
「Seven Stars」の記憶 #26
「僕の歌った曲」
葬儀が終わると元ベーシストはやたらとみんなで集まりたがっていたが僕は断り続けた。
年末に連絡先を交換した女性とは少しメールでやり取りを続けた。既婚者なのだが結婚に関する悩みを抱えているようだった。話を聞いてあげてはいたが、僕には何もできないと思い、次第に連絡を取らなくなった。
普段通りの日常に戻らなければならない。
人を救済するなんてことは誰もできないのかもしれない。
僕は彼を救えなかった。救おうと考えること自体がおこがましいことなのかもしれない。
彼の死から2週間後、僕のバンドはドラマーと二人でライブに臨んだ。
出演するライブハウスはかつて彼の根城だった。彼が最後に歌った可能性のある場所だった。
僕は彼のためにある曲を歌うことにした。僕はずっと日本語歌詞の曲はやってこなかった。
僕のような冷徹な策士であっても、最初の「歌うたい」を追悼はしたかった。
その曲が何だったかは敢えて、書かない。たぶん、わかる人はいないだろう。
共感を得ようと思っていないからだ。
わからなくていい。誰かにわかってもらう必要もない。
そして、ここまで読んで、もし思い浮かぶ曲があなたにあるのだとしたら、その曲でいい。