
寺が「お金を貸していた」話③ ― 幕府は「例外は作らない」と決めた ― 天保末期(1840年代前半) #75
― 幕府は「例外は作らない」と決めた ―
前回、寺社による貸付が
全国規模で広がっていたことを見ました。
では、その貸付金を――
幕府はどう処理しようとしたのか。
結論から言うと、その方針はかなり明快です。
👉 「例外なく、定めたルールの対象にする」
■ 史料に出てくる方針
まずは該当箇所です。
公儀御貸附金者、勿論御三家方堂上方宮方其外平キ寺社、御手当貸附金、
並道中宿方助成金貸附等之分も
御書付を以前ニ而も取上済方可申付
現代語訳
「公儀(幕府)の貸付金はもちろんのこと、御三家・堂上方・宮方、その他一般の寺社への手当としての貸付金や、道中宿場への助成金の貸付などについても、これまでの触書以前の分であっても取り上げて処理するよう申し付けるべきである。」

少し長いですが、重要なのはここです。
👉 「すべて取上(=回収・整理)せよ」
■ 対象はどこまでか
この一文、よく見ると対象が非常に広い。
並べると、
公儀の貸付金
御三家(徳川一門)
堂上方(公家)
宮方(門跡)
一般の寺社
宿場の助成金 など
👉 ほぼ全部です
■ これは何を意味するか
ここで見えてくるのは、
幕府のかなり強い意思です。
それは、
👉 「貸付という仕組みを一度リセットする」
という発想。
個別事情はひとまず置いて、
誰が貸したか
誰に貸したか
に関係なく、
👉 例外なく、定めたルールの対象にする
という方向です。
■ なぜここまで強いのか
背景にあるのは、
金銀の流通や貸借関係の混乱です。
貸し借りが積み重なりすぎると、
返済が滞る
債権関係が複雑化する
市場の流動性が落ちる
といった問題が起きます。
そこで幕府は、
👉 「例外なく、定めたルールの対象にする」ことで流れを回復させようとした
■ しかし、この方針には問題がある
ここで、ひとつの疑問が出てきます。
本当に「全部同じ扱い」でいいのか。
例えば寺社の貸付は、
修理料としての資金
寄附金の運用
といった性格を持っている場合もある。
それを通常の貸金と同じように処理してしまえば、
👉 寺院の運営そのものに影響が出る可能性がある
■ 次回予告
では、こうした“例外”はどう扱われたのか。
門跡や有力寺院の貸付は、
本当に一律に処理されたのか。
次回は、
👉 「過去の貸付」と「既得権」がどう衝突したか
を見ていきます。
ルールは決まった。
しかし、それだけでは動かないのが現実でした。
参考資料
画像から読み解きをサポートしてくれるツール
「ふみのは」
例文が豊富です。典型的な言い回しに慣れるには良いと思います
最初の頃は不要ですが、解読に慣れてきたら辞書が必要です。まだ辞書の力をいかせていない気がします・・
*Amazon のアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています*