文学フリマに行ってきた日
文学フリマって聞いたことはあったし、その響きに憧れてもいたんだけど、どこでいつやってるかちゃんと調べたことすらなかった。
それがなーんとチコリンに誘ってもらえるという、これ以上のときめきがあるか? という状況になり、絶対行きたい! なにがなんでも!と、その日入れてしまっていた仕事を力技でずらして駆けつけた。
会場へ入ってすぐ目の前の光景に心を奪われてしまった。私はコミケや同人誌即売会の経験があるから、この感じがまったく初めてではない。懐かしさと、わくわくと、うらやましさ? 気まずさ? よくわからない感情が一気に押し寄せる。

チコリンがあの人も知っている、あの人もと次々に名前をあげていくがなぜかまったく知らない。そのひとりの前で急に立ち止まり、挨拶を始めたので、私はオカンが近所の人と立ち話をはじめたときの思春期の息子のような気分になり、自分のすべきふるまいを見失い、すーっと現場から離れるという大人らしからぬコミュ障ムーブを取ってしまう。笑
あとからチコリンがにこにこと「はぐれちゃったー」と可愛くやってきたので、ちょっとスマン気持ちで合流する。見ると、すでに二冊も手にしている。私がブースに近づけず遠巻きに眺めているうちに。
見せてもらった本の表紙のクジラがなんともいえない眼をしているので、私も欲しくなり売り場に連れて行ってもらう。表紙の絵をご本人が描かれたということだけど、どれもすごく沁みる絵だ。中は詩集で、それも作者の心と結びついた言葉が置かれているように感じたので、私も一冊購入。

いやこれ、書いた人が前にいるって、ちょっと、強い。
この人の大事なぶぶんの結晶のような、そんな作品なんだと思うと、ふだん本を買うのにしぶる気持ちがふっとんでしまう。これは値段のつけられない尊いものではないか。
次に、失われゆく北海道の風景をおさめた本の前でチコリンの足が止まる。
「私も道産子で~」
とチコリンがまた自然に作者に話し始めるのでビビる。笑
しかしチコリンが話をしてくれるおかげで、作者の思いや作品にまつわる背景がぐっと伝わる。あとから振り返ったときに、これだけ文フリを楽しめたのは作者との交流があってこそだったなと思う。
文フリではとにかくチラシを配られる。
片っ端から受けとっていたのだが、受け取った瞬間セールストークが始まるところもある。それでついつい立ち読みを勧められたものが、宗教についてのみっちりした本で、熱意が物凄く、昔見たクリスティーナ礼拝堂の執念を感じるほどの宗教画が思いだされ、ここまで人を駆り立てるものって……と思いにふけっていたら、隣にいたはずのチコリンが一瞬で消えていたのでウケた。チコリンは興味のあるなしがハッキリしている。
他にも「マゾなんです」と語られる人の失恋についての本だったり、昭和レトロなラブホの写真集だったり、樺太の廃墟の写真集だったり……。(よく撮ったなぁ)
なんで? ここまでの熱意はどうして?? と作品と作者に魅せられてしかたなかった。
通りすがりに見つけた絵が胸の奥をきゅんとつままれるような可愛さだったので購入。大島弓子や萩尾望都の時代の少女漫画の瞳には、吸い込まれそうな透明な宇宙があると思っているんだけど、それに通じるものを感じた。

文フリでは日記がほしいと思っていた。昔から誰かの日常にものすごく興味がある。みんなどんな感情でどうやって生きているのか教えてくれ。探していたところ読み応えのありそうな日記本を見つけて購入。

ばちばちに目を引いた、美人が表紙のBL本も購入。本としての完成度がすごい。その後の打ち上げで「この本、じぶんが書いたことにしたい」としみじみ言う。信じられないぐらいの本音。労せずすばらしい本を生みたい。私はこの文フリでなにを学んだんでしょうか。

かぜの帽子さんのところへ。
帽子さんが参加されているサークル関西魂の「猫」を購入。握手してもらいサインまでもらう。三人で写真もとり、完全なファンミーティング。最高だ。生帽子さんにお会いできてとてもうれしい。帽子さんには創作のサポートで関わって頂き、毎月ZOOMでお話できるのを楽しみにしていた。書くのがしんどくなってしまい、それも離れてしまったのだが、その時間が今振り返っても本当にありがたかったなと。

次の文学フリマが京都であると知って、このお祭りに自分も参加したくなる。ここの空気の一部になりたくなる。隣にいるすてきな創作友だちチコリンを誘ってみるが、よく考えたら列をなすチコリンファンに最後尾の案内係をしているイメージしか湧いてこず一瞬悩む。卑屈はよくないと思うが、わりとありえそうなんだよな。まぁまぁそれも楽しいかもしれない。
それにしても、文フリよかったぁ~。
みんなの楽しそうな表情も、作品について語る熱の温度も、ここにこなければ感じられなかった。これだけの人がそれぞれ違った心をもち、その表現を楽しんでいるんだ。
すごいことだな。すごい価値だ。
じぶんの中身まるごとを換気されたようになって会場を後にした。
