達する前に気づかれない」

    「時間は」

    「䞀刻。早ければもう少し短い」

    男は地面の図を芋た。

    氎が守りの栞心だった。川を匕き蟌んで堀を満たす。氎䜍を保぀。攻め手は氎に阻たれ、氎に抌し返される。

    「知波倜比叀」

    「はい」

    「氎を読んだこずに感謝する」

    知波倜比叀は返事をしなかった。棒で地面に印を぀け続けた。

    「南の朚柵の死角。ここから入れば、氎門に回るよりも早い」


    鉄の鏃が䞊べられた。

    山から切り出した朚の束があった。

    銬が䞉頭、匕き出された。

    男は銬に乗った。䞀列に敎列した䞉十人を前に、振り向いた。

    たたら民の黒い顔。山の民の癜い顔。䞉次から来た若者の顔。

    それぞれに違う顔だった。だが今倜は、党員がこちらを芋おいた。

    「打っお終わりではない。田を守るために戊う。山ず川ず田が同じ堎所に立おるように、戊う。勝った埌のこずを、戊いながら考えろ」

    誰も動かなかった。

    「行く」


    倜明け前、霧が出た。

    男の䞀行は霧の䞭に入った。

    埌ろを振り返るず、たたら民の残した炉の跡がただ赀かった。

    前を芋るず、環濠の芋匵り櫓の炎が芋えた。

    その二぀の光の間を、䞉十人が歩いた。

    知波倜比叀が先頭を歩いおいた。足元の土を螏みながら、川の音を聞きながら。

    八本目の流れは、芋぀かっおいた。

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    hantani

     
     
    猫奜きプログラマ。半導䜓䌚瀟の技術者 Q&AサむトのQuoraでフォロワヌ数6000人の「ChatGPT情報亀換所」を䞻宰する皋生成AI奜き ポヌトフォリオ https://hantani-portfolio.pages.dev/

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