
🐷 Episode 4:旧友ヨシオ、山梨の土産話
午後のCafé Solas。
陽射しがカウンター越しにきらきらと踊っている。
いつもの3人がそれぞれの時間を過ごしている中、カランコロンとドアベルが鳴り、
3人の旧友・ヨシオがのっそりと現れた。
どっしりした体格。
Tシャツから大胆にはみ出た腹回り。
「よお」
と短く挨拶し、ヨシオが一番端の席に腰を下ろす。
アキラは慣れた手つきで豆を挽き、丁寧にドリップしていく。
香ばしい匂いがカウンターを充満させ、時計の針の音だけが微かに響く。
タクヤがスマホから顔を上げ、ケンタが読みかけの本を閉じる。
やがてアキラが、湯気の立つコーヒーをヨシオの前に静かに置いた。
ヨシオは無言でそれを受け取り、ゆっくりと一口含んで、ふぅ、と長い息を吐く。
外の喧騒が遠ざかり、
店内の空気がようやく「いつもの」状態に
落ち着いた頃――。
アキラ
(コーヒーを啜りながら、ふっと笑みをこぼす)
「……また、なんかあったんだろ。」
(一呼吸、二呼吸。
店内に流れるBGMの音が少し大きく
聞こえるほどの静かな間が流れる)
ヨシオ
(少し照れくさそうにカップを置き、視線を落とす)
「……ああ。
つい昨日まで友達と3人で山梨へドライブ行ってたんだよ。
そこでさ……ちょっとした事件が起きてな。」
タクヤ
(身を乗り出す)
「ほう。」
ヨシオ
「昼メシに『道の駅とよとみ』でほうとう食ったんだ。
他の2人は普通のほうとうを頼んだのに対して
俺は“豚肉入り”を選んだわけだ。
でな、美味しくいただいたところで、
さあ、会計して出発するかと…
だが……レジが死ぬほど混んでてな。
後ろにも並んでる。」
「まあ、後ろもいるし、
俺らもみんな万札しかなくて、店には悪いけど個別会計だったから、なおさら焦ったんだよな。」
「で、店員さんに、元気よく言っちまったんだ。」
『会計、別でお願いします』
ヨシオ
「“俺は、ブタです”🐽」
(一瞬、空気が完全に止まる。
カチコチと時計の音が響くような静寂が、カウンターの全員を包み込む)
アキラ
(視線をグラスに向けたまま、静かに)
「……自己紹介」
ケンタ
「(下を向いて肩を震わせる)」
タクヤ
「お前、そこで何を……何を主張したかったんだよ……」
ヨシオ
「(顔を赤くして)
いやだから!“豚肉入りです”って言うのを省略したんだよ! 」
「そんなの普通だろ、俺だけブタ肉入り頼んたんだからさ。他の2人と200円違うからさ。」
『だから、俺はブタですって言ったんだよ🐽」
タクヤ
「(堪えきれず)
……ただの事実確認じゃねえか」
ヨシオ
「でさ、この店の店員さんがさ、
めっちゃイケメンでさ、めちゃくちゃクールなのよ。
まあ、愛想のないぶっきらぼうとも言えるかな」
「でさ、とにかくレジで会計待ちが行列じゃん。
クールな店員が、よりクールに淡々とレジやってるんだよ」
「だから、こっちも個別会計だし、早く済ませてあげようとおもったのよ」
タクヤ
「(爆笑)」
ケンタ
「(腹を抱える)
省略の仕方、間違えすぎだろ!」
ヨシオ
「でな、この話のオチはあってな」
「俺の友達が、
お前、省略しすぎだろ笑
って2人とも後ろで笑ってだんだよ。」
「で、そのうちの1人がさ、レジのクールな店員にこう言ったのよ」
ケンタ
「ほう、なんて?」
ヨシオ
「笑ってくれていいんですよって」
アキラ
「で?(苦笑)」
ヨシオ
「そのクールな店員がさ…」
クールな店員
「すいません(大爆笑😂」
アキラ、ケンタ
「そりゃ、笑うわな🤣」
タクヤ
「…腹筋痛い🤣」
ヨシオ
「後ろの会計待ちのお客さんまで爆笑してんだぜ」
(天を仰ぐ)
「もうやだ、この人生」
アキラ
(コーヒーを飲み干し、静かに)
『それがお前のいいところだ、昔からな」
「とは言え…」
「……言葉は、省略するな笑」
午後のCafé Solas。
言葉を端折った代償は、
今日もこの場所を少しだけうるさくしていた笑