芋出し画像

獅子の仔 Ⅰ 003 ハヌりッド Ⅰ


ハヌりッド Ⅰ


1  åž°è·¯

 「日没の海」サンセット シヌから吹き付ける颚には埮かな塩の匂いが含たれおいた。ハヌりッド゚ストレンは、䞀人、倧柄な粕毛かすげの牝銬に跚り、荷物を背負ったラバの手綱を曳いお、街道をゆっくりず北ぞず向かった。「西郚」りェスタヌランズの倧動脈であるこの石畳の街道には、雑草䞀぀生えおいない。道皋の半ばで銬の歩みを止め、前方を芋枡すず、芖線の先、晎れた空を塞ぐように巚倧な岩山の圱がそびえ立っおいた。

 キャスタリヌロック。埮睡むたどろむ獅子のようだず謳われるその偉倧な岩塊は、この距離から芋䞊げおも圧倒的な質量で迫っおくる。その頂䞊にはためく金獅子の旗が、芥子粒けし぀ぶのように小さかった。

 ハヌりッドは、無造䜜に切り揃えた栗色の髪を払い、顎を芆う虎髭を倪い指で撫でた。硬化皮革を匵った厚垃防衣ギャンべ゜ンは岩のように発達した筋肉ず分厚い骚栌に抌し䞊げられお些か窮屈だった。だが、それよりも窮屈なのは、行き亀う階士や兵士たちの芖線だった。
 遠巻きに畏敬の目を向ける者、「公劃の犬」ず囁き合う者、その鈍重な姿を嘲笑う者――どの芖線も疎たしかった。
 それらの芖線に気付かぬ䜓で、汚れた緑ず耐色の倖套を纏い、銬を静かに進めた。胞元で双頭の鷲が象嵌された胞章が鈍く光った。

 ハヌりッドは、也いた喉を鳎らし、革袋に残っおいた枩くお薄い葡萄酒を飲み干した。その巚䜓を乗せた毛むくじゃらの牝銬は疲れを党く芋せず、再び歩みを始めた。
 だが、銬の乗り手は疲れおいた。その匷靱な肉䜓が疲れるこずはなかったが、この数日間の無意味に思える任務が、埒劎感ずなっお圌の䜓に纏わり぀いおいた。
  䜕故これほど揉める必芁があったのか

 ハヌりッドは今回の任務を思い起こした。発端は、ある集萜で起きた、些现な氎争いだった。小川の流れが倉わったこずで、氎を巡る集萜間の察立が起こり、それが領䞻間の玛争にたで発展したのだった。
 ハヌりッドがラニスタヌ公の代理ずしお、日かけお出向いたにも拘らず、調停は難航した。領䞻たちは互いに自らの正圓性をがなり立お、䞻君の代理人に遠慮する気配すらなかった。
 調停は斧槍ハルバヌドを振るう様には行かない。法による拙速な裁断も犍根を残す。結局、それぞれの蚀い分をひたすら聞き続けお、なんずか収めたのだった。明日にも雚が降れば、氎量は戻る。それたで埅おば枈む話だった。
 ハヌりッドは小さく嘆息し、軜く銬腹を蹎った。

2 城塞

 岩山の麓ぞ近づくに぀れ、その圧倒的な質量が芖界のすべおを芆い尜くしおいく。
 十䞉幎前、「トネリコの蟺地の城アシュマヌク」から茿入れするゞェむンマヌブランド公女付きの埓士ずしお、長い行列に加わっおいた時のこずを思い出す。あの時、仰ぎ芋たキャスタリヌロックは、たさに倢ず野心の象城だった。岩肌の至る所に穿たれた窓や匓射の間隙が、たるで数千の目がこちらを芋守っおいるかのように思えた。自分はい぀か、この䌝説の城塞を舞台ずしお掻躍するのだず誓い、胞を高鳎らせたものだった。
 だが、少幎の季節は過ぎ去り、今、芋䞊げる岩山は栄光の城ではなく、巚倧な墓暙のように芋えた。

 石畳の道は岩山の南面にある正門、「獅子の口」ぞず続いおいる。
 それは文字通り、岩山が倧きく口を開けたような、高さ二癟フィヌトにも及ぶ巚倧な倩然の掞窟だった。自然の造圢を拡匵しお敎えられたその入り口は、異様な嚁圧感を攟っおいた。
 その呚蟺は石畳で綺麗に舗装された広倧な広堎ずなっおいる。倚くの階士や官吏、出入りの商人が行き亀い、露店も出され、その西偎の区画には、居䜏地もある。さらに奥には芏暡の倧きい厩舎ず銬堎が広がっおいる。諞䟯や階士の厩舎は岩山の内郚に蚭けられおいるが、ハヌりッドは明るく颚が吹き抜ける屋倖の厩舎を奜んでいた。愛銬から降り、銬ずラバの手綱を匕いお、厩舎に立ち寄り、銬䞁に預けた。厩舎で働く人々はよく知った顔だった。

「ハヌりッド様、お疲れ様でした。この子の調子は劂䜕でした」
 毛むくじゃらの牝銬「毛むくじゃらの淑女」シャギヌレディを撫でながら、初老の銬䞁が尋ねおきた。

「ああ、揺れもせず、泣き蚀ひず぀蚀わない、良い子だ。旅はこい぀ずラバに限る」

「そうでしょうずも、軍銬なんざ、普段はただの穀朰しでさぁ」

「階士ず䞀緒だな」

「そこたでは蚀っおおりたせんで  たあ、吊定はしたせんが」
 銬䞁は肩をすくめお、厩舎の奥ぞ二頭を曳いおいった。

 この屋倖の厩舎は千頭以䞊もの乗甚銬や行軍銬、荷駄銬を管理しおいる。兵士たちの乗銬が倚いが、ハヌりッドが所有する銬のうち、この毛むくじゃらの牝銬ず葊毛のラバはこの厩舎で芋おもらっおいた。

 キャスタリヌロック最䞊階に参䞊しなければならない時間が迫っおきた。厩舎を出るず足早に「獅子の口」ぞ向かった。階兵が二十列暪隊で進めるほどの暪幅のある石の倧階段を、歩いお登った。
 倖の陜光はこのあたりで途切れ、採光窓ず束明の揺らめく明かりが頌りずなる。掞窟の奥からは、岩山の基郚にある海蝕掞に打ち寄せる波の音が、雷鳎のような蜟音ずなっお響いおきた。その蜟音は、たるで岩山そのものが、䜎く唞り声を䞊げおいるかのようだった。

 倧階段の䞭腹にある怜問所で、ハヌりッドは無蚀で倖套の包頭を䞊げ、衛兵に顔を晒した。若い衛兵長は敬瀌しお䞋がった。
「ハヌりッド卿、巡回、お疲れ様です。たたどこぞの田舎階士が喧嘩でも」

「ああ。氎堎の奪い合いだ」
 ハヌりッドは短く答え、通行蚌の青銅板を芋せた。
「確認はしようか。誰が盞手でもな」䞀蚀添えお、倧階段をさらに䞊った。

 ここからは長い登攀ずうはんだった。「ロバの倧広間」に着くず、荷運び甚のロバに跚った。岩の䞭心郚を貫く「倧螺旋」ず呌ばれる長い坂道が䌞びおいる。ロバが無くおはき぀い道のりだが、時間があるずきはここを歩いお䞊䞋し、足腰の鍛錬を兌ねるこずもある。だが今は、䞀刻も早く登りたかった。
 圌は芋慣れた、しかし、決しお奜きにはなれない頭䞊の闇を芋䞊げお、ロバに揺られ始めた。

 数十分埌、䞭局にあるキャスタリヌロックの䞭倮倧広間に着くず、ロバから降りお、今床は巚倧な「巻き䞊げ機」りむンチに乗り換えた。
 鎖が巻き䞊げられる音ず共に、鉄の籠が䞊昇する。キャスタリヌロックの最䞊階ぞ至るには、麓から䞀時間近く時間がかかる。
 流石に䞊局階に着くず衛兵隊の怜問は厳重な䜓制になっおいる。十数人の衛兵が巻き䞊げ機の乗降口を芋匵り、この時間垯の圓番である䞃フィヌトの長身の護衛階士「のっぜのノルランド」ノルランド・ザ・トヌルが無蚀で敬瀌しおきた。軜く敬瀌を返しお、通行蚌の青銅版を提瀺した。通行蚱可を埗お、再び陜光の射す、䞊局階に出た。
 叀代の環状芁塞の遺構ず䞭倮庭園を通り過ぎ、西偎にあるラニスタヌ家の邞宅区に向かう。その広倧な邞宅が、ハヌりッドが真に仕える䞻の䜏たいだった。

3 宣誓

 「キャスタリヌロックの淑女」ゞェむンラニスタヌの邞宅は、煮沞した酢ず也燥させた錠尟草セヌゞ、そしお埮かな血ず死の匂いが混じり合っおいた。ハヌりッドは、この埮かな匂いからくる緊匵に身を匷匵らせおいた。
 圌の戊堎での経隓は、この薄暗く静謐せいひ぀な郚屋の埮かな血の匂いから、数日前の出産が倚量の出血を䌎った凄惚なものであったこずを悟らせた。
 公劃の埓士ずしお近䟍しおいた頃ず異なり、「キャスタリヌロックの淑女」の私宀ぞず続く回廊には、ラニスタヌ家の歎史を衚珟した絵巻物が壁にかけられ、金ず赀を基調ずした色調になっおいた。公劃の故郷である「トネリコの蟺地の城」アシュマヌクの山々の颚景画や、芋慣れた鈍く茝く青銅の燃える暹の圫像はどこにも芋圓たらない。
 ゞェむン公劃の護衛の任から倖れお、「キャスタリヌロックの階士」ずしおの公務に忙殺されるようになっおからは、随分ず足が遠のいおいた。旧知の黒髭の衛兵長ボルテックや厳粛な䟍女長のむェルマには先ほど、挚拶を亀わした。知らない顔の若い金髪の䟍女がハヌりッドを埅合の間に案内しおくれた。

 客人が埅たされるだけの堎にしおは広すぎる広間には、豪華な調床品や䞊質な赀革が匵られた長怅子が眮かれおいる。ひずたずその赀革の長怅子に腰掛けお、出された檞檬氎を口に含んだ。
 すぐに先ほどの金髪の䟍女が呌びに来た。公劃や䟍女長むェルマが私宀の勀務を蚱したずいうこずは䜙皋、信頌が厚いのだろう。
 幌少期より姉ずも思い、近䟍しおきたゞェむン公劃の呌び出しの理由は芋圓が぀いおいた。この広間に挂う埮かな血の匂い。先日、長時間に及ぶ難産の果おに出生した四男の新生児のこずであろう。既にどのような呜什があろうずも匕き受けるず心に決めおいた。

 久しぶりに立ち入ったゞェむンの私宀には、既に二人の男が呌ばれおいた。
 窓際でカヌテンの隙間から䞭庭を監芖しおいる階士は、長身で痩せおおり、䜿い蟌たれた耐色の皮革軍衣バフコヌトに薄茶色の革手袋、焊茶色の革の軍長靎を履いおいた。腰には食りのない茶色の革の鞘の長剣を䜩いおいる。その顔に芋芚えがあった。クレストルナヌ。ハヌりッドず同じくキャスタリヌロックに仕える「城通の階士」ハりスホヌルド ナむトであり、斥候軜階兵ずしお名を知られた男だ。圌がゞェむン公劃の私宀に、手慣れた様子で控えおいるのは意倖であった。倖を凝芖するその濃い灰色の県は䜕の感情も読み取れない。

 その暪で怅子を䞎えられ、巊足に装着した鋌色の歩行補助具を調敎しおいる巚挢は、ベリアンボりマ。こちらはよく知った顔だが、緎兵所ではなく、公劃の私宀で䌚うこずになるずは思わなかった。ハヌりッドの芪しい元䞊叞であり、鉄棍を振るえば無双ず蚀われた歎戊の歩兵指揮官だった。八幎前の負傷を機に䞀線を退き、今は茜重官ずしお兵站ず物資管理を担っおいた。玅色の茜重官の長衣ロヌブを纏っおおり、壁に立おかけおいる黒ずんだ鉄朚アむアン りッドの六角の棒杖は、べリアンが振るえば、恐ろしい凶噚ずなる。
 この犿頭の倧男は厳぀い倖芋に反しお緻密な思考の持ち䞻であり、優れた蚈算胜力ず行政の知識を有しおいた。ハヌりッドを芋るず、䞊官時代の癖か、嚁圧するように片眉を䞊げお睚み぀けおきた。

 なぜ、この䞉人が集められたのか

 ハヌりッド自身は幌少から「トネリコの蟺地の城」アシュマヌクのマヌブランド家に出仕し、ゞェむンマヌブランドずは姉ず匟のような関係になった。圌女がキャスタリヌロックに茿入れした際は付き埓い、先代の匕き立おにより、若くしお「城通の階士」ハりスホヌルド ナむトたちの幹郚である「キャスタリヌロックの階士」ずなった。
 ハヌりッドは旗幟鮮明な公劃掟であり、ラニスタヌ軍の幹郚のなかでは、タむトス公の口達者な取り巻きからも、レむン公を厇拝する歊断掟からも、異物ずしお遠巻きに芋られおいた。
 この䞉人に共通点があるずすれば、「笑う獅子」の華やかな宮廷においおは、愛想も䞖間づきあいも良くなく、孀高の実力掟ずしお敬遠されお来たずいう点だろうか。䞉人ずも、真面目で、䞍噚甚で、少しばかり誇りが高すぎたのかもしれない。

「  ハヌりッド、よく来おくれたした」
 私宀の奥に備え付けられた倩蓋付きの寝床の䞭から、衣擊れの音ず共にゞェむン公劃が身を起こした。

 久しぶりに察面するその顔色は蝋ろうのように癜く、頬はこけおいたが、窪んだ県窩の奥で瞳だけが熱っぜく、異様な茝きを攟っおいた。それは仔を連れた獰猛な雌獅子の県光だった。圌女の暪にある、倪い麻蔓で線たれた揺りかごでは、数日前に生たれたばかりの四男、ティルトが音もなく眠っおいる。聞いおいたずおり、未熟児らしく、その肌は透けるように赀く、呌吞は小鳥のように浅い。銀色の産毛が、窓から差し蟌むわずかな光を反射しおいる。あたりに小さく、頌りない呜。だが、その小さな手は、芋えない剣の柄を握りしめるように、固く拳を䜜っおいた。

「貎方たちを呌んだのは、他でもありたせん。私の倫は  」
 ゞェむンは蚀葉を詰たらせ、自嘲気味に笑った。

「あの方は、ずおもお優しい方です。誰の願いも断れないほどに。  だからこそ、私が動かねばなりたせん」
 ゞェむンは䜕ずか立ち䞊がり、䞉人の前に進み出た。

「ただ、喋るこずもできない我が子に代わり、私が宣誓を受けたす。ハヌりッド゚ストレン、ベリアンボりマ、クレストルナヌ  お前たち䞉人の剣を、この子に捧げなさい」
 唐突に発せられたその蚀葉は、懇願ではなく呜什だった。母ずしおの、そしお西郚の守護者の劻ずしおの、鋌鉄の響きがあった。ハヌりッドは、幌い頃から付き埓っおきたゞェむンの普段芋せるこずのない鬌気迫る圢盞に最初に動いた。腰に差した分厚い片刃の刀剣を鞘から力匷く匕き抜き、ゞェむンの足元ぞ暪たえお恭しく膝を぀いた。クレストルも、研ぎ柄たされた食り気のない長剣を音もなく抜き攟ち、ゞェむンの足元にそっず暪たえた。ベリアンは鋌鉄の歩行補助具をきしたせながら、䞡膝を぀いおにじり寄り、腰に差しおいた、やや短く詰めた鉛色の刀身を持぀長剣を匕き抜いお、䞡手で掲げる様に暪たえた。
 ゞェむンの足元に、䞉振りの剣が暪たえられ、䞉人の男は膝を぀き、銖を垂れた。

「ティルト様、お仕え臎したす」
 䞉者䞉様の声であったが、図らずずも、䞉人の声が重なった。ハヌりッドが代衚しお、叀匏の宣誓を続ける。

「我々は、あなたのものです。どのような時も背埌を守り、助蚀をし、必芁ずあらば、呜を捧げたす。叀き神々ず䞃神に誓っお」

 ゞェむンは顎を䞊げお、傲然ずその宣誓を受けた。そしお膝を぀く䞉人の男たちを芋䞋ろしお、おもむろに宣誓の蚀葉を述べた。
「よろしい。我が家の囲炉裏にお前たちの居堎所を䞎える。酒食を共にし、お前たちの名誉を汚す奉仕は決しお求めない。叀き神々ず䞃神に誓っお。この子が歩めるようになるたで、その剣で道を切り拓き、盟ずなっお守り抜きなさい。生たれも育ちも異なる者たちよ、  立ちなさい、この子の盟ずなる宣誓の兄匟ずしお」
 立ち䞊がった時、䞉人は、ゆりかごの䞭の未熟児の宣誓の盟ずしお、たた、宣誓を同じくする兄匟ずしお、最初の僕ずなっおいた。

「頌みたしたよ」
 匵り詰めおいた糞が切れたように、ゞェむンの衚情から力が抜けた。癜い頬がわずかに綻ぶ。ハヌりッドは芖線を床に萜ずし、倪い指を握り蟌んだ。か぀お野山を銬で駆け回っおいた快掻な少女は、今や、この薄暗い寝所に囚われおいた。

 ゞェむンは、病床に腰を萜ずしたたた、手を䌞ばしお、䞀通の蚌曞をベリアンに枡した。
 「ベリアン、貎方はここに残りなさい。倫は子煩悩で愛情深い人ですが、兄たちに䞎えたように広倧な所領を䞎えるのは難しい状況です。代わりに、これに、ティルトぞの扶持ずしお眲名させたした」

 ベリアンはにじり寄っお䞡手で蚌曞を受け取り、䞋がっおから、その曞面に目を通した。倪い指で髭をさすり、眉が跳ね䞊がる。
「  ラニスポヌト南西の䞉区画の暩利。これは面癜いですが、敎備するには予算が必芁ですな 。近接する城壁の傷みが激しく、芋匵りの塔の補修が長幎攟眮されおいたす。その工事の責任者に私を任呜しお頂ければ、キャスタリヌロックの予算で呚蟺敎備ができたす」

「しかし、城壁の倖の海蟺の土地。あそこには倧芏暡な貧民街がありたす。城壁補修ずなれば、城壁に匵り付いた䜏居や店舗を朰す必芁がありたす。ひず隒動ですな 郊倖の土地は荒地で攟眮されおいたすし 立地はよく、広さは十分ですが 郊倖の蟲地には確か寒村が圚った筈ですが、倧した収穫は䞊がらないかず 沿岞の地は叀い塩田のあった塩気を含んだ砂地です。蟲業には䜿えない  」
 ベリアンは、独り蚀のようにブツブツず呟き、最埌に「  少し考えさせおください」ず匕き取った。

 ゞェむンはティルトの寝顔を芋぀めた。
「この子は四番目の男児です。兄たちのように、金鉱や肥沃な蟲地を䞎えるのは無理でした。この子には、別の䟡倀のある領地が必芁です。ベリアン、貎方の力で、枯湟ず荒地を敎備しお、あの子に䟡倀のある領地を築いおください」

「キャスタリヌロックの北東偎の『北東を睚む獅子の通』ず、ラニスポヌトの『四の獅子の城通』を抌さえたした。どちらも数十幎䜿われおいたせんが、由緒もあり、基瀎はしっかりしおいる筈です。立地も良いずころにありたす。ここを敎備しお、この子ずあなた達の拠点ずしお䜿いなさい。家什のカサルなど信甚できるものに匕き合わせたす」

 ゞェむンは、こちらに顔を向けお、宣誓の時ずは異なり、穏やかに蚀った。
「ハヌりッド。匟にも等しい貎方には、宣誓の兄匟の長ずしお、責任を果たしおもらいたす。二人の助蚀を受けお、垞に最良ずなる刀断を行いなさい。たずは、この子の手足ずなる兵士を集めおもらいたす。この子にも、兄たちず同様、癟人の線成の暩利が䞎えられたした。忠実で、有胜で、勇気ある癟人の兵士を育おお、この子が成人するたで貎方がその軍を率いなさい」

 ハヌりッドは軍の線制を任せられた重責に勢い蟌んで提案した。
「早速、「狭き路地の城通」りィンドホヌルの兄に談刀のうえ、腕利きを集めたす。「トネリコの蟺地の城」アシュマヌクのマヌブランド家にも、ご協力を頂きたい」

 ゞェむンは穏やかに埮笑んだ。
「急ぐ必芁はありたせん。たた、目立぀のも埗策ではありたせん。圓面、必芁なのは建蚭の人員です。この癟人の扶持を䜿っお拠点敎備の芁員を集め぀぀、軍線成の土台を䜜っおください。それに  」

 公劃は、少し困ったような衚情をしお続けた。
「既に䞉十人ほどの兵士は倫が募集を決定しおしたいたした。誇り高い名家の子匟も召集されるでしょうが、貎方の歊名には埓うでしょう。若い者たちです。鍛え䞊げお、この子の剣ずしなさい」

 ゞェむンの指瀺に考えを改める。䞻の手足ずなる兵士は、圓面は癟人も芁らず、今すぐ粟鋭である必芁もない。圓面、必芁なのは土朚䜜業を厭わない人手や茜重兵であり、将来の軍の䞭心を担う若手幹郚の育成である。他の家䞭から即戊力を匕き抜く必芁はない。

 最埌に、公劃は、クレストルに手玙を差し出した。その手は埮かに震えおいた。
「クレストル。貎方は私の『目』ずなり、この事件を調査しなさい。スタックスピア領で、過酷な重皎が課され、村が焌かれたずいう噂がありたす」

「隊を線成しお乗り蟌みたすか」
 クレストルの案件にも関わらず、思わず身を乗り出した。

 ゞェむンは銖を振った。
「いいえ、りォルモン公は父の旧友で、倫の忠実な支持者です。枩厚で誠実なりォルモン公が理由もなく過酷な城皎を課した経過がいただにわかりたせん。圌が民を虐げるはずがありたせん」

 公劃の声が少し声を䜎くくなった。
「倫が掟遣した城皎官も音信䞍通であるず聞いおいたす。スタックスピア領で䜕かが起きおいたす。クレストル、事実関係を調べなさい。倫の力が必芁な堎合は、私が手配したす。りォルモン公は我々の倧切な支持者です。理由を突き止め、必ず、わが陣営に匕き留めなければなりたせん」

003 ハヌりッド Ⅰ 完


煀けた石 第䞀郚 獅子の仔 第䞀線 ゆりかごの宣誓
003 ハヌりッドⅠ003 ゆりかごの宣誓
248 AC・倏末期 / 西郚・キャスタリヌロック
POVハヌりッド゚ストレン (Harwood Estren)


【本䜜は「氷ず炎の歌」のファンフィクションです】
 原䜜者のゞョヌゞ・R・R・マヌティン氏、および関連する出版瀟・映像補䜜䌚瀟等の暩利者様ずは䞀切関係がありたせん。
 本䜜は「氷ず炎の歌A Song of Ice and Fire」の䞖界芳をベヌスにした非公匏のスピンオフ䜜品であり、原䜜の五十幎前の時代埁服暊248幎以降の䞃王囜西郚りェスタヌランズを独自の解釈で描いおいたす。


▢ 次の話 004 クレストル Ⅰ004 悪意の茪郭

▢ 前の話 002 マむア Ⅰ002 傟いた䞖界

▢ 蚭定資料・目次はこちら




いいなず思ったら応揎しよう