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あの日僕はどん底にいた。気づいたら、這い上がっていた。

    一つのミスや選択で、
    人の評価や立ち位置が崩れ去ることがある。

    今まで努力してきたのに、
    頑張って積み上げてきたのに。

    それでも。
    壊れるのは一瞬で。

    7年前の今頃、
    僕はどん底にいた。

    ほんの小さな見落とし。

    いつもなら、確認していたはずだった。
    慣れがなかったと言えば嘘になる。

    小さなミスが取り返しのつかない結果になることも
    分かっていたはずなのに。

    その時は、効率を優先して
    根拠もなくそのまま通してしまった。

    数時間後。

    上司から電話でミスを知らされた時、
    確認してませんでした。
    消え入りそうな声で返した言葉をいまでも覚えてる。

    書ききれない報告書と、
    回りきれない弁明の場、
    大事にしてきた立ち位置。

    そして、崩れ去った今までの実績。

    そして、それから待っていたのは、
    "ミスをした奴"
    という、最悪のレッテルだった。

    自分の仕事は取り上げられて、
    周りからの信頼も薄くなった。

    自分の居場所がない。

    意識してきたわけじゃなかったけど、
    これほど辛いなんて、
    失って初めて気づく。

    もういいや。
    やめてしまおう。

    何度思ったか分からない。

    わざとやった訳じゃない。
    なんで関係ないことまで言われなきゃいけないんだ。

    どうして…

    行き場のない疑問が
    頭から離れない。

    自分のせいだって、分かってた。

    割り切れればまだ良かった。

    諦めてしまえばいくらか楽だっただろう。

    けど、
    まだ頑張りたい。

    その消えそうで消えない小さな火を、
    静かに揺れ続けた。

    好きなだけ言え。
    取り上げるだけ取り上げろ。

    残された小さなフィールドで、
    やりたいようにやってやろうじゃないか。

    崩れ去ったなら、
    また1から積み上げてやろう。

    元よりも強固で、自分にしかできないものを。

    そう腹を括ったらもう、
    前に進むだけだった。

    "またミスったら意味ないですよ"
    "本当に懲りないな"
    "決まったことだけやってればいいから"

    言われる度に拳を強く握りながら、
    口だけで謝罪を続けた。

    足りない頭をぶん回して、
    今のベストはなにか、
    課題はなにか、
    やるべきことは何か。

    できるかできないかじゃない。
    やるかやらないか。

    とにかく、動く。

    自分に残された道はそれしかなかった。

    周りには頭を下げ、
    企画書を何度も直した。

    一度却下されて終わりじゃない。

    理由を聞いて、
    また考えて、
    また持っていく。

    何度でも。

    ようやく、自分の企画が通り
    成果が上がった頃。

    批判の声は小さくなり、
    気づけば聞こえなくなっていた。

    あれだけ滑稽に見られていたのに、
    ついてくる後輩が多くなった。

    そして、
    いつか仕事を取り上げられた上司から、
    重要なタスクを任された。

    あの日僕は、確かに底に沈んだ。

    けれど、誰かが救い上げてくれる訳じゃない。
    すぐ這い上がれるほど甘くない。

    這い上がる努力より、
    どん底でできる事を、
    全力でやってきた結果だと思う。

    文字通り、泥臭く。

    あの日の自分を思い出す。

    失敗して、
    評価を失って、
    立ち尽くしている誰かを見るたびに。

    なぁ、失敗を嘆いている後輩よ。

    人のせいにして、助けてくれるのか?
    弁明したところで、罪の重さは変わるのか?
    立ち止まってる余裕は、あるのか?

    すぐじゃなくてもいい。

    葛藤があってもいい。

    あの日の失敗がなければ、
    今の自分はいない。

    そう言えるほど強くはない。

    それでも。

    あの時どん底で足掻いた3年間は
    誰にも奪えない財産になった。

    大丈夫。

    気づいたら景色なんか変わってるから。

     
     

    凪人

     
     
    凪人|2児の父 子育て、仕事、日常のあれこれ。 だいたい毎日、何かに追われています。 本当にテキトーに生きてます。 くだらない話を、たまに真面目に。 真面目な話を、たまにくだらなく。

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