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Episode 8 無人島に一つだけ持っていくなら?🏝️


     午後の Café Solas。

     窓の外では、いつもの街がゆっくりと時間を進めている。

     店内では、いつもの三人がコーヒーを飲んでいた。

     その静けさを破ったのは、やっぱりケンタではなかった。

    「なあ。」

     タクヤがカップを置く。

    「無人島に一つだけ持っていくなら、何?」

     ケンタの目が輝く。

    「そういう話、好き。」

    「知ってる。」

     タクヤが笑う。

    「俺、スマホ。」

    「早いな。」

     アキラが答える。

    「電波は?」

     ケンタが止まる。

    「……あ。」

    「ないぞ。」

    「充電も。」

    「終わった。」

     三人が笑う。

    「でも写真あるし。」

     ケンタが言い返す。

    「音楽も聴ける。」

     アキラが静かに聞く。

    「充電は?」

    「……。」

    「また止まった。」

     タクヤが笑う。

    「じゃあ俺はナイフ。」

    「現実的。」

     ケンタが頷く。

    「火も起こせるし。」

    「木も切れるし。」

    「魚も獲れる。」

     アキラも小さく頷く。

    「合理的だ。」

    「アキラは?」

     ケンタが聞く。

    「知識。」

    「またそれ。」

    「持ち込みアリなの?」

    「頭の中だからな。」

    「ずるい。」

    「勉強した人の特権だ。」

     タクヤが笑う。

    「じゃあ俺も知識。」

    「今さら?」

    「遅い。」

     三人が笑う。

     少し間が空く。

     ケンタが真面目な顔になる。

    「でもさ。」

    「一番生き残るの誰?」

    「俺。」

     タクヤが即答する。

    「ナイフあるし。」

    「理由が一本しかない。」

     ケンタが笑う。

    「でも強い。」

     アキラが言う。

    「生存率は高いかもしれない。」

    「ほら。」

    「じゃあ俺は?」

    「初日。」

     タクヤが答える。

    「何が?」

    「充電切れ。」

    「スマホまだ引きずるのか。」

    「当然。」

     少し笑う。

     窓の外を、小学生の集団が通り過ぎていく。

     ケンタがぼんやり眺める。

    「でもさ。」

    「無人島って。」

    「何を持っていくかより。」

    「誰と行くかじゃない?」

     一瞬、店内が静かになる。

     タクヤがゆっくり頷く。

    「……それはある。」

     アキラもコーヒーカップを置いた。

    「道具は増やせる。」

    「でも、人は簡単には増えない。」

     ケンタが笑う。

    「じゃあ三人なら?」

     タクヤが答える。

    「たぶん何とかなる。」

    「根拠は?」

    「ない。」

    「ないのか。」

     三人が笑う。

     アキラが小さく言う。

    「でも、一人よりは強い。」

     少しだけ間が空く。

     ケンタはコーヒーを飲み干した。

    「じゃあ結論。」

     二人が見る。

    「無人島には。」

    「行かない。」

     タクヤが吹き出す。

    「そこに戻るのか。」

    「現実が一番だ。」

     アキラが微笑む。

    「賛成。」

     カラン。

     ドアベルが鳴る。

    「いらっしゃいませ。」

     三人はいつものように立ち上がる。

     遠い島へ行く予定はない。

     それでも今日も、この小さな店で、少しだけ世界を広げる話をしていた。

     午後の Café Solas。

     コーヒーの香りは、いつもと変わらず静かに漂っていた。


     
     

    和人

     
     
    和人 52歳。 放送大学で学びながら、 小説『Café Solas』を執筆中。 就職氷河期世代として、 仕事・学び直し・健康・老後について考えています。 50代のリアルな日常と、 学び直しの記録を発信しています。 小説とエッセイを中心に更新中。

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