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「Seven Stars」の記憶 #25

    「紫煙」

     告別式の日、僕は終日立ちあってくれるようお願いされた。ダイチを介して家族から申し出があった。終わった後のお斎の席も用意されていた。

    告別式では焼香を済ませると親族の後ろの席についた。不思議と家族から悲壮感が見えなかった。

    次々と参列者が訪れ、焼香する様を眺めていた。男性の友人だけではなく、女性の姿もあった。彼のかつての恋人も訪れた。でも離婚した配偶者は来なかった。当然なのかもしれないが妊娠したというキャバ嬢もくることはなかった。あのキャバ嬢は彼が死んだことを知っているのだろうか。

    それほど参列者は多くはなかった。彼の遺影は少し若い頃の写真が選ばれていた。

    告別式が終わると火葬場へと向かった。

    「これで最後のお別れとなります」

    荼毘に付される直前、元ベーシストは泣きながら彼の亡骸にすがっていた。僕はどこまでも冷静だった。何の感情も湧いてこなかった。

    彼に必要だったのは僕のような人間ではなく、感情むき出しで泣いてくれる人間の方が良かったのではないかと思っていた。

    そうとしか思えないのに最後の2ヶ月、長く一緒の時間を過ごした一人は僕だった。

    待つ間の時間におにぎりのような簡単な食事が用意されていた。僕はそれを少しだけもらい、あとは外にある喫煙所に一人でいる時間が多かった。

    みんな非喫煙者になっていて、他にスモーカーはいなかった。

    煙となって上がっていく彼に一番近いのは、僕がひっきりなしに吸うセブンスターの煙のような気がした。

    一人で喫煙所にいると、タバコを吸わないダイチがやってきた。

    「ダイちゃん、やっぱり俺が殺したんかもしれんよ」

    僕は思っていることを吐露した。

    「それは違うと思うな。最後にバンドに誘ってもらえて嬉しかったと思うよ」

    「そうは思えないんだよ」

    そしてダイチは僕に彼が本当はどんな状況だったのかを話してくれた。

    無職なのはわかっていたが、本当に家族を恫喝して金を巻き上げていたようだった。親の貯蓄を食い潰していた。家族も困り果てていたようだった。それは僕の知っている彼からはまったく想像がつかなかった。

    「あいつはそんなこと、もう止めたかったんじゃないかな」

    タバコの火を消すと僕はダイチと一緒に喫煙所をあとにした。

    遺書の存在があったのかもわからないままだった。彼が命を絶った直接的な原因が明らかになることはなかった。僕は自分が直接的な原因であることを拭い去ることはできなかった。

     お斎の席での弔辞は友人代表でダイチが務めた。弔辞の中で「無条件に人を信じることができる勇気をもっていた」と彼を表していた。

    良い弔辞だなと思って聞いていたが、複雑な気分だった。彼は僕のことは信じてはいなかったような気がした。



     
     
    女性との経験を元にフィクションを書いています。たまに音楽、映画、書籍。

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