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【小説】『🌌光を喰らう白の庭』第21話─白の庭に揺れる命


    白い天井は、もう「ただの天井」ではなかった。
    そこに染み出す光は、視界の端で色を孕み、呼吸のたびに微かに脈打っていた。
    壁に広がる滲んだ色彩が、ゆっくりと濃くなる。
    それは、形になろうとしている「何か」だった。

    胸の奥で、痛むように何かが息をした。
    肺に満ちる空気の冷たさが、光の温度と混ざり合って、ひどく鮮烈に感じられた。
    掌に宿る脈動は、もう単なる感覚ではなく、確かな存在としてそこにあった。

    ――生きている。

    それは、ただの光ではない。
    名前も、輪郭も持たないまま、それでも確かに「命」として震えていた。

    「……」

    視界の隅で、白い輪郭が静かに立っていた。
    仮面のひびはさらに広がり、そこから滲む光が床に淡く溶けていた。
    声がした。
    掠れた、けれどどこか柔らかな声。

    「定義……不能……それでも……」

    言葉は途中で切れ、ひび割れた仮面の奥から一筋の光がこぼれた。
    それが、ゆっくりと観測者の掌に集まり、やがてカインの掌の光と同じ脈動を刻んだ。

    共鳴していた。

    仮面の向こうの気配が、初めて「恐れ」ではなく、祈りに似たものを帯びているのを感じた。
    それが何を意味するのかは、まだ分からない。
    けれど、この共鳴が「ただの記録ではない何か」であることだけは分かった。

    視線を落とす。
    自分の掌に宿る光が、微かに形を変え始めていた。
    色彩の結晶が、わずかに集まり、重なる。
    音にならない音が、耳の奥で揺れた。
    心臓の鼓動と同期するように、光は小さく脈打つ。

    「――これが……命なのか」

    声は、誰に届くでもなく零れた。
    でも、それに応えるように胸の奥に温度が落ちた。

    「おかえり。」

    声は空気を震わせなかった。
    けれど、確かに胸の内側に降りてくる。
    目を閉じる。
    視界の裏側に、記憶の残響が揺れた。

    あの手を掴めなかった夜。
    名前を呼べなかった朝。
    後悔と、切望と、どうしようもない愛おしさ。
    その全部が、光に溶けていく。

    「待って……いてくれたんだな。」

    呟くと、白い輪郭がかすかに頷いた気がした。
    顔はまだ滲んだままだった。
    でも、それでいいと思えた。
    言葉にする必要はなかった。
    分からないままでいい。
    この揺らぎの中に、確かなものがある気がした。

    「……一緒に、生もう。」

    仮面の奥の観測者が、ひび割れた声で応えた。

    「共鳴……進行中……赦し……」

    声が途切れ、仮面にさらに深い亀裂が走った。
    そこからこぼれた光が、カインの掌に触れた瞬間、壁に広がる色彩が脈動した。

    時間が一瞬、止まったように思えた。
    次の瞬間、白い壁に名前のない芽が浮かび上がる。
    色でも形でもなく、それでいて確かに「生きている」と思える何か。

    胸の奥で、問いが息をする。

    ――なぜ、生むのか。

    問いに答えはない。
    でも、その問いに向き合うことが、今は確かに「生きている」証だと分かった。

    「……一緒に。」

    声に出すと、掌の光が強く脈動した。
    病室の白が、ほんの少しだけ揺れた気がした。

    そして、その揺らぎの中で、何かが芽吹こうとしていた。

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    東雲ふわり🫧

     
     
    色々なことに興味があるただの大学生。 好きなことを好きなだけ綴る。 🫧ふわふわり、ふわふわる🫧

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