
『太陽と月』#32 兄の喪失
「兄のところに行ってまいりました」
フランシスの執務室でアンドリューが報告する。彼は、フランシスに命じられ、エドワードの再出仕の可能性を確認しに行っていた。
「すまないな。どうだった?」
「結論から申し上げますと、使いものになりません」
「……正気は保てていたんだろう?」
「はい。おかしな言動は見られませんし、普通に会話も可能です。ただ先王陛下に今でも兄の優先順位は固定されているような状態です。」
「っ、何を晒しているんだ、アイツは。まったく、妹が在位中は嫌味なくらい有能で、散々私を振り回しておいて、今となったら、もうこの世にいない妹のことしか考えないなんて、そんな我儘が許されると思っているのか。」
「……面目ありません。」
アンドリューはフランシスと目を合わせることもできず、ただ俯く。尚も言い募ろうとするフランシスを、セバスティアンが宥める。
「陛下、太陽を失った月はそのようなものです。御心をお鎮め下さい。アンドリューも、お辛い立場です。大切な兄上の喪失を再度確認したようなものですから。」
フランシスは、自分の無神経さを恥じるように少し視線をアンドリューから逸らす。
「……アイツは、お前にも心を開かないのか。」
自分と話しながらどこか遠くを見つめる兄の姿を思い浮かべ、アンドリューは俯き微笑む。
「……そうですね、以前のようには。」
アンドリューは静かに言葉を濁した。
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