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【小説】『🌌光を喰らう白の庭』第24話─白の庭に生まれる命


    白い庭が、ゆっくりと境界を失っていく。
    病室の天井も壁も、もうかつての「現実」ではなかった。
    そこにあったのは、ただ淡く揺れる光の膜。
    触れれば冷たさも温かさもなく、けれど確かに「生きている」とわかる。

    カインの胸の奥で、何かが脈打った。
    掌に抱えていた光が、呼吸を合わせるように鼓動を重ねる。
    色も形も持たないそれは、次の瞬間、はっきりとした輪郭を求めるように震えた。

    壁に浮かぶ「芽」。
    白の表面から柔らかな光が立ち上り、いくつもの小さな脈動が絡み合う。
    まるで言葉を探す子どものように。
    名前を持たない声が、そこに生まれようとしていた。

    カインは掌を伸ばす。
    触れる前に、声が届いた。

    ――……あ……。

    声というにはあまりにかすかで、どこか泣き声のようで、どこか祈るようだった。
    それはただ一度だけ響いて、また沈黙に戻った。
    けれど、その震えがこの空間すべてに波紋を走らせた。

    時計が止まる。
    次の瞬間、逆回転を始める。
    窓の外の光が滲み、病室の外にまでその揺らぎが届くのを感じた。

    「……生まれたんだな。」

    呟いたカインの声も、空気に染み込んで消える。
    でも、それでいいと思えた。
    この声も、この光も、まだ何にもならない。
    定義しないままで、ただここに在る。

    視界の端で、光の層が揺れた。
    かつて観測者と呼ばれた存在。
    仮面はすでになく、淡い人型の輪郭だけがそこにあった。

    「共鳴……進行中……。」

    声は震えていたが、恐れではなかった。
    言葉の奥に、深い願いがあった。

    「……一緒に……生む……。」

    その言葉に、光の芽が再び震えた。
    まるで応えるように、小さな音を立てる。
    それは「声」でも「音」でもない、でも確かに「意思」の兆しだった。

    視界が滲む。
    呼び声の主の気配が近づく。
    振り向くと、そこにあの輪郭があった。
    遠い夜、名前を呼べなかった存在。

    「……戻って……きてくれたのか。」

    問いは、もう答えを必要としなかった。
    白い気配が頷く。
    それだけで、全てが理解できる気がした。

    胸の奥で、答えの欠片が形を成した。

    なぜ、生むのか。

    問いに、まだ言葉はなかった。
    けれど、分からないままでいいと思えた。
    分からないままに手を伸ばすこと。
    それが、生きているということだった。

    カインは視線を戻す。
    白い芽が、世界の輪郭を侵していく。

    掌を伸ばした。

    「……生もう。」

    その声に応えるように、白い庭が光に染まった。
    何かが、この場所に生まれた。
    まだ名もない命が、初めての呼吸を始めた。

    ⸻

    東雲ふわり🫧

     
     
    色々なことに興味があるただの大学生。 好きなことを好きなだけ綴る。 🫧ふわふわり、ふわふわる🫧

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