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Before We Were Named -名前を持つ前の私たち- 18「名を呼ばない帰還」

    地上からの高度は二百キロメートルを超えた。

    通路ではなく、現実世界の地上からそのまま空間へ向かう。それしか方法がない。
    しかし、”粒”ではないチセイ達はあらゆる干渉を受けずに高度を上げていく。

    コンゲンは感慨深げに眼下の地球を見下ろす。
    「いやあ。俺たち、こんなところまで来たことがないから、本当に驚きだよ」
    チセイがコンゲンに目を合わせる。
    「いや。ソウゾウが行ったことあるらしい」
    「え。いつ?」
    「人間が船で世界を一周した頃」
    「かなり前じゃないか!」
    「秘密にしろと言ってたし、僕も関心がなかったから」
    「ソウゾウが宇宙に行ったことを誰にも言わなかったのは正解なんだよな。当時の現実世界では、誰も地球が球体であることを見ていないからね。下手に広まったら呪いに転じかねない......」
    コンゲンは悔しいやら恥ずかしいやらで両手で顔を覆う。
    新しい秩序は柔らかく微笑む。
    「ソウゾウさんって思ってたより自由奔放なんですね」

    しばらく地球を眺めたあと、新しい秩序がコンゲンに問いかける。
    「ナイラさんとイリャパさんは、なぜ神になりかけていたのですか?」
    コンゲンはにっこりする。
    「いい質問だね。じゃあ、神について説明するね」
    コンゲンは姿勢を正す。
    「神は現実世界よりも距離感が近い存在であり、俺たちが世話している魂よりも脆い存在なんだ」
    「何となく予想がつきますね」
    「でしょう? 結局は人間の創造物でしかないからね。永久不変の魂ではなく、自身の意思とは関係なく消耗も消滅もする"信仰心"に肉体がついているのが神なんだ」
    「信仰心が消えると神も消えてしまう」
    「そう。しかし、人間が何代にも渡って信仰を繋ぎ続けていたら面白いことが起きてね」
    「それは一体?」
    「さっきみんなで話して食事した俺たちの世界。その近所のようで遠い場所にその信仰心から成り立った世界ができたんだ!」
    「おぉ」
    驚く新しい秩序。チセイは腕を組む。
    「不思議だねぇ」
    「それに、その世界の中で元々あったかのような並行世界のようなものが作り上げられたらしい。俺たちが足を突っ込むと呪いになりかねない。信仰の厚い宗教には不可侵としているんだ。つまり、神とは基本関わらない」

    新しい秩序は、ふと疑問に思った。
    「では、ナイラさんとイリャパさんが神になろうとしていたのは、どういう状態だったのですか?」
    「正確には、二人が本当の神へ変わろうとしていたわけじゃない」
     コンゲンは、眼下の地球へ目を向ける。
    「神が現れなかったから、空いた役を自分たちで埋めようとしていたんだ」
    「空いた役?」
    「ナイラちゃんは、神に捧げられる者として死んだ。イリャパちゃんは、神と人間をつなぐ側の役割を背負っていた。けれど、死んだあとに待っても、二人を迎える神なんて現れなかった」
     チセイは静かに口を開く。
    「だからナイラは、自分が神になれば、捧げられた意味が生まれると思った」
    「そう。イリャパちゃんも、ナイラちゃんを神として扱うことで、自分の役割を完成させようとした。二人だけで、捧げる者と捧げられる者、仕える者と神になる者を演じ始めたんだ」
    「二人の信仰だけでも、世界を作るほどの力があったのですか?」
    「二人だけの力じゃない。山に残った信仰、儀礼の記憶、生きていた人間たちが長い間その場所へ与え続けた意味。それらが、二人の魂へまとわりついていた」
     コンゲンは、自分の両手を近づける。
    「ナイラちゃんが神を名乗り、イリャパちゃんがそれを認める。二人の間で信仰が循環し続ければ、いずれ小さな信仰世界が閉じて完成していたかもしれない」
     新しい秩序は表情を曇らせる。
    「それは、神になるというより……」
    「神という役から、二度と出られなくなるということだね」
     チセイが続ける。
    「ナイラは神を演じ続け、イリャパは神へ仕える者を演じ続ける。二人がそれを望んでいると思い込んでいる間は、誰も外から否定できない」
    「では、私たちは神になることを止めたのではなく」
    「二人が、自分たちで役を降りるためのきっかけを作ったんだ」
     コンゲンは笑みを浮かべる。
    「覚醒したときに現れた紋様も、神格化した証じゃない。信仰が決めた役から離れて、ようやく二人自身の魂が表へ出てきた証拠なんだよ」
     新しい秩序は、二人が見せた表情を思い出す。
    「神にならなかったからこそ、二人は二人のままでいられた」
    チセイは腕を組んだまま、静かにうなずいた。
    「ナイラたちは、神になりかけたんじゃない。神という役から出られなくなりかけていたんだね」
    「そういうこと」

    新しい秩序は少し考えた後、コンゲンに質問する。
    「信仰心が消滅した神はどうなるんですか?」
    コンゲンは顎に手を当てて言い方を考える。
    「信仰心がなくなってもその神は残ることがある」
    「それは」
    「忘れられるか否か。それで神の存在が左右される」
    「信仰もなくなり、何を信仰していたかも忘れられてしまうと」
    「消滅してしまう」
    「では、忘れられなかったら」
    「神としての姿は残っている。そして神としての使命から解かれる」
    「すると、どうなるんですか?」
    「現実から完全に忘れ去られるまでのんびり暮らしてるんじゃない?」
    「そうかもしれませんね」
    新しい秩序はユラについて思い出す。
    「ユラさんが言ってた"白い山の主"って」
    「面白いことに気がついたね。ユラは王族でも生贄でもない。ナイラちゃんとイリャパちゃんが生きていた年代に探検家や研究者を案内していた。ただの案内人なんだ」
    新しい秩序は目を丸くする。
    「ユラさんは」
    「簡単に言うと、転落死だ。その当時、まだ信仰が強かった山の主が助けて空間を用意してチセイたちを引きつけた。本当に稀有なケースだ」
    チセイはユラを思い出して微笑む。
    「ユラは長い間能力がなかったんだ。数百年経って、助けられた主と繋がることができたんだ」
    「ユラさんを助けた理由」
    「神は現実を観測できるからね。お気に入りだったんじゃない? ちなみに、白い山の主の信仰は外部の侵入で信仰力は弱まっていったんだ」
    「謎が多いですね」

    新しい秩序はあることを思い出した。
    「お二人にこれを見ていただきたいんです」
    新しい秩序は空間に切れ目をつくり、その中に手を入れる。布切れのようなものを取り出した。
    この様子にチセイは笑顔になる。
    「君もそれができるんだ! やっぱ似たもの同士なのかなあ」
    「子供たちにものを与えるときはここから出してるんですよ」
    「やっぱり。この中は人間で言う"大脳"のような場所。際限なく入ると思うし、戦うときに有効活用できる」
    コンゲンは新しい秩序が取り出したものを感慨深そうに見た。
    「物を与えるだけじゃなく、価値を見抜くこともできるんだね」
    「それほどでもありません。現実世界の廃墟で拾っただけです。ただ、何かを感じました」
    新しい秩序が出した布には赤い糸で無数に玉結びと玉留めが施されていた。
    頑丈に縫い合わせるためのものではない。
    「その赤い糸は確かおまじないの一種だったかな。ーーあれ?」
    コンゲンはふと思い出す。
    「これ、どのタイミングで拾ったんだい?」
    「これはネリアさんのところに行く前ーー」
    「やっぱり! ネリアちゃんの時の赤い糸。きっかけはこれだったんだ!」
    チセイも驚く。
    「なんか、モヤモヤが晴れた気分だ」

    三人の上昇速度が緩やかになった。
    「着きましたよ」
    コンゲンは目を見開く。
    「本当? 景色が変わらないから、止まっていることに気づかなかったよ」
    チセイが口を開く
    「......ということは、ここが」
    「はい。もう彼女の空間の中です」
    「景色が変わってないのに? でも、気配が」
    「後ろを見てください」
    チセイとコンゲンは振り返る。チセイは目を丸くし、コンゲンは呆気に取られる。
    「全く気づかなかった」
    目線の先、チセイ達から十メートルほど離れたところに岩片と人の手で加工された金属片の塊があった。人間の身長の5倍ほどの大きさがあった。
    新しい秩序は塊に向かって声をかける。
    「久しぶり。お友達を連れてきたよ。出ておいで」
    「この声は!」

    塊のカケラ同士の隙間がゆっくりと開かれる。
    鳥が翼を広げるよう。
    ーーいや違う。両手が何かを包み込んでいたように見える。
    ゆっくりと開かれた手の中に少女がいた。
    茶色い髪。犬の耳がある。
    少女は新しい秩序を見つけるや否や、足元の欠片を強く蹴った。
    両手を広げなながら飛びついてくる少女を、新しい秩序はその少女を抱き止めて、その頭を撫でた。
    「犬の女の子?」
    チセイが新しい秩序に尋ねる。
    「えぇ。雑種です。地上にならどこにでもいた、ごく普通の犬ですよ」
    会話を聞いた少女はチセイを見る。
    「この人たちがお友達?」
    「そうだよ」
    新しい秩序から離れるとチセイとコンゲンの方へ向かう。
    飛びつくかと思いきや、少女は二人の前でぴたりと止まった。
     背筋を伸ばし顔を上げたまま、チセイとコンゲンを交互に見つめた。

    「こんにちは!」

    明るく元気で、少し緊張した声だった。
    突然のかしこまった所作に驚いた。コンゲンは微笑む。
    「えらいねぇ。とっても」
    チセイは右手を出す。
    「こちらこそ。よろしくね」
    少女は右手の匂いを嗅ぐ。すると、その右手を笑顔で抱きしめた。尻尾も左右に大きく振っている。
    チセイも笑顔になる。コンゲンは腕を組み深くうなずく。
    「やっぱり。犬だねぇ」
    その後、コンゲンも少女を抱きしめた。二人とも少女の頭を撫でた。

    開かれた岩と金属片でできた手は、四人を受け止める大きな器のような形になっていた。
    四人はその手の中に座り話をすることにした。満足したのか、犬の少女は新しい秩序の体にもたれて眠ってしまった。
    チセイはうつむく。
    「こんな子を一人で、こんなところに......」
    「ずっと一人だったわけではありません。チセイさんが目覚めるまでの間、アイカタさんやホンノウさんと何度もここへ来ていましたから。アイカタさんは無機物の姿でしたが」
    コンゲンは、かつて現実世界で報じられた出来事を思い出した。
    「この子は、もしかして宇宙航行の実験でーー」
    犬の少女の名前を口にしようとしたことに気づき、新しい秩序は制止する。
    「どうか。この子の名前は言わないでください」
    コンゲンは慌てて自分の口を塞ぐ。
    「そうだった。申し訳ない」
    「私ももう一度言うべきでした。この子は、今も生前の名前を持っています」
    チセイは少女を見て質問する。
    「この子にそのことは?」
    「知ってます。当時はひどく悲しんでましたが、アイカタさんとホンノウさんが説得してくれました」
    コンゲンは大きく息を吐く。
    「名前を口に出してしまうだけでも呪いが進行するとは......」
    新しい秩序は小さくうなずく。
    「この子の名を現実世界へ強く繋いでいる人間が、全ていなくなるまでの辛抱です」
    新しい秩序はチセイを見つめる。
    「これも、技術の発展によって人間同士の距離が近くなった産物に違いないかと」
    「......」
    チセイは言葉が出なかった。

    コンゲンは、少女を包んでいた巨大な”手”を見渡す。
    「この子の能力は」
    「操ろうとした対象を手の形に造形する。といったところでしょうか。魂には効力を及ぼさないと思います」
    チセイが新しい秩序に目を向ける。
    「......てっきり光や高熱、炎に関するものかと思ってた」
    新しい秩序は真剣な顔をしてうつむく。
    「この子を乗せた機体は、地上へ帰ることなく、大気圏の再突入で燃え尽きました」
    一拍置く。
    「しかし、この子が亡くなったのは、そのずっと前です。恐らく、軌道に入って数時間のうちに。機体の欠陥によって起きた過熱と、強いストレスに耐えられなかったのでしょう」
    チセイは息をのむ。コンゲンは固く口を閉じる。
    「死ぬ間際、彼女は何を思っていたのでしょうか」
    新しい秩序は眠っている犬の少女をそっと撫でた。

    チセイは言いづらそうに口を開く。
    「こんなことを言うのはおかしいと分かっている...... 僕が目覚める以前に何とか。地上に降りてもらうことは」
    コンゲンは首を横に振る。
    「名前の条件は満たしている。しかし、接続領域の問題がある」
    「コンゲンのところじゃなくても、アイカタが他の魂の空間へーー」
    「それは禁忌だ。今、一番の不安要素はこの子の記憶に飼い主がどう存在するかだ。それを確かめるために俺たちが丁寧にプロセスを踏まなければいけない」
    チセイはうつむく。
    「アイカタとホンノウはすでにこの子と会っていたのに僕へ言わなかったのは」
    「呪いのことを考慮したからです。大広間で私とアイカタさん、コンゲンさん方全員集まって全員が顔を合わして、初めて言えるべきことだと判断していました」

    「君がコンゲンのもとにすぐ行かなかったのは」
    「アイカタさんとホンノウが初めて会った時に俺の元に伝えてくれたんだ」
    コンゲンは小さく息を吐く。
    「それで、アイカタさんにお願いして新しい秩序君に、チセイが目覚めるまで好きにやって欲しい。と、伝えさせたんだ」
    「!」
    チセイはコンゲンを見る。コンゲンも視線を合わす。
    「当時は、新しい秩序君について知らないことが多すぎた。だから、しばらく自由に行動させたんだ。特に、名付けができるのか。魂をこっちに寄越してくれるか知りたくてね。チセイがいない状態で俺の元に連れてくるのは危険だと感じたんだ」
    新しい秩序が付け加える。
    「アイカタさんいわく、チセイさんがいない間はこれが一番安定している状態だったらしく、チセイさんが起きるまでこのまま活動していてほしいと」
    チセイは大きく息を吐き考え込んだ。

    「僕が目覚めた時点で、君をすぐに呼べたのではないか」
    「私が発現した最初期は共に行動する時間が多かったです。別行動をしてからはほとんど顔を合わしてなかったので、結果的にあの高山で会う流れとなりました」
    「なぜ別行動を」
    「私のことが危険ではないと判断してくださったからです。それともう一つ理由が......」
    「?」
    「その話なら、一応聞いている」
    コンゲンが口を開いた。
    「有機物の弱点というか、無機物の姿に強制的に変わってしまう環境をどれほど知っている?」
    「確か、植物や動物が生息できない火山地帯、それと宇宙空間。極地や深海はまだ有機物の姿を保てたはず」
    新しい秩序がゆっくり口を開く。
    「新しく分かった場所があります」
    「それは」
    「放射性物質にに汚染された地域です」
    チセイは大きく息を吸って背後にもたれる。
    「僕がまったく知らない事例だ」
    新しい秩序はこれから話すことに備えるように深呼吸した。

    「ある魂が目覚めたため、その子の空間へ二人で行きました。空間に入る前にアイカタさんが拒否反応を見せたのです。その時、無機物さんと口論になってまして、有機物の体のまま空間にへ入りました」
    新しい秩序は視線を落とす。
    「無機物さんの予想が当たりました。魂が得た肉体そのものに放射性物質を内包していました。その影響で予想より早く覚醒していました」
    コンゲンが質問する。
    「魂の外見は?」
    「外見は普通の女の子でした。しかし、瞳の色と吐息。それには青白い鈍い発光が見て取れました」
    「青白い発光かぁ......初めて聞くね」
    「青白い吐息を大きく吐き出すと、人や動物の形。家具や農具になって私たちのところへ飛んできました」
    新しい秩序は、さらに視線を落とした。
    「最初に人の形になった吐息が迫った時に攻撃だと気づかずに正面から受け止めてしまいました。すると、有機物の体は彼女に近づいただけで損傷を受けました。そして攻撃を受けた瞬間、無機物の体に強制的に移り変わったんです」
    コンゲンが眉間にシワを寄せる。
    「確かに、有機物の最大の弱点になり得る」

    チセイが質問する。
    「どうやって対処したんだ?」
    「私が攻撃を受けた直後、吐き気やめまい、頭痛、疲労感が一気に押し寄せ......。記憶が曖昧なんです。でも、その症状が引いた時には無機物さんが全て解決してくれた感じでした」
    コンゲンは大きくうつむき、ため息をつく。
    「こんなことアイカタさん本人の口から言ってくれるわけないよなぁ」
    チセイは口に手を当てて考える。
    「確かにこれは。無機物の独壇場になりかねないね。君の状態は放射線に被曝した初期の症状だ。被曝量によっては早い段階で症状が現れる。ただ、有機物の体に攻撃が当たった瞬間に無機物の体にすぐ切り替わったのなら被曝だけでは説明がつかない。色々疑問が残る」
    「えぇ。彼女の吐息を受けても一切動じてませんでしたからね。かなり円満に解決できていたので問題ないと思います。争った形跡はほとんど残っていませんでした」
    コンゲンはチセイに質問する。
    「そういえば、エルランとサマルに会った場所から比較的近いと思うんだけど、アイカタさんは何も言わなかったのかい?」
    「ん? ...... !」
    チセイは立ち上がる。
    「言ったどころじゃない! その魂の場所へ立ち寄っている。しかもあいつ、かなり言葉を濁して結局どんな魂かも言ってない」
    「あまりアイカタさんを責めないであげて」
    コンゲンが止める。チセイは呼吸を落ち着かせて座る。
    「でも、そこに魂の姿も空間もなかったんだ」
    新しい秩序は驚いて顔を上げる。

    そのとき、チセイの声で犬の少女が起きて目覚める。
    「んぅ。おしゃべりしてるの? まぜてー」
    チセイが謝る。
    「あ! ごめん! 起こしちゃったね。一緒にお話しよう!」
    コンゲンは微笑む。
    「さっきの話は俺からほかのみんなに言っておくよ」
    そして、犬の少女に目を向ける。
    「そうだ! 話が遅くなってごめんね! 今日は君を地上へ連れて行こうと思うんだ!」
    「え、行けないんじゃなかったの?」
    「いーや。俺がここに来たことで君を地上へ連れていくことができるんだ。一応ここへ戻ることもできる」
    「なんだかよく分からないけど。行きたい」
    「緊張してる?」
    「......うん」
    「安心して。もうひとりぼっちじゃないことは約束する」
    「ありがとう」
    「どういたしまして」

    新しい秩序がコンゲンへ質問する。
    「この子は連れて帰った後、どうしますか?」
    「一人で暮らすには不安が多いからね。その前に俺とソウゾウ、一部の魂が特別に保護する。健康診断と、勉強もしてもらうよ」
    コンゲンは少女の頭を撫でた。
    「ちなみに、チセイが目覚めた後に連れてきた魂は特別な保護の必要はなかった。でも、新しい秩序君がつないだ魂は全員名前を持っている。生前の名前を持っている子は全員、まず保護して状態を確かめているんだ」
    「とても大切にしてるのですね」
    「この子たちを最優先にしているだけだよ」
    チセイがコンゲンに声をかける。
    「どう戻る? 君と管轄域の間だったら、一人で繋げるんじゃなかった?」
    「いや。まず地上付近まで降下しよう。この子に地球を見てもらってからだ」
    コンゲン、チセイ、新しい秩序は少女を優しく見つめる。
    「おしゃべりもしながらね」

    こうして四人は空間から抜けて地球へ向かって降りていく。
    犬の少女は、眼下に広がる青い星を見つめながら、何度も三人へ質問した。
    三人はたくさん話し、地上のことを一つずつ教えた。
    しかし、彼らが次に行うのは放射性物質を肉体に宿した少女の捜索である。
    犬の少女の明るい声が響く中でも、三人の胸に残った不安が消えることはなかった。

    >>19「精霊」

     
     

    GGpero

     
     
    Before We Were Named -名前を持つ前の私たち- 初回は下記リンクにて https://note.com/gg_pero73/n/nf68331f873c0 執筆内容は完成次第投稿するため、投稿頻度にばらつきがあります。

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