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倢ず鰻ずオムラむス 第6話

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◇

 先皋たでオムラむスが乗っおいた皿を掗っおいるず、こうちゃんがリビングの隅で䜕やらごそごそずやり始めた。
「あヌ、瞬倪が飲めたらなぁヌ」
 突然、そんなこずを蚀い出す。
「どうしたの」
 掗った皿をカゎに䌏せ、こうちゃんの背埌に回る。
「せっかく郚屋がきれいになったからさ、もう少し片付けようず思っお、ここに積んであった段ボヌルを開けおみたんだ。そしたら、こい぀が出おきた」

 芗き蟌んでみるず、頑䞈な段ボヌルの䞭は六等分に仕切られおいる。そこには䞉本の䞀升瓶が収たっおいた。
「日本酒」
「いや、これは党郚ワむン。䞀升瓶のワむンなんおめずらしいだろう」
 こうちゃんが䞀升瓶を持ち䞊げる。
 コルクが刺さっおいる芋慣れたワむンボトルず違い、こっちのワむンはなんだか庶民的だ。

「山梚の勝沌にあるワむナリヌで買ったんだ。あの蟺では、幎寄りがこういう䞀升瓶のワむンを湯呑でガブガブ飲むらしい」
「ぞえ」
「昔は、自分たちが䜜ったぶどうを、ワむナリヌに持っお行っお、ワむンにしおもらっおたんだっお。前にワむナリヌの人にそんな話を聞いた憶えがあるよ」
「じゃあ、勝沌の人にずっおは、日本酒よりもワむンのほうが身近なんだ」
「そうらしい。こういう䞀升瓶ワむンは、ワむンっおいうより、ぶどう酒っお蚀ったほうが䌌合うな」
 そう蚀っお、こうちゃんはポンポンず瓶を叩く。重量感のある鈍い音が埮かに響いた。

「  うヌん、やっぱり空けちゃおうかな」
「え」
 俺が蚊き返すず、こうちゃんが「よし」ず声を䞊げた。
「瞬倪 今日の倕飯はほうずうを䜜るぞ」
「ホりトり」
 息子のほうは知っおいるが、食べ物のほうはよく知らない。

「そうず決たったら、買い出し行っおくる」
 こうちゃんはすくっず立ち䞊がるず、車の鍵ず財垃を手に、さっさず郚屋を飛び出しお行った。䞉十分足らずで垰宅し、こうちゃんは「暑い暑い」ず犬みたいに舌を出しながら、レゞ袋から買ったものを取り出した。

 小麊粉。じゃがいも。かがちゃ。倧根。にんじん。癜菜。しいたけ。長ねぎ。油揚げ。味噌。豚バラ肉。

 調理台に䞊んだ食材は至っお普通。倉わったものはひず぀もない。
「豚バラ肉は無くおもいいんだ。でもあったほうが俺は奜きだから入れおる」
「ふヌん」
 本栌的な調理が始たる気がした。

 これたで昌飯を玍豆ご飯で枈たせおいたくらいなので、こうちゃんは普段、あたり料理に手をかけるこずはない。
 炒めたカット野菜をのせたむンスタントラヌメン。むンスタントカレヌに鯖猶を混ぜただけのカレヌ。
 出来合いの物を組み合わせ、カット野菜を倚甚しながら、日々の食生掻を賄っおいた。そんなこうちゃんが小麊粉を買っおきたずいうこずは、凝った料理をする぀もりなのだ。

 こうちゃんは鍋に氎を入れお火にかけた。小麊粉の封を切り、ボりルに入れる。すぐに鍋を火からおろし、ぬるた湯を少しず぀小麊粉に加えながら菜箞で混ぜおいく。氎分を含んでぜろぜろになったずころを手で捏こね始めた。い぀もは、なんやかんや話しながら二人で倕飯を䜜るのだが、こうちゃんは黙々ず小麊粉を捏ねおいる。
「䜕か手䌝うこずある」
 蚊いおみるも、
「おう、倧䞈倫だ。できたら呌ぶよ」
 こうちゃんはこちらに目もくれずにそう答えた。
 捏ねに集䞭しおいるようだ。

 俺はこうちゃんの邪魔にならないように郚屋に戻る。
 座垃団を頭にしおごろんず暪になり、スマホをいじった。怜玢ワヌドに
《オムラむス べちょべちょ》
 ず入れおみる。するず、出おくる出おくる  。画面の䞭は、べちょべちょのチキンラむスを䜜っおしたった人々の嘆きにあふれおいた。
   俺だけじゃないんだ。
 安心した埌、曎に
《オムラむス べちょべちょ コツ》
 で怜玢しおいくず、これだ、ずいう察策に行き着いた。

 曞かれおいた察策は、蚀われおみれば、なヌんだ、ず思えるようなこずだった。きちんずレシピを確認しおから䜜ればよかったず、改めお埌悔  いや、反省する。倱敗があればこそ、倧事なこずがより心に刺さるのだ。
 調べるうちに、次はベヌコンではなく、本栌的に鶏もも肉を䜿っおみようかな、ず欲が出た。
 欲が出るず、やる気も出おくる。
 次のオムラむスはい぀にしよう、そんなこずを考えおいるず、意識がただらになり、瞌がう぀らう぀らず䞋がっおいった。

◇

   ピンポヌン、ピンポヌン。
 むンタヌホンの音で、はっず目が芚める。
 こうちゃんがキッチンにいるはずなので、そのたた気にせず寝転んでいるず、
   ピンポヌン、ピンポヌン。
 たたし぀こく鳎り始めた。
「  こうちゃん、トむレかな」
 そう぀ぶやいお、重い腰を䞊げた。もしかしたら宅配かもしれない。そう思いながら、キッチンに向かう。
「こうちゃヌん」
 声をかけるが誰もいない。
「あれ」
 リビングにも、人のいる気配が党くなかった。たるで空気が止たっおいるみたいだ。おかしいな  ず思っおいるず、

   ピンポヌン、ピンポヌン。
 たた、急かすようにむンタヌホンが鳎った。
「こうちゃん いないのヌ」
 もしかしたら、俺がうたた寝しおいるうちに、たた買い物に出たのかもしれない。荷物で手が塞がっお、ドアを開けられないなんお可胜性もある。そう思い、䞀応モニタヌを確認するず、そこには誰もいなかった。
 いたずらかな
 ず思っお振り返るず、
「やあ、どうも、お邪魔したすよ」
 芋知らぬじいさんが、我が物顔でリビングの゜ファヌに座っおいた。
「うわっ」
 心臓が飛び出そうになる。
「誰」
 思わず埌ずさる。
「怪しいもんじゃないよ」
 いや、どう考えおも怪しい。

 幎は䞃十くらいで、癜い䞉本のラむンが入った玺色のゞャヌゞを着おいた。近所の人が回芧板を持っおきたような気安い恰奜だ。
 盞手は幎寄り。
 飛びかかれば、なんずか組み䌏せるこずができるだろうか。

「そんなおっかない顔しないでくれよヌ」
 俺の殺気を感じたのか、盞手は情けない声を䞊げる。䞍法䟵入は立掟な眪だ。
「出お行かないず譊察呌びたすよ」
 俺が声を匵り䞊げるず、
「譊察なんお呌んでも来ないよ」
 飄々ひょうひょうず蚀っおのけた。その萜ち着きを払った様子に、固唟を呑むず、
「だっお、これ倢だもん」
 じいさんはあっけらかんず蚀った。

「は」
「だから倢なんだっおば」
「倢」
「そう」
「倢っお、あの寝おるずきに芋るあれ」
「そう。俺は今、君の倢にお邪魔しおるんだよ。だから最初に『お邪魔したす』っお挚拶したじゃないか」
「はあ」
 気の抜けた返事になる。
 でも、あの登堎の仕方は、どう考えおも䞍法䟵入だ。だが、もしこれが本圓に倢だずしたら、そんな理屈も通らないのだろう。
 倢を芋おいお、これは倢だず気づくこずもあるが、芋知らぬ誰かから「これは倢ですよ」ず教えおもらうこずはめずらしい。どっちみち、倢なんお起きれば芚めるのだから、別に怖がるこずもないかもしれない。
 そう思ったら、身構えおいた肩の力が、ふっず抜けおいった。

「いやぁ、ずっず光䞀君の倢に入り蟌もうず頑匵っおたんだけど、倧人だからかなぁ、なかなか入り蟌めなかった。こりゃ駄目だず思ったずきに、君がやっお来た。で、君の倢に入るこずにしたんだ。それでも䜕床か倱敗しお、今こうしお、やっず顔を合わせるこずができた。あヌ、嬉しいねぇ」
 䞍思議なものだが、これが《倢》だず認識するず、なんでも受け入れられるようになっおくる。

「こうちゃんのこず知っおるんですか」
「たあね」
「こうちゃんに、䜕か䌝えたいこずでも」
 話し盞手が欲しくお倢に出おくるずも思えない。
 するず、じいさんは目を现めおいった。
「いやぁ、君は勘がいいねヌ。賢くお助かるよ」
「え」
   賢い
 滅倚に蚀われない耒め蚀葉に、思わず口蚱が緩む。

「  おヌい」
 にやけおいるず、遠くの方から、聞き芚えのある声が聞こえおきた。
 するずじいさんは、慌おお゜ファヌから立ち䞊がり、
「え もう終わりか いやぁ、あたり話せなかったなぁ」
 そう蚀っお焊りだした。
「ずりあえず名前だけでも憶えおおいおくれ。俺は《たさじ》だ。正しく治めるず曞いお《正治》。頌むから忘れんでくれよ。それから、次䌚うずきにはなぁ  」
 じいさんは必死に俺に䜕か蚀っおいるが、その声は氎で薄めたみたいにがんやり消えおいく。目の前の光景が、癜飛びしたように明るくなり、だんだんず芖界から消えおいった。



第7話に぀づく

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いいなず思ったら応揎しよう

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